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2019年10月 3日 (木)

毎日新聞2日版「 なるほドリ エコ」にため息

 新聞もこっそり値上げするということだが、それなら、記事の内容をもっときちんとして欲しいと思う今日この頃。

今朝も毎日新聞「月刊なるほドリ」では、先週のこども新聞に掲載した「クジラと日本人」を中身変わらず、構成を変えて掲載。こんなのでお金取らないでほしい。

昨日の「なるほドリ」、エコというのが付いていたので、環境等を主に扱うのだろうと推測。しかし「水族館の新団体 役割は」

と言うタイトルのため息が出るような企画だった。(だいたい、いつでも批判なしの水族館礼賛に変わりはないので今更なのだが)

「持続可能な水族館の在り方を考える任意団体『日本鯨類研究協議会(JACRE)』が3年前に発足し、この夏、法人組織移行を決めました。水辺の生き物たちと私たちをつないでくれる新しい水族館の形を模索しています。」と言う前書きが付いている。

副題に「JACREってどんな団体なの

    水生生物の情報交換が目的」

とある。Q&A形式で、どんな団体なのか、

  A 海に囲まれた日本は世界でも水族館が多く「水族館大国」と呼ばれていますが、水族館に特化した組織はありませんでした。

   環境問題に注目が集まる中、水族館の在り方を考え、発信力を高められればと法人組織を目指すことを決めました。

安易に入手できるイルカをショーに使って集客する水族館のあり方は、まともな動物園からも以前から顰蹙を買っていたと思うが、「環境問題に注目が集まる」状況で水族館に特化した組織が一体何を目指すか、紙面からは全く見えてこない。

記者の考えでは「人工繁殖」が答えのようだが、すでにクジラ類の持つ社会性などから、飼育はもちろん、繁殖も禁止している国さえあるくらいでその傾向はますます増えていくはずだ。

最近も、ロシアでいわゆる「監獄」と言われて批判をうけたシャチとベルーガの蓄養施設に関して、ロシア当局はNGOや専門家と協議の上、捕獲海域に全てリリース。シャチに関しては、すでに野生の群れに合流したと伝えられる。もちろん、この後、ロシア当局は、娯楽目的の野生鯨類の捕獲を禁止した。

日本のメディアはこうした問題を語ろうとはしない。だいたい、野生の群れから切り離して捕獲し、自然に逆らって同じ海域かどうかもわからない(別の国の可能性が強い)個体と繁殖させることで子どもたちにどのようなイルカ類に関する知識やそれに関連しての海に関する知識が与えられる?せいぜい考えられるのは、「一番偉い人間はこの地球で何をしてもいいのだから、好奇心があればどんな勝手をしても許されるんだよ!」という歪んだ知識ぐらいのものではないのか?

野生のイルカがどこに分布し、どのような生活をし、どのような仲間との社会性を作るのか、飛んだり跳ねたりしたらわかるわけでなし。

イルカとイルカ飼育のことを知るには、これまで撮影された、イルカ捕獲時の様子でもビデオで流したらいくらか問題の把握ができるかもしれないのだが、そんなことはやらないでしょ?

だいたい、海に囲まれた日本が「水族館大国」と言われていること自体が恥ずかしくないのか?

海に囲まれた国だからこそ、その分、海洋環境や海洋生物に関する教育がしっかりしていることが重要だが、鯨類だけでなく、海の生き物すべてにわたって安易な入手が可能であることから、水族館が乱立しているだけで、飼育の不手際や設備などの不備で、いっぺんに何百という生物を殺してしまったというようなニュースも少なくない。

だいたいが、自分たちが食べ続けたい魚がどんどんいなくなっても、食べ続けることを一義的に選択しているような国民に対し、水族館がいったいどんな教育を与えているのだろう?魚消費に関するガイドブックを作って、減少している魚を把握できるようにしているどこかの水族館を見習ったらいい。

 

日本動物園水族館協会(JAZA)の説明があり、なんでJACREを作ったという言い訳も。

   「JAZAが2015年に加盟する施設に対し、追い込み漁による野生イルカの入手を禁止しました。それに伴って、

     イルカに関する情報交換も低調になってしまいました。」と続く。

なんで「追い込み漁による野生イルカの入手を禁止すると情報交換が低調」になるのか、全く何の説明もなく、理屈になっていないい。「学術研究」だったはずのシャチだって2007年の成果発表で情報共有なんかしていないことが明らかになったのに、ほぼ’使い捨て’のイルカで情報交換をしっかりやってきたなんて!?とびっくりである。

追い込み漁に関しては

    「イルカが嫌がる音を使って湾内に追い込み、網で捉える漁法です。鯨食文化のある日本に古くなら伝わる漁法ですが、海外からは

     度々残虐だと批判されてきました。」

追い込みは、確かに古くから行われてきた捕獲方法だ。しかし、今問題になっているのは水族館用の捕獲なのであって、百歩譲って「イルカ漁は伝統」だとしても、イルカ肉需要がなくなっている中で、産業従事者が金を稼ぐために行っているのが生け捕りだということは素人でも分かりそうなものだ。生きたイルカは日本の水族館だけではなく、海外にも高額で売り飛ばされている。それをごちゃにして正当化するような論法を少なくともメディアがやるべきではない。

JACREが本気で環境問題を考えて、水族館の在り方を考えてくれるならそれはそれで結構だが、そこにはいつ到達するのだろうか?イルカ追い込み漁が「海外から残虐だと批判されて」いるのは、事実だからだ。考えてみてほしい。ゴリラやゾウを群れごと捕獲し、一部を殺し、コドモを売り飛ばす商売が、今でも合法的に行われているかどうか。

イルカたちは、生け捕りに際して狭い仕切り網の中でもがき、互いにぶつかり合い、網に絡まって窒息し、命を落す者もいる。海は血で染まる。

大方はメスとコドモの群れだが、その中で、コドモや若いメスが水族館用に捕獲されている。かつては生け捕りされたコドモの傍で母親が殺されるということもあったのだ。

記者も一度その光景を自分の目で確かめてほしい。その事実が、WAZAを動かし、改善要求となった。それに答えられない状態の中で、JAZAはWAZAに残るか脱退するかの選択を迫られ、当たり前の選択をしたのだ。そして、それを是としない、追い込みによる利益にしがみつくところが新たな組織を作ったというふうに私は理解している。

もし本気で「水辺の生き物たちと私たちをつないでくれる水族館」を目指すなら、海洋環境が今日抱える様々な問題、気候変動や酸性化、プラスチックなど人由来のゴミ、有機化学物質などの汚染、開発や騒音、罹網、乱獲による魚、餌生物の減少などによる生息環境の悪化をどのように市民に訴えて、直接的な行動に結びつけていくかがまず課題であるはずだ。すでにこうした取り組みは行われてきたし、新しい組織を作るようなエネルギーと資金があったら、そちらにシフトしたほうが将来的にも良いのではないだろうか?

そして、最後に。「漁以外のイルカの入手方法」の答えは違反の教唆みたいに読める。

 「魚を取る際に混じったり、浅瀬に迷い込んだりしたイルカなどを『学術研究用』として漁業関係者から譲りうける方法」

と言う言い方は実は「混獲や座礁したイルカを’学術研究用’として譲り受け、ショーなどでバンバン使ってますよ」ということだ。カマイルカという追い込みでなかなか捕獲しにくいイルカがいるが、たまたま定置網などに入ったのを「原則逃がす」という水産庁のマニュアルをかいくぐって利用している状態があまりにひどかったので、2007年に水産庁が反対の声を押し切って捕獲枠をつけ、混獲ではないイルカの飼育をねらったのだが(やはりあまり上手く捕まえられない状態)。だから、この答えは下手をするとマニュアル違反をそそのかしていることにもつながりそうだ。

記者は、どこからこんなテーマをもらって書いてしまったのか。書くことでお金をもらっている以上、きちんと取材することは最低限、欠かせないと思うのだが、どうなのだろう。

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