イワシクジラ/CITESに関する溝
IKA-NET ニュース 74 号では、真田康弘早稲田大准教授による、8月開催されたワシントン条約会議常設委員会におけるイワシクジラの報告を掲載させていただいた。それをお読みになった方はおわかりと思うが、昨年(2018)の同委員会では、調査捕鯨によって捕獲され、日本国内に持ち込まれたイワシクジラはワシントン条約の「海からの持ち込み」規定に違反するものだという判断が下され、是正勧告が出さ
れた。今回、調査捕鯨を停止したためにイワシクジラの捕獲はないという日本の返答があったが、会議では、ほとんどの国が、違反で持ち込まれた鯨肉の国内流通は同じく違反であるとし、没収を要求、遡及して判断されないという日本政府との見解と対立した。
::::::::::::::::::::::
(引用ニュース74「イワクジラは何処へ行った?」)
http://ika-net.jp/images/pdf_files/inn074-sanada.pdf
「ニジェールは、本件が条約にとり極めて重要な問題であると考えていると前置きした上で、前回の常設委で
非合法とされているものが現在 でも商業市場で売られていると指摘、これは全く受け入れることができず、
条約第8条に基づき没収すべきであると主張した。EUもニジェールに同調、常設委が日本に対し条約第8条と決
議17.8に基づきイワシクジラ肉と脂の没収と処分に関する全ての措置を事務局に特定の日時までに報告するよう
要請すべきである、と発言した。ペルー、イスラエル、オーストラリア、アルゼンチン、米国もニジェールとEU
の主張を支持、セネガルもイワシクジラ肉の没収を要求した。日本の取った措置が十分であるとして理解を示す
発言を行ったのはロシア一カ国にとどまった。」
と、ロシア以外の国々が没収を要求したことに触れている。そして、
「条約事務局は、没収が遡及適用になるか否かは非常に複雑で法的な問題になるとコメントするとともに、ナイ
ジェリアから中国への材木の輸出、ペルーから米国へのマホガニーの輸出についてどうであったかといった過去
の前例を調べるなど注意深く検討する必要があると発言した。
そこで Carolina Caceres 議長(カナダ)は、ここでこの問題に関して限られた時間の中で議論するのはhelpful
とは思わないとし、常設委としては日本に対して前回の常設委員会前に商業目的で海から持ち込まれて鯨肉の管理
と取り扱い(treatment)ついて情報を求める決定を行ってはどうか、との妥協案を提示した。
これに対しEUは、多数の国は「没収」を求めている以上、この文言を含めるべきであると発言、ニジェールもEU
の主張に同調した。そこで米国は双方が受け入れ可能なさらなる妥協案として、CITES決議17.8「違法に取引・没収
されたCITES附属書掲載種標 本 の 処 分 (Disposal of illegally traded and confiscated specimens of CITES-listed
species)」に留意するとの文言を挿入してはどうか、これであれば「没収」のことばが入っている、と提案、これが受
け入れられることとなった。」
:::::::::::::::::::::::
<水産庁からのメール>
11月29日
「 委員会の決定はあくまで、(違法に取引され没収された附属書掲載種の標本の処分に関する決議(Conf.17.8)に留意し、)次回常設委員
会の90日前までに、 持ち込まれたイワシクジラの鯨肉等の取扱い(treatment)を事務局に報告することを日本政府に求めるものです。
「在庫の実態を把握」 といった記載はありません。
誤った情報で回答を誘導するのは不適切です。アンケート発出先へ内容に誤りがあったことを伝えてから回収を行うべきであり、 それが出
来ない場合は、アンケートの中止、もしくはアンケート結果の利用を止めるのが、責任あるNGOとしての姿ではないでしょうか?」
それに対しては、常設委員会の方向に関わらず日本政府がイワシクジラ流通を是とする2018年10月10日お知らせをそのまま掲載していることを指摘し、立場の違いを指摘した。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/seiwhale.html
(現在、勧告を踏まえて是正措置の内容を検討中ですが、同勧告は、本年度のものも含め、既に国内に存在している(続く)
« 調査捕鯨継続のための法律のリサイクル法、参院で成立 | トップページ | イワシクジラ /CITESに関する溝(2) »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント