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2018年11月20日 (火)

教育者のお手本なのかな?

著者は、富山大学の准教授で、自然保護団体で特に環境法関連において活動している人たちと親しい。私は、種の保存法に関する勉強会で、Kさんを通じて紹介してもらった。それ以来、ニュースレターなどクジラ関連の資料を送ってきていた。今回、「自然環境法を学ぶ」と題した、若い人たちへの環境関連法の紹介本として送られてきた本を手に取ってなかみを見るまで、捕鯨問題を論じた項があるとは思わなかったが。あんまり、個人的な批判はしたくない方なので、10日間ほど放っておいたが、若い人たちが手に取るものだから、間違いの指摘くらいはしてもよかろうと思うに至った。

「自然環境法と産業法(企業法)は裏返しの関係」との著者の認識から、環境関連の法律(主に環境省の管轄)だけではなく、農林漁業関連の法律、動物の愛護と管理法の概説も網羅してある。大体において、これらはそれぞれの法律の条文や書いてある解説を抜き取って書き出しているので、「こういうものがあるよ」という紹介としては良い方法かもしれない。また、環境関連の訴訟についても例示されているが、その方向性についてはあまりよくわからなかった。産業法と自然環境法との相互的な影響とかギャップなどの乗り越えるべき課題などについての言及は私には見つけられなかったし、それぞれの法律の持つ限界などは明確にはわからない。若い人がどのような法律があるかをダイジェスト的に見るのはいいのかもしれないが。

13章に「水系管理に関する法律」があり、その中の「海洋生態系」の中に思いがけず「捕鯨」に関する論考があった。
漁業法は別の項にあるので、「産業法」の位置付けではなく、あくまでも海洋生態系の中での議論という位置付けのようだが、内容的にはICJ(国際司法裁判所)判決に至る経緯(残念ながら、ニュースレターを読んでいないようで間違いだらけー後述)、鯨肉輸入(カナダが輸出先に入っている)そして、ICRW(国際捕鯨取締条約)の旧来通りの大本営解釈など、定められた法体系の中に客観的に書き込まれたものが少ないためか、環境省関連の法律の紹介と比べると随分といい加減で、足りない分著者の主観が多々見られるというところで、他とはかなり異なる。

まず、事実誤認。
彼女の解釈では、ICJ判決の背景として「1994年のIWC総会において南極海サンクチュアリ決議が採択されたことにより、南極海における商業捕鯨は全面的に禁止された」
「その決議に唯一反対した日本は、調査捕鯨を継続している」としている。
しかし、サンクチュアリ決議は何の拘束力もなく、その採択に異議を持つ日本はその影響を受けていないし、ご存知のように、商業捕鯨の一時停止は南極も含めて1982年に合意されたもので、ここの記述は誤りである。

また、オーストラリアが2010年にICJの提訴に踏み切ったきっかけを「2007年、IWCでは南極海の特定海域で鯨類を死に至らしめるような調査捕鯨を一旦中止するよう日本に求める決議が採択されたが、日本はこの後も調査捕鯨を継続した」だと記している。
しかし、調査捕鯨の一旦停止の決議は、日本が調査捕鯨を開始してからほぼ毎年のように採択されてきたわけで、2007年の決議が他の決議と際立って異なるということはない。(サンクチュアリ決議と同じく、過半数採決の決議に拘束力はない)。
それよりも、むしろ2010年に期待された合意形成(2008年のPEW主催のシンポジウムを契機とした日本とニュージーランドの歩み寄り〜結局失敗したが。日本も調査捕鯨のフェーズアウトに反発した議員からの反対の声も大きかった)の行方を危惧したオーストラリアが先手を打つ格好で提訴したと言う考え方が一般的だ。

次の話題は突然、彼女曰くの2015年以降の(輸入量が増えたのは2010年からで2014年が過去最大)鯨肉輸入増加の話題。
「輸入ですむ問題ではないとし、その理由として「海に囲まれた漁業国における食料・食材としての鯨肉の確保の是非、生業としての水産漁業の継続と水産技術の継承、及び水産詩編の持続的な利用とその実現のために果たすべき国際的な貢献等を勘案して判断すべき問題」だとする。
その下段にあるグラフでは、国別鯨肉輸入量としてアイスランド、ノルウェーに並び、少量ではあるがカナダから赤肉及び白手物が入ってきていることになっている。
しかし、カナダはIWCに加盟してはいないものの、実施しているのは先住民捕鯨としてのホッキョククジラの(多分隔年)2頭の捕獲のみで、IWCに毎回オブザーバー参加して報告をしている。先住民捕鯨に関しては自家消費が前提で、しかも、カナダはワシントン条約でクジラ類を一つも留保していない。輸出/入が事実なら、いくつも違反を重ねていることになる。(実は、この件で一度騒ぎがあり、カナダからの輸出はないというところで落ち着いたように覚えている)2014年だったと思うが、知り合いがカナダからの海棲哺乳類の油脂に関して、水産庁に問い合わせを行った。他の鯨肉に比べて量の少なさと値段の高さで際立っていたからである。
その結果、「それはアザラシの油脂です」と答えがあった。だから、グラフで白手物とされているのは、多分、アザラシの油脂と考えるのが妥当だろう。しかし、赤身肉は?
著者は、もし増刷する場合は「検討」するそうであるが、カナダとしても迷惑ではないのだろうか。

著者による既存各種捕鯨について「動物の権利」「動物福祉」「予防原則」に反するかの検討がある。まず、「動物福祉の理由として商業捕鯨及び調査捕鯨そのものを反対することにはならないという考えであり、この点において、石井准教授、真田客員講師らと異なる見解を持つ」としている。彼らの本論ではなく、80ページに掲載された表に対しての意見のようだが、読み間違いの可能性が高い。
(彼と真田さんの著書「クジラコンプレックス」の当該部分を見直してみたが、動物福祉の考え方に基づいて反対しているNGOがいる、ということをわかりやすいように図解しただけで、彼自身の動物動物福祉の考え方を示しているのではないし、それが必然的に商業捕鯨、調査捕鯨に反対だ、というような主張をしてはいない)

さらにため息が出るようなトンデモな展開も。予防原則の適用に着目したいとして「保全には不確実性すなわちリスク管理の問題を伴う」よって、予防原則に基づく管理が必要であり、そのためにもさらなる科学的知見の収集が求められる」
「とすれば、希少とされている鯨種に関しては科学的研究結果が得られるまでは研究目的に限っての捕鯨(調査捕鯨)に徹する必要があるとも言える」とし、さらには
「他方、鯨類は大食であるため増えすぎている鯨種を捕獲しないことも保全に反する行為であると言えるが、どの鯨種がどれだけ増えすぎているのか定量的な検証は十分ではない。これに関しても、既知の知見に基づく対応とともに、より一層の科学的調査を尽くすしかないと言える」
「そのためにもむしろ科学的な調査捕鯨は「科学的な信頼に基づく国際的に権威ある科学的組織(例としてIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学〜制作プラットフォーム)のイニシアティブで積極的に推進」と進言している。
なんでわざわざ、大本営発表しか資料のない捕鯨を持ち出したのか(しかも、産業ではなく海洋生態系に)
、多分ここの部分が斬新なアイデアだと思ったのかもしれないし、だからこそこのテーマを選んだかもしれない。
IPBESに持っていく勇気のある官僚がいるとは思えないが、持っていったらそれこそ世界の恥さらしとなるだろう。

ついでに間違いだらけのイルカビジネス解説も。
イルカ捕獲について、漁業法の管轄であること、知事認可漁業であることを記した後、追込み猟に焦点を当てている。「群れごと捕獲するため、鯨肉の供給量が増大し、結果として余るという現象になると予想される。そこで、太地町の追込み漁は、群れごと「生けどり」して水族館の展示施設用に供することを目的とするようになった」と解説している。
また、イルカ漁の方法を解説し、パニックを起こして傷つけあうことや、群れの大半がメスとその子供であり、(中略)さらに水族館に送られた生体イルカたちは「芸」をすることを強要されており、それによるすくなからずのリスクと犠牲も強いられるという批判がある」としながら、「追込み漁は伝統であるという言説もある」とし、その残酷さを回避すべく漁法も改良されたきたとの和歌山県太地町の公式見解もある」(「改良された」は間違いと思われる。なぜなら、捕殺に関する報告書は主に漁業者の安全性や海洋の汚染を防ぐための方法についてのように私には思われたし、その最後に、致死時間が長引く恐れがあることが書かれているからである)

しかも、自らの判断は脇に置いておいて、「やみくもに生業に対して新たな倫理観や規範を押し付けることにも、いくばくかの躊躇を感じざるを得ない」と記し、WAZA/JAZAの騒動から、「一部の水族館がJAZAから脱退して独自の路線を歩んだ、すなわち追込み漁による生体イルカを継続して飼育する道を選んだという選択も尊重したい」「諸外国が水族館用に生体イルカを太地町から購入していることも、水族館が持つアミューズメント性の発揮のための需要と必要性の証左」だとしている。

