2022年10月22日 (土)

IWC5日目

5日目は、最後の今回提出された報告書等の採択と、役員の選出、次回開催地の決定などが進んだ。

次回の議長はギニア共和国のディアロ代表、副議長はオーストラリアのニック・ゲイル氏。2分化されたIWCで議長は、それぞれの利益を代表する側が交代交代に努め、68まではスロベニア、その前は日本だった。露骨な身内贔屓は出されないが、蓋を開けて見ないとわからない状態で、ちなみに今回までの議長は公平、中立だと両方の側から褒められていた。特に、採決ボイコットに際して、強行しないで、多分、怒りに萌えるブエノス・アイレスグループを宥めた事が評価されたのか。

しかし、議長の会議の成果文書では、採決できなかったことを単に「定足数が満たされなかった」と表現したことから、採択を強く望んだ側からは事実に反すると大きな不満が爆発した。しかし、議長は文書が単なる成果の報告で、詳細経過はのちに出される議長報告で語られるとがんとして動かず。議論が長引き、最終的には多少の文言修正が試みられ、また次回会議ではまず最初に定足数に関しての手続き規則がどのように考えられるのか検討されるということでなんとかおさまった。

多分、サンクチュアリが会議で決定されようがされまいが、提案した沿岸国は粛々と保全を進めるだろうし、また、どっちみちそれはサンクチュアリに強硬に反対するアフリカを主体とする国々にとっては、決まっても、決まらなくても実質的に何も変わらないだろう。要するに、「日本症候群」に感染した捕鯨支持の国々が、象徴としての保全を受け付けないという意思表示なのだから。

しかし、なんとも収まらない気分にさせられるのは、‘提案した国々=豊かな国々、反対する国々=貧困国‘というおかしなレッテルづけだ。なぜなら南米沿岸諸国での経済活動は、だいたい小規模な業者によるホェールウォッチングで、大国の経済活動とは関係ないからだ。それを、捕鯨を将来するつもりもないし、クジラを食べもしない国がめくじら立てるというのは一体なんなんだろう。

関連する提案で食糧安全保障という観点からの捕鯨推進があるが、これも同じように、鯨肉で飢餓を解消しようとすれば、程なくクジラたちはいなくなってしまうだろうし、クジラの海に貢献するさまざまな生態を考えれば、小規模な沿岸漁業者にとって、存在することこそ恩恵と考えてもよさそうなのに。

なんだか母国では時事通信が、この提案が‘否決‘されたとか報道したようだが、飢餓撲滅はIWCを超えるとされながらも、より良い内容で検討しましょうね、とアメリカなどがいって継続討議されており、採決はもちろんされていない。

 

で、次の開催地はペルーだ。

2022年10月20日 (木)

IWC2日目

※これを書いているのは4日目なので、みんな南大西洋サンクチュアリを設立できるか固唾を飲んでいる所ですが・・・

 

2日目は、財運の報告と議論。本拠地であるレッドハウス売却問題から始まった。老朽化し、建て替えにもお金がかかるので、引っ越そうという話がだいぶ前から出ており、その話で進んではいるが、まだ買い手が見つからない模様。

2018年以降の財政運営についてと、今後の見通し。

昨日書いたWG-OPで今後のためにいずれの道をとるべきかという3つの選択肢が示されている。

1が支出を減少させて解決する緊縮財政

2は支出を減らすと同時に、参加費等で収入も増やしていくというもの。参加国は2023年に4%、2024年に2%の参加費の増額が提示されている。

3はとにかく収入を増やすというもので2023年には10%増やす。

フロアの議論ではおおむね2の選択肢。しかし、参加費増額に対してはやはりかなり複雑らしく、科学委員会の出費は減らせるのではないか(ノルウェー)とか、更なる小委員会で検討すべき(アメリカ)、勧告は明確な手続き規則によるべき(アンティグア)など、ガバナンスのあり方にはおおむねは合意できるが、細かい詰めまだというところで、木曜日に討議される事になった。

 

次はいよいよ、南大西洋サンクチュアリ。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイが共同提案し、これまでEUを始め多くの国が賛同してきた提案だ。初めに提案されたのは2001年だったか。粘り強く提案され、フロリアノポリスではここ1番という強い願いで進められたが、叶わなかったものである。なかなか成立しないのはこれが附表修正の課題で、議決には4分の3の賛成票が必要だからだ。

今回もそうだが、反対の多くは「モラトリアムがあるのでクジラは取れないのに、なんでクジラのための保護区が必要か?」というもの。しかし、海洋保護区の必要性はすでにCBDなどの条約で認められており、管理計画等を見れば、取る、取らないの問題だけではないとわかるはずだ。

しかし、中には「貧しい国をさらに貧しく不健康にする」(セントルシア)とか、「鯨に特化するのはWTOに違反する」(アンティグア)ーこれは、国際取引に関係しない話ではとアルゼンチンーとかいう反対派もいて、合意形成は難しいままだ。

ここで特記したいのは、今回の韓国のスタンス。提案の感謝し、原則を理解していること、そして、この提案がIWCが保全機関となることを進めるスタート、という非常に前向きな発言をしてくれたことだ。

韓国はクジラでは捕鯨推進と長らく見なされてきたが、一方で、海洋の保全に関しては真剣に取り組んでいる所だ。COP10で私たちの招聘に応えてくださったリー博士は当時の海洋担当のセクレタリーだ。また2015年には、違法に捕獲され、水族館で飼育されていたイルカを彼らの所属海域に解放したという実績もある。

また、最近、日本でも大変流行したドラマでは、主人公がクジラ保護に燃えており、その影響でさらなるイルカの解放も実現したと聞いている。

こうした世論の後押しで、韓国が本来進めてきた海洋保全の政策が前進することを期待を込めて見ている。

プラスチック汚染問題の提案は、今回のEUを代弁するチェコが提案し、アメリカ、イギリス、韓国、パナマ、インドが賛同国になっている。これについては、国連環境計画(UNEA)でいかに協力して国際的な解決に向かえるか、が議論されており、日本(環境省だが)も決議案を提出するなど積極的に関与を示してきた。様々なスタンスがあれ、大方の国々が問題を認識しており、木曜日には合意が形成されることが期待されている。

次は、食料安全保障問題。ガーナが提案し、ギニア共和国、カンボジア、アンティグア&バーブーダが賛同している。

FAOによる飢餓の消滅に向けての方針に海洋生物及び養殖が必須だとされているので、クジラも資源利用するべきというもの。まあ、一昔前日本はそれを散々吹聴していたし、基本スタンスは「クジラも水産資源」だ。しかし、現在、捕鯨業はほとんどなくなり、沿岸の国々にとっては多分クジラをとるエネルギーがあるなら、小規模漁業者が沿岸で自分たちの取り分を確保するための方策こそ飢餓対策になるはずで、クジラを取ったり食べたりしない国が(アンティグア&バーブーダ代表はこの後の独演会で「自分はクジラ食べないけどね」といっていた)、なんでわざわざクジラ取れるようにしな、と言いたいのか。「飢餓撲滅は重要な課題だけど、IWCが扱う範囲を超えている」というのがもっともな意見で、途上国の権利とか、途上国の現実を知らないとかの意見にアメリカが大人の対応。一緒に提案内容の検討をするという話に進んだ。

最後の提案はなんとモラトリアム解除のための鯨資源保全と管理の推進で、アンティグア&バーブーダの名物代表のデブン・ジョセフ氏の独演会の様相。これまでのIWCにおけるすったもんだから、保全重視に至った現在までを自己流に説明し、皆さんは道を踏み外そうとしている!正気に戻って本来のIWCの目的を全うしまよう。そのための特別委員会を設置しよう、とで何処かのカルトかあ?というような演説。だがこれもオーストラリアが神対応。興味のある国々で、問題整理と検討を行うことになって一件落着。

 

 

IWC68 本会議1日目

10月17日、4年ぶりの対面会議がはじまった。

議長の挨拶の後、お定まりの開催国挨拶があり、スロベニアの外務大臣、環境空閑計画大臣、ピラン市長が英語で挨拶。それぞれが、環境に関連する懸念事項などを話されたが、話題の中で、私たちが宿泊しているマリンバイオロジーセンターが海洋環境保全の拠点だということが出てきてちょっと感動した。

