4。イルカ違反捕獲の新聞報道は
イルカ違反捕獲事件は、新聞だけでなくテレビでの放映され、それまでイルカは水族館で見られる可愛い動物くらいに考えていた人たちにもが肉のために捕獲されていたことを知らしめた。「The Cove」が日本のイルカ猟を初めて伝えたというふうに言われているが、それよりも10年以上も前に、IKANが問題に直面し、抗議行動を実践していたのだ。
近頃のメディアの伝え方は、まず、「鯨類は水産資源であるのが日本の常識」というところから始まっているので、反対する声を拾うのにそう熱心ではない。しかし、この時は、イルカ捕獲の是非よりも、違反行為があったということで報道もわりとしやすかったことだろうし、またそのことを最初にメディアに伝えたのがNGOだったこともあって、獲る側だけでなく、保護側の意見も掲載する結果となって、今から見ればかなり公平だったと感じる。たとえば、10月23日の朝日新聞は、「イルカとりすぎ港外に解放ー静岡・伊東 75頭制限に200頭」という見出しで、「静岡県伊東市の富戸漁港にイルカの群れが、十八日から囲い込まれたままになっていたため、動物保護団体が二十二日にイルカを外界に戻すよう県や地元漁協に申し入れた」という書き出しになっている。他紙でも違反捕獲で記事になった。もっとも当時は、これでも業の側に偏りすぎだと私たちは感じていたのだ。
TBSテレビが(多分22日だと思うが)違反捕獲についての報道を夕刻と10時過ぎの2回にわたって報道した。その時に漁協の側で発言したのが現在はイルカウォッチングを行っている石井泉さんだ。彼は映像で「漁師が取った獲物を全て水揚げするのは当然のこと」というような発言をしている。後で知ったのだが、この猟は、93年に捕獲枠が設定されてから始めての猟で、この時、捕獲枠について知っていたのはほんの一握りの漁協幹部のみで、捕獲に携わった漁師たちはそのことをまったく知らされていなかったそうだ。
このことをきっかけに、石井さんは間違いは正して真っ当な仕事であることを認識してもらおうと漁協内部で主張し、孤立することになる。
<違反イルカ捕獲の新聞報道一覧>
10月22日 共同通信「割り当て以外のイルカ捕獲/反捕鯨団体が静岡で確認」
10月23日 朝日新聞「イルカ取りすぎ 港外に解放/静岡・伊藤75頭制限に200頭
産経新聞「イルカの追い込み漁、待った/規定外の種類捕獲
共同通信「追い込んだイルカを解放/漁協が調査を開始」
10月24日 静岡新聞「枠外の捕獲認める/イルカ漁で伊東市漁協/県、放流を含め指導」
10月25日 水経新聞「捕獲枠のない鯨類の捕獲禁止徹底指導/水産庁が静岡県に」
朝日新聞「許可外のクジラ捕獲/2水族館に6頭を売却」
10月31日 共同通信「ブリジット・バルドーさんが抗議の手紙」
共同通信『枠外捕獲のイルカを解放/6頭群れをつくり、沖に去る」
11月1日 静岡新聞「6頭すべて放流/枠外捕獲のオキゴンドウ 」
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