静岡県におけるイルカ猟の再開の可能性について
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(現在の追い込み用金属パイプちゃんちゃんと同2004年のもの)
夏もそろそろ終わりに近ずくと、涼しさへの憧れと同時に、イルカ追い込み猟の季節が
来たという緊張もある。
今年は、6月の静岡県伊東市漁協のイルカ追い込み漁開始宣言もあり、不穏な気配
もある一方で、静岡県でのイルカの捕獲が果たして可能なのか?という幾つかの疑問
の声が聞こえてきた。
<伊豆地方のイルカ猟>
伊豆地方では、戦後の一時期、古くから行われてきたイルカ追い込み猟で乱獲が進んだ。
主な捕獲対象であったスジイルカが捕獲できなくなり、対象種をマダライルカに変えた
もののそれもすぐに枯渇し、産業が成り立たなくなって5箇所あった捕獲地が次々廃業した。
現在枠を持ついとう漁協の富戸支所においても、追い込む年は少なくなり、2004年から
捕獲が途絶えている。
<伊豆半島ジオパーク構想>
一方で、2008年頃から伊豆半島をジオパークに登録しようという動きが活発になり、
準備が進んできた。しかしここで、富戸で行われてきたイルカ追い込み猟の実施が、
ジオパークとしてふさわしいかどうか、という疑問が市民から出され、反対の署名活
動が開始された。
その結果、ユネスコ本部から、イルカ猟についての懸念と改善の要請が推進本部に
送られたが、推進本部は回答期限までに返事を出さなかったため、2015年の
登録認定では保留という措置が取られた。
その間、伊東市で毎年行われてきたイルカ捕獲に関する関係者と水産庁、
警察、海上保安庁による会合は、見合わされた。
しかし、2018年にユネスコのジオパークに登録された結果を受け、再び
イルカ猟への意欲が浮上してきた。近隣水族館からの注文もあるが、生体の捕獲が
極めて儲けの大きい事業であることは、和歌山県での捕獲が実証している。
<猟の再開は可能か?>
しかし、実際に追い込みが行われるかどうかという点で、幾つかの疑問がイルカ猟を
よく知る関係者から出されてきた。もともと、富戸は首都圏近郊での人気のあるダイビング
スポットで、必ずしもイルカ猟が町の繁栄につながらないのが現在。さらに、
例えば、富戸がいとう漁協の支部となり、イルカ猟の実施にあたって、いとう漁協に
わたる金額に比べ実際に捕獲に携わる漁師の日当が十分とは言えないことや、イルカ猟に
携わってきた漁師の高齢化や引退、船の老朽化に加えて、数年前にイルカが追い込まれる
湾のど真ん中に、定置網が敷かれたことなどが追い込み猟再開を阻む可能性があると
指摘されている。
定置網は、網からロープを海底に斜めに伸ばし、網が流れないよう固定する。
海底に固定されたアンカーをつなぐロープはイルカにとって障害物として認識される
だろうと地元漁業者は言う。
静岡県におけるイルカ猟の猟期は10月から翌年の9月までである。2年ほど前から、
猟期が通年になってしまったが、昨年には猟がなかったので、10月までは事実上
捕獲はできないはずだが、今後どのような動きがあるか注視していく必要があるだろう。
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