2019年2月 5日 (火)

商業捕鯨再開、パブリックコメント募集中だって

締め切りは三月三日です。

指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002839&Mode=0

漁業法第58条第1項の規定に基づく指定漁業に関する告示案について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002840&Mode=0

2019年1月25日 (金)

調査捕鯨から続いて沿岸商業捕鯨だって

  昨年11月、日新丸船団は、南極に向けて出発、これまで日本が正当性を主張してきた調査捕鯨を行っている。
確かに、脱退は六月末なのだから、違法ではないのだろうが(減産を見越して鯨肉を貯蓄?)、ちょっとセコイ感じは免れない。
そこにさらに、
 
日本の小型沿岸捕鯨業者(及び共同船舶)は、今年7月からEEZ内で商業捕鯨を再開するという。
https://www.asahi.com/articles/ASM1S5T2BM1SPXLB00W.html
      【協会に加盟する5隻の船団はこれまで、春から秋にかけて、東北や北海道沖で
       IWC管理鯨種のミンククジラの沿岸調査捕鯨をしてきた。今年も4~6月は
       調査捕鯨をし、IWC脱退が正式に決まって商業捕鯨が可能となる7月1日
      から1週間、そのままミンククジラの商業捕鯨をする。】

と報じられている。その後、一旦解散し、それぞれ捕鯨を実施したあと、九月には北海道集合だそうである。
春季調査では、確か鮎川と八戸で合わせて80頭の枠が決められていたと覚えている。そのあとの網走が枠47頭。

この調査による捕獲実績は、七月に定められるとされている商業捕鯨枠とは別物なのか?
(まずそんな風には作らないのだろうが)商業捕鯨の枠として算出した枠の頭数が、すでに捕獲したミンククジラよりも少なければ「やらない」という選択肢があるのか?それとも、調査捕鯨での捕獲数は「別物」としてカウントされないのか?
九月に北海道(網走?)で実施するミンククジラの捕獲には、どの程度希少な個体群(J-stock)が含まれてしまうだろうか?これまで、遺伝子解析は日本鯨類研究所の知的財産だから後悔しないと言われてきたが、商業捕鯨の場合はどうなのだろか?

これらについては、水産庁がきちんと説明する責任があると思うのだが。

2019年1月20日 (日)

国内報道への違和感

特に、一般的に公平だと思われている報道の中にある思い込みに違和感がある。

https://archive.iwc.int/pages/download.php?ref=7916&size=&ext=pdf&k=&alternative=4247&usage=-1&usagecomment=

「鯨類保護に「挑戦するな」 IWC脱退でEU声明 」

ブリュッセル=共同】欧州連合(EU)と加盟国は16日までに、日本政府による
国際捕鯨委員会(IWC)への脱退通告を「残念だ」としたうえで、日本は脱退後、
鯨類の保護などこれまでの「進歩」に「挑戦せず、多国間協力を続けるよう求める」
とする声明を発表した。

EU声明では、鯨類の脅威がこれまでの乱獲の問題のみならず、混獲や罹網、海洋ごみなど多岐にわたっているとし、これまでのIWCの議論の過程で獲得して来た成果を強調している。これはいわゆる「保護」に止まらない。国内議論には完全に抜け落ちて来た、保全と管理の進展を指していることが重要だと思う。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40100980X10C19A1000000/?fbclid=IwAR0NNDSVuWR12fswVRcc62BPTYTkT8ODTIgFVIHzj2V1gV8-f6vM6IodQ5w

これについては首をかしげている。
なぜなら、海外での大きな懸念は、脱退後の日本の再加盟だからだ。
アイスランドのように、留保を引っさげて再加盟しようとすれば、同盟国からの賛成票が欠かせない。
事実、最近になって分担金を支払った日本支持国もあるくらいで、彼らが抜けたらもう返り咲けないことは双方が承知のことだと思う。

https://this.kiji.is/459156887939171425?c=39550187727945729

 【ロンドン共同】国際捕鯨委員会(IWC、本部・英南部ケンブリッジ)は18日、ビビッチ議長(スロベニア)が加盟国に脱退を検討しないように促し残留を訴える、17日付の加盟国宛て書簡を公表した。日本政府が脱退を通告したことに危機感を抱いていることが背景にあるとみられる。

 ビビッチ氏は書簡で、IWCは長い歴史の中で加盟国が幅広い意見を表明し、議論する場を提供してきたと指摘。「多様な意見を持つ活発な組織の一員であることは、われわれ全員に利益があることだと考える」として、加盟国にIWCにとどまるよう訴えた。
https://archive.iwc.int/pages/download.php?ref=7925&size=&ext=pdf&k=&alternative=4262&usage=-1&usagecomment=

2019年1月15日 (火)

外務省のいうクジラの「保全」て?