相矛盾する紹介は、読む側に判断をさせようという意図かもしれないが、このような中途半端な紹介と間違いだらけの私見でまともな判断ができるだろうか。
さらに、これらの矛盾を覆い隠すように、「法に照らせば違法ではないが、倫理的にこうあるべしという新たな規範に由来する問題がグローバルな規模で生じているのは、人間社会が成熟してきた証左」と結んでいて、本人はすべて承知なのかもしれないが、なにやらもやもやが残る。

こういう本がどの程度読まれるかわからないが、ダイジェスト版としては使い勝手がいいかもしれないし、少なくとも彼女らが授業に使用するだろうことは察しがつく。教えられる方が矛盾に気がつき、自ら調べる道を選ぶのだからいいのではないか、という声が聞こえそうだが、問題はメディア報道を含めた国内情報がかなり偏り、限られていることだ。(以前、海洋大学で行われた海洋大学と農工大学合同のアクティブラーニング風研究会で、’生徒たち’は国内メディア報道主体の資料による研究発表をし、反対意見の検証や海外論文の読み込みなど一つも見当たらなかったので驚いた経験がある。いや、一人女性でかなり鋭い反対意見を述べた人がいたのを思い出した)


2018年11月14日 (水)

アイスランドから希少なナガスクジラが

知人から、今日、石巻港に1400トンに上るナガスクジラの肉が、アイスランドから到着したという知らせをもらった。
ご存知のように、アイスランド周辺などのナガスクジラはIUCNのレッドリストでは絶滅危惧1類であり、その生息数も十分把握されていない。(IWCでは、東グリーンランドからフェロー諸島まで、及び西グリーンランドに関する推定数は出ている)。
(訂正:11月14日発表の最新のリストでは危急種になったようだが)

アイスランドは、モラトリアムに異議申し立てをして、その後、IWCを脱退したが、2003年にモラトリアムの留保つきで再加盟し、ミンククジラとナガスクジラを商業的に捕鯨している。ミンククジラは自国流通だが、ナガスクジラは最初から輸出目的での捕獲である。
絶滅危惧種に当たるナガスクジラの国際取引は、本来であればワシントン条約で禁止されているが、日本もアイスランドもナガスクジラについては留保を行っているため、事実上取引が可能となっている。

ナガスクジラの捕獲は、長らく捕鯨業で利益を得てきたロフトソンという金持ちが自前の捕鯨船を使って行っている。最初のうちは、南回りの航路で、時間がかかる上にあちこちで入港を拒否されるということが起きて、最近は温暖化で可能になった北極航路を利用して日本に肉を輸出している。一時期は、鯨肉の安全性を検査するための体制が’厳しすぎる’、とアイスランド側で捕獲を取りやめたものの、日本が検査体制を緩めて再び取引が開始されるようになった。
ナガスクジラ取引を仲介したのは、元水産庁の官僚と言われているが、日本では調査捕鯨の肉よりも安価に加工及び販売ができるため、業界では一定の人気がある。絶滅危惧で取引は問題があるという認識が日本国内では薄く、ペットのおやつとして加工、販売されたことさえあった。

今回さらに問題が生じている。ナガスクジラとシロナガスクジラのハイブリッドのクジラが2頭、捕獲されたことである。
https://www.bbc.com/news/science-environment-44809115
日本は、シロナガスクジラ及びハイブリッドのクジラの留保手段は取っていない。したがって、この肉は日本に輸出できないはずのものである。
今回輸出に関して、ハイブリッドのクジラ肉が入っている可能性の指摘も海外からあった。
そこで、水産庁にこの件についての問い合わせをしたところ、
1)アイスランド政府とハイブリッドのクジラの輸出入は行わないと合意している。
2)日本に導入する際には、密輸肉が混入しないように、ランダムサンプリングによるDNA検査が行われている。
という回答をもらった。
また、どの程度のランダムサンプリングなのか?という再質問の際には、アイスランドでは100%DNA検査をしているはず、ダブルチェックをしているのだから問題はない、という回答をもらった。
これまでの例から見ると、鯨肉が到着し、冷凍の保税倉庫に入っていても、すぐに通関はしていない。石巻港できちんとした検査が行われるのを祈るばかりである。

一方で、「留保」がいくら合法的な措置であるからといって、それでワシントン条約の商業的な取引を規制するという本来の趣旨が全うされるかどうかは別の問題である。本来は取引できないものであるという認識の周知があるべきだと思う。しかし、国内で流通販売する業者にその趣旨を認識するように期待するのもあまり効果が期待できない気がする(認識してほしいが)。

日本が持続的な利用を掲げるのであれば、せめて絶滅に瀕するナガスクジラのような種についての留保を取り下げる、あるいは国内でのそうした啓発を積極的に行うなど、幾らかの本気度を見せるべきではないのか、とこうした事件があるたびに思う。

2018年11月13日 (火)

脱退するとかしないとか・・・それでも調査捕鯨は続く

昨日(11月12日)、捕鯨船団が南極に向けて出発した。
「行ってらっしゃい、捕鯨船 下関から南極に出発」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37636810S8A111C1CR0000/?fbclid=IwAR3RaRDXV5Gz4K4mM63UglQMTGmbAY3bCX3e0aGXE-7vjxHx9sAxOZLDhYc

日本は、商業捕鯨の再開を目指し、今回の総会で否決されたことしか日本のメディアは伝えていないし、これまで少しは出てきていた調査捕鯨に対する批判的な見方はその陰に隠されてしまっている。
しかし、今回の総会では、前回採択された特別許可捕獲(調査捕鯨)についての常設作業グループの報告があり、その中で、科学委員会の評価と報告を一般向けに噛み砕いて説明することが行われた。調査捕鯨は国際捕鯨取締条約の8条で認められているが、その内容に関しては、ANNEX Pという附属書によって規定されており、また召集された第三者の専門家評価会議での計画内容についての評価が課せられている。
今回の作業グループの報告は、JARPA II 、NEWREP-A、 NR|EWREP NPについての評価で、いずれも致死的調査の必要性が証明されていないという評価委員会の報告が科学委員会で受け入れられたことが示されている。
この報告書の採択に反対する21の国があるのは確かだが、評価委員会の報告と科学委員会がそれを受け入れたことに関してではないし、日本の調査捕鯨に問題があることはまちがいないように思う。

9月のIWC67本会議以降、捕鯨水産側は繰り返しIWC脱退の可能性に言及してきた。一説では「12月に重大発表があるらしい」などという話も出ていると聞くし、「IWC事務局への通告は6ヶ月前。6月に間にあわせるため」などとその理由を挙げる人もいる。
日経の記事でも、IWCを脱退すれば、南極での捕鯨はできなくなる、今回の調査捕鯨が最後になるかも、と書かれている。
調査捕鯨船を出して、その操業が3月に終了するそうだから、そうなるともし脱退を決めてもその後になるのだろうか?もし、12月にその重大な決定が行われても、実際の脱退は6月だからいいだろうという考え方なのだろうか?
この辺りも随分と気になるが、あっちもこっちも立てたいということであやふやなまま出港したとしたら、関係者にとっても気の毒な気がするし、こちらとしては姑息な感じが否めない。

そろそろ誰を守りたいのか、どこが大切なのかを見極め、関係者だけでなく一般の理解を仰いだ上で、原理原則ではない現実的な解決を目指すべきではないか。

2018年11月 8日 (木)

IWC67 その他のこと

<フロリアノポリス>

今回、IWC本会議が開催されたフロリアノポリスは、ブラジルの西、サンタカタリナ島という島の州都だ。
サンパウロから2時間、ブラジル本土の人たちだけではなく、EUなどからも観光シーズンにはたくさんの観光客が訪れるということだ。
日本からは、一旦カナダかアメリカを経由し、サンパウロまで来て、国内便に乗り換えて2時間ほどでブラジル本土に面したヘルシリコリス空港に着く。私たちは、ニューアークを経由してたどり着いた。待ち時間を入れて30時間以上かかる長旅だった。航空運賃は往復で226040円。
こじんまりした空港で、名前を書いたボードを持って待っていてくれたホテル専属タクシーで、イングレセスビーチにあるホテルに。これも島の西側から東側への1時間余の旅。
通り沿いの店の多くは開けていない。ここのシーズンは12月から2月ごろだよ、その頃は人でいっぱいだと運転手さんが教えてくれる。サンパウロから10年前に引っ越してきたという運転手さんは、ありがたいことに英語をしゃべる。ホテルの受付を含め英語をしゃべる人はめったにいないし、私はスペイン語ほどもポルトガル語はわからない。
英語が話せる運転手さんが頼りで、送り迎えを頼んだ。
最後の日には、空港まで少し島の北側を案内もしてもらった。
ビーチのはしごみたいなものだったが、どこもゴミ一つ落ちていないこと、それから砂の色が白から薄いベージュと少しずつ異なるものの、細かいサラサラの美しい砂浜が続き、海水の透明度も高い。ゴミがないねえ、と運転手さんに話しかけると、そりゃ、観光資源だもの、と当たり前の顔。
ビーチにもランクがいろいろあると見えて、「ここは本土の億万長者の別荘が立ち並ぶところ」とコロニアル風のものやモダンな建物などいかにも高そうな家並みが続くところにも連れて行ってくれた。「私たちは98%の方だから縁がないよ」というと笑って移動した。
同じく金持ちの別荘地の近くだが、自然公園に隣接するところがあり、運転手さんはよく息子をここに連れてくると話してくれた。鉄条網の向こうに小さな流れがあり、そこに浮かんでいるのは、カイマン!見るとうじゃうじゃいる。道路の間近に沢山群れ集っている謎はすぐに解けた。近所のおっさんがバケツにあふれんばかりの魚のアラを入れて持ってきて、それをワニに与えているからなのだ。放り投げられた餌を空中でパクッとくわえ、まるでペット状態のワニなのだった!
公園は在来種だけ植えてあるのだという話で、これまで見たことがない植物が沢山あった。
自然公園は空港の近くまで続き、車内から、トキの仲間とか穴掘りふくろうらしい小さなふくろうも見ることができた。

<会議場で>
会議場は私たちのホテル方15分ほど北の隣のビーチにあるコスタン ド サンティーニョ  リゾートという高級リゾートホテルで、ビーチとその地域をほぼ占有状態、ホテルのダイニングエリアのある浜に降りていく小道沿いに、キャビン風のしゃれた宿泊施設が続き、両側には胡蝶蘭の寄生する(人が植え付けた?)木々が茂る。「サルを見たよ」とクレア。
IWC’友だち’と再会。別に普段からそれほど交流があるわけでもないが、まあ、どちらの陣営も同窓会気分でいるようで。

そういえば、入り口でこれも毎度のことながら、血だらけのクジラ用のものを持った人に「日本人、クジラ殺すな!」と凄まれた。そしてこれも毎度のことながら「いやいや、その人は’仲間’だよ」というこれもIWCで顔なじみのとりなしが。
彼は今は黒シャツにドクロマークを付けたのを着ているが、2002年下関では別のグループで来ていて、私たちがお祭り広場にしたスペースの真ん中にティピーを立てた。資材調達が(竹竿なので)すごく大変だったと聞いた。

今回は、「ともこ」さんという日本人のプロテスターがニューヨークから駆けつけていて、毎日、プラカードを掲げてホテルの正面に陣取っていた。「だって、日本政府のやってること、すごく恥ずかしいじゃない。みんながそうじゃないことを示したくって」とは彼女の弁。ごもっとも。

<ホテルで>
私たちのホテルは結構豪華な朝食付きて1週間二人一部屋で44527円、一人一泊3180円という格安値段!
朝ごはんは、3〜4種類のパン、スクランブルエッグ、ソーセージ(食べないが)とジュースや牛乳、ヨーグルト(なぜかイチゴ入りとココナッツ入り)、各種のちょっと見た目は同じに見えるジャム(食べてみるとオレンジ風味だったり)、それと5種類ぐらいのスイーツ!(これも朝っぱらからは食べられなかった)、パイナップル、メロン、マンゴー、りんご、バナナ、コーヒーと各種ティー。トマトや緑のものはなかったけど、地元スーパーでもしなびてたりして良い状態のものはなかったから、地元ではほとんど作っていないのかもしれない。

同宿していたのは、フランス語圏のアフリカ諸国(一つはセネガルでもう一つは確認できていない)と多分韓国の代表団の一部、そして時事通信の運動部系の記者さん。朝ごはん中の交流はなかったが、最終日にだったか、セネガルの元気いっぱいの代表にエレベーター前で鉢合わせした。ニコニコと、「オハヨゴザイマス!ゲンキデスカ?」とご挨拶。
エレベーターがつくとビッッグスマイルで手を差し出してお先にどうぞポーズ。扉が閉まると同時に、親指を立てて「オンナ、イチバン!」。
「え?」
横で佐久間さんが「レディーファーストって言ってんだよ!」とニヤニヤしている。ああそうか。
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2018年11月 5日 (月)

IWC67会議報告−最終日

 最終日の最初は、科学委員会報告の続き。
科学委員会は毎年開催なので、来年、2019年は、ケニアが開催地として名乗りを上げた。
そのあと、オランダが小型鯨類の保全基金として25000ユーロを提供すると申し出る。

昨日の議事の続き、特別許可評価に関する作業部会について、日本とオーストラリアが協議し、作業部会報告を修正したものを議長サマリーに載せるが、同時に報告書に、日本に追加して反対する国々について、列挙することになり、議長がその名前を逐一読み上げた。
ノルウェー、マーシャルアイランド、セントルシア、アイスランド、ニカラグア、セントキッツ&ネビス、ソロモン、セントビンセント&グレナディン、セネガル、キリバス、コートジボワール、ツバル、スリナム、トーゴ、パラオ、アンティグア&バービューダ、サントメプリンシペ、カンボジア、リベリア、ギニア、ラオス。

最後は日本の提案するIWC の将来について。
決議と附表修正を一気に投票にかける。日本の意見としては、参加国はICRWに加盟しながら、持続的利用を否定する国があることが残念。日本の立場としては保護と利用が両立するものだという認識で、前に議論を進めたかったが、フロリアノポリス宣言の評決で共存する意思がないことが明らかである。
日本としては、(決議がたとえ成立しても効力を持たないので、附表の修正を行うことで実効性をもたせたいので)条約に則った決定を求めてパッケージとして全て含めた形で4分の3の評決を求める。

採決の結果、賛成は27カ国、反対が41カ国、棄権が2カ国で採択されなかった。
採決の後、農水副大臣がステートメント。
「日本はこれまで真剣に努力を重ねてきたのに真の問題解決に消極的な姿勢が見られたことが残念。IWCが資源管理機関という大義を確認するために提案してきたが、建設的な提案が反対する側からはなかった。日本としては引き続きグローバルガバナンスの場としてのIWCと協力していきたいが、共存する可能性がないなら、あらゆる選択肢を考えざるをえない」
そのあと、この言葉によって、すわ!日本が脱退!というような記事が出回った。

その後は、今回議事に出された報告書を次々と採択し、次期議長には副議長のスロベニア代表アンドレ・デヴィチ氏が、次期副議長にはアイスランドの推薦するギニアのディアロー氏が決まった。
科学委員会議長は、アメリカのロバート・フーダム氏、副議長はブラジルのアレックス・ゼルビニ氏。

参加国が(捕鯨国も反捕鯨国も)口々にこれまでの科学委員会議長のフォルテュナさんに感謝を述べる。「これまでの中で一番」という声も。

次は、肝心の予算小委員会。議長がアメリカからオーストラリアにバトンタッッチされる。
ビューローの構成も変わる。議長副議長、科学主任、その他地域代表と次期開催地の代表。

保全委員会の毎年の開催につていは合意できなかったので見送り。

次回開催地はスロベニアが名乗り出た。

次は「その他の議題」で、前回に続き、ルクセンブルグの提案。前回は、鯨類のネクタイコンテストで、女性陣が投票して優勝は日本の諸貫さんに決まった。
今回は鯨類のジュエリーで男性陣が投票権を。正面のスクリーンに次々とペンダントやピアス、ブローチが映し出される。解説はベルギーで、上手にユーモアを交えて紹介する。イルカのところで日本が’異議申し立て’。「議長、イルカはIWCの管轄外です!」一同爆笑。ロープ用の首飾りにクジラの尾びれがひっかかってているようなペンダントを見て「(座礁、混獲のワークショップの指導員)マテラさんを呼ばなくては!とみんな突然ノリノリになって、森下議長も「これはその他の議題ではなく、常設議題にした方がいいですね」とニコニコ顔。
優勝者は、七宝のような石のついたクジラの尾びれのペンダントをしていたコスタリカ代表だった。

そのあとも、双方の立場の国が双方の意見を述べてクロージングステートメントで第67回IWC総会が終了。
M&Mコンビが初めてくつろいでいるのが印象的だった。

2018年11月 3日 (土)

