« 海洋資源の持続可能な利用とワシントン条約:グローバルな規範形成と日本の対応 | トップページ | IWC67会議詳細報告−その前に »

2018年10月 3日 (水)

CITES常設委員会「イワシクジラ海からの持ち込み」は条約違反

 ロシアのソチで10月1日より開催されているワシントン条約の常設委員会で、2日目の昨日、日本の実施している調査捕鯨によって公海で捕獲され、日本に陸揚げしているイワシクジラ肉が商業利用にあたるということが認識された。イワシクジラはワシントン条約で附属書Iに記載されているが、日本はこの北太平洋の個体群に関して留保をつけなかった。したがって、附属書Iに掲載されるイワシクジラを公海で捕獲しても、国内に商業目的で持ち込むことはできない。

21ページによる事務局の報告では、2016年の常設委員会における検証により、日本が海からの持ち込みを行っているイワシクジラ肉が商業目的であるとし、追加の質問への回答と事務局による日本への調査団派遣を受け入れることを求めていたが(今年3月19日から23日まで来日調査した詳細報告を含む)、その最終的なまとめとして、イワシクジラの持ち込み(陸揚げ)が商業目的の可能性が高いと指摘し、委員会での議論と結論を求めた。

事務局の報告を受けて発言した外務省の松浦博司審議官は、報告書の幾つかの点では異議があるとし、これまでの日本の立場が正当であるとしながらも、報告書が全体としてフェアであることに感謝し、即刻対応ではなく、来年2月までの是正という時間的猶予を含む2つのオプションが提示されたことを歓迎した。

前回、日本政府を代表して発言した水産庁が国際捕鯨取締条約第8条を盾に立場を譲らなかったため、激しい批判にさらされたことの反省に立ち、より穏やかな解決に向けての日本の立て直し策であったと思われる。

その結果かどうか、会場からは条約違反として直ちに対応すべきという意見だけではなく、日本への理解もちらほら見られるようになった。ロシアなど、全面的に日本の立場を擁護するものから、即刻の制裁措置を求める意見まで出たところで、座長(カナダ)がどのような解決をすべきかを問い、日本はここでも2019年2月までに国内のすべての関係者と協議し、遵守規定を尊重して是正に対応する、また、アメリカ等から出された常設委員会前の許可発給は、調査船団の出港を常設委員会後に行い、それまでの発給は行わないと譲歩提案を出した。
(実際、北西太平洋での調査捕鯨は、今年は5月17日とやや早かったものの、昨年は6月14日、その前は(JARPNIIとして)5月12日、6月9日、5月16日と、必ずしもその時期は譲歩と言えるようなものではないが。)

結局、来年2月までの日本の是正措置に関する報告書を受け取り、検証して来年5月に行われる常設委員会の決定に付されることになった。

国内報道では、一部、反捕鯨国が〜とか、科学調査なのに〜とかいう頓珍漢なものも見られたが、今回はワシントン条約という国際条約の中で、その遵守義務が関係国間でどのようにして守られるのか、という試金石のようなものだったわけで、その意義は小さくない。
インディペンデント紙に掲載されたエリカ・ライマン教授の言葉を引用してみよう。

"There was no question about Japan's non-compliance. With this decision, the CITES SC put the integrity of the convention above politics,"
「日本が遵守義務を違反したことは間違いありません。この決定によって、CITESの常設委員会は政治判断の上に条約上の整合性を置いたと言えるでしょう」

https://www.independent.co.uk/environment/japan-whaling-cites-trade-sanctions-sei-whales-illegal-meeting-sochi-a8564871.html

バトンは日本に投げられた。過去を見てもわかるように、こうした国際的な判断に対して(あちら方面からの)子供じみた抵抗があると思われるのだし、本来であれば、即刻許可の発給を止めるところを、グダグダとできないのが今の日本政府なのだ。
国内世論の正しい形成が望まれる。

事務局サマリー。
https://cites.org/sites/default/files/eng/com/sc/70/exsum/E-SC70-Sum-03.pdf

« 海洋資源の持続可能な利用とワシントン条約:グローバルな規範形成と日本の対応 | トップページ | IWC67会議詳細報告−その前に »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。