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2018年5月30日 (水)

八戸訪問

 5月25、26日と、沿岸調査捕鯨の様子見に、八戸を訪問した。25日は、暗くなるまで船が帰ってこず解体はなし、翌日は、よく晴れた日だったが、船は出なかった。

沿岸における調査捕鯨は、2002年にJARPNIIのもと、日本鯨類研究所の業務委託で沿岸の小型捕鯨業者により開始された。沿岸の調査捕鯨に携わる4社は、2010年に「地域捕鯨推進協議会」を組織し、「沿岸のミンククジラ猟の際会及びその継続に寄与」することを主目的に、当初は5、6月に三陸、9月に釧路でおこなわれた。昨年からは、調査捕鯨新法の下で政府の直轄となり、NEWREP-NP(新北西太平洋鯨類科学調査計画)により、太平洋側で80頭、新たに開始された網走で47頭の捕獲枠が与えられており、サンプルを提供した残りは「生肉」として現地で販売される。
八戸が加わったのは、沿岸の太平洋側のミンククジラの調査の一環で固定的ではないということだ。今回、4月末まで行われた鮎川での調査捕鯨で何頭捕獲されたかはまだ明らかになってはいない。
(5月4日のデーリー東北の記事中に、「鮎川では18頭捕獲」という記事がありましたので訂正します。)

八戸は、かつて漁民たちが捕鯨会社の焼き討ち事件を起こしたところとしても知られる。クジラ解体処理による海の汚染に対して、行政や捕鯨会社が訴えても対処しなかったことから、1000人を超える漁業者が捕鯨会社と関連施設を焼き討ちしたとされる。

また、八戸には、日本昔話にも取り上げられた「八戸太郎」伝説があり、これによると、大きなクジラがイワシの大漁をもたらすとして「八戸太郎」と名付けられて敬われていたところ、不幸なことに熊野灘で漁師のモリに突かれて必死の思いで戻ってきた浜で息絶えて「クジラ石」になったという話である。八戸漁港の南端の恵比寿浜にはクジラ石を祀る社がある。

このところ、結構人気の日曜日の館鼻岸壁の朝一まではいられなかったのでどの程度の需要があるのかわからなかったが、八食センターや陸奥湊の朝市ではホタテ(稚貝が結構多い)やホヤ、カニ、イカ(すごく小さい)などと並んで少量ながら「ミンククジラ生肉」が販売されていた。このところ、水産物水揚げが激減し、名物のサバはノルウェー、ゆるキャラにまでなっているイカに至ってはニュージーランドからの輸入という話で、少しであっても売り場の賑わいとしてはありがたいのだろうか?
ちなみに、魚売り場でよく売れていたのは、私の見た限りではマグロだったが。

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2018年5月23日 (水)

海洋基本計画

 日本の海洋に関する法の集約は、内閣府の属する「海洋基本法」で、その実施にあたっては、海洋政策本部が海洋基本計画に基づき当たることになっている。
海洋基本法は2007年に制定され、基本計画は5年ごとに見直しされ、今回が第3次の計画策定になっている。

最初の2回までは、中核たる産業推進の学者や関連企業に加わり、私たちNGOもヒアリングを受けた。しかし、今回は、20日程度のパブコメのみである。

昨日は、笹川平和財団に所属する海洋政策研究所が主催する海洋フォーラム151回として、海洋政策本部の内閣府総合海洋政策推進事務局長の羽尾一郎氏が先週(15日)に閣議決定された第3期計画について説明された。

会場は、それらしい関係者で満員の盛況である。せっかくの海洋全般にかかる政策であるのに、関心を持つのは法に直接、間接的に利害関係のある産業界(と関連の研究者かな?)が主なのが少し残念。

しかし、なにせ内閣総理大臣が長である法律である。今回の主軸は「政府一丸となって領海や海洋権益を守り抜く」と、「海洋の安全保障」が’いの一番’に挙げられている。昨今の近隣諸国との対話の欠如からすれば、こ右下やや被害妄想的な立ち位置は当然のことかもしれないが、国際的な海洋保全の大きなうねりの中では随分と古い話に見えてしまう。

もう一つは、もちろん当初から海洋権益と両輪であった海洋開発である。メタンハイドレードをはじめ、資源として活用’できそう’なものへの試験的な取り組みがさらに加速すると思われる。これについて、羽尾氏自身「ビジネスではなく」とわざわざ注釈をつけていたが、国が資金を出し、日本周辺海域の海洋資源を探査し、利用できそうなものから(実用化できるかどうかとは別に)手をつけるわけである。もちろん、これらに関する研究も盛んに行われる。

今回はこれに北極における日本の関わり方も特だしされることになった。温暖化によって、北極周りの航路ができることや資源開発など、(北極海域における保全の重要性を強調して欲しかったところだが)日本も乗り遅れたくはないということだろう。

もちろん、「開発と環境との調和」という文言も出てくる。2014年、持続可能な開発に関する国連会議で初めて海洋が(14)目標に入ったが、その内容紹介などもちろんなく「エスディージーズに基づいて」と知る人にしかわからない言い方で済ますのは問題だと思った。
一応、海洋保護区への言及があり、愛知目標の2020年までに海域の10%を保護区に、という説明があるが、漁業者による管理区域を含めて現在8.3%だという話となり、PPTでは本文にあった「抽出された重要海域」への言及はない。
まあ、「海洋の保全は健全な産業による」というのが環境保全への説明であるから。
まあ、計画の骨格を作る参与会議の座長経団連の前会長、座長代理はなんとかコンサルティング会社の代表、海洋環境を水産系のお方という顔ぶれなのだから。
それでも、深刻な海洋のプラゴミについては、少し時間をかけて説明していたのは少し嬉しい。使い捨てプラスティックやめようよ、というパブコメ意見を出したのだが。

海洋に関しては、気候変動や酸性化、海洋ゴミなど国際的に活発な議論と保全への動きがある。世界の海洋政策をリードするつもりである心意気はいいが、国際協調の言葉通りに、もっとしっかり国際的な流れの沿った海洋政策を目指して欲しいと思う。

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