最近、物忘れも激しくなってきたようなので、これまでIKANが参加してきたIWC会議について、書き残してみようと思う。特に、最初の頃はブログにも残されていないのでIKA-Net ニュースなど残っているものを見直した。
IKANとしての最初の参加は2000年で、2009年の中間会合を含めるとすでに18回の参加になった。これまで、資金面を含め色々と支えてくれてきたみなさんにまず感謝。
2000年
< IWC52本会議(アデレード)>
○ 会議の内容(IKANの立場から)
・日本の北西太平洋での調査捕鯨拡大(ニタリクジラ50頭、マッコウクジラ10頭)についての議論沸騰ー多くの参加科学者が反対の意見
・日本の捕鯨外交への批判ー人口7万人の小国に、7億円の漁業支援行い、会議直前に日本政府がサンクチュアリ提案に反対するよう議会に圧力をかけ、環境大臣が抗議の辞職をしたことから、日本の捕鯨政策としての海外支援への批判があった。
・科学委員会の報告で、それまで公式推定個体数76万頭だった南極のミンククジラの個体数がすでに最良の推定数ではない(もっと少ない可能性)。
・日本政府は、クジラが増え過ぎて人間の食べる魚が減る(ある大臣は’美味い刺身が食べられなくなる’とコメント)と会議で調査捕鯨でのクジラ捕殺を正当化する主張。
○ IKANとしての活動
・事前に「日本政府実施の調査捕鯨とその拡大に反対する」という声明を国内NGOによびかけ、76団体から賛同を得てIWCにオープニングステートメントとして提出。(早速、捕鯨推進の理論的支柱であった今はなき大隅清治さんが飛んできて賛同団体の住所等を要求。もちろん拒否)
・「食品汚染を考える会」のアドバイザーの立場から、IKANも鯨肉の不当表示と汚染についての記者会見に参加。国内で販売されているいわゆる鯨肉は、当時、調査捕鯨の鯨肉だけでなく、沿岸で捕獲された歯クジラ(イルカ類)も含まれ、そのうちの一部は高濃度の水銀やPCBに汚染されているという調査が、日、米、英の科学者によって公表されたのを受け、その結果発表を行ったものだ。
これについては、毎日新聞が’欧米が日本人にサバを食べろとお節介’という記者意見を掲載。反論するも頑なに立場を変えようとしない。そういえば、IWCに参加している記者まわりをした時に、朝日の坂口という担当者に’なんで日本の立場を貶すのか’と、カンカンになってお説教された覚えもある。「日本人は皆、鯨を食べるし捕鯨を支持」というのが日本政府の主張だったのだから、それに異なる見解を述べられることは困ることだったろう。
・そして、参加して一番驚いたことは日本のコミッショナーの態度の悪さだった。反対する国の代表の意見に対して怒鳴り返す、科学者に対して馬鹿にしたような反論を繰り返す。相手方は余裕で、馬鹿丁寧な反論。これは私にとってもうざい。大隅清治氏に「みっともないからやめてほしい」、と言ったのだが、ニヤニヤ笑って、「こういうのが受けるんですよ」と一蹴されたことも驚きだった。
2001年
<IWC53回会議 (ハマースミス・ロンドン)>
○ 会議の内容
・モラトリアム採択で一旦脱退したアイスランドが留保付で復帰を申請ー否決
・日本の小型沿岸捕鯨再会提案ー否決
・南太平洋サンクチュアリ、南大西洋サンクチュアリ提案ー否決
・マッコウクジラ違反捕獲に関する著書に関する議論 元捕鯨会社役員の回顧録で実際の捕獲数や違反の隠蔽が明らかになったことについて。
○ IKANの活動
・ 「食品汚染を考える会」「グリーンピース」との共同行動で、ノルウェーから荷積みされていた鯨油脂の日本輸出に反対するキャンペーンを実施。会場でも横断幕を持って訴えた。
・ この頃から、倉澤個人への脅迫じみた書き込みが多数あった。「白人の足の裏を舐める輩」とか、「早く死んでもらいたい」「売国奴」など。IKANの行動など、大体においては屁のカッパだったはずだが、汚染問題ではカウンターパンチが効いたのかもしれない、と今は思う。そういえば、鯨類研究所が、築地の業者たちに、「調査捕鯨の肉は汚染されていません」というお知らせを配ったのだった。身内だけ庇うのか。
・ 一方で、日本コミッショナー小松正之氏の「ミンククジラは海のゴキブリ」「オーストラリアが東チモールに軍隊を派遣したような方法でなく、外交的な方法やODAを使っている」というラジオインタビューが広く知れ渡り、日本政府は躍起になって票買いを否定。しかしさらに、ワシントン条約で日本がモンゴルを買収した事実関係もBBCを通じて流れ、またもや日本の捕鯨国への取り込みが議論になった。
2002年
<IWC54回会議 下関・山口>
○ 会議の内容
・日本が北西太平洋調査捕鯨に、新たにイワシクジラ50頭を加えた。これには、世界の著名な科学者21人がニューヨークタイムズに反対声明の広告を出している。
・スエーデンが「サンクチュアリ継続」「EEZ内での改訂管理方式による沿岸捕鯨と肉の国内流通」という妥協案を出したが、否決される。
・先住民生存捕鯨の枠の見直しの行われるところ、日本が、提案している小型沿岸捕鯨を認めないならば、アメリカのアラスカ先住民の捕鯨も認めないという主張を行い、初めて先住民捕鯨枠が否決されるという事態になった(これは後で日本が交渉して修復)
・日本政府「我々は失うものがないから頑張れる」
・アイスランドの留保付き復帰が認められた。
○ IKANの活動
・前の年からIKANはグリーンピースジャパン、IFAWジャパンとともに「クジラ保護連絡協議会」を設立し、活動を開始した。また、NGOの活動のコーディネーターを務め、夢広場でコンサートやトークなどのイベントを開催し、また海外団体の行動の支援も行なった。AWIの故ベン・ホワイトさんの子マッコウクジラの着ぐるみとダンスの手伝いや、IFAWのティピー設置など、また各メディアの対応もおこなった。ここにきてそれまでになく、私たちの活動に関してのメディアの露出がおおかった。
・1993年京都会議のときは、捕鯨推進がわの激しい嫌がらせなどが行われたので、海外のNGOは戦々恐々としていたが、下関市はきちんとホストの役割を果たし、海外ゲストからも好評を得た。
・クジラ害獣説はまだ生きており、大口を開けたクジラに空から魚がいっぱい降ってくるバスが運航されたりしたが、仲間たちも面白がって写真撮影をしていた。
・アラスカの先住民枠をけっぽった小松正之さんは、のちに辞職(アメリカ怖し!)
2003年
<IWC55回会議 ベルリン>
○ 会議の内容
・ベルリンイニシアチブを20カ国が提案ーIWCの委員会の中に、科学委員会、財運委員会と並び、保全委員会が成立。日本はボイコット。
・南極ミンクの推定個体数引き続き検討中。
・96年にアイルランドが提案した「公海での捕鯨禁止、RMP(改訂管理方式)に基づく沿岸のみでの捕鯨」について、今回、日本政府は「集中的な補殺と沿岸の系群への脅威となる可能性がある。小規模の捕鯨船では監視員などの人数が増えて経費がかかる」と反対意見を述べていたことに注目!
・科学委員会が油田開発で生存を懸念されているニシコククジラの保護への周辺国の参加を要請。
・2つのサンクチュアリの設立、再び否決。
○ IKANの活動
・IWCに参加していた宮城県知事が各国NGOと意見交換したいとのことで紹介。このような積極的な政府関係者は初めてだった。NGO やトンガとマオリのウォッチング船の船長らと語り合うも、結局溝は埋まらず。
・幾つかの反捕鯨団体がそれぞれ独自に抗議活動を展開した。だいたいは今回の宿を紹介してくれたイギリスの団体WDCS(今は WDC)の楽しいイベントに参加。
・保全委員会の内容はすでにIWCで実行されているものも多い。また、将来的にクジラたちが健全に生息することは捕鯨する側にとっても重要だろうと考え、日本政府のやり方に強い憤りを覚えた。
2004年
<IWC56回会議 ソレント・イタリア>
○ 本会議内容
・新しく、コートジボワールやツバル、スリナム、ベルギー、ハンガリーが参加
・この頃の日本政府は勤勉に冒頭から毎回「クジラ保全委員会」「福祉と人道的捕殺」「環境と健康」「ホエールウォッチング」「サンクチュアリ」はIWCの議題に相応しくないからと、削除の動議を出していたのだったと思い出した!