日本ではIWCが破産するとかで盛り上がっているみたいだが、(財政は苦しいのは確かだが)、組織を支えようと思っている人たちの努力も見ていってほしい。

開会の宣言と議事採択が滞りなくおわり、最初に話題となったのは、財運の報告の中での投票権の変更。国際的なコロナの流行と途上国をはじめとする参加国の懐具合などを勘案し、今回に限り、3年間(2019,2020、2021)の滞納国も投票権が与えられることになった。8カ国がそれに相当。

ちなみに18日現在の参加国は54カ国で投票権のない国が6カ国ある。

議長が会議を進める際に、会場発言に際し、参加国、非参加国(日本)、国際組織、そしてNGOといちいち丁寧に聞いている所がいい感じだった。日本は参加国発言の次に、発言の機会が与えられている。

そのあとの科学委員会報告は、とても良くできたパワーポイントプレゼンテーションで行われた。科学委員会は毎年行われるので、その4年間の蓄積を新・旧の議長が説明にあたった。組織の構造や担当する内容から始まり、実際の進み具合や問題点など、私にもすごく理解しやすいものだった。続く保全委員会も、科学委員会ほどではないにしてもなかなか頑張って造られたPPTの発表で、こうした新しい試みは、4年間の中で、いかに良く運営していくかという試行錯誤の結果だと思うが、こうした影の努力への評価があっていいな、と思った。残念ながら、今回は日本だけでなく、メディアが非常に少なく、開催前の朝日の記事が唯一か。

2003年にベルリンで大きな論議の末に生まれた保全委員会だが、世界的なクジラへの視線の変化を受けてその必要性が増し、課題も増え続けているが、一方でなかなかの存在感を持つようになったと実感する。またこの10数年苦労して組織を育ててきたメキシコの代表ロレンツオさんが任期を終えて、副議長のイギリスのキャット・ベルさんが議長に就任し、アルゼンチン代表のミゲル・イグレシアスさんが副議長となった。

1日目最後にはIWCの将来を考えて財政運営委員会の下部組織として2019年に作られたWG-OE(効果的な運営のための作業部会)の報告があり、予算やガバナンスといったIWCの構造的な改革についての考え方が示された。

オブザーバーとして参加の日本政府は水産庁4人(森下海洋大教授含む)、外務省2人、法務省2人という陣容だが、他に鯨研の2人がGGTとして参加している。

 

2022年10月15日 (土)

IWCスロベニア3度

10月11日に日本をたち、12日からIWC参加のためにスロベニアに来てる。本会議のみの予定だったのが、格安だったので購入したトルコ航空の予定の便が欠航、代替して提示されたのが2日前の日程だったので、図らずもいくつかの小委員会に参加できた。

会議場で出会った森下丈二教授には「もう来ないと思っていたのに」とさっそく嫌味らしきことを言われたが、確かに長丁場がこたえて、ついた当日はほとんど死にかけていた。旅はキツかったが、宿泊場所である国立マリンバイオロジーセンターピランは、会議場のホテルベルナルディンの隣という好立地で、長い逗留でもなんとかなるというくらいの宿泊費。紹介してくれたNGOにはとても感謝している。

今回の目的は、日本が脱退したのちに、これまで求めてきた方向性、すなわち‘鯨類の保全と管理‘の組織として機能させるという関係者の熱意をきちんと把握したいと思ったからだ。

確かに、日本が抜け、日本が引っ張り込んだ捕鯨ヨイショの国々の多くが参加費を滞納している状態で、しかも世界的なパンデミックによる経済的苦況が参加する国々に重くのしかかっているなか、運営資金の確保は大変むずかしい。今がまさに正念場という感じがするが、私としてはここでIWCという組織の方向性をきちんと打ち出し、クジラの保全・管理の国際機関としてのステータスを確立してほしいと願っている。

日本は、IWCを漁業機関以外のあり方を認めないが、近年、クジラの持つ生態系に於ける重要性が認識されて保全の努力が一層求められるようになってきた。例えば、湿地や森林保全、国を超えて移動する動物の保全を司る国際条約が存在するのだから、そうしたあり方に大きな違和感はないと思われる。また、参加国の代表の人たちやNGOがそうした熱意を強く持っていることが感じられ、これが単なる夢物語ではないことを日々感じている。

