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2023年8月19日 (土)

ロリータ=トキタエ、解放目前に逝去

マイアミ・ヘラルド紙が19日、前日18日の午後にロリータの愛称で呼ばれるシャチが死亡したと伝えた。

https://www.miamiherald.com/news/local/community/miami-dade/article278388494.html

捕獲されたのは推定4歳で、死亡した時の年齢は57歳とされる。アメリカの絶滅危惧種法にリストされ、長年飼育されてきたマイアミ水族館の環境に問題があると2022年に動物福祉法違反を指摘され、北西太平洋のもっと冷たい海のサンクチュアリに解放される目前の死だった。昨年秋から体調を崩し、回復途上にあると言われていたが、この2日間、容体が悪化、必死の手当も実らなかった。

同じく48年前に群れから引き離されていくつかの水族館を転々として87年からサンディエゴのシーワールドに閉じ込められ、解放の目処のなっていないノーザンレジデントに所属するコーキーの一刻も早い解放が望まれる。まだ間に合ううちに。

https://www.thesun.co.uk/news/18883667/seaworld-saddest-orca-corky-inbreeding/

2023年8月 9日 (水)

ロリータ(トキタエ)と呼ばれたシャチ

「人間が動物の生命を真に尊重するためには、どれほどの道のりが必要なのか」、8月5日付のロスアンジェルスタイムズの意見欄で、非営利団体「オーシャン・コンサーベーション・ソサエティ」の会長で、鯨類行動学の専門家、マッデレーナ・べアッツイはこう嘆いている。

 昨年、ロリータ(彼女の出身海域の先住民ルミ族の言葉ではトキタエ)と呼ばれてきたマイアミ・シーアクアリアムのシャチの所有権を、新たな持ち主が手放すことを決意し、マイアミ・デイド郡とロリータを支援する組織と共同でサンクチュアリに移送する法的拘束力のある共同署名を調印したので、連邦政府の許可が降り次第、ロリータは元々の住処であった北西太平洋の海域に設置されるサンクチュアリに移される運びとなった。

ロリータ=トキタエは、1970年、いまから半世紀前にワシントン州にあるペンコーブで捕獲された、1966年生まれと推測され現在飼育下で生存する唯一のサザンレジデントシャチだ。サザンレジデントのシャチは、2005年に連邦の絶滅危惧種法で絶滅危惧とされ、現在は73頭しか生存していない。

しかし、飼育下にある彼女は、当時同法の適用外で、生まれ故郷とは異なる暖かすぎる気候のマイアミの、日差しを遮る屋根もない狭い水槽で、1日3度のショーを強いられてきた。また、1980年にはパートナーとして導入されたオスのシャチのヒューゴを失いその後はたった一人で生きてきたのだ。群れで暮らすシャチにとって、この状況は望ましいものではなく、背ビレは折れ曲がり、同じところをぐるぐると回る、或いは壁に向かってじっと動かない様子を鯨類の行動ををよく知るベアッツイは「(その)絶望感に圧倒された」と記述している。

彼女の運命が変わる兆しを見せたのは、2015年、非営利団体の粘り強い抗議や訴訟の結果として、NOAAが飼育下にあるロリータ(トキタエ)を彼女が所属するサザンレジデント同様に絶滅危惧種法にリストすることになったからだ。即時解放は、50年間もの長期的な飼育下にあるシャチにとってリスクが大きいとNOAAは判断した。しかし、2022年になって、ロリータ=トキタエは改正した動物福祉法の対象となり、一般への展示も禁止されたことやその飼育状況の改善も求められていることから、新たな持ち主にとってもメリットは無くなったのだろう。

彼女の移送までの期間は早くて今後2年のうちが約束されている。サンクチュアリという環境が彼女にとってどう働くかはわからない。しかし、現在の貧弱な飼育環境から、彼女が健康であるうちに一刻も早く解放されることがのぞまれる。

2023年8月 8日 (火)

IWC,コガシラネズミイルカの絶滅警告

この8月6日、IWCは初の絶滅警告をコガシラネズミイルカに出した。

https://iwc.int/en/

コガシラネズミイルカは、カリフォルニア湾北部の、メキシコにのみ生息する2mにも満たない小型のイルカである。IWCによると、このイルカは1997年に570頭いたと思われているが、2018年には10頭しか確認できなくなった。原因は、同じ海域に生息しているこれも絶滅の恐れのあるトトアバという魚を漁獲するための刺し網による混獲である。トトアバは、コガシラネズミイルカとほぼ同じ大きさで、生息海域も同じくしているが、この魚の浮き袋が中国では高級食材、あるいは薬として珍重され、異常な高値がついている。

メキシコ政府は、2005年から、刺し網による代替漁法の奨励や生息海域の一部保護など、保護策を講じてきた。にもかかわらず、コガシラネズミイルカの混獲はおさまらず、生息数が増えることがない状態である。

IWCにおいても、この問題は毎回取り上げられ、早急な問題解決をメキシコ政府に求める決議を繰り返してきたが、刺し網によるトトアバ漁は継続し、密漁も横行(その金額の大きさから麻薬取引と比べられることも)、代替漁法は一向に進んでいない。

IWCは、トトアバの違法な国際取引が問題解決の壁となっていることを指摘し、直ちに、刺し網を100%他の漁法に変えない限り、絶滅は目前だと警告している。

 

 

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