IWC67会議報告−4日目後半

IWCの将来については、政府内での協議とさらなるIWC内での話し合いを持つことになり、一旦棚上げ。

議長は、最終日に早めに終わるため、4日目は目一杯議事を進めようと皆に呼びかける。

次の議題は、クジラの捕殺法と福祉について。

もともとは、捕鯨する際の捕殺時間の検討などが主要目的であったが、それだけではなく、世界的に見られる混獲やら網、座礁といった事象に対して、どう対応するかも大きな課題となっている。
ニュージーランド代表が委員会の報告。
混獲やら網したクジラの救出など福祉評価ツールの開発を次回IWCの2020年までに完成させる。また、委員会は、閉会中の作業継続に、自主的な基金提供を求め、それによって行動計画を策定する。また、大型鯨類のら網に関してのそれに対応できる人材育成に関する報告書を採択した。科学委員会の勧告により、ストランディングイニシアティブの進捗を歓迎し、そのコーディネーターの関与に感謝する。また、NGO連合による2000米ドルの貢献も報告された。

一方で、捕鯨に関連する捕殺時間や方法についてもデンマーク(グリーンランドの先住民生存捕鯨)、ロシア(同じく先住民生存捕鯨)、ノルウェー、米国(先住民生存捕鯨)と関係国からの報告があった。
一方で、日本は、当初は提供してきたものの、より多くの課題を求められることに反発し、データの提供を北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)に行っている(南極ミンクの捕殺データを北西大西洋の委員会に送っていることになる)。
NAMMCOが捕殺に関する報告。もともとは狩猟をするための委員会だが、動物福祉にも配慮し、安全とともに効率化を図り、可能な限り短時間で鯨類が死亡する方法の開発を求めている。ただし、環境や条件によって異なるため、ニーズが満たせないことを懸念している。

午後の最初は、科学委員会による日本の調査捕鯨に関する評価に関する常設作業部会報告。
2016年に決議された常設作業部会では、JARPANII, NEWREP-A, NEWREP-NPのついての科学委員会の評価をより簡潔にし、概略をまとめ、本会議の議論に貢献するものだと座長のニック・ゲイル、オーストラリア代表の説明。
評価に関しては、NEWREP-A、NEWREP-NP:致死的サンプルの必要性を証明できていないと言う専門家パネルの報告とそれに従った科学委員会結論について。
JARPAN II:すべてのサンプルサイズが正当化されていない。ANNEX Pに沿ったものと認められない。
との結論。

議論開始。
日本が「もともと常設作業部会には反対してる。国の権利を逸脱したものだと考える。科学委員会が評価とコメントすると条約にも述べられており、政治的な立場で議論をすべきではない。この報告書の採択に反対するが、議長のサマリーに含めるまでは反対しない。しかし、日本のステートメントも同時に入れて欲しい」

アメリカ「報告書の中にある勧告を支持する。条約6条では、議長及び委員会がアドバイスできると書かれている。」
ニュージーランド「専門家パネルの韓国に対応できていない。また、CCAMLRでコンセンサスで採択されたロス海の海洋保護区でのミンククジラの捕殺は認められない」
(日本は、 ロス海海洋保護区内での調査は認められていると反論)
アルゼンチン「作業部会は、わかりやすい言葉で伝えることにより、専門家パネル、科学委員会とのコミニュケーションの改善に資する。」
セネガル「(作業部会報告は)科学的評価とかけ離れている。総会では科学的な議論はできない。ここではできないことをやっている。科学的ではない意見で攻撃されている」
アイスランド「議論することがおかしい。致死情報必要かどうかの議論でもない。どこの国でも日々致死調査は行われている。ないという国は手を挙げろ」


議長「常設委員会の報告書を入れることを求めている」
日本「日本の声明も入れて欲しい」
この件は議長、日本で協議。
アルゼンチンが午後の提案については今晩中にアップし、すべての国の発言を入れて報告書に添付して欲しい」
議長「サマリーで報告しているので前例を作るわけにはいかない」
特別許可捕獲について書かれているANNEX Pの改定について、(文言の使い方で「特別許可」と「科学許可」がごっちゃになっているなど)くべコンセンサスが必要とされた。

ちなみに会議後に掲載された水産庁の報告では:
<水産庁の報告>
(4)特別許可プログラム常設作業部会報告書:
報告書は採択。
ただし、我が国の反論と我が国に賛同する他の21か国の国名を報告
書に明記。
概要:
日本の NEWREP-A、NEWREP-NP 等の調査について、
① 日本は、致死的調査の必要性を十分に立証していない。
② 日本は、不完全な計画案の提出など、調査計画のレビュー手続を適切
に遵守しなかった。
③ 日本は、科学委に調査計画を再提出しレビューを受けるべき

次の議題は、CMP(保全管理計画)実施に関する中間評価。
混獲に関する作業部会の2020年までの作業計画に関して、常任委員会を設立する予定。
保全委員会は河口域のイルカに対する人間由来の脅威についての対応について次回科学委員会が提出することを望む。また、ブラジル、エクアドル、チリ、ペルーの政府と協力し、共同作業をしていきたい。

科学委員会報告、保全委員会報告、保全管理計画を採択。
次はホェールウォッチングハンドブックのオンラインで公表したことの報告。イギリス政府とNGOが貢献し、英語、フランス語、スペイン語で公表。科学委員会も評価。
モナコが、日本やノルウェーでもWWが盛んで、日本には150箇所もあるのに、ハンドブックに入っていないことを指摘。アイスランドが早速反発。保全委員会に入っていない。IWCに介入されたくない、など。
しかし、全体としては歓迎。

国際調査活動
オーストラリアの主導で13カ国がメンバーとなって南大洋で実施されているSORPの報告。
日本が船と乗員を提供して北西太平洋でおこなわれているPOWER報告。2019年にはロシア海域でも調査を開始予定。

南大洋サンクチュアリ
科学委員会での評価がないと常に議論に的になるが、あらたな作業計画も整い、結局は採択。

RMPに従った捕獲枠の議論。科学委員会が評価を行って現在北太平洋のニタリクジラが終了し、ミンククジラは2019年に終了予定。北大西洋に関してイワシクジラ、ミンククジラが終了している。

EUを代表して、オーストリアかノらルウェーとアイスランドの捕獲枠について意見が出る。科学委員会の助言に基づかないバージョンの元での捕獲に対して、留保の撤回を求める。

NGOからも、調査捕鯨による39000頭もの商業流通についての問題の指摘。また、アイスランドで捕獲されたシロナガス/ナガスの捕獲に関して留保撤回を求める。

日本政府、EIA発言に対して、商業捕鯨といったことに関して謝罪を求める。

アイスランドが捕獲枠の選択肢としてのチューニングレベルについては、科学委員会の助言に従っているとし「勝手なものを使っているわけではない。政治的な決定は納得がいかない」と反論。
それに対して、IUCNが発言を求め、科学委員会の科学委員会の選択肢について、本会議の指示を仰ぐことになっており、その決定に従って、管理計画などを立てるので、本会議の選択がなければ適用できなくなると意見。
科学委員会議長は、MSYは承認されなかったと発言。
アイスランドが再び反論し、自分勝手なバージョンを使っているわけではないので誤解を撤回してほしいと要請。
やや歯切れの悪い科学委員会に変わって、IUCNが誰のバージョンというものではなく、科学委員会がテストバージョンを本委員会に図り、その決定に従って助言をするので、異なるチューニングレベルを使うと管理計画が操業に適用できないと発言。
そういえば、2014年だったか?小型沿岸捕鯨の一番新しい日本提案では、沿岸のミククジラのRMP評価が済んだので、その結果としての17等を枠として要求したことがあった。オーストラリアが、まだ評価途上で幾つかの選択肢があり、検討しているところだと発言。日本はじゃあ、それが終了すればいいのか?と突っかかったことがあった。なんでも、17頭はその中で一番大きい数であっ他という話を、アイスランドの発言で思い出した。

再び日本が、NGOが特定の国を批判するのは禁じられているはずと謝罪の要求。結果はわからないが、議長との話し合いがあったのだろうか?

次ぎは非加盟国からの報告。
オーストリアがEUを代表して、ガバナンスレビューが明確ではないので、遵守が不十分な場合があると指摘。意見の相違に関しては、法的助言のできる第三者が必要。

非加盟国の捕獲はカナダが東北極圏でのホッキョククジラ捕獲( 先住民捕鯨)。カナダの科学者が科学委員会に参加し、データを提供している。

そのあとは、ブラジル提案の2030年決議及び、日にあの食料安保に関してコンセンサスが得られないと撤回。

さらに、他機関との連携について。課題に関して、FAOやCMS,IMOなどと協力している。
最後に財運。
これまで、IWCの維持、運営が困難なほど財政が逼迫している。議長は、このままでは7〜8年で破綻してしまうと警告。ガバナンスレビューや運用効率化を図ってきた。科学委員会の経費も30%カットしなければという意見もある。
それにしても、本部の建物の修繕費の話とか、他の会議でもやってるのかなあ?


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