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2018年10月20日 (土)

IWC67会議報告−4日目

4日目。フロリアノポリス宣言が採択された後、いよいよ日本の「IWC改革案」の提案。
日本政府の説明では、
「この提案はIWCの組織的な機能の回復を目指し、今後の道筋を作るもの。
二つの構成要素からなり、一つは持続的捕鯨委員会の設立。条約の一部改正を進め、科学委員会の捕獲枠の提出を求める。もうひとつは附表修正(10e)で、モラトリアムの条文に科学委員会で認められた健全な種に関してはゼロではなく捕獲枠を付ける。改革の規模はいい聞いが’一体感’がある。会議におけるコンセンサスを求める。これまでの失敗を繰り返さないためにも、このパッケージ提案こそがIWCの唯一生き残る道である」
要するに、「みなさんがIWCを「環境条約」とみなしてあれこれやるなら、こちらは「漁業協定」を分派としてやりますよ。どうです?こうすればどちらに取っても都合がいいでしょ?」と言っているわけだ。
ただし、その対象となる海域やクジラが住む地球は別々に2つは存在しない。

早速オーストラリアが日本提案に鋭いツッコミ。
「こういう見方を主張する権利はもちろんある。商業捕鯨については様々な見方があるし、もちろん、それを持ってIWCの意思決定に参加ができる。しかし、オーストラリアは、先住民生存捕鯨には賛成するが、あらゆる商業捕鯨には反対の立場。IWCは保全と管理を組織としてちゃんとやっている。
このパッケージ提案は、3ヶ月前に突然出されてコンセンサスを求められた。現状を考えれば採択されないことを前提として提案されたとしか思えない。意図がどこにあるのか知りたい。」
アメリカが財運として。条約改正のための会議等の費用は、中核予算から出ることになる。任意拠出もありうる。と発言。科学委員会は、枠の算出には追加的なコストはかからないと報告。

EUを代表してオーストリアが発言。
日本の多大な努力にまず感謝。EU内部での議論も含めて対話の機会は継続していきたいが、IWCがモラトリアム以降、30年かけて保全の役割を果たし、先住民生存捕鯨の問題に対処してきたことを無効にするような提案であり、新しい委員会は承認できない。外交会議で条約を改正するということも根本的な意見の相違を無視しており、附表修正に関して過半数可決とすることも不必要な分断を促進する。

続いてアルゼンチン、ブラジルがモラトリアムの継続を支持するも、継続的な議論を続けていく意思を表明。

日本提案の支持も。
トーゴ「フロリアノポリス宣言こそ機能不全に陥っている原因である。日本提案は組織の回復にメリットとなる」
ニカラグア「IWCの保全・管理に貢献する提案。科学委員会も幾つかは健全な状態だと言っている。条約の改正により、秩序ある捕鯨ができる」
ギニア「鯨類に脅威があれば保全、なければ利用するということで、すべての国のニーズを考慮できる。立場を超えて負うべき責任に向かい合うべき。リオ宣言をどう考えるか聞きたい」
セネガル「日本提案は現在の問題点を明確にした。条約を変える道筋を受け入れるべき」
アイスランド「EUだって商業取引をしてるだろ!なんでクジラだけダメなんだ?他の人に押し付けるな!」

結局、16カ国が日本支持に熱弁をふるい、(セネガルの「クジラは陸のライオンと同じだ〜」というような謎の発言もあったが)38(EUの24カ国を含む)が反対意見を述べた。
そのあとは、IWMC(ラポアント)、それと双子のような団体(WTC:参加者名簿に団体名が見当たらなかった)、GGT(宮本氏)が日本提案支持、そしてIKAN、R&Cロースクール国際環境法プロジェクト(附表修正に関する法的な瑕疵の指摘)、アルゼンチンが反対とそれぞれの立場で意見表明。
IKANの発言は以下のブログ参照。
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/iwc-edd9.html

発言の際しては、NGO特にAWIの助けがすごく嬉しかった。立場が多少とも異なるのに、私のいう「溝を埋めたい」というコンセプトに従い、チラシの要約を、私が発音しやすい言葉と短い文章にまとめてくれた。
おかげさまで、なかなか評判は良く、ランチブレークの時にはIISDの方が取材にこられた。かつて環境省の外郭団体に所属し、今はレポーティングサービスの仕事をしているという若い女性で、日本の状況とその意図をよく理解してくれた。
また、そのあとではCNNシンガポールやラジオ・フランスの電話取材もあった。

会議終了後、たまたまロビーで(多分)韓国の代表団の方とすれ違った時に、丁寧に会釈をされた。同じホテルで顔を見たことはあるが挨拶までは交わしたことのない方で、ちょっと驚いた。
そういえば、その日はいつも頼んでいる運転手さんが別のツアーでいない日だったので、そうだ!もし一緒に帰れれば安心、と思いつき、その方たち一団のところに行って、すみませんが、と話しかけた。
「日本語で大丈夫ですよ〜」と関西訛りで笑いながら答えてくれたが、残念なことにまだ会議があって帰れないとのこと。しかし、彼は「外にタクシーがいるから僕が頼んであげますよ」と気楽に応じてくれ、早速、待機していたタクシーにポルトガル語で(たぶんイングレセスに送るように)頼んでくれた。そして、なんと恭しく、タクシーの扉を開けて、どうぞと私が乗るのを助けてくれたのだ。そのあとはホテルでも見かけなかったので、実際どうかはわからないが、もしかしたら、私の意見に共感してくれたのか?と勝手に思って嬉しかったのだった。

そうしてもう一つ。
朝、ホテルを出発する前に、突然淳子さんが「早く、早く!来てみて」とベランダから呼びかけてきた。
何事?とベランダに出てみると、浜辺の向こうの波打ち際の少し先に、黒い物体が。「あれ、そうだよね?」と望遠鏡片手に言われてみていると、四角っぽい胸ビレが! ああ、ミナミセミクジラだ!
ブラジルのNGOのホセさんが、今はミナミセミクジラが子育てに回遊してくる時期なんだよ、と言っていたが、本当に現れるなんて!
しかも、私が発言する当の日に。
よく見ていると動きは緩慢で、どうやら大きな母クジラとともに、小柄な子クジラも一緒にたゆたっているらしい。
ホテルの正面に、肉眼でわかるほどに。
それから毎日のように、(サーファーたちが近寄っても気にしないで)2頭はホテルの部屋の前の海を行ったり来たりした(淳子さんは3番目のクジラもいたという)。
この海は澄んでいて、ゴミ一つ落ちていない。そんなところで、安心して母クジラが子育てに励んでいるのだ。やはり子供たちに残したい将来はこんな風景だ、と強く感じいったのでした。

4日目の会議はまだ続く。

(写真は、ベランダからi Phoneで撮ったもの。望遠なし)

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2018年10月19日 (金)

IWC67会議報告−3日目

3日目は、先住民生存捕鯨の議論の続き。2日会議終了後にコンセンサスを得るための合意形成が図られ、幾つかの修正が行われた。例えば懸念が表明されていた自動更新に関しては、合意されたタイムラインで情報の提供を行い、6年ごとに総会で安全性について検討し、変化が認められなければ更新すること。また、キャリーオーバーに関しては、科学委員会での確認を行うなど。また、クジラの捕殺に関してもロシア側から福祉レポートを出し、改善するとされた。多くの国が改善に感謝し、支持を表明。しかし、中南米諸国の中でのWWに依存する共同体への影響が検討されていないなど、まだ懸念を示す国があり、結局は採決に。
結果は、先住民生存捕鯨に関する附表修正に賛成の国は58、反対7、棄権5。

次の議事は、科学委員会の報告。
ヒゲクジラ
個体数に関する評価の見直し。同じデータセットを使い、評価プロセスを均質化。資源が回復しているか/したか/懸念があるかに関する評価を繰り返して、どこに問題があるかを見ていく。
懸念:北太平洋セミクジラ 漁網による絡まりや船との衝突が要因。アメリカ、カナダの当局と協力にして保護を推進。
        オホーツク西部のホッキョククジラ(ASW対象外)石油、ガス掘削が脅威。フィールドワークを再開し、隔年モ
        ニタリングを推奨。
       メキシコ湾 ニタリクジラ 衝突海部のための航路変更、漁具の管理など。
       南アフリカセミクジラ 長期的モニタリングが必要だが財源が不足している。
小型鯨類
        ハンドウイルカの分類が最終化された
 懸念:揚子江スナメリ 2020年までに揚子江全体で漁業禁止措置をとる。
         インダス、ガンジス、イラワジカワイルカ それぞれ重大な懸念(イラワジ、刺し網が脅威。メコンダムの開発
         が生息域を破壊など)
         コビトイルカ(ブラジル、ボリビア、ペルーにまたがる)運河建設による脅威。混獲、らもうなど。
        ハンドウイルカ(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ)個体群サイズが小さく、混獲や皮膚疾患により減少。
       漁業用の餌としてのアマゾンカワイルカ捕獲懸念。

生体捕獲を行っているオホーツク海のシャチへの懸念も示された。カムチャツカ海域のシャチは、定住性、移動性の2つのエコタイプがあり、個体数も少なく、それぞれに管理が必要な状態であるにもかかわらず、ロシア当局が捕獲許可を出してきた。

議論が開始され、まず、モナコが科学委員会の作業が他の機関から評価されるようになっており、より強化して国際的にもリーダーシップをとるべきだと意見。
毎回、懸念が示されるメキシコ湾のバキータ(コガシラネズミいるか)に関しては、長年その調査、研究をしてきたメキシコ代表(保全委員会の議長も務める)が政府の取り組みを紹介しつつも、バキータが混獲される原因になっているトトアバの密漁について、取引額がコカインよりも高値を呼んでおり、場合によっては1日で16万ドルも稼げる現状を訴え、生息域の北側で取締が弱いことを示した。トトアバを利用してきた中国が前回に引き続き今回参加していないので、国際的な防止策には至らない。
イギリスが小型鯨類基金に1万ポンド提供。(後ではNGOもアジアのカワイルカに、と支援の申し出。こうしたボランタリーな資金提供が小型鯨類の調査や研究を支えている)
アルゼンチン、ブラジルなどが自国の保全計画等の取り組みを報告。
報告書は採択された。
次の議題は「鯨類の健康と疾病」
ブラジルのギアナイルカに特殊なウィルスが発生したことやアメリカ西海岸の有害な藻類の発生などの報告がある。
次は「個体群分類」
ノルウェーがDNA解析を今後マイクロサテライトに変える、など。
「鯨類の環境」
IWCのSOCERプロジェクトで気候変動問題に取り組む。
CCAMLRや南極条約との協力で氷縁後退などに対処。

チリが主体となって、前回の決議に次いで、鯨類の生態系への機能向上貢献を理解し、ボン条約など国際機関と協力してより強力に科学委員会と保全委員会にその理解の前進を促す決議案を提出している。

IWC_67_17_rev1.pdf

こうした研究は最近とみに増えてきており、クジラの二酸化炭素の貯留機能、死体が深海の貧弱な生物多様性を豊かにしていること、糞による中層、海面などの生物多様性への貢献など、様々な形で報告されてきており、人間の肉の消費と比べて多様な形で海洋生態系に貢献していること、したがって今だけではなく将来にわたって、人類にも貢献するのだろうことは理解できる。

しかし、これは私の個人的な偏見かもしれないのだが、わざわざ決議として残すことで、こうした生態系の複雑さを強調することが両方のサイドの合意形成に資するか?という疑問が前回決議の時にもあった。(中学、高校とミッションスクールで、文句なしに素晴らしい宣教師の先生たちに育まれた私の感性がいじけて発露するのだろうか、そうした親切な’教え’が必ずしも人々の理解に有効だとは限らない、むしろ溝の深化となるのではないか?という猜疑心がある)

早速、捕鯨推進勢力からの反発意見が出てくる。 
日本「鯨類だけ取り上げて、それぞれの役割を無視している。大体、条約の趣旨を無視した決議案で立場の異なる人たちが受け入れるは難しい」
ノルウェー「日本の賛成。栄養段階は環境により変化する。例えば、鯨の餌生物の分布にも影響されるもので、1%未満の捕獲で大きな影響があるとも思えない」
アイスランド「生態系アプローチは重要で力を入れるべきだが、科学委員会は10年以内には評価できないと言っている、知見を深めるのはいいがだから他のことをストップすべきではない」

採決の結果は、決議案支持40、反対23、棄権7、欠席1

次は鯨類への汚染問題。SOCERプログラムで汚染物質のマッピングツールを作る。各国政府の汚染物質に関するモニタリングプログラムを推奨。北極海航路の活発化による重油汚染への懸念など。
報告/勧告採択。

海洋ゴミに関しての議論。ブラジルが、放置された漁具に絡まる鯨類に関する決議案を出している。

IWC_67_11_rev2.pdf

IWCではら網に関するワークショップを行い、その対処法を開発、ネットワークを組織して対処してきている。
各国政府に自主的な報告の提出をうながし、ら網に関する能力開発を行って鯨類のら網による死亡を減少させることが目的。
日本は、委員会の管轄外であり、FAOや IMOが取り上げるべき課題だとしたが、他の機関の作業と重複しないという文言を入れることにより、採択を妨げないと発言。
各国が自国での取り組みを紹介。
追加文章を含めてコンセンサスで採択。

次は人間由来の水中騒音。
科学委員会と保全委員会の合同報告書。
EUを代表してオーストリア他から決議案が出ている。
人間由来の水中騒音としては、船の航行や地震探査、海中油田などの掘削、ソナーなどによる騒音が激しくなってきている。
特に音響に依存している鯨類に関して、科学委員会と保全委員会の協力のもと、影響を把握し、SDGs14にある2030年の汚染削減目的に向かって、IMOや CMSなどとも協力しあって削減に努める。

IWC_67_05_rev2.pdf

オーストリア代表は、確か2000年の時点で他の国に先んじて、低周波ソナーなどによる水中騒音に関する意見を述べた人だ。水中騒音による影響を各国代表は認めながらも、IWCの管轄ではない、などの意見が出る。また、現在国連海洋法条約で議論されている国家管轄外の生物多様性(BBNJ)に関しては決議に収めるべk智慧はないという意見もあって、削除するが、その上で採択。
次は保全委員会の混獲に関する報告。15カ国参加で行われたワークショップに関しての報告書が出ている。2018年から2020年に向けての混獲イニシアティブが常任委員会では採択されているが、財源が乏しく、拠出を求めた。NAMCOも混獲が捕鯨以外の脅威であると認識し、作業部会を設置したようだ。

次にフロリアノポリス宣言。

鯨類の非致死的利用の推進を訴える内容。
鯨類が生態系の機能に重要な役割を果たしていること、また自然界と人々にとって貢献していること。沿岸共同体、とりわけ途上国の人々にとって非致死的な利用が目覚ましい利益を提供していることを強調している。
さらに、21世紀の委員会はとりわけ鯨類の個体群を捕鯨前のレベルに回復させることに合意し、商業捕鯨モラトリアムの継続を再確認する。また、今日では数多の非致死的な調査方法が確立され、致死的な調査は不必要となったことも指摘。
先住民生存捕鯨が先住民共同体にとっての利益になるよう委員会が保全と管理の目的に沿い、また猟師の安全性とともに鯨類の福祉にも叶う方法を確認。
国連とその下にある環境条約と連携して鯨類保全を推進することを求めている。

IWC_67_13_rev1.pdf

「IWCの将来」と題した日本提案が出されてから、対抗措置として出されたように見えるこの提案は、最終的に、4日目の朝に採決に付され、42対27で採択された。

ここのところ、IWCを環境条約と考える認識が確かに広がっている。すでにほとんどの国が捕鯨産業から足を洗うか、関わったことがないかであり、捕鯨そのものに対してよりも、クジラの保全に強い関心を持つ国際世論が形成されているのは不思議でもなんでもない。
しかし、一方で国内に捕鯨産業を抱え、あるいはクジラを水産物として扱うことを良しとし、この条約は「漁業協定」だと認識してそれ以外のことは関係ないと考えている国々もあるわけだし、この違いをどうやって埋めていくのか
を考えるか、国際世論の動向だからそうした少数意見は押しつぶして構わないと考えるか、ということは今度こそ重要だと思える。
日本は、一応背水の陣を引いて、漁業協定であるという立場を明確にし、それを否定されたわけであり、今国内でごちゃごちゃしているIWCを脱退するとかしないとかの話もその延長線上にあると理解できる。
が・・・
しかし、ここにきて、日本がやるべきことは他にあるのではないだろうか?
私たちはこれまで、問題解決に向けて日本国内での捕鯨関連産業や鯨肉流通の実態を明らかにし、問題の解決を図ってきた。これまで日本がうやむやにしてきたことー誰を守りたいか(共同船舶なのか、地域の漁業者なのか)、どこが重要だ(商業捕鯨の再開が必要なのか、限られた鯨肉の供給を守りたいのか)と考え、残したいのかなど、日本のいわゆる’原理原則’としてきたものではなく、現実に即した解決法を真摯に見出し、そこに限って粘り強く要望していくことを考えるべきではないのか、と今回会議に参加して強く思うようになった。

2018年10月15日 (月)

IWC67会議報告−2日目

2日目は、ホテルの正面で抗議行動している人たちに対してセキュリティを強化したという報告で始まる。嫌がらせを受けた人たちがいるということで、そういう行為があったら即刻報告してください。(そういえば、初日に血だらけのクジラの着ぐるみの人が近づいてきた。暴力行為があったわけではなく、そばにきて「日本人、クジラ殺すな。」って言っていただけだが、2日目にはいなかった。まあ、意思表示はいろいろ。効果的かどうかは別として)

議題の変更がある。ブラジルの環境大臣が参加しているが、会場にいることのできる時間が限られているので、最初の議題に南大西洋サンクチュアリを扱ってほしいという議題修正提案があった。
南大西洋サンクチュアリは、2001年から何回か提案されてきており、4分の3の賛成票を獲得できないまま、今回に至っている。その間、周辺国の理解がない、とか、管理計画がないとか反対する国の言い分を聞いて、着実に設立に向けて計画を充実させてきた。今回、ブラジルが主催国になった経緯も、サンクチュアリの採択を目指したものだということは明らかだ。

「サンクチュアリは非致死的調査の良い機会になる。また沿岸地域の意思はWWであり、鯨類保全に即したもの」(アメリカ)、「反対する国は科学委員会のレポートを参照してほしい。管理計画を含めて総括的な提案になっている」(メキシコ)、「高度回遊性の種に関しては小さな保護区では対応できない。提案されている海域は、鯨種も多く、豊かなところであり、食餌レベルが高次である種の保全は栄養段階のより低い生物に取っても恩恵となる」(モナコ)など支援する意見も多数出たが、反対する側は相変わらずで「科学的な必要性がない。一部の脅威にも見対処しても例えば気候変動に対しては対応できないではないか」(日本)、「科学委員会の議長だって捕鯨に関係ないところに大きな脅威があると言っている。対応が全ての種にまたがり、個別の差に配慮できない」(ギニア)、「商業捕鯨は50年以上やっていないし、今後もないだろう。今作っても何かできるわけではない」(ソロモン)、「鯨を他の資源と切り離すべきでない」(アンティグア)など賛成、反対が入り乱れて結局は投票にかけられることになった。
就任後初の投票で、少しまごついたものの、レント事務局長がベニンからの投票国を読み上げる。
結果は賛成39対反対25でまたしても4分の3には届かなかった。ケニア、ニカラグア、セントビンセントが棄権。

コーヒーブレークを挟んで先住民生存捕鯨(ASW)の議論。提案説明は1日目に終わっている。
デンマーク王国、ロシア共和国、セントビンセント&グレナディン、アメリカ合衆国による共同提案で、項目は

・先住民生存捕鯨制度におけるキャリーオーバーの規定のアップデート
・2025年までの1回きりの7年の枠持ち越し(その後は6年ごと/本会議2年ごとに合わせて)
・クジラの個体群保護を目的とした安全性の上に立った限定的な銛打ち数の自動更新
・もとは商業捕鯨のために採択された附表の5及び15(b)項*の技術的な微調整
・東グリーンランドでのASWに求められた安全性に従った年間の銛打ち数を増やす。
・北東太平洋コククジラにおけるいわゆる’くさいクジラ’問題とASWの安全性に従った年間の銛打ち数を増やす。
・附表13(a)の技術的な修正に関する科学委員会の助言に従った委員会の捕獲枠/銛打ち数の包括的な評価
(*5項 ミンククジラ捕獲の実施期間
  15(b)ナガスクジラの体長制限)

先住民生存捕鯨に関しては、毎回のように先住民捕鯨の当該地域でのワークショップが開催され(スイスとアメリカが自主的な資金提供)、その中で現実的な解決が図られてきた。今回は、バローで関係者だけでなく、NGOも含めた参加者によってのワークショップが開催されている。作業部会の報告書は承認。
先住民の中には、IWCに捕獲の許可をもらうことが屈辱と考える人たちもいて、どうすればIWC の管理と先住民の人たちの思いとの調和が図られるかということも課題の一つになってきた。今回の枠の自動延長などもその例の一つだと考えられるが、科学委員会の助言も入れ、提案そのものがかなり先住民の要望をそのまま受け入れたものになっており、まあまあ満足した結果となっているようだ。

枠の自動更新などかなり大胆な修正の行われた今回の提案だが、議論は概ね好意的。
ただし、インドやガボンなどのように、将来的には非致死的利用の検討してほしいという要望や、グリーンランドで捕獲されているザトウクジラの系群のうち、カリブ諸国のWW対象となっているものが存在する可能性があり、写真判定などを求める(アルゼンチン)などの声もある。

ちなみに、セントビンセント&グレナディンの捕鯨は、アメリカのいわゆるヤンキー捕鯨が元であり、他のものと一括するのに対して反対の声がある。
また、ドミニカ共和国の提出した2014/15期のグリーンランドの捕鯨は違反(2014年会議で枠を否定された経緯がある)であるという決議案は撤回されたが、しこりは残っている。
自動更新に対する懸念も幾つかの国やIUCNから出されている。

問題は、すべての参加国が先住民生存捕鯨を支持しているというのに、すべて一括して賛成か反対かと問うことに対しての抵抗があることで、今回の附表修正を支持する声がともすると「ASWを支持するなら細かいことをツベコベ言うな!」という無言の圧力に傾きがちなことは問題ではないのか、と思う。

2日目は終了。
1日目は恒例の主催国政府のレセプション。会場のある高級リゾート「コスタォン・ド・サンティーニョ・リゾート」の食堂(ビュッフェ会場)で、幾つかのテーブルを囲んでのディナーブッフェ。
ちなみに、開催前に水産庁のM氏がいうに、会場ホテルがいくら治安がいいと言っても1泊5万円は高すぎ。結局治安の外に行かなければならない、と言っていたが、結局、政府代表ご一行様は、高級リゾートにご宿泊の模様。例の某’有名’監督が、一泊1万5千円で泊まっていると言っていたそうで、きっと政府ご一行様はみなさん団体割引でもしてもらったのだろうと推測。もっともそれでも私たちのところの三泊分ですが。

2日目はやはり恒例のNGOのレセプションで、ビーチのレストランを借り切ってのパーティ。政府主催はメディアを入れないがこちらは誰でも参加できる無礼講。会場では、懐かしいボサノバの今風アレンジのギター演奏(日本でも50年前にはすごく流行っていた!)。そして、プラスティックフリー、ミートフリーのブラジル風ビュッフェ。
昔馴染みの人たちと今の日本の若者の保守化の話などしていたら、ある国の代表が、「ねえ、日本は一体どうしたいというの?あなたなら答えられるんじゃないか、って言われたんだけど?」。
「そうですね。日本はとにかく、国の原理・原則を強く主張したいだけだと思う。そうすれば、国に帰って次の予算が取れるから。とにかく具体的な解決ではなく、メンツが大事なんです」などと下手な英語で説明していたら、別の国の代表もやってきて「数年前に、水産庁の役人と話したんだけど、話が全く抽象的で、クジラにも捕鯨にもそれほど具体的な関心がないように見えて残念だった。とにかく、大切なのは国の体面、一種のナショナリズムだよね。まるで筋肉対決やってるみたいだ」と。
見透かされていることを知ってかしらずか、「もうこれ以上同じ議論はしたくない」、とか、「IWCは終わりだ」とかよく言うよ、と思いませんか。

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2018年10月12日 (金)

IWC67会議報告−1日目

9月10日、10時きっちりに森下丈二議長が開会を宣言。
翻訳機械の取り扱い説明。メディアへの注意事項。ブラジル政府の挨拶までの時間つぶしの面白みのないジョーク、などなど。

ブラジル環境大臣の挨拶は、パリ協定を例に、地球の将来への国際社会の取り組みについて、特に国境を超えた生物多様性を人類が賢く利用するための保全措置などを提唱。沿岸域での海洋保護区の取組紹介とともに、2017年のボン条約におけるサンクチュアリ・イニシアチブが全会一致で採択されたことを紹介し、今回提案している南大西洋サンクチュアリの実現に向けて管理計画等の整備など前進していることを紹介し、採択を求めた。

そのあとは、サントメプリンシペ、とリベリアの持続的な水産資源の利用の推進についてのコメントと続いた。
ちなみに、サントメプリンシペは、西アフリカのギニア湾に浮かず火山列島で、人口は16万6千人。リベリア共和國は、同じく西アフリカの国で、国名はラテン語の「自由な」に由来。西アフリカ諸国と日本は結構つながりが深い。
いずれも、コート・ジボワールやガーナなどと同じく、日本政府が力を入れているCOMHAFAT(大西洋沿岸アフリカ諸国漁業協力閣僚会議)のメンバー国でもある。そういえば、最終日に、COMHAFATメンバーだという沿岸漁民の女性が、持続的な水産資源の利用を訴え、クジラが魚を食べ過ぎることに言及してたっけ。

続いて、参加国のうち政府閣僚級の挨拶。
まず、オーストラリアの環境大臣がIWCのガバナンスについてコメント。サンクチュアリの必要性への理解と、日本の特別許可捕鯨に関して透明性の高い情報の上での議論を求めた。また、今回の日本提案について、大規模商業捕鯨は過去のものであり、認められないこと、IWCの運営が当事者すべての利益にはかなっていないにしても透明性の高い議論で良い会議運営ができていると讃え、また、かつては捕鯨の管理のみで保全ができたが、現在の脅威はそれだけでは済まないとし、多様な脅威に立ち向かう必要性を訴えた。

次は日本。まず、谷合正明農水副大臣が、今回重要なことは先住民生存捕鯨だけではなく、長く解決できなかった真の課題の解決を目指すことだと表明。「遅くとも1990年までには科学的評価を行うとしてきたモラトリアムの解除がまだできていないとし、(出た!前のブログでも書いたが、1990年にはミンククジラの推定個体数も、RMPの合意もまだで、科学的に評価ができるわけがない。水産庁さん、’国の顔’として話す人に恥をかかせてはダメじゃないの!)、世界中に鯨肉が必要な人が存在することに敬意を払うべきで、意思決定を尊重しない会議はグローバルガバナンスにとって逆効果だと主張した。(意思決定に逆らい続けているのは・・・ねえ)
次は、岡本三成外務政務官。(お二方とも公明党だった)
まず、IWC科学委員会の成果を称賛。一方で、条約が追求する目的が果たされていないとした。加盟国の求めに従い、条約の趣旨と目的の実現を目指すべき。しかし、これまで共存の道を目指してきたが失敗してきたとし、日本だけでなく、同じ意見の国々の主張を尊重し、建設的な議論をするための転換点と今回を捉えるとコメント。

確かに条約の目的は「鯨類の適切な保全を図って捕鯨産業の秩序のある発展を可能にする」だが、’捕鯨産業の秩序ある発展’が現在可能かどうか。
日本についていえば、かつての捕鯨産業は全て手を引く中、補助金なしでは公海での操業だけでなく、沿岸海域でも採算が合わない事業になりつつあり、それが商業捕鯨を再開することによって回復するとも思えず。
ノルウェーやアイスランドでは留保して沿岸域での商業捕鯨を実施しているが、同じように鯨肉消費の落ち込みもあり、日本への輸出が期待されているし、アイスランドに至っては、今年、国内向けのミンククジラの捕獲を、収支が合わないと取りやめてしまったくらい。
日本支持のカリブやアフリカ諸国がどうしても捕鯨をやりたいと言っているならまだしも、彼らの求めているのはいわゆる食料安全保障なので、その解決が限られた資源でしかないクジラの捕獲とも思えず。また彼らが今クジラ肉が食べたいとも言っているわけではない。
それよりも、条約ではまず「これ以上の乱獲からすべての種類の鯨を保護することが重要であることにかんがみ」とまず保全を訴えているわけだから、食べたいがための既得権獲得を認めさせるために、『取らねばならない!』と意気込むことがそれほど重要か。今の所、IWCは鯨類の管理をまずまずうまくやっていると言えるのに。

セレモニーはおしまいで、次に事務手続き。今回から、レベッカ・レント博士が事務局長として、参加国(89のうち現時点では75カ国)とか、分担金が支払えていなかったり、信任状が不備だったりして投票権がない国を読み上げる。
議事運営の確認など、議長に変わり、議事の概要、個別議題の確認など進行上の説明に移る。
先住民生存捕鯨に関する決議案が取り下げられたこと、また、日本が附表修正と決議案との二本立ての提案をパッケージとして提出していることの紹介。
内容修正についての意見(チリ「議案85でSPをscience permit としてるけど、special permitでは?」と細かい)

議題採択され、次に科学委員会フォルテュナ議長によるわかりやすい詳細な委員会報告。(2014年の北門議長の短い報告とつい比べてみたり)
資源評価について。RMPが優れているとして他の漁業機関等で使われていること。今後、保全、管理においてどのような展開が可能か、など、前向きな説明。
北太平洋ミンククジラの資源評価とインプルメンテーションの開始について。同じくニタリクジラについてはまだ継続中であることなど。
先住民生存捕鯨の捕獲枠算出についてはすべての評価がすみ、影響はない状態。
次に、保全委員会との協働で実施している小型鯨類、アラビア海の希少なザトウクジラに関する懸念。
鯨類のDNAガイドラインの更新。
混獲、ら網についてデータベース化したこと、IMOに協力して船舶との衝突回避に関する小委員会に参加。
その他環境影響懸念について。
小型鯨類の生け捕り問題。特にロシアのシャチの捕獲。
ホエールウォッチングに関するガイドブックを公表したこと。
決議23に基づき、日本の調査捕鯨の評価についても言及があった。
そのあとで質疑。
科学委員会報告詳細は以下。
RS6940_SC67bReport.pdf

次は、保全委員会(政府訳では保護委員会)報告。
科学委員会との協働と資金調達。
ホエールウオッチングガイドラインのウェブアップなど。

そのあとの議論では、保全委員会も科学委員会同様年次会合が持てないか(オーストラリア)
小型鯨類は現在IWCの管轄外だが、科学委員会は鯨類の専門知識を有する科学者が揃っており、他機関とも共有すべき(ニュージーランド)など。
詳細は以下。
IWC_67_REP_05.pdf

保全委員会のガバナンスの評価についての議論。
2016年にもガバナンスの評価に関する決議も出ており、主要関係者への質問等を踏まえ、ビューロー会議(本会議が1年おきになったので、閉会中に課題整理等をする。決定権はない。本会議議長、副議長、財運議長と各地域代表)を経て、科学委員会、事務局との関わりなど関係性を強化すること、決議のフォローアップ、補助機関によって効率化を図るなどの議論があった。
一方で、財源の限界から、どのように作業を効率化し、優先的な課題をこなすか、本会議と補助機関、そして外部のステークホルダー(環境関連条約など)とのコミニュケーションの強化などについても議論された。
科学委員会とともに毎年会合を行うことは全体としては受け入れられていないようだった。

詳細は
IWC_67_CC_05_rev1.pdf

次に附表修正提案(参加国の4分の3の賛成が必要)に関する概要紹介。各提案5分ずつ。

アメリカから、先住民生存捕鯨実施国4カ国提案として、(本会議が隔年になったことを踏まえ)7年見直しを一度行って年度を揃え、次から6年ごとの見直しを提案。キャリーオーバー(年度内に捕獲頭数に達しない数を翌年に持ち越す)に関して、環境によって捕獲頭数に到達しないため捕獲のリスクが起きるので、全体として捕獲数が変わらないこと、また情報提供を怠らず科学委員会による継続的な判断をあおぐなどで問題を防ぐことを前提に提案。実質議論は後で。

次に、南大西洋サンクチュアリのブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ガボン、ウルグアイの共同提案。
これまで指摘されてきた管理の不十分性を補う管理計画の策定が紹介された。また、国連海洋法条約の元で保障されたそれぞれの近隣諸国の権利を損なうものではないことが強調された。

詳細は
IWC_67_10_rev1.pdf

次は、ご存知日本のIWC改革提案。
議長は、附表修正と決議案と二つあるので、それぞれ5分で10分ね、と倍の時間配分。

資源の安定している一定の鯨種に捕獲枠を設ける附表の修正(10eに一定の鯨種に枠を設ける項目 fを追加)と持続可能な捕鯨委員会の提案(先住民生存捕鯨を含む)。既存の保全委員会ともう一方の側の委員会の設立(決議案)。科学委員会に対して、RMPのもとでの捕獲枠を求めるなど持続可能な鯨の捕獲を目指して各委員会の中でコンセンサスを得られれば、過半数での票決が可能にあり、双方にメリットがあるはず。
背景説明として、これまで機能してこなかった管理機関としてのIWCの役割を果たすための改革案をパッケージで提案し、コンセンサスを目指す。これがIWC を改革する唯一の方法。共存できることを望む。

附表修正提案の後は決議案の紹介。
まず、オーストリア提案の人間由来の水中騒音問題。音響の動物である鯨にとって、聴覚障害など生理的に問題を引き起こす恐れ。また生息域や繁殖域から離脱せざるをえなくなることもあり、今後長期的な影響についてはまだ不明。科学委員会の緊急対応と他機関との協力で緩和措置をとることが必要。
(思えば、2000年、AWIのベン・ホワイト氏が米海軍の低周波ソナーのことで再度イベントを行い、その後、日本にも配備されるということで、勉強会を行ったこともあった。騒音ひっくるめて正式議題に取り上げられるようになったんだ、と感慨深い)

次はガーナ提案の食料安保。将来の人口増加で96億人が飢餓に直面する恐れ。漁業が重要になる。リオ+20の海洋保全と利用、またSDGs14にもあるように、環境リスクを見越して問題の完結とする必要がある。鯨は何千年も利用されてきた。IWC加盟国の多くはまたFAO加盟国でもある、食料供給と文化的生活のため協力してミッションを達成する。

ブラジルによる流出した漁具による鯨類のら網に関して。絶滅に瀕する鯨種にとっての脅威になっている。発見のためのテクノロジーや他機関との連携が必要。
フロリアノポリス宣言。
IWCの21世紀の役割として提案。保全に関する貴重な活動を支え、モラトリアムを継続、科学的活動としての保全の強化を訴えるもの。

次は、独立ガバナンス評価のコンセンサスでの採択。

グリーンランドの提案は取り下げ。

次は、チリのクジラの生態系への役割と生物多様性への貢献についての説明。クジラの存在が地域の健全性に貢献している。
ボン条約との連携の強化と決議の共有が必要。

サクサクと1日目の議題終了。

外では、捕鯨に反対する人たちのパフォーマンスが。


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2018年10月 9日 (火)

IWC67会議詳細報告−その前に

 IWC67総会後、案の定というか、各紙は日本政府の言い分通りの報道を行ってきた。
そして、捕鯨議連は総会を開き、さらに言い分を強めてIWCのあり方を問題視し、脱退に言及。
外務省が及び腰だと呼びつけて脅したりしているようだ。
しかし、反捕鯨国が商業捕鯨という言葉そのものを嫌うとか、科学的ではないとか行っているが、その言い分といえば国内向けで、ちょっとでも中身を分かっていれば茶番ではないか、と疑うようなものだ。

例えば、10月 日付の浜田議員のインタビュー。「前からひどい会議だと思っていた」そうで、その例としてフロリアノポリス宣言が「宣言と名のつくものなら本来はコンセンサスで本来はコンセンサスで採択されるべきものだが、多数決で強引に」(なら、持続的な利用を歌った2006年のセントキッツ宣言はどうよ? ’強引に’採決したんではなかったっけ?)
フロリアノポリス宣言については、日本の「IWC改革提案」に対抗して出されたものという側面があるのでちょっと引っかかるものが残るが、結構真面目に合意形成が図られていた。
一方で日本の「改革案」は、コンセンサス合意と言いながら、中身はこれまでの対立構造をそのまま持ち込んだもので、会議場でもいろいろな人から「え?日本はどうしてこんなのを出してきたの?真意はどこにあるの?」と質問されたり、驚く声が多かった。「二極化を防ぐために双方に利益がある」と言いながら、「持続的捕鯨委員会」のような二極化を拡大するような提案を出しておいて、何をか言わんや、である。「地球B」は存在しない。まるで保全も管理も机上の空論がごとし、に見えてしまうのだが。

また、彼らの好きな言い方に(モラトリアム見直しに関して、1990年に行うという当初の話を持ち出し)、「科学に基づいた見直しを行うといったん決めたことを守らずにここまで来た」と言うが、1990年にはまだ日本が捕獲したがっていたミンククジラの推定個体数も明らかではなかったし、日本も合意した改定管理方式(RMP)もできていなかった。2006年のJARPA評価でさえ、南極のミンククジラの推定個体数は「増えている、減っている、あるいは変化なし」と全く不明であり、合意されたのが2012年だということもいくらなんでも知っているだろうが、と思う。どこが科学に基づいた見直しだか?
「人権」ではなく「鯨権」には恐れ入った。席を外していないで、あるいは居眠りこいていないで耳を澄ましていれば、南アメリカ諸国の沿岸の小規模、零細漁民と沿岸住民にとって、ホェールウォッチング産業が大きな支援になっていることは理解できたろう。一部利権による商業捕鯨再開よりも、よっぽどSDGsのゴールに向かう道につながるだろうに。

さらには脱退する、するといってしないだろう、という声が出てくると、今度は分担金を出さないもんね、とくる。日本が一番多く負担していると言っているが、調査捕鯨をはじめ、いろいろと厄介ごとを持ち込んでいるのだから、仕方ないのではないだろうか。議員たちの’政治手腕’と言うのがこうしたヤクザまがいの手法だとしたら、この日本の政治の貧困さのまさしく象徴ではないのか、と思われる。

こうした国内報道のいい加減さを身につけ、概要だけで済ますつもりが、少し何が行われたのか書いた方がいいのかなと思った次第である。


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2018年10月 3日 (水)

CITES常設委員会「イワシクジラ海からの持ち込み」は条約違反

 ロシアのソチで10月1日より開催されているワシントン条約の常設委員会で、2日目の昨日、日本の実施している調査捕鯨によって公海で捕獲され、日本に陸揚げしているイワシクジラ肉が商業利用にあたるということが認識された。イワシクジラはワシントン条約で附属書Iに記載されているが、日本はこの北太平洋の個体群に関して留保をつけなかった。したがって、附属書Iに掲載されるイワシクジラを公海で捕獲しても、国内に商業目的で持ち込むことはできない。

21ページによる事務局の報告では、2016年の常設委員会における検証により、日本が海からの持ち込みを行っているイワシクジラ肉が商業目的であるとし、追加の質問への回答と事務局による日本への調査団派遣を受け入れることを求めていたが(今年3月19日から23日まで来日調査した詳細報告を含む)、その最終的なまとめとして、イワシクジラの持ち込み(陸揚げ)が商業目的であるとし、直ちにその是正を求めた。

事務局の報告を受けて発言した外務省の松浦博司審議官は、報告書の幾つかの点では異議があるとし、これまでの日本の立場が正当であるとしながらも、報告書が全体としてフェアであることに感謝し、即刻対応ではなく、来年2月までの是正という時間的猶予を含む2つのオプションが提示されたことを歓迎した。

前回、日本政府を代表して発言した水産庁が国際捕鯨取締条約第8条を盾に立場を譲らなかったため、激しい批判にさらされたことの反省に立ち、より穏やかな解決に向けての日本の立て直し策であったと思われる。

その結果かどうか、会場からは条約違反として直ちに対応すべきという意見だけではなく、日本への理解もちらほら見られるようになった。ロシアなど、全面的に日本の立場を擁護するものから、即刻の制裁措置を求める意見まで出たところで、座長(カナダ)がどのような解決をすべきかを問い、日本はここでも2019年2月までに国内のすべての関係者と協議し、遵守規定を尊重して是正に対応する、また、アメリカ等から出された常設委員会前の許可発給は、調査船団の出港を常設委員会後に行い、それまでの発給は行わないと譲歩提案を出した。
(実際、北西太平洋での調査捕鯨は、今年は5月17日とやや早かったものの、昨年は6月14日、その前は(JARPNIIとして)5月12日、6月9日、5月16日と、必ずしもその時期は譲歩と言えるようなものではないが。)

結局、来年2月までの日本の是正措置に関する報告書を受け取り、検証して来年5月に行われる常設委員会の決定に付されることになった。

国内報道では、一部、反捕鯨国が〜とか、科学調査なのに〜とかいう頓珍漢なものも見られたが、今回はワシントン条約という国際条約の中で、その遵守義務が関係国間でどのようにして守られるのか、という試金石のようなものだったわけで、その意義は小さくない。
インディペンデント紙に掲載されたエリカ・ライマン教授の言葉を引用してみよう。

"There was no question about Japan's non-compliance. With this decision, the CITES SC put the integrity of the convention above politics,"
「日本が遵守義務を違反したことは間違いありません。この決定によって、CITESの常設委員会は政治判断の上に条約上の整合性を置いたと言えるでしょう」

https://www.independent.co.uk/environment/japan-whaling-cites-trade-sanctions-sei-whales-illegal-meeting-sochi-a8564871.html

バトンは日本に投げられた。過去を見てもわかるように、こうした国際的な判断に対して(あちら方面からの)子供じみた抵抗があると思われるのだし、本来であれば、即刻許可の発給を止めるところを、グダグダとできないのが今の日本政府なのだ。
国内世論の正しい形成が望まれる。

事務局サマリー。
https://cites.org/sites/default/files/eng/com/sc/70/exsum/E-SC70-Sum-03.pdf

2018年10月 1日 (月)

海洋資源の持続可能な利用とワシントン条約:グローバルな規範形成と日本の対応

9月26日、早稲田大学グローバル研究所主催の掲題のシンポジムが開かれた。事務局の一人として関わったことから、書くつもりであったフロリアノポリスでのIWC67総会の詳細報告の前に、少しその感想を書いてみようと考えた。

ご存知のように、日本は現在水産資源のみ21種をワシントン条約の留保対象として来た。それに関しての国内全般への十分な説明はなく、省庁間のうちわの議論のみで行われて来たことで、その検証作業は知った限りでは実施されていない。
そのような状況の中、アカデミックな場で多様な主体による検証が行われることは快挙と言えるものだが、今後に向けて、いくつかの問題を感じた。
まず、趣旨説明が行われなかった。代わりにワシントン条約の簡単な紹介があった。残念ながら、これがこの後の議論の深化に多少とも影響を与えたような気がしている。

最初の演目は「ニホンウナギの保全と持続的利用:現状と課題」で、中央大学の海部健三氏の話だ。
いつも思うのだが、彼の言葉はその実績に支えられており、非常に明快で訴える力が大きい。彼の人気の所以だと思われるが、今回も、ニホンウナギの現状とともに、持続的な利用を可能にするためのポイントが「消費速度の低減及び再生産速度の増大」として語られた。シラスウナギを含めて、漁獲の制限と生息環境の回復が必須だが、いずれも実現されていない。対策の実現の中で、ワシントン条約という国際取引をどのように使っていくか、その役割の明確化を訴えた。
「ワシントン条約は敵か味方か:サメの管理を例に」は東北大学の石井敦氏によって話された。サメの生態とその科学的地検の不確実性を出し、サメを条約の規制対象とする動きを紹介。しかし、日本はこれに一貫して反対してきた。理由としては、(他の水産種でもそうなのだが)ワシントン条約には管理するノウハウがないので、むしろ地域漁業管理機関の管理が適切だというものである。彼の主張は、ワシントン条約を漁業の敵とみなすのではなく、資源管理にとって相補的に利用したほうがいいという提言であった。
しかしここで、水産庁の太田審議官が噛みついた。彼の話の流れにある幾つかの事実について可否をただし、日本政府の立場を正当化したのだ。しかしこれは、彼の提言を損なうものではないし、むしろ、どのような相補的な利用が可能なのかというより深い議論に持っていくことで、今後の資源管理の問題を明らかにできたと思う。しかし、審議官に唱和する会場からの石井氏の主張が「主観的だ」などというあまり生産的ではない意見もあって、せっかくの提言が生きなかったのは残念。

次は、水産研究・教育機構の中野秀樹氏による「大西洋クロマグロCITES掲載の顛末」という1992年から何回か、ワシントン条約で提案されてきたクロマグロの附属書掲載提案が、もしかしたら地域漁業管理機関における資源管理強化の推進に役立ったかもしれないというような話で、やはりワシントン条約と地域漁業管理機関との関係を俎上にあげながら、資源の管理に重点を置いた話題提供だった。
本来はこの3つのテーマの話を検討して次に繋げる作業が必要だったのだろうが、ワシントン条約による規制が正しい在り方かどうか、のような矮小化された議論に終わった。
ちなみに、日本の漁業管理には、予防原則があまり重要視されていないようだ。

もともと、このシンポジウムは10月1日からロシアのソチで開催されるワシントン条約常設委員会を意識して行われたものだ。その中でも、日本のいわゆる‘イワシクジラの海からの持ち込み’が条約違反に当たるかどうか、という判断が行われるということに関して、メディア等を通じて広く一般に知らしめることが大きな目的としてあった。この点について、午後のセッションでゲストスピーカーとして来日したアメリカ、ルイス&クラークロースクールのエリカ・ライマン教授のプレゼンテーションがあった。
ワシントン条約では、絶滅の恐れの高さによって国際取引を規制している。その中で最も規制の強いのは、附属書Iに掲載される野生生物で、一切の商取引が認められていない。今回の北太平洋のイワシクジラはこれに該当し、また日本が数多く行っている留保品目には入っていない。
ワシントン条約では多国間における取引の規制が行われているが、海洋に関しては、公海で捕獲され、自国に持ち込まれるものについて「海からの持ち込み」という規定がある。付嘱書Iに掲載され公海で捕獲され、持ち込まれるものに関しては、調査目的であることが前提となり、商業的な流通は原則認められていない。日本の場合、イワシクジラの調査捕鯨による捕獲された肉の国内への持ち込みが、この規定に反するという議論が昨年のワシントン条約常設委員かいで大きな議論となり、その結果、日本は追加質問に答えること。そして事務局による調査団の派遣を受け入れることを条件に、今回の常設委員会に結論を先延ばしにした。
ライマン教授は、この結果が事務局によって商業的な利用が主目的である可能性が強いとして、常設委員会に対して「違反認定しない場合は条約規則や諸決議との間に不整合が生じる」と訴えている。
日本は、北西太平洋でのイワシクジラの捕獲は、国際捕鯨委員会で認められた8条の規定によるものとしているが、捕獲の科学性や妥当性の是非を問題にしているのではなく、その製品が陸揚げされてからを問題にするのだという。
彼女は、決定は常設委員会の仕事としながら、公海で解体され、一部の調査用のサンプル以外の大部分が可食部分として処理され、陸揚げされて調査機関に所蔵されるのではなく、共同販売という鯨肉の販売会社に保管され、学校給食やレストラン、通販などで広く流通されている事実を指摘。商業的な流通というのはもしそれがすべて次回の調査捕鯨の費用に充てられるとしても、また事実上の利益を生んでいなくても、利益を得るための行為であることを明らかにした。
また、このケースそのものが、ワシントン条約における遵守規定の大きな試金石になると指摘し、常設委員会の決定に期待した。
(2に続く)

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