 

2022年5月17日 (火)

鯨の肉がペットフードに

  プレスリリース

「 鯨肉消費あがらず ペットフードにまで・・・」

 

3年越しで続くコロナ禍による経済の停滞に追い討ちをかけるようにロシアのウクライナ侵攻が私たちの暮らしに影を落としています。そんな最中に、政府はさまざまな問題を含む2022年予算案を閣議決定しました。その中に、今年度も捕鯨に関する予算およそ51億円が組まれていることは非常に残念です。

4年前の20181228日、当時の官房長官、菅義偉氏は日本が国際捕鯨委員会を脱退し、商業捕鯨を開始すると発表しました。そして翌年7月、大型の母船式捕鯨会社1社と沿岸の小型捕鯨業4社が商業捕鯨を開始しました。

しかし、それぞれの企業体の必死の努力に関わらず、減少した鯨肉需要は戻らず、在庫は積み上がり、捕鯨産業はもはや政府の支援なしで自立するのは難しいことが明らかになっていますが、一方で政府は、補助金による捕鯨業支援は打ちきる予定であるとしています。

母船式捕鯨を行う共同船舶は、母船の老朽化のため、新たな船の建造を計画するほかありません。新造船にかかる費用は、一部下関市が持つほか、クラウドファンディングでの調達に期待していますが、現状を考えると捕鯨船としての利用だけでは無理があるように見えます。

こうした現状を打開するため、業者はこれまで学校や医療機関への大幅な値引き販売、飲食店への直販、鯨肉の風味を良くするための加工方法の変更、鯨脂アイスや鯨肉タルタルなど新商品の開発に励んでいますが、生鯨肉の売れ行きが比較的好調なのに比べ、冷凍肉の需要は依然として低く、鯨肉はペットフードに行き着くことにもなったようです。

202111月の日本のペットフード市場の分析では、イワシクジラ、ミンククジラ、ナガスクジラを原料とする61種類の加工品、冷凍品、フリーズドライ品、製品を製造・販売する日本企業が34社あることが判明しました。

50以上の製品が犬を対象としており(生肉、パウチ入り加工肉、乾燥ジャーキー、フレーク、ビスケット、フリーズドライのキューブなど)、さらに10製品が猫またはその両方を対象としていました。また、鯨の脂身を原料としたオメガ3サプリメントも販売されています。

これに対してIKANは「日本は、捕鯨が伝統的な産業だと主張し、商業捕鯨を再開しましたが、ペットフードの利用は明らかに伝統とは言えません。アイスランドやノルウェーにおいても鯨肉の需要は減少し、遠からず商業捕鯨から撤退することが推測できる中、このような無理な利用までして商業捕鯨を継続するのは間違いです。さらに食の変化だけではなく、海洋環境の悪化による様々な影響が国際的な懸念となっている今、商業捕鯨という選択を再考し、これまで注がれてきた努力を海洋環境の健全化に集中し、その実りとしての水産業の発展に切り替えるべきではないでしょうか」と述べています。

2022年3月 4日 (金)

水産基本計画(案)への意見〜「象徴的意義」って・・・

昨日締め切りだった掲題のパブコメに意見を提出した。

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「象徴的意義」としての捕鯨は水産基本計画に必須ですか? 

2019年に再開された日本の商業捕鯨は、鯨肉消費の落ち込みによって将来的な展望を持ちません。

開始当時から2022年まで、事業者は採算性の見込みを持ち得ないまま、補助金に頼ってここまで来ました。

しかし、事業者たちも、将来にわたって、補助金頼みで事業を継続するのはむずかしいと考えているはずです。

今年になって沿岸基地式捕鯨を行ってきた3社が共同で事業を行うと発表しました。母船式捕鯨の共同船舶も、

現状では経営的に成り立たないことを訴えており、さらには老朽化した母船に代わる船の建造の必要性も

大きな重荷になっているはずです。商業捕鯨を実施してきた日本、ノルウェー、アイスランド3カ国のうち、

アイスランドは、2024年から捕鯨の捕獲枠を付けない決定を行い、事実上捕鯨事業から撤退します。

ノルウェーにおいても鯨肉消費は落ち込み、捕獲枠よりはるかに低い捕獲実績であるにもかかわらず、

鯨肉の一部がペットフードに加工されていると聞きます。これらのことから、今世界で、商業的なクジラの

捕獲及び利用は必要ないのではないか、と推察されます。

 「水産物の安定供給の確保」と「水産業の健全な発展」が基本理念ですが、ここに書かれているのは、

抽象的な「象徴的意義」のもとで「科学的根拠に基づいて持続的に利用」するという一般的な方針です。

また、事業の継続に関しては、コスト削減や販路開拓や高付加価値といった、掛け声に終わっているように

感じられます。 捕鯨に関しては、商業的な形態からいっそ離れて、伝統文化などとして必要最小限に

縮小して継続する代わりに、政府の補助を受けられるような形や、大型船舶に関しては資源調査でなく、

 

生態や、気候変動など海況の変化にともなう海洋生態系における役割を調査し、発表するといった海洋調査船

への転換も考えられるのではないかと思います。近年、国際通貨基金をはじめ各種機関がクジラの海洋生態系

における役割や価値について発信しています。そうした科学調査を推進する方が、国際的な信頼関係も築くことが

できるのではないでしょうか。

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 P21ウ)捕鯨政策 

国際的な水産資源の持続的利用の推進において象徴的意義を有する鯨類に関して、我が国の立場に対する理解の拡大を引き続き推進する必要がある。また、大型鯨類及び小型鯨類を対象とする捕鯨業は、科学的根拠に基づいて海洋生物資源を持続的に利用するとの我が国の基本姿勢の下、国際法規に従って、持続的に行う。 このため、「鯨類の持続的な利用の確保のための基本的な方針」にのっとり、科学的根拠に基づき、鯨類の国際的な資源管理とその持続的利用を推進するため、鯨類科学調査を継続的に実施し、精度の高いデータや科学的知見を蓄積・拡大する とともに、それらを IWC(国際捕鯨委員会、オブザーバー参加)などの国際機関に着実に提供しながら、我が国の立場や捕鯨政策の理解と支持の拡大を図る。また、鯨類をはじめとする水産資源の持続的利用の推進のため、我が国と立場を共有する国々との連携を強化しつつ、国際社会への適切な主張・発信を行うとともに必要な海外漁業協力を行うことにより、我が国の立場の理解と支持の拡大を推進する。 さらに、捕鯨業の安定的な実施と経営面での自立を図るため、科学的根拠に基づく適切な捕獲枠を設定するとともに、操業形態の見直し等によるコスト削減の取組や、販路開拓・高付加価値化等による売上げ拡大等の取組を推進する

 

2021年1月 6日 (水)

混獲されたクジラの取り扱いについて

昨年クリスマスに、「太地の定置網にミンクが」という情報が入ってきた。それからすでに12日、まだ若いと思われるミンククジラはまだ定置網の中にいて、たくさんの人たちに気を揉ませている。太地の湾では、ブリ漁のための定置網が設置されていて、たまたま年末のかき入れどきにクジラに入られ、漁師たちは困っていると水産庁は言う。逃がせればいいが、網を壊せば数千万円もの損害が見込まれ、なすすべないのだろうと担当者は言う。

日本では、魚の種類を選ばないで定置網という網を貼り、複数種の魚を捕獲する漁法があり、ほぼ沿岸一帯に張り巡らされているともいわれる。

クジラは定置網で捕獲する対象ではもちろんないが、時に魚を追いかけてだろうか、定置網に入り込んで逃げられなくなるクジラたちがいる。

政府は2004年、鯨類の座礁に関するマニュアルを作成し、それが何回か改訂されているが、生きているクジラは逃す方針に変わりはない。しかし、定置網に入ったクジラについては原則逃す方針であるものの、2001年からは混獲クジラの販売が可能となった。つまり、定置網の損傷や人身の危険を考慮し、行政の補償問題等の回避策として漁業者に生殺与奪の権限を与えることになってしまったのだ。

本来の漁業に専心したい漁業者にとってクジラが入り込むことは迷惑この上ない話だが、一方で、補殺個体の遺伝子を登録しさえすれば販売も可能であるため、一部ではミンク肉の供給源として活用されるようになった。数年前、ある集まりで会った西日本の行政経験者は、商業捕鯨するよりも、混獲クジラによる鯨肉供給の方がいいと思うと言っていた。

今回、改めて、混獲されたクジラたちが(条件は全く同じではないだろうが) 多かれ少なかれ網に囚われて逃げるに逃げられず、もがき苦しむのだという事実を改めて突きつけられ、混獲問題を何とかしなければならないのではないか、と考えるようになった。

おりしも2年前に商業捕鯨が開始され、100頭以上も混獲されているミンククジラは捕鯨業者にとっては競合相手ともなる。したがって、今、混獲回避の手立てを考えるにはいい時期ではないかと思われ、太地の件も含め、水産庁にいくつかの提案を行っている。1件数千万円もの補償金がそうそう可能とも思えないが、管理責任が当然あると思える水産庁がこの問題をどう捉え、どう出るか見ていきたいと思っている。コククジラに関しては、ガイドラインを作ってせいこうしているというれいもあるし。

ちなみに私からの提案は以下である。

一つは、定置網に入ってしまったことを一種の災害と認定し、補償を行うこと。ただし、金額的に半端ではないので、一定の政府補償を前提に、民間が協力してクラウドファンディングなどの仕組みで網の破損が漁業者だけの負担とならないようにできないか。

もう一つは、クジラが定置網に入ってこない仕組みを考えることで、これは素人の考えではあるが、クジラが入りにくい形を考える、あるいは、船舶での衝突回避を参考に、音響で追い払うと言うアイデアである。

太地の漁業者は解放する方向を模索しているようだと言う情報もあるが、今後は漁業者だけの責任ではなく、マニュアルを作った行政もぜひ、管理責任を強く感じていってほしい。

 

2020年2月 2日 (日)

イワシクジラ/CITESに関する溝

昨年末に急遽作って発送したニュースに、とんでもない間違いがありました。
1月9日に、当の本人である「高屋繁樹」氏からお怒りのメールをいただき、その謝罪を込めたニュースをブログで公表しようと思いました。ただ、さらなる不手際があってはならないと思い、公開前に本人に送って承諾を得ようと考え、ブログの公開を送らせてきました。
ところが、謝罪が不十分だったのか、いまだにお返事をいただけていません。
謝罪は早いほうがいいので、とりあえず、ブログを公開し、何か問題があればさらに訂正しようと思っております。すみませんがよろしく。
以下が、承諾を得るために送った文章です。
「イワシクジラ/CITESに関する溝について」 
 1月9日(木)付で、水産庁捕鯨室長の高屋繁樹氏より、昨年末に作成したIKA-Net NEWS 75号掲載
 の同名記事における間違いについてのご指摘をいただいた。
 大変申し訳ないことに、高屋繁樹氏の肩書及び、名前の表記に間違いがあり、こちらの不手際によって
 ご迷惑をおかけしたことを心からお詫び申し上げたい。また、高屋氏からのメールの引用についても、
 IKANにとって必要な部分しか引用していないと、メールの引用の仕方が間違いだとの指摘を受けた。
 こちらとしては不当な切り取りをする意図は全くなかったのだが、高屋氏の真意が伝わっていないと
 思われたということについて、同じように謝罪したい。
 まずブログでその訂正文を掲載することにし、できるだけ早期に訂正ニュースを送付することにした。
 今後このような間違いを犯さないように早々身を引き締めていきたいと思っている。
 本当にすみませんでした。
以下本文::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


IKA-NET ニュ74 号では、康弘早稲による、8月開されたワシン条委員会におけるイワシクジラ報告掲載させていただいた。それをおみになったはおわかりとうが、昨年(2018)の同委員会では、調査捕鯨によって捕され、日本国に持まれたイワシクジラワシン条の「海からの持み」定に反するものだという判断され、勧告
れた。今回、調査捕鯨を
止したためにイワシクジラの捕はないという日本の返答があったが、会では、んどの国が、反で持まれた鯨の国内流通は同じく反であるとし、没収を要及して判断されないという日本政府との見と対立した。


