太地シャチ捕獲事件(4)
2月7日、太地沖を通過し、追い込まれたシャチの10頭の群れのうち、5頭は3つの水族館が購入した。総額1億2000万円だったとされているが、シャチの相場から言えば安い買い物だったかもしれない。シャチは人気者なのだ。抗議に参加した人も、また水族館でシャチを見ることに期待した人も、「学術目的」で捕獲されたこのシャチたちが集客目的でショーデビューするだろうことを疑っていなかったはずだ。
それに対して、日本動物園水族館協会は、2月28日付で「採捕(生け捕り)されたシャチについてという水族館の見解を発表した。それによると、シャチ捕獲は「水族館の社会的役割の1つの柱である学術研究のため採捕され、飼育が続けられるもの」だとし、「飼育・展示することにより、利用者一般に海洋生物の習性・生態を辻て自然の理解を深め」「海洋生物の種の保存を含め、生物学の進展に役立つための学術研究を行うもの」とした。
動水のこのふざけた見解を感情的な反発ではなく、科学的な問題として指摘する必要があった。そこで、早速、スポング博士に連絡を取り、来日を打診した。彼自身、シャチの飼育状態を含めた現場の状況の確認を望んでいたため、3月17日に急遽来日が決定した。
それからは本当に目の回るような忙しさだった。幸いなことに、JAVAのTさんが全面的な協力を申し出てくれ、和歌山県の支部のメンバーと連絡を取り合って、一行のスムーズな移動とメディアとのコンタクトもうまく進めてくれた。
彼を案内してまず太地に向かい、関係者との面会やシャチの様子を観察することにした。もちろん、水族館側は拒否し、導入されたメスのシャチを観察することも拒否されたため、仕方なく、双眼鏡で観察するにとどめた。次に訪れたアドベンチャーワールドでは担当者不在を理由に話し合いを拒否。また、和歌山県庁で捕獲されたシャチに関する情報公開を求め、記者会見を行った。このような水族館の対応はメディアの反発を生み、メディアによってスポング博士の来日と彼の見解が広く紹介される結果となった。
シアトルで行われた大規模な抗議集会に呼応して、IKANは渋谷駅頭と銀座のど真ん中でシャチ捕獲反対と行動呼びかけのアピールを行なった。アニマルライツセンターの貸してくれた4トントラックにシャチのイラストを描き、捕獲時の赤ちゃんシャチの鳴き声を盛大に流した。また、シャチ捕獲抗議で送られてきた国内外のファックスをコピーして展示し、シャチ保護への関心の高さも訴えた。シャチ解放に向け、私たちはできることはなんでもするつもりだった。
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