・これもまた、この頃は恒例になっていた無記名投票の要求。
・病欠した議長のフィッシャー氏(デンマーク)のRMSに関する9つの提案は、モラトリアム解除の是非や調査捕鯨継続の是非など多くがまだ議論の最中で未決着のものだったので継続検討。
・2つのサンクチュアリ提案またもや否決。
・日本沿岸捕鯨基地への救済措置はアメリカの修正でコンセンサスで通過。「ミンククジラ捕獲停止のために生活に困難を来している沿岸捕鯨基地への緊急救済措置をできるだけ迅速に行う」(具体的な救済措置が検討されたわけではないのに注目。ちなみにその後行われた牡鹿町の報告会で、「この救済措置によって年間50頭だったミンククジラの調査捕鯨の捕獲枠は来年から70頭増の120頭となり鮎川沖と釧路沖でそれぞれ60頭ずつ捕獲できるようになる」と前漁業交渉官が説明した。政府委託の調査捕鯨と沿岸小型捕鯨を同じものと考えているのがわかる)
・ 南極の鯨類調査について政府は「ミンククジラは減少または安定。代わりに、ナガスクジラとザトウクジラが著しく増加し、シロナガスクジラの資源回復を脅かしている」。それでも南極のミンククジラは76万頭を触れ回る政府。
・政府の日本国内での説明「クジラが生態系を破壊する」IWCでの説明「海洋生態系の総合的な管理」
・粕谷俊雄博士「調査捕鯨が産業として成り立つことは(IWCの)誰も予想していなかった」。
・ 生息数も生態も全く解明されていないソロモン諸島のバンドウイルカが前年大量に生け捕りされた件とロシアでのシャチの生け捕りに、生態未解明のまま捕獲するべきではないという科学委員会の勧告。
・議論が並行して頓挫しているRMS(改訂管理制度)の早期完成決議通過。日本政府は次の年までに完成しなければ’思い切った措置を辞さない’、と宣言。
・モナコ提案で、会議の分担金が微調整された。参加費は、GDPにより4つに分けられ、途上国は参加費が定額に抑えられている。モナコやサンマリノは国の規模が小さいので、GDPで決められると高額になるので、変更を提案して採択。ちなみにこの時点での参加費はGDPだけでなく捕鯨をしているというところからも日本が一番高く、2580万円。
○IKANの活動
・国際NGOの様々なイベントに参加または見物。地中海のネズミイルカの死骸が持ち込まれたり、地元のケーキ屋さんのイルカのケーキの展示など。
・HSUSが中心となって日本のクジラ獣害説の批判。漁業問題では世界第一人者のダニエル・ポーリー博士がクジラと漁業に関する研究を発表。
http://www.seaaroundus.org/magazines/2004/Nature_20_Jul_2004.pdf
2005年
<IWC57回会議 蔚山・韓国>
○ 会議の内容
・ 日本政府、JARPAII(第二期南極海鯨類捕獲調査)を発表。ミンククジラ850頭に加え、ナガスクジラ、ザトウクジラ50頭最初の2年間はザトウクジラはゼロでナガスクジラ10頭。紛糾。第一期の検証もこれからという中(2006年予定)の提案に、科学委員会の科学者63名が計画に反対。
・ 北西太平洋の希少個体群J-stockに関して、日本と韓国、ロシアの共同調査勧告。日本と韓国での混獲問題の指摘。日本は乗り気でないのに比べ、韓国は非致死的調査を提案。採択。
・ RMSの議論、モラトリアムの解除の有無と調査捕鯨の是非をめぐり再び頓挫。
・会期中というのに、国会議員17名が会議傍聴。
○IKANの活動
・ 韓国、KFEM(KOrean Federation for Environmental Movement)NGOとの交流。韓国でも比較的大きな環境NGOで、蔚山に建設されようとしている鯨の解体施設に反対し、会議場前に『ホエールエンバシー』と名付けられたテントで抗議行動をしていた。このNGOの名前は、原発に関しての原子力資料情報室との共同行動に関して記憶にある。
・ 英国のWSPAとNGOレセプシオンを共催したグリーンコリアも会員数が8万人で環境問題に積極的に行動してきた。韓国政府の論理的なあり方は、こうしたNGOの力によるところが大きいと、しきりに感心(と反省)。
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