ニューヨークタイムズが昨年末社説で、日本のIWC脱退を批判した記事に対して、外務省が反論したことが記事化されている。

こちらはそれを報じた読売新聞。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190112-OYT1T50026.html?from=
  大菅岳史外務報道官の署名で、捕鯨は日本固有の文化であり、日本は国際法を順守し、
   「クジラの保全に取り組 んでいる」と主張している。
(中略)
 
   日本政府は同紙の社説が「重大な事実に触れていない」と反論。日本の捕鯨が、
   IWCで科学的に確立された方式に基づく捕獲枠の範囲内であり、排他的経済
   水域(EEZ)内に限ることなどを強調し、「日本だけを標的にするのは不公平だ」と主張した。

こちらは産経新聞。
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00000517-san-n_ame
 【ニューヨーク=上塚真由】米紙ニューヨーク・タイムズが社説で日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退を批判したことを受け、外務省は11日、「日本はクジラの保護に献身的だ」と反論する寄稿を同紙電子版に掲載した。

 捕鯨が「日本’固有’の文化」と簡単に言っちゃっていることについてのツッコミは別の機会にするとして、
 この人は、「保全(あるいは保護)」」という言葉をどういうふうに解釈しているのだろう?
実際に資源の利用に関わっている水産庁ではないから、勝手なことを言っているだけか?それとも、水産庁(あるいは議員)にそう言えと言われたのか?

保全に取り組んでいない理由ならそれこそごまんとあげられるのだが。

1)2003年のベルリン第55回IWC。保全委員会(官製訳では保護委員会)の設立決議猛反対。南極でシロナガスクジラを取りまくって絶滅の淵に追いやった国々が保護委員会なんておこがましいそうだ。(その仕上げをしたのは、捕鯨から手を引いた国々から捕獲枠付きで船を買って取りまくった日本ではなかったか?)
日本は今だに’保護’委員会をボイコットしている(あ、過去だからし続けた、だ)。
2)南大西洋サンクチュアリに(お友達国を誘って)反対票を投じた。
3)絶滅寸前のバキータの保全決議は棄権。
4)国内では、希少個体群であると指摘されているJ-stock(日本海個体群)の混獲が懸念されているオホーツク海域での捕鯨を承認している。
5)定置網混獲の回避措置が全く取られない(生物多様性国家戦略のパブコメでは、混獲防止は流し網についてです、と返答)毎年、100〜150頭のミンククジラが生きた状態でかかり、死んで肉は商業流通している。2010年の日本鯨類研究所通信によると、特に日本海側やオホーツクではJ-stockの混獲が著しい。
定置網混獲は、ミンククジラだけではない、はるばる、小笠原や沖縄に繁殖にやってくるザトウクジラも毎年何頭も
定置網にかかり、販売されているし、セミクジラがそういう憂き目にあうこともある(2016年1頭混獲→販売)。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/w_document/attach/pdf/index-10.pdf
006〜2007年に混獲されたコククジラに関してのみ、回避措置のガイドラインが作られたが、それのみ。
6)2017年に公表された海洋生物レッドデータで、水産庁は全てレッドリスト対象外とし、専門家からも批判されている。「保全」を尽くすのであれば、まずきちんとした調査を実施し、その評価を客観的で透明なものとして発表すべきである。
(あ!もしかしたら、せっかくの’捕鯨対策費’51億円ををこれを含む保全対策に使ったら、いくらか外務省の役人の言葉が空々しくなくなるかもしれない)

7)だいたい、水産庁は、1972年の環境庁(当時)との密約がすでにありません、と言っておきながら、決して環境省の管轄に譲ろうという姿勢を見せない。資源利用と産業の振興が目的の水産庁ではなく、「保全」対策を進めるなら、環境省の関与は重要だ(最も環境省は、予算も人もない状態ではやりたがらないだろうが)。

