IWC67会議報告−1
9月10日より開催されていたIWC国際捕鯨委員会の本会議が14日に終了した。
ご支援くださった皆さんにお礼を申し上げるとともに、少し遅れてしまった報告をお送りしたい。
今回の会議に関しては、IWC事務局のライブストリームもあり(フランス語、スペイン語はポルトガル語訳だったそうだが)、また、国際環境会議の報告をしているIISDが詳細報告をしているので、かなり内容的にも透明度が高まったと思う。日本語訳もあれば、もう少し大本営発表の虚しさがわかろうというものだが。
http://enb.iisd.org/download/pdf/enb3402e.pdf?utm_medium=email&utm_campaign=2018-09-03%20-%20IWC%20Brazil%20-%20ENB%20-%20English%20-%20Summary%20SW&utm_content=2018-09-03%20-%20IWC%20Brazil%20-%20ENB%20-%20English%20-%20Summary%20SW+CID_1eaf185e75c07c32577ff2b4bce9a3af&utm_source=cm&utm_term=PDF
67回会議は、まず、世界的にクジラの非致死的利用の流れが定着してきたことが確認できた会議だった。
フロリアノポリス宣言の採択 (拘束力はないが)で明らかなように、捕鯨よりも沿岸地域における小規模、零細漁業者によるホェールウォッチング産業の振興が評価された。
今時、捕鯨のための大型船団の造船や維持は採算が合わないことが明らかになっており、それよりも地域漁業者の運営と観光、地元住民の組み合わせによる非致死的利用の方が現実的で開始しやすいだろう。
それに合わせて、IWCはガイドラインを策定し、このほど、オンラインで入手可能なハンドブックを公開している。
もう一つ、管理の前進としてあげられるのが、先住民生存捕鯨(AWS)の捕獲枠の更新とそれに伴う諸条件の整備で、これまであった先住民の方々の不満を概ね解消できるものとなったようだ。求められたコンセンサスとはいかなかったが、先住民生存捕鯨の必要性では一致するも、例えば捕獲枠の自動更新は今後問題にならないのか、セントビンセント&グレナディーンのアメリカの捕鯨者が持ち込んだヤンキー捕鯨が果たしてASWなのか?など積み残し課題が残っているので、反対票があったことは結果としては良かったと思う。
さらに、管理能力における瑕疵だった日本の調査捕鯨に関しては、前回、評価のための常設作業部会の設置が採択され、実際に、かなり満足のいく仕事を果たした。常設委員会議長は、オーストラリアのニック・ゲイル氏で、今回報告では評価を行なった専門家パネルの報告書や科学委員会の議論を一般でもわかるように噛み砕いており、好評だった。また、調査捕鯨の商業性が指摘され、この報告書が採択されるかどうかでもめたが、結局は議長サマリーに収められることになったのは管理における成果と思われる。
実際、留保の上で商業捕鯨を実施している、ノルウェーでも枠をこなしきれず、またアイスランドは今年、国内用のミンククジラの捕鯨を、沿岸に設置されたサンクチュアリのために燃油の採算が合わないという理由で休漁となった。もう一つ、日本用のナガスクジラ捕獲を実施しているクバルルは、ロフトソンという捕鯨業者のワンマン経営で、息子は事業を受け継ぐことを否定している。今回選出された首相が緑系ということもあり、政策としてそろそろ捕鯨をやめる選択肢も上がっているようだ。
また、これまでは管轄外であった、小型鯨類についでも、鯨類の専門家の集団を抱えた保全管理組織として国際的にも責任ある対応を取るべきというこえが強まって来ている。
ということで、非致死的利用の流れは収まりそうにない。
捕鯨を継続したい日本は、主張する沿岸国の権利と、コモンズである鯨類の捕獲に関して今後どのような国際合意を求めていくのか、慎重に、地道に検討する必要がある。
一方で、IKANとしては、少数意見を簡単に押しつぶすような方法ではなく、柔軟で受け入れやすい撤退の方向性を示してほしいと思っている。
photo Junko Sakuma
« 北西太平洋沖合調査捕鯨 | トップページ | IWC67会議報告−2 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント