アイスランドから希少なナガスクジラが
知人から、今日、石巻港に1400トンに上るナガスクジラの肉が、アイスランドから到着したという知らせをもらった。
ご存知のように、アイスランド周辺などのナガスクジラはIUCNのレッドリストでは絶滅危惧1類であり、その生息数も十分把握されていない。(IWCでは、東グリーンランドからフェロー諸島まで、及び西グリーンランドに関する推定数は出ている)。
(訂正:11月14日発表の最新のリストでは危急種になったようだが)
アイスランドは、モラトリアムに異議申し立てをして、その後、IWCを脱退したが、2003年にモラトリアムの留保つきで再加盟し、ミンククジラとナガスクジラを商業的に捕鯨している。ミンククジラは自国流通だが、ナガスクジラは最初から輸出目的での捕獲である。
絶滅危惧種に当たるナガスクジラの国際取引は、本来であればワシントン条約で禁止されているが、日本もアイスランドもナガスクジラについては留保を行っているため、事実上取引が可能となっている。
ナガスクジラの捕獲は、長らく捕鯨業で利益を得てきたロフトソンという金持ちが自前の捕鯨船を使って行っている。最初のうちは、南回りの航路で、時間がかかる上にあちこちで入港を拒否されるということが起きて、最近は温暖化で可能になった北極航路を利用して日本に肉を輸出している。一時期は、鯨肉の安全性を検査するための体制が’厳しすぎる’、とアイスランド側で捕獲を取りやめたものの、日本が検査体制を緩めて再び取引が開始されるようになった。
ナガスクジラ取引を仲介したのは、元水産庁の官僚と言われているが、日本では調査捕鯨の肉よりも安価に加工及び販売ができるため、業界では一定の人気がある。絶滅危惧で取引は問題があるという認識が日本国内では薄く、ペットのおやつとして加工、販売されたことさえあった。
今回さらに問題が生じている。ナガスクジラとシロナガスクジラのハイブリッドのクジラが2頭、捕獲されたことである。
https://www.bbc.com/news/science-environment-44809115
日本は、シロナガスクジラ及びハイブリッドのクジラの留保手段は取っていない。したがって、この肉は日本に輸出できないはずのものである。
今回輸出に関して、ハイブリッドのクジラ肉が入っている可能性の指摘も海外からあった。
そこで、水産庁にこの件についての問い合わせをしたところ、
1)アイスランド政府とハイブリッドのクジラの輸出入は行わないと合意している。
2)日本に導入する際には、密輸肉が混入しないように、ランダムサンプリングによるDNA検査が行われている。
という回答をもらった。
また、どの程度のランダムサンプリングなのか?という再質問の際には、アイスランドでは100%DNA検査をしているはず、ダブルチェックをしているのだから問題はない、という回答をもらった。
これまでの例から見ると、鯨肉が到着し、冷凍の保税倉庫に入っていても、すぐに通関はしていない。石巻港できちんとした検査が行われるのを祈るばかりである。
一方で、「留保」がいくら合法的な措置であるからといって、それでワシントン条約の商業的な取引を規制するという本来の趣旨が全うされるかどうかは別の問題である。本来は取引できないものであるという認識の周知があるべきだと思う。しかし、国内で流通販売する業者にその趣旨を認識するように期待するのもあまり効果が期待できない気がする(認識してほしいが)。
日本が持続的な利用を掲げるのであれば、せめて絶滅に瀕するナガスクジラのような種についての留保を取り下げる、あるいは国内でのそうした啓発を積極的に行うなど、幾らかの本気度を見せるべきではないのか、とこうした事件があるたびに思う。
« 脱退するとかしないとか・・・それでも調査捕鯨は続く | トップページ | 教育者のお手本なのかな? »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント