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2021年10月29日 (金)

太地シャチ捕獲事件(5)

「海生哺乳類の保護を求める要望書」

シャチ捕獲に対する私たちの行動でもう1つ挙げておきたいのは、環境庁(当時)への働きかけである。

ポール・スポング博士日本滞在中に、IKANは博士を伴って賛同する17団体の署名を環境庁に届け、K自然計画課長と面談を果たした。ついでになるが、彼は環境庁内の実力派で、のちに初めての環境庁生え抜きの局長となる人だ。(それまでは農水出身者が局長職を担っていた)

周知の事実とは思うが、繁殖率の低い大型哺乳類であるクジラ類は、海洋の環境悪化を考えても保全・管理の必要性がはっきりしているというのに、いまだに「資源」としての観点でしか管理されておらず水産庁の管理下にある。したがって、水産庁管理のもとでの捕獲禁止措置は資源対象として適切かどうかであり、対象種の保全の一部は果たされているのかもしれないが、十分な調査はなされず、もちろん回復計画などはのぞむべくもない。

私たちは言葉を尽くしてシャチ捕獲の現状と日本におけるシャチの状態を話したもちろん、スポング博士も研究者としての立場から、シャチの生態や人工的な施設に入れることの問題を話してくれた。しかし、私たちの話に耳を傾けたのち、彼の言ったことは「水産庁の管理下の方が、予算も人材も乏しい環境庁よりも適切に管理できる」というがっかりするようなもので、このスタンスは、「庁」から「省」に昇格した現在も変わっていない。

この時から、海生哺乳類の保護へ向けてのIKANの活動に、対環境庁(のち環境省)への働きかけが加わることになる。

要望書が出されてから4年後2001年3月の農水委員会。ここで共産党の岩佐恵美議員のジュゴン保護に関する質問に対して当時の農水大臣であった谷津義男氏が種の保存法への記載を認めた。2002年の生物多様性の新国家戦略(第二次戦略)4の具体的施策に「海棲哺乳類の保護と管理」の一項が入り、また同年の鳥獣保護法改正では、明治期に作られたカタカナ書きの法文を平仮名に変更するにあたり、鳥獣の定義として野生鳥類及び哺乳類全てが該当することになった。ただし、法文の八十条において、他法令で適切に管理が行われている海生哺乳類は対象としない旨の但し書きがあり、ジュゴンは環境省管理となったが、クジラ類は水産庁に取り残された。他の法令は漁業法や水産資源保護法で、もともと目的も異なるものだし、百歩譲ってその法律でよしとしても、その元での管理が適切に行われているかと言えば、甚だ心許ない。

(ちなみに「水産資源保護法」は、1952年に沿岸の海洋資源の乱獲を危惧したアメリカによって指導されてできたものだ。だから、水産庁が徹底して嫌っている’保護’という言葉が唯一使われているところは面白いが)

私自身、1999年に改変された鳥獣保護法に伴い、組織された「野生生物保護法を制定する全国ネットワーク」の事務局長として、野生生物保護の法律制定を目指して活動を開始し、その中に、海生哺乳類の保護管理を入れ込んだ。保護法は、超党派の議員立法として薄められはしたが、「生物多様性基本法」として民主党政権下で2008年に成立し、成立を公表する記者会見で、賛同する議員を代表して谷津義男議員はこの法律が「微生物からクジラ」までを含む包括的なものであると宣言した。
環境省は、翌年に「海洋生物多様性戦略」を策定し、2010年の名古屋で開催されたCOP10において、海生生物のレッドリストを作成すると宣言した。

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