海の生物の混獲について
知り合いの記者の方から、EUの環境・漁業担当相によるイルカ類を含む海の生物の混獲を回避するため、声明が出たことを教えていただいた。
意図的な捕獲ではない、漁網などによる混獲によって死亡するたくさんの生物についての懸念は今に始まったことではなくて、
IWCにおいても、繰り返し混獲問題は保全委員会の活動をはじめ議題に上がっており、精力的なワークショップも開催されてきた。
確か2004年にイタリアのソレントで開催された IWCの際、ヨーロッパを中心としたグリーンピースの人たちが、ネズミイルカの死骸を会場近くに持ち込み、物議を醸したことが記憶にある。EUをあげて対処しようという試みが始まったのは、今更という向きもあるかもしれないが、ないよりも10倍もいい。
翻って日本はどうか。日本の沿岸はいわゆる定置網で埋め尽くされているといっても過言ではない。特定の魚種を狙うのではなく、網に入る様々な魚を漁獲する網には、魚だけではなくイルカやクジラも多く入っている。
この日本沿岸の混獲に関する情報は、水産庁が、ヒゲクジラのみ公表している。例えば、2018年度では、ミンククジラ86頭、ザトウクジラ3頭、セミクジラ1頭が混獲され、3頭を除き、鯨肉として販売あるいは地元に配布されていることがわかる。都道府県での混獲はわかるものの、実際いつ、どこでどのクジラが混獲されかが分からない。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/w_document/index.html
一方でかつて日本鯨類研究所でストランディングレコードを更新してきた石川創氏が下関の鯨類研究室に移られてからは、昔のものも含め上がってくる情報について、年月日、場所、個体の詳細情報とその後の処理など丹念な報告を毎年更新されてきている。
http://whalelab.org/record2017.htm
残念ながら、石川氏は今年定年だということで、ストランディングデータは彼の退職とともになくなってしまう可能性が強く残念なことである。
定置網という漁法は、入ってきた魚は漁業者のものだ。クジラに関しては、定置網などへの損害を穴埋めするという名目で、DNAの登録をすれば販売が可能になった。地域によっては、かなり定期的な売り上げ品目になっているところもあるかもしれない。
鯨類混獲については、日本はまた別の法規が使われているため、混獲回避措置は当分考えられそうもない。
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