 ::::::::::::::::::::::
  (引用ニュース74「イワクジラは何処へ行った?」)
  http://ika-net.jp/images/pdf_files/inn074-sanada.pdf

 「ニジェールは、本件が条約にとり極めて重要な問題であると考えていると前置きした上で、前回の常設委で

 非合法とされているものが現在 でも商業市場で売られていると指摘、これは全く受け入れることができず、

 条約第8条に基づき没収すべきであると主張した。EUもニジェールに同調、常設委が日本に対し条約第8条と決

 議17.8に基づきイワシクジラ肉と脂の没収と処分に関する全ての措置を事務局に特定の日時までに報告するよう

 要請すべきである、と発言した。ペルー、イスラエル、オーストラリア、アルゼンチン、米国もニジェールとEU

 の主張を支持、セネガルもイワシクジラ肉の没収を要求した。日本の取った措置が十分であるとして理解を示す

 発言を行ったのはロシア一カ国にとどまった。」

 

と、ロシア以外の国々が没収を要求したことに触れている。そして、

 

 「条約事務局は、没収が遡及適用になるか否かは非常に複雑で法的な問題になるとコメントするとともに、ナ

  ジェリアから中国への材木の輸出、ペルーから米国へのマホガニーの輸出についてどうであったかといった過去

  の前例を調べるなど注意深く検討する必要があると発言した。

  そこで Carolina Caceres 議長(カナダ)は、ここでこの問題に関して限られた時間の中で議論するのはhelpful

  とは思わないとし、常設委としては日本に対して前回の常設委員会前に商業目的で海から持ち込まれて鯨肉の管理

  と取り扱い(treatment)ついて情報を求める決定を行ってはどうか、との妥協案を提示した。

  これに対しEUは、多数の国は「没収」を求めている以上、この文言を含めるべきであると発言、ニジェールもEU

  の主張に同調した。そこで米国は双方が受け入れ可能なさらなる妥協案として、CITES決議17.8「違法に取引・没収

  されたCITES附属書掲載種標 本 の 処 分 (Disposal of illegally traded and confiscated specimens of CITES-listed

  species)」に留意するとの文言を挿入してはどうか、これであれば「没収」のことばが入っている、と提案、これが受

  け入れられることとなった。」

:::::::::::::::::::::::

こうした状況を踏まえ、この1113日、IKANは鯨肉を取り扱っていると思われる鮮魚店やスーパー、デパートなどに、イワシクジラの取り扱い状況についてのアンケートを送付した。それに関して、早速水産庁からメールをいただいた。それによると、アンケートは間違った情報で送付先の店舗を誤誘導するから訂正すべきというものだった。担当者(捕鯨室長 高屋繁樹氏)の「やりとりの改変なく掲載されることを否定はしません」という前提でのお許しを得て、一部引用させていただこう。


<水産庁からのメール>

  1129

  「  委員会の決定はあくまで、(違法に取引され没収された附属書掲載種の標本の処分に関する決議(Conf.17.8)に留意し、)次回常設委員

  会の90日前までに、 持ち込まれたイワシクジラの鯨肉等の取扱い(treatment)を事務局に報告することを日本政府に求めるものです。

  「在庫の実態を把握」 といった記載はありません。

   誤った情報で回答を誘導するのは不適切です。アンケート発出先へ内容に誤りがあったことを伝えてから回収を行うべきであり、 それが出

  来ない場合は、アンケートの中止、もしくはアンケート結果の利用を止めるのが、責任あるNGOとしての姿ではないでしょうか?」

 

それに対しては、常設委員会の方向に関わらず日本政府がイワシクジラ流通を是とする201810月10日お知らせをそのまま掲載していることを指摘し、立場の違いを指摘した。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/seiwhale.html

現在、勧告を踏まえて是正措置の内容を検討中ですが、同勧告は、本年度のものも含め、既に国内に存在している
 イワシクジラ製品の流通や消費については触れておらず、日本政府としても、これらを規制するものではございません。)

(続く)

2019年11月18日 (月)

