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2018年10月15日 (月)

IWC67会議報告−2日目

2日目は、ホテルの正面で抗議行動している人たちに対してセキュリティを強化したという報告で始まる。嫌がらせを受けた人たちがいるということで、そういう行為があったら即刻報告してください。(そういえば、初日に血だらけのクジラの着ぐるみの人が近づいてきた。暴力行為があったわけではなく、そばにきて「日本人、クジラ殺すな。」って言っていただけだが、2日目にはいなかった。まあ、意思表示はいろいろ。効果的かどうかは別として)

議題の変更がある。ブラジルの環境大臣が参加しているが、会場にいることのできる時間が限られているので、最初の議題に南大西洋サンクチュアリを扱ってほしいという議題修正提案があった。
南大西洋サンクチュアリは、2001年から何回か提案されてきており、4分の3の賛成票を獲得できないまま、今回に至っている。その間、周辺国の理解がない、とか、管理計画がないとか反対する国の言い分を聞いて、着実に設立に向けて計画を充実させてきた。今回、ブラジルが主催国になった経緯も、サンクチュアリの採択を目指したものだということは明らかだ。

「サンクチュアリは非致死的調査の良い機会になる。また沿岸地域の意思はWWであり、鯨類保全に即したもの」(アメリカ)、「反対する国は科学委員会のレポートを参照してほしい。管理計画を含めて総括的な提案になっている」(メキシコ)、「高度回遊性の種に関しては小さな保護区では対応できない。提案されている海域は、鯨種も多く、豊かなところであり、食餌レベルが高次である種の保全は栄養段階のより低い生物に取っても恩恵となる」(モナコ)など支援する意見も多数出たが、反対する側は相変わらずで「科学的な必要性がない。一部の脅威にも見対処しても例えば気候変動に対しては対応できないではないか」(日本)、「科学委員会の議長だって捕鯨に関係ないところに大きな脅威があると言っている。対応が全ての種にまたがり、個別の差に配慮できない」(ギニア)、「商業捕鯨は50年以上やっていないし、今後もないだろう。今作っても何かできるわけではない」(ソロモン)、「鯨を他の資源と切り離すべきでない」(アンティグア)など賛成、反対が入り乱れて結局は投票にかけられることになった。
就任後初の投票で、少しまごついたものの、レント事務局長がベニンからの投票国を読み上げる。
結果は賛成39対反対25でまたしても4分の3には届かなかった。ケニア、ニカラグア、セントビンセントが棄権。

コーヒーブレークを挟んで先住民生存捕鯨(ASW)の議論。提案説明は1日目に終わっている。
デンマーク王国、ロシア共和国、セントビンセント&グレナディン、アメリカ合衆国による共同提案で、項目は

・先住民生存捕鯨制度におけるキャリーオーバーの規定のアップデート
・2025年までの1回きりの7年の枠持ち越し(その後は6年ごと/本会議2年ごとに合わせて)
・クジラの個体群保護を目的とした安全性の上に立った限定的な銛打ち数の自動更新
・もとは商業捕鯨のために採択された附表の5及び15(b)項*の技術的な微調整
・東グリーンランドでのASWに求められた安全性に従った年間の銛打ち数を増やす。
・北東太平洋コククジラにおけるいわゆる’くさいクジラ’問題とASWの安全性に従った年間の銛打ち数を増やす。
・附表13(a)の技術的な修正に関する科学委員会の助言に従った委員会の捕獲枠/銛打ち数の包括的な評価
(*5項 ミンククジラ捕獲の実施期間
  15(b)ナガスクジラの体長制限)

先住民生存捕鯨に関しては、毎回のように先住民捕鯨の当該地域でのワークショップが開催され(スイスとアメリカが自主的な資金提供)、その中で現実的な解決が図られてきた。今回は、バローで関係者だけでなく、NGOも含めた参加者によってのワークショップが開催されている。作業部会の報告書は承認。
先住民の中には、IWCに捕獲の許可をもらうことが屈辱と考える人たちもいて、どうすればIWC の管理と先住民の人たちの思いとの調和が図られるかということも課題の一つになってきた。今回の枠の自動延長などもその例の一つだと考えられるが、科学委員会の助言も入れ、提案そのものがかなり先住民の要望をそのまま受け入れたものになっており、まあまあ満足した結果となっているようだ。

枠の自動更新などかなり大胆な修正の行われた今回の提案だが、議論は概ね好意的。
ただし、インドやガボンなどのように、将来的には非致死的利用の検討してほしいという要望や、グリーンランドで捕獲されているザトウクジラの系群のうち、カリブ諸国のWW対象となっているものが存在する可能性があり、写真判定などを求める(アルゼンチン)などの声もある。

ちなみに、セントビンセント&グレナディンの捕鯨は、アメリカのいわゆるヤンキー捕鯨が元であり、他のものと一括するのに対して反対の声がある。
また、ドミニカ共和国の提出した2014/15期のグリーンランドの捕鯨は違反(2014年会議で枠を否定された経緯がある)であるという決議案は撤回されたが、しこりは残っている。
自動更新に対する懸念も幾つかの国やIUCNから出されている。

問題は、すべての参加国が先住民生存捕鯨を支持しているというのに、すべて一括して賛成か反対かと問うことに対しての抵抗があることで、今回の附表修正を支持する声がともすると「ASWを支持するなら細かいことをツベコベ言うな!」という無言の圧力に傾きがちなことは問題ではないのか、と思う。

2日目は終了。
1日目は恒例の主催国政府のレセプション。会場のある高級リゾート「コスタォン・ド・サンティーニョ・リゾート」の食堂(ビュッフェ会場)で、幾つかのテーブルを囲んでのディナーブッフェ。
ちなみに、開催前に水産庁のM氏がいうに、会場ホテルがいくら治安がいいと言っても1泊5万円は高すぎ。結局治安の外に行かなければならない、と言っていたが、結局、政府代表ご一行様は、高級リゾートにご宿泊の模様。例の某’有名’監督が、一泊1万5千円で泊まっていると言っていたそうで、きっと政府ご一行様はみなさん団体割引でもしてもらったのだろうと推測。もっともそれでも私たちのところの三泊分ですが。

2日目はやはり恒例のNGOのレセプションで、ビーチのレストランを借り切ってのパーティ。政府主催はメディアを入れないがこちらは誰でも参加できる無礼講。会場では、懐かしいボサノバの今風アレンジのギター演奏(日本でも50年前にはすごく流行っていた!)。そして、プラスティックフリー、ミートフリーのブラジル風ビュッフェ。
昔馴染みの人たちと今の日本の若者の保守化の話などしていたら、ある国の代表が、「ねえ、日本は一体どうしたいというの?あなたなら答えられるんじゃないか、って言われたんだけど?」。
「そうですね。日本はとにかく、国の原理・原則を強く主張したいだけだと思う。そうすれば、国に帰って次の予算が取れるから。とにかく具体的な解決ではなく、メンツが大事なんです」などと下手な英語で説明していたら、別の国の代表もやってきて「数年前に、水産庁の役人と話したんだけど、話が全く抽象的で、クジラにも捕鯨にもそれほど具体的な関心がないように見えて残念だった。とにかく、大切なのは国の体面、一種のナショナリズムだよね。まるで筋肉対決やってるみたいだ」と。
見透かされていることを知ってかしらずか、「もうこれ以上同じ議論はしたくない」、とか、「IWCは終わりだ」とかよく言うよ、と思いませんか。

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