備忘録ーIKANの参加したIWC 4
2010
<IWC第62回会議 アガジール・モロッコ>
○ 会議の内容
・ 「捕鯨をIWCが管理する」という強い意志を持って、満を辞して選ばれたチリのマキエラIWC新議長が病気のため会議不参加。のちにチリ代表も辞任するという事態に。
・ この舞台裏としては、日本の調査捕鯨に対して枠の削減→調査捕鯨の終焉というシナリオに、双方が納得しなかったことが考えられる。日本にとってその時点では調査捕鯨の終焉などありえなかったし、アイスランドとノルウェーは、提案にある自国流通に反発。また、韓国は、捕鯨に参画するつもりがあったため、実施国だけの議論に不満。一方で、国際的には、それまでクジラ問題に限定されていたNGOを超え、国際的な人権団体などが商業捕鯨再開反対を強く訴え、署名を開始した。また、海洋関係の科学者200人が商業捕鯨に反対する署名に名を連ねた。
・会議はコミッショナーによる非公開会議に移り、本会議の再開は2日後。
・ 民主党政権下で初めての会議であり、「政治主導」の旗のもと、参加を表明していた赤松農水大臣が辞任したことを受け、舟山康江政務官が出席。「科学を無視して市民の声を受け入れた」とIWCを強く非難。会場の多くが唖然。
・グリーンランド先住民生存捕鯨で物議を醸してきたザトウクジラの捕獲、EUおよび南米諸国の反対を宥め、かなり無理をしてのコンセンサス。グリーンランドで捕獲されるザトウクジラの個体群は、カリブ諸国から毎年回遊。繁殖海域のカリブではウォッチングで人気がある。
○ IKANの活動
・ 日本沿岸の希少個体群J-stock混獲の実際を黥研レポートをもとに作成し配布。
・会議前に、民主党議員に対してクジラ問題について説明に回った。
・2010年は、日本で生物多様性条約第10回会議が開催された年でもある。2009年に、CBD市民ネットの世話人の一人として、沿岸・海洋の作業部会を立ち上げ、アガジール前にもナイロビのSABSTTA(科学技術助言機関会合)に参加したり、CBD事務局の海洋担当のリー博士をお招きして集会を持つなどし、その後COP10の参加と、直接的にクジラではないが、多忙な1年だった。
・PEWの呼びかけで、会議直前にサメのワークショップを開催する企画をだし、先方は予算も出してくれたのに、作業部会長はPEWも反捕鯨団体と思ったらしい。イベントを進めるIKANに対し、「クジラ問題を扱ってるところは、シーシェパードと同類のテロリストとして疑われる。作業部会に漁業関係者が来なくなる」と、IKAN排除に乗り出したため、せっかくの良い機会を失ってしまった。
2011
<IWC63回会議 ジャージー・イギリス>
○ 会議の内容
・日本の要望で、初めに会場の安全な航行ー調査船妨害に対する非難。コンセンサスで。
・会議の運営 参加費の支払いは、現金や小切手、クレジットカードではなく銀行振り込みによるものというイギリスからの提案。これまでの票買い疑惑に対して、支払いの透明性を高める狙い。当日カバンに詰めた現金を持ち込んでいた国もあったらしい。
・定足数の操作!日本は小型沿岸の提案を今回断念したので、サンクチュアリ提案も断念すべきと主張。どうしても投票に固執するなら、捕鯨支持国は会議場の外に退出すると。2022年のスロベニア会議ではこれを実行に移し、投票を阻止したわけで、ここで実験したのだった!この時に回避作を講じるべきだったよね?IWC !
○ IKANの活動
・「もうきっぱりやめよう!調査捕鯨」日英でのパフレットを作成し、配布。
・調査捕鯨問題に関し、民主党議員への働きかけを試みた。筒井康隆農水大臣(当時)が、その後「有識者の検討会を設けて検討する」という記者発表。1986年に開始して以来初めてのことだったが、実際は水産庁主導で非公開で開催され、参加委員の中に海洋や鯨生態に関する専門家はいない。そのうえ、第1回目で検討会の名称まで「今後の調査捕鯨のあり方について」から「鯨類捕獲調査を安定的に実施数ため」に変更。理由について宮原水産庁次長(当時)は変更理由について「鯨類捕獲調査をやめることを議論するのではないか」あるいは「否定的に議論するのではないか」という意見があったため、と返事。
中間取りまとめは以下(最終取りまとめは見当たらず):
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/chukantorimatome.pdf
・2011年は忘れもしない、大震災の年だった。いまだにその傷跡が修復されたわけではないし、この6月には、福島原発敷地内の放射能汚染水が満杯になるから海に流すという話もあり、相変わらずの日本の態度に腹が立つが、この震災の年に組まれた補正予算でなんと震災のための復興予算が、調査捕鯨のため(というより鯨研の赤字補填)に使われたことが明らかに。
2012
<IWC64回会議 パナマ>
○ 会議の内容
・空席だった議長のワンポイントリリーフとしてブルーノ・マイニニ(スイス)氏。非常に公正で冷静沈着な、議長役として最高。
・南極のミンククジラの推定個体数、51万頭で合意。
・南大西洋サンクチュアリ またしても否決
・グリーンランドが、前回会議でのかなり無理筋提案を受け入れたのも束の間、再びザトウクジラの増枠を要求。さすがに否決。2002年アラスカ以来の出来事。
・またしても海の航行安全についての議論。
・調査捕鯨 JARPAIIの評価が2014年に発表される予定。
・何と、韓国が調査捕鯨の自国内海域での開始を宣言(ただし、帰国後すぐに取り消された)
・モナコ クジラの多くは高度回遊の種で、国連海洋法条約でもその管理に特別な必要性を認められているが、IWCが管理するクジラ類は限定的なので、クジラに関する専門家が集まるIWCが国連との共同管理を行おうという提案。しかし、捕鯨関係者は現在の管理する種に限定し、また他の小型鯨類は扱いたくないので反対。
・小型沿岸捕鯨 コンセンサスができないため持ち帰り 「先住民生存捕鯨のみ認めるのはダブルスタンダード。農業や林業は商業性を認められているじゃないか」
・パナマ以降、IWC本会議は2年に一度開催に決定。
○ IKANの活動
・日本人がどの程度鯨肉を消費しているのか、ということを明示するパンフレット「23.7g」を配布。実は、日本人が年間一人食べるのは23.7gで、チョコバーくらいの大きさということを示すのは、日本がクジラをものすごく食べているかのように思っていた海外の人たちへの贈り物。
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