持続的商業捕鯨実施法案

調査捕鯨継続法をリサイクルした捕鯨のための法案ができ、今国会で成立予定という。

国際的な取り決めも横目で睨んで、捕鯨を「持続的に」行うんだと繰り返し、調査を(捕殺を伴うという文言はやめて)実施して、科学的に捕獲数を決めていく事を書き込んでいるものの、さて、IWC脱退をして本来は本会議で合意し、決定するはずの捕獲枠を生のまま(いくつかの選択肢の中から都合よく選ぶ)取り出して提示し、大丈夫だ、大丈夫だ、と自他に暗示をかけるような案に見える。

実際に、共同船舶の捕獲しているニタリクジラに、新種であるカツオクジラは混獲されないのか、オホーツクで操業するミンククジラ猟に希少なミンククジラ個体群は混獲されないのか。そうした情報はきちんと公開されるのか。前回した質問からは全く不透明なままであった。

前回、質問に立ってくれた山本太郎氏は下野してしまったので、もしかしたら何の質問もないままで通ってしまう可能性が高い。疑問に思う良心的な議員さんはいるのだろうが、政権の無茶振りに関しては既に問題てんこ盛り状態で、なかなかあからさまにするのは難しいのかもしれない。生物多様性基本法なんてものもあるものの、それに配慮する議員さんも本当に少ない。

既に商業捕鯨を実施しているわけで、今更とやかくでもないのかもしれないが、概要のなかで特に気になったことは以下である。




11.鯨類の適正な流通の確保等に関する措置

(第18条)

・違法捕獲された鯨類の国内流通防止

・加工・販売業者の安心確保

12.鯨類の持続的な利用の確保のために必要
な財政上の措置等
(第 19 条)

 

11に関しては、メディア報道などで学校給食への導入の強化が明らかになっている。なんと言っても、今「クジラが食べたい」世代の多くがかつて50年代前後に学校給食で食べた事を懐かしんでいる人たちだから、学校給食というのは短期的な消費の拡大だけでなく、長期的にも(もしかしたら)利用を引き延ばせる可能性があると関係者は踏んでいるのだ。

もう一つは、いうまでもない。2000年以降、需要減少で鯨肉があまり、実施してきた日本鯨類研究所があわや!赤字倒産という瀬戸際まで行って、東日本大地震の復興予算によって生き延びたという過去があり、その後も多額の財政支援なくしては続かない産業であったことから、

  補助金の担保は産業維持の要となるのだろう。

しかし、そこまで手厚く、国家事業として捕鯨継続をしなければならないものか、この期に疑問に思う人が少しでも増える事を願っている。

 

 

2019年11月12日 (火)

「持続的商業捕鯨の確保法」

2017年、共謀罪成立のどさくさに紛れて、調査捕鯨を安定的に継続するための法律が超党派で出来上がった。真っ当な反対意見が出たものの、議員たちは全く無視状態で、反対は情けないことにたった二人。欠席も二人。

しかし、昨年、日本政府と捕鯨関係者はIWC脱退を決め、7月には商業捕鯨が開始されたので、この法律は宙ぶらりんなった。

(そのまま廃案になればいい)と思っていたが、そうは問屋が下さない。捕鯨推進議員たちは、中身を商業捕鯨を継続するため都合良いように書き換えて(公開されていないので詳細はまだわからないが)リサイクルしようとしており、これまでの捕鯨に関する議員たちのあり様を見る限り、今国会中にスピード成立する模様である。

これまで捕鯨をよいしょし続けてきたメディアでさえ、大丈夫続くのだろうか?という及び腰になっているので、捕鯨関係者は必死の売り込みとメディアを使っての礼賛に奔走している中で、議員としては応援団の役割を果たすべく、捕鯨業者が取りたい頭数に寄り添う捕鯨枠と、必要に応じた補助金という、美味しいお話てんこ盛りの法案をなんとか通したいのだろう。
しかし、海外がそれぞれのお家の事情でそれほど問題視しているように見えない中で、国際法違反の可能性大の国際合意なしの捕鯨の継続、IWCの管理方式の自己流の捕獲枠での捕鯨を倫理に照らして認めてしまっていいものか、まず日本が自らに問うべきだろう。

 

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