産業の視点しかない日本メディア
昨日(7月1日)から、クジラの捕獲が始まった。しょっぱなから、8mもある
大きなミンククジラを捕獲したとニュースが流れている。
昨日、今日と、各紙商業捕鯨再開のニュースを結構大きく取り扱っている。31年ぶりでの
再開に、’心の底から’喜んでいる関係者のコメントが掲載されている一方で、鯨肉の
売れ行き不振から、産業の将来性を危ぶむ論調がそれぞれトーンは違うものの垣間見られるが
クジラを殺すことに関しては、「100年捕鯨を続けても資源に影響はない数」である
という水産庁のコメントを全く疑いもしないようだ。他の魚種では管理の不手際が
散々批判されているのに、これほどまでに深く信頼される捕鯨班!
朝日新聞:商業捕鯨、不安乗せた船出 肝心の食卓ニーズは尻すぼみ
商業捕鯨、なぜ日本だけに批判? 際立つ「まずい」戦略
毎日新聞:日本の商業捕鯨再開 「期待と不安が入り乱れての出港」 販路の開拓も課題
読売新聞(30日)商業捕鯨 明日開催 「クジラのまち 期待と不安 肉の品質向上・消費戻るか」
日経新聞:商業捕鯨再開、多難な船出」海域・頭数限定/読めぬ需要/国際批判リスク
これらの報道の中には、日本沿岸のクジラに関しては関心がないようで、種別と捕獲数
以上の情報はない。
(韓国のメディアは日本海に生息する希少個体群の捕獲を懸念する記事を載せているが)
主要メディアは見た限りでは国内関係者(捕鯨者や家族、レストランなど)の声を取り上げ、
クジラ=切り身という切り口での報道ばかりで、国際法違反という声以外は、批判は
海外から来るものとしてその中身は検証しない。
日新丸船団がニタリクジラを捕獲する大方や小笠原周辺のウォッチングのことさえ取り上げない。
取り上げない陰に、海外は残酷だと言っているとか、クジラは知能が高いと言っているとか
これまで言いふらされてきたことを鵜呑みにしてうるさがっているだけに見える。
珍しく、日刊スポーツが茂木健一郎氏のコメントを載せているのが僅かな救い。
『茂木氏、捕鯨を支持する一部意見に私見「間違い」』
「グリーンピースもシーシェパードも関係ない。今の感覚に照らして、
クジラという大型哺乳類を捕獲することが、果たしてほんとうにやり
たいことなのか、やるべきことなのか、1人1人が胸に手を当てて考え
てみればいい。ナショナリズムとの結びつけは、人の感覚を摩耗させ、
目を曇らせる」
こういう意見はごく稀で、捕獲上限頭数を来年の捕獲枠とし、その数が本当に
IWCで科学的に容認されるものかどうかには関心がないし、現在懸念されている
ミンククジラの希少個体群に属する個体の混獲や、ニタリクジラに混じっている
カツオクジラの誤獲といった日本沿岸における生物多様性の損失については
なんの懸念も抱いていないようだ。
さらに、今回の水産庁のお知らせには今年の捕獲枠として、6月まで行ってきた
沿岸調査捕鯨の捕獲頭数や定置網に混獲される数を差っ引いたものとしているが、
調査捕鯨の79頭はさておき、混獲については2018年はまだ公開されていないが、2017年
は164頭、2016年は168頭、2015年は154頭と、それを差っ引いたら捕獲数は
マイナスでは?という多さ。
もれ聞いたところでは、この年末までの商業捕鯨の海域が希少個体群の多く
回遊するオホーツク海ではないので、混獲されたクジラを遺伝子解析して
希少個体群だとされた頭数は勘定しないのだそうだ。それってありか?
あえて言うが野生の大型哺乳類であるクジラは海洋生態系に欠かせない要だ。
特に、今回は日本の排他的経済水域内での捕鯨になるため、本来は沿岸の生物の保全
は私たちの将来世代への責任だと一人一人が自覚し、水産庁の甘い言葉を疑ってかかり、
安全性を確認していかなければならないなずなのだ。
« 商業捕鯨が | トップページ | 課題が多い・・・ »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント