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2021年1月 6日 (水)

混獲されたクジラの取り扱いについて

昨年クリスマスに、「太地の定置網にミンクが」という情報が入ってきた。それからすでに12日、まだ若いと思われるミンククジラはまだ定置網の中にいて、たくさんの人たちに気を揉ませている。太地の湾では、ブリ漁のための定置網が設置されていて、たまたま年末のかき入れどきにクジラに入られ、漁師たちは困っていると水産庁は言う。逃がせればいいが、網を壊せば数千万円もの損害が見込まれ、なすすべないのだろうと担当者は言う。

日本では、魚の種類を選ばないで定置網という網を貼り、複数種の魚を捕獲する漁法があり、ほぼ沿岸一帯に張り巡らされているともいわれる。

クジラは定置網で捕獲する対象ではもちろんないが、時に魚を追いかけてだろうか、定置網に入り込んで逃げられなくなるクジラたちがいる。

政府は2004年、鯨類の座礁に関するマニュアルを作成し、それが何回か改訂されているが、生きているクジラは逃す方針に変わりはない。しかし、定置網に入ったクジラについては原則逃す方針であるものの、2001年からは混獲クジラの販売が可能となった。つまり、定置網の損傷や人身の危険を考慮し、行政の補償問題等の回避策として漁業者に生殺与奪の権限を与えることになってしまったのだ。

本来の漁業に専心したい漁業者にとってクジラが入り込むことは迷惑この上ない話だが、一方で、補殺個体の遺伝子を登録しさえすれば販売も可能であるため、一部ではミンク肉の供給源として活用されるようになった。数年前、ある集まりで会った西日本の行政経験者は、商業捕鯨するよりも、混獲クジラによる鯨肉供給の方がいいと思うと言っていた。

今回、改めて、混獲されたクジラたちが(条件は全く同じではないだろうが) 多かれ少なかれ網に囚われて逃げるに逃げられず、もがき苦しむのだという事実を改めて突きつけられ、混獲問題を何とかしなければならないのではないか、と考えるようになった。

おりしも2年前に商業捕鯨が開始され、100頭以上も混獲されているミンククジラは捕鯨業者にとっては競合相手ともなる。したがって、今、混獲回避の手立てを考えるにはいい時期ではないかと思われ、太地の件も含め、水産庁にいくつかの提案を行っている。1件数千万円もの補償金がそうそう可能とも思えないが、管理責任が当然あると思える水産庁がこの問題をどう捉え、どう出るか見ていきたいと思っている。コククジラに関しては、ガイドラインを作ってせいこうしているというれいもあるし。

ちなみに私からの提案は以下である。

一つは、定置網に入ってしまったことを一種の災害と認定し、補償を行うこと。ただし、金額的に半端ではないので、一定の政府補償を前提に、民間が協力してクラウドファンディングなどの仕組みで網の破損が漁業者だけの負担とならないようにできないか。

もう一つは、クジラが定置網に入ってこない仕組みを考えることで、これは素人の考えではあるが、クジラが入りにくい形を考える、あるいは、船舶での衝突回避を参考に、音響で追い払うと言うアイデアである。

太地の漁業者は解放する方向を模索しているようだと言う情報もあるが、今後は漁業者だけの責任ではなく、マニュアルを作った行政もぜひ、管理責任を強く感じていってほしい。

 

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