忘れてはいけない!
8)イワシクジラ「海からの持ち込み」。商取引禁止のイワシクジラを2000年からこれまで1300頭も捕獲し、肉を販売。
ワシントン条約の常設委員会で違反の是正勧告も、まだ肉が市場に出回っている。
9)昨年に危急種にランクが下がったものの、希少なナガスクジラをアイスランドから輸入し続けている。


今懸念しているのは、IWC脱退してますます「保全」問題から一般が遠ざかり、クジラがいつまでたっても(もしかしていなくなっても)水産資源としての原理・原則から外されず、当たり前のように’切り身’のクジラしか想像しない状態が続くことだ。

2019年1月14日 (月)

クジラ・コンサート

ローリング・ココナッツ・レビュー・ジャパン・コンサートの14枚組CDができたそうだ。
これは、1977年、アメリカやカナダで反捕鯨の活動をしている人たちが、アメリカの有名ミュージシャンに呼びかけ、クジラを救おうと企画し、晴海国際貿易センターで実行されたいわゆるチャリティ・コンサートの実録版だ。

収録されているのは、エリック・アンダースン、リッチー・ヘヴンス、ジョン・セバスチャン、フレッド・ニール、テリー・リード、ダニー・オキーフ、カントリー・ジョー・マクドナルド、豊田勇造、泉谷しげる&CHAR、中川五郎、南佳孝withブレッド&バター、久保田麻琴と夕焼け楽団with細野晴臣、上田正樹。
目玉だったジャクソン・ブラウンの曲こそ彼の所属するレコード会社の都合で収録されていないが、そうそうたるメンバーと言える。

私自身は、まだその時はクジラ問題に関わっていなかったので、当時は全く知らなかったことだが、以前、編集していた雑誌「オイコス」には三輪妙子氏の感想が掲載されている。
「76年に、グリーンピースジャパンミッションというので半年間、日本に来たんです。でもその頃は、日本でクジラなんて言っても全然話が通じませんでした。(中略)それに、その頃(海外で)運動をやっている人たちの中には、半日的だったり、反ソ的だったりする人たちがいました。(中略)それはそれでまずいと感じました。」
「謙虚になって、広島に行って原爆のことを知り、水俣に行って、水俣のことを学ぶということから始めました。まず、日本の事情を理解することが先決と思ったんです。」その時に出たのがこのコンサートの企画だった。しかし、「なぜクジラか理解してもらえる状態ではなかったし、事前の宣伝も十分ではないし、蓋を開けたらガラガラ」

企画途中で、グリーンピースは主催を降りたようだが、そのままコンサートは実施された。
その後、何人かに話を聞いたが、「大変だった」とか、「失敗だった」という感想が多かったので、今回、思いがけず、当時のコンサートの様子が再現されるというのに興味がそそられた。
これまで、海外の抗議行動が日本国内問題の解決に資するようなことはなかっただけでなく、嫌われるのがオチという状態だったが、まあ、時間も経ったことだし、歌を理屈抜きに楽しんでもいいか、くらいの軽いノリなのかもしれないが。


2019年1月13日 (日)

ナガスクジラの輸入について

1月11日、ワシントン条約の事務局がアイスランドにおけるナガスクジラの輸出について、3年連続で年次報告書が出されていないことから一時停止の勧告を出した。

https://cites.org/sites/default/files/notif/E-Notif-2019-001.pdf

ナガスクジラは、IUCNのレッドリストのランクで一段下がったものの、絶滅に関しては危急種で今後見直しの必要があれば随時見直すとされているものだ。アイスランド本国では食べる習慣がなく(最近は、一部レストランでダサ¥れているようだが)ほぼ日本向けの輸出のためにロフトソンという富豪が捕獲し、日本に輸出してきた。
昨年はおよそ1800トンものナガスクジラの肉が輸出され、日本の保税倉庫に入っているはずだ。

公海での捕鯨を放棄せざるをえなくなった日本の鯨肉産業にとって、アイスランドからの輸入は安くてありがたいもののはず。1昨年には、それまでかなり厳しかった鯨肉の汚染調査を緩めて、輸入しやすくしている。
売る方も食べる方も、危急種であるという懸念は共有していないようなのは残念だが、この行先の予想としては、多分、アイスランドが年次報告書を出しておしまいなのだろう。

もし輸入が止まったら、それはそれでいいのだが、一方で日本は沿岸での捕獲を増やすのだろうか? それもまた懸念材料ではある。

2019年1月 8日 (火)

幾つかコメントが記事化

共同通信を通じて、京都新聞、東奥日報、中日新聞がIKANのコメントを掲載してくれた。

「K2018122700000013000-1.jpg」をダウンロード

「122720181227cna0200560.pdf」をダウンロード

「k2018122700000012300.pdf」をダウンロード

2018年12月20日 (木)

IWC脱退?!

 北海道新聞がすっぱ抜き、既に幾つかのメディアが伝えていてご存知かもしれないが、日本はとうとうIWC脱退に舵を切ったようだ。
https://mainichi.jp/articles/20181220/k00/00m/010/077000c?fm=mnm

確かに、日新丸は老朽化して持ってもあと3年?と言われていたし、北西太平洋のイワシクジラはワシントン条約の「海からの持ち込み」違反で捕獲しても旨味がなくなってしまい、公海での捕鯨活動はメリットがなくなってはいた。
需要が縮小し、それほど経済的な重要性のない鯨肉確保に、「調査捕鯨」として、国の予算を注ぎ込み続けるのもやはり問題があるとすれば、撤退は当然の結果だと言える。また、これまで国際的な批判の多くが集中してきた公海での捕鯨活動の中止はそのものとしては歓迎すべきことではある。
しかし、撤退の’花道’が「IWCでは商業捕鯨できない。だから脱退」というのは交渉力の放棄であり、極めて身勝手なやり方ではないだろうか。

思えば、「IWC改革案」というコンセンサスが無理だと最初から分かっている提案を出したのは、国内勢力をまとめる方便であったか、と改めてあざとさに驚愕しているところだ。

このところ、業界紙を中心に、脱退の方向性を小出しにしつつ、様子見が行われてきた。それは、まだ調査捕鯨の利害にこだわる一部の業界等に対しての穏やかな引導だったのかもしれない。引き続き交渉が行われているらしいが、それも概ね決着がついてのメディア報道だろう。

それでは今後の問題はどうだろうか?今の所、沿岸調査で捕獲している頭数は80。そのままの頭数を捕獲してもいいのかどうかの検証が必要だが、さらに公海で捕獲してきたミンククジラ(南で333頭、北で43)そしてイワシクジラ134頭分の鯨肉を(需要が減少しているにしても)果たしてどのようにして供給するのか。減ったら減ったでいいというならいいが、今一番確実に捕獲できているオホーツクの捕獲頭数を増やすなど、希少なJーstockへの影響が懸念されるところだ。

アイスランドとノルウェーからの輸入を考えているのだろうか?
アイスランドの輸入肉は、IUCNがランクを一段下げたものの、危急種であるナガスクジラで、今季は2頭もシロナガスとのハイブリッドクジラを捕獲している(日本に肉は輸入されないものの、捕獲はされた)。

私たちの保全に向けた努力は必要だと思いつつ、国際的な監視の目が緩んでしまうことは避けたいと願っている。

2018年11月20日 (火)

教育者のお手本なのかな?

著者は、富山大学の准教授で、自然保護団体で特に環境法関連において活動している人たちと親しい。私は、種の保存法に関する勉強会で、Kさんを通じて紹介してもらった。それ以来、ニュースレターなどクジラ関連の資料を送ってきていた。今回、「自然環境法を学ぶ」と題した、若い人たちへの環境関連法の紹介本として送られてきた本を手に取ってなかみを見るまで、捕鯨問題を論じた項があるとは思わなかったが。あんまり、個人的な批判はしたくない方なので、10日間ほど放っておいたが、若い人たちが手に取るものだから、間違いの指摘くらいはしてもよかろうと思うに至った。

「自然環境法と産業法(企業法)は裏返しの関係」との著者の認識から、環境関連の法律(主に環境省の管轄)だけではなく、農林漁業関連の法律、動物の愛護と管理法の概説も網羅してある。大体において、これらはそれぞれの法律の条文や書いてある解説を抜き取って書き出しているので、「こういうものがあるよ」という紹介としては良い方法かもしれない。また、環境関連の訴訟についても例示されているが、その方向性についてはあまりよくわからなかった。産業法と自然環境法との相互的な影響とかギャップなどの乗り越えるべき課題などについての言及は私には見つけられなかったし、それぞれの法律の持つ限界などは明確にはわからない。若い人がどのような法律があるかをダイジェスト的に見るのはいいのかもしれないが。

13章に「水系管理に関する法律」があり、その中の「海洋生態系」の中に思いがけず「捕鯨」に関する論考があった。
漁業法は別の項にあるので、「産業法」の位置付けではなく、あくまでも海洋生態系の中での議論という位置付けのようだが、内容的にはICJ(国際司法裁判所)判決に至る経緯(残念ながら、ニュースレターを読んでいないようで間違いだらけー後述)、鯨肉輸入(カナダが輸出先に入っている)そして、ICRW(国際捕鯨取締条約)の旧来通りの大本営解釈など、定められた法体系の中に客観的に書き込まれたものが少ないためか、環境省関連の法律の紹介と比べると随分といい加減で、足りない分著者の主観が多々見られるというところで、他とはかなり異なる。

まず、事実誤認。
彼女の解釈では、ICJ判決の背景として「1994年のIWC総会において南極海サンクチュアリ決議が採択されたことにより、南極海における商業捕鯨は全面的に禁止された」
「その決議に唯一反対した日本は、調査捕鯨を継続している」としている。
しかし、サンクチュアリ決議は何の拘束力もなく、その採択に異議を持つ日本はその影響を受けていないし、ご存知のように、商業捕鯨の一時停止は南極も含めて1982年に合意されたもので、ここの記述は誤りである。

また、オーストラリアが2010年にICJの提訴に踏み切ったきっかけを「2007年、IWCでは南極海の特定海域で鯨類を死に至らしめるような調査捕鯨を一旦中止するよう日本に求める決議が採択されたが、日本はこの後も調査捕鯨を継続した」だと記している。
しかし、調査捕鯨の一旦停止の決議は、日本が調査捕鯨を開始してからほぼ毎年のように採択されてきたわけで、2007年の決議が他の決議と際立って異なるということはない。(サンクチュアリ決議と同じく、過半数採決の決議に拘束力はない)。
それよりも、むしろ2010年に期待された合意形成(2008年のPEW主催のシンポジウムを契機とした日本とニュージーランドの歩み寄り〜結局失敗したが。日本も調査捕鯨のフェーズアウトに反発した議員からの反対の声も大きかった)の行方を危惧したオーストラリアが先手を打つ格好で提訴したと言う考え方が一般的だ。

次の話題は突然、彼女曰くの2015年以降の(輸入量が増えたのは2010年からで2014年が過去最大)鯨肉輸入増加の話題。
「輸入ですむ問題ではないとし、その理由として「海に囲まれた漁業国における食料・食材としての鯨肉の確保の是非、生業としての水産漁業の継続と水産技術の継承、及び水産詩編の持続的な利用とその実現のために果たすべき国際的な貢献等を勘案して判断すべき問題」だとする。
その下段にあるグラフでは、国別鯨肉輸入量としてアイスランド、ノルウェーに並び、少量ではあるがカナダから赤肉及び白手物が入ってきていることになっている。
しかし、カナダはIWCに加盟してはいないものの、実施しているのは先住民捕鯨としてのホッキョククジラの(多分隔年)2頭の捕獲のみで、IWCに毎回オブザーバー参加して報告をしている。先住民捕鯨に関しては自家消費が前提で、しかも、カナダはワシントン条約でクジラ類を一つも留保していない。輸出/入が事実なら、いくつも違反を重ねていることになる。(実は、この件で一度騒ぎがあり、カナダからの輸出はないというところで落ち着いたように覚えている)2014年だったと思うが、知り合いがカナダからの海棲哺乳類の油脂に関して、水産庁に問い合わせを行った。他の鯨肉に比べて量の少なさと値段の高さで際立っていたからである。
その結果、「それはアザラシの油脂です」と答えがあった。だから、グラフで白手物とされているのは、多分、アザラシの油脂と考えるのが妥当だろう。しかし、赤身肉は?
著者は、もし増刷する場合は「検討」するそうであるが、カナダとしても迷惑ではないのだろうか。

著者による既存各種捕鯨について「動物の権利」「動物福祉」「予防原則」に反するかの検討がある。まず、「動物福祉の理由として商業捕鯨及び調査捕鯨そのものを反対することにはならないという考えであり、この点において、石井准教授、真田客員講師らと異なる見解を持つ」としている。彼らの本論ではなく、80ページに掲載された表に対しての意見のようだが、読み間違いの可能性が高い。
(彼と真田さんの著書「クジラコンプレックス」の当該部分を見直してみたが、動物福祉の考え方に基づいて反対しているNGOがいる、ということをわかりやすいように図解しただけで、彼自身の動物動物福祉の考え方を示しているのではないし、それが必然的に商業捕鯨、調査捕鯨に反対だ、というような主張をしてはいない)

さらにため息が出るようなトンデモな展開も。予防原則の適用に着目したいとして「保全には不確実性すなわちリスク管理の問題を伴う」よって、予防原則に基づく管理が必要であり、そのためにもさらなる科学的知見の収集が求められる」
「とすれば、希少とされている鯨種に関しては科学的研究結果が得られるまでは研究目的に限っての捕鯨(調査捕鯨)に徹する必要があるとも言える」とし、さらには
「他方、鯨類は大食であるため増えすぎている鯨種を捕獲しないことも保全に反する行為であると言えるが、どの鯨種がどれだけ増えすぎているのか定量的な検証は十分ではない。これに関しても、既知の知見に基づく対応とともに、より一層の科学的調査を尽くすしかないと言える」
「そのためにもむしろ科学的な調査捕鯨は「科学的な信頼に基づく国際的に権威ある科学的組織(例としてIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学〜制作プラットフォーム)のイニシアティブで積極的に推進」と進言している。
なんでわざわざ、大本営発表しか資料のない捕鯨を持ち出したのか(しかも、産業ではなく海洋生態系に)
、多分ここの部分が斬新なアイデアだと思ったのかもしれないし、だからこそこのテーマを選んだかもしれない。
IPBESに持っていく勇気のある官僚がいるとは思えないが、持っていったらそれこそ世界の恥さらしとなるだろう。

ついでに間違いだらけのイルカビジネス解説も。
イルカ捕獲について、漁業法の管轄であること、知事認可漁業であることを記した後、追込み猟に焦点を当てている。「群れごと捕獲するため、鯨肉の供給量が増大し、結果として余るという現象になると予想される。そこで、太地町の追込み漁は、群れごと「生けどり」して水族館の展示施設用に供することを目的とするようになった」と解説している。
また、イルカ漁の方法を解説し、パニックを起こして傷つけあうことや、群れの大半がメスとその子供であり、(中略)さらに水族館に送られた生体イルカたちは「芸」をすることを強要されており、それによるすくなからずのリスクと犠牲も強いられるという批判がある」としながら、「追込み漁は伝統であるという言説もある」とし、その残酷さを回避すべく漁法も改良されたきたとの和歌山県太地町の公式見解もある」(「改良された」は間違いと思われる。なぜなら、捕殺に関する報告書は主に漁業者の安全性や海洋の汚染を防ぐための方法についてのように私には思われたし、その最後に、致死時間が長引く恐れがあることが書かれているからである)

しかも、自らの判断は脇に置いておいて、「やみくもに生業に対して新たな倫理観や規範を押し付けることにも、いくばくかの躊躇を感じざるを得ない」と記し、WAZA/JAZAの騒動から、「一部の水族館がJAZAから脱退して独自の路線を歩んだ、すなわち追込み漁による生体イルカを継続して飼育する道を選んだという選択も尊重したい」「諸外国が水族館用に生体イルカを太地町から購入していることも、水族館が持つアミューズメント性の発揮のための需要と必要性の証左」だとしている。

相矛盾する紹介は、読む側に判断をさせようという意図かもしれないが、このような中途半端な紹介と間違いだらけの私見でまともな判断ができるだろうか。
さらに、これらの矛盾を覆い隠すように、「法に照らせば違法ではないが、倫理的にこうあるべしという新たな規範に由来する問題がグローバルな規模で生じているのは、人間社会が成熟してきた証左」と結んでいて、本人はすべて承知なのかもしれないが、なにやらもやもやが残る。

こういう本がどの程度読まれるかわからないが、ダイジェスト版としては使い勝手がいいかもしれないし、少なくとも彼女らが授業に使用するだろうことは察しがつく。教えられる方が矛盾に気がつき、自ら調べる道を選ぶのだからいいのではないか、という声が聞こえそうだが、問題はメディア報道を含めた国内情報がかなり偏り、限られていることだ。(以前、海洋大学で行われた海洋大学と農工大学合同のアクティブラーニング風研究会で、’生徒たち’は国内メディア報道主体の資料による研究発表をし、反対意見の検証や海外論文の読み込みなど一つも見当たらなかったので驚いた経験がある。いや、一人女性でかなり鋭い反対意見を述べた人がいたのを思い出した)


2018年11月14日 (水)

アイスランドから希少なナガスクジラが

知人から、今日、石巻港に1400トンに上るナガスクジラの肉が、アイスランドから到着したという知らせをもらった。
ご存知のように、アイスランド周辺などのナガスクジラはIUCNのレッドリストでは絶滅危惧1類であり、その生息数も十分把握されていない。(IWCでは、東グリーンランドからフェロー諸島まで、及び西グリーンランドに関する推定数は出ている)。
(訂正:11月14日発表の最新のリストでは危急種になったようだが)

アイスランドは、モラトリアムに異議申し立てをして、その後、IWCを脱退したが、2003年にモラトリアムの留保つきで再加盟し、ミンククジラとナガスクジラを商業的に捕鯨している。ミンククジラは自国流通だが、ナガスクジラは最初から輸出目的での捕獲である。
絶滅危惧種に当たるナガスクジラの国際取引は、本来であればワシントン条約で禁止されているが、日本もアイスランドもナガスクジラについては留保を行っているため、事実上取引が可能となっている。

ナガスクジラの捕獲は、長らく捕鯨業で利益を得てきたロフトソンという金持ちが自前の捕鯨船を使って行っている。最初のうちは、南回りの航路で、時間がかかる上にあちこちで入港を拒否されるということが起きて、最近は温暖化で可能になった北極航路を利用して日本に肉を輸出している。一時期は、鯨肉の安全性を検査するための体制が’厳しすぎる’、とアイスランド側で捕獲を取りやめたものの、日本が検査体制を緩めて再び取引が開始されるようになった。
ナガスクジラ取引を仲介したのは、元水産庁の官僚と言われているが、日本では調査捕鯨の肉よりも安価に加工及び販売ができるため、業界では一定の人気がある。絶滅危惧で取引は問題があるという認識が日本国内では薄く、ペットのおやつとして加工、販売されたことさえあった。

今回さらに問題が生じている。ナガスクジラとシロナガスクジラのハイブリッドのクジラが2頭、捕獲されたことである。
https://www.bbc.com/news/science-environment-44809115
日本は、シロナガスクジラ及びハイブリッドのクジラの留保手段は取っていない。したがって、この肉は日本に輸出できないはずのものである。
今回輸出に関して、ハイブリッドのクジラ肉が入っている可能性の指摘も海外からあった。
そこで、水産庁にこの件についての問い合わせをしたところ、
1)アイスランド政府とハイブリッドのクジラの輸出入は行わないと合意している。
2)日本に導入する際には、密輸肉が混入しないように、ランダムサンプリングによるDNA検査が行われている。
という回答をもらった。
また、どの程度のランダムサンプリングなのか?という再質問の際には、アイスランドでは100%DNA検査をしているはず、ダブルチェックをしているのだから問題はない、という回答をもらった。
これまでの例から見ると、鯨肉が到着し、冷凍の保税倉庫に入っていても、すぐに通関はしていない。石巻港できちんとした検査が行われるのを祈るばかりである。

一方で、「留保」がいくら合法的な措置であるからといって、それでワシントン条約の商業的な取引を規制するという本来の趣旨が全うされるかどうかは別の問題である。本来は取引できないものであるという認識の周知があるべきだと思う。しかし、国内で流通販売する業者にその趣旨を認識するように期待するのもあまり効果が期待できない気がする(認識してほしいが)。

日本が持続的な利用を掲げるのであれば、せめて絶滅に瀕するナガスクジラのような種についての留保を取り下げる、あるいは国内でのそうした啓発を積極的に行うなど、幾らかの本気度を見せるべきではないのか、とこうした事件があるたびに思う。

より以前の記事一覧