« 2017年3月 | トップページ | 2017年5月 »

2017年4月27日 (木)

種の保存法国会審議衆議院その2「穴」

 25日、朝から種の保存法改正に関する審議が、石井実阪大教授(蝶の専門家で、検討小委員会の座長)と日本自然保護協会の辻村千尋氏のヒアリングで開始した。

国会で、絶滅の危機に瀕する種をどのように保全していくのかという議論が行われているこの日、辺野古では、埋め立て工事が始まっていた。
変則的だが、ここは、最後の質問に立った自由党の玉城デニー議員の締めくくりの言葉から始めたいと思う。彼は、今日は非常に「やるせない気持ちだ」という言葉を二度、冒頭に使っている。沖縄の言葉で「チヌワサワサー」と「チルダイ」というのだそうだが、心がざわめき、脱力しているような状態をいうらしい。非常に重要な議論をみんな真摯に行っている、しかしどこかに穴があいている、と彼は訴えた。

辺野古を生息海域の一部としているジュゴンを同法対象に、という意見が繰り返し出ている。この日は、玉城デニー議員はもちろん、共産党塩川鉄也議員もかなり執拗に、他の法律にある規制措置だけではなく、生息域をこそ保全し、種の回復を図るべきではないかと質問し、(ジュゴンを提案制度を使って繰り返し訴えてきた)自然保護協会だけでなく、政府参考人の石井実氏からも、科学的見地からは当然掲載されるべき種であり、様々な障害があるにしても、なんとか保全措置を取り、回復を願いたいというこたえを引き出している。

2002年に共産党岩佐恵美議員(当時)が谷津農水大臣に迫り、水産庁との覚書からジュゴンを除外してもいいという答えを得てからすでに15年。その間、防衛省による「環境調査」という名目での機材投入などからか、ジュゴンは海域から見られなくなったものの、先ごろまた、付近で子連れの個体が発見されている。絶滅回避の、ギリギリの瀬戸際といえるかもしれない。
環境省としても基本は守りたいわけで、今後のレッドリスト掲載の検討において、曖昧ながら海域の保護を含めて検討する、という返事をしている。しかし、この「検討」というのは使いようでどうにでもなる言葉だ。
いつまで検討するつもりかわからないが、生態的なデータも少なくなく、絶滅に瀕していることが明らかである大型哺乳類、しかも世界的に生息域が北限である貴重な種(そしてその生息する海域における沢山の希少種も含め)を守れなくて、一体何のための法律なのか?

海生生物のレッドリスト問題については、同じく塩川議員が非常に的を得た質問を繰り返し、政府参考人の石井実教授から、水産庁は水産資源が重要なので、純科学的には難しいところがあるかもしれない。環境省が評価して、それから水産庁が資源としてどう利用するのか考える、というのが理想だという答えを引き出してくれた。
午後からの審議においても、レッドリストで住み分けをするのではなく、水産庁の持つ知見と研究者の協力を得て環境省が行えば住み分けしなくても済むのではないか?と問いただした。
亀澤局長は将来的に知見を蓄積していきたいという答えだったが、山本大臣は水産庁が「船を持っている」ことが水産庁が評価している妥当な理由だと考えたらしかった。水産庁だって、調査が必要な時は、業務委託したりしているし、予算をつければいいだけの話で、船を持つことがそれほど重大なことなのか?

スナメリについては、毎年のストランディングレコードでは最高の死亡数を示し、研究者の人たちが海洋汚染や混獲、船舶との衝突(特に東京湾)など非常に大きな懸念を示している。
また、シャチのように、北海道で個体識別されている数は羅臼で239頭、釧路で105頭を数えるのみで、北太平洋の東海域で600頭以下という報告もあるというのに、水産庁は1990年代の調査結果として(当時の解析では生活史が類似しているとされるコビレゴンドウからの推定地で1300頭くらいだったと記憶している) 、日本周辺海域全てが生息域だとし、推定個体数は7531頭という途方もない数を出している。
ツチクジラはその生態に未だに未解明のところが多くあるが、小型沿岸捕鯨対象種で、3つあある個体群のうち、希少な個体群と考えられるオホーツク海の推定610頭の群れから毎年10頭の捕獲枠が出ている。そして、このなかに、もしかしたら新種が混じっているかもしれないという調査結果がNOAAから出され、ナショナルジオグラフィック誌で報じられている。まだ最終判定に至ってはいないものの、漁業者はこれを「カラス」と呼び、明らかに異なるクジラをいう認識を持っていたらしい。今回これについての記述などもちろんない。

全体的に、捕獲対象種では減少したと考えられないないから、そして捕獲対象外では脅威がないから、ランク外だといとも簡単に切って捨てている。
これがどれほど信頼できない評価なのか、ことさらに言うまでもないと思うが、肝心の環境省はこれを持って「多くの知見を有する」と評価するのだ。

しかし、こうした情報も一般的には伝えられておらず、陸域の「見える」生き物と比べると親近感にかけるためか、関係者の反応は鈍いと言わざるをえない。また、「クジラ」と言うと、途端に政治的な色合いを帯びてしまうため、下手に近寄りたがらない向きもあるかもしれない。環境省が所轄するかどうか、ということはこの点からいっても重要なものだ。

今回、最終的に付帯決議が12、ついた。科学委員会の独立性、透明性、提案制度に生息地を含む、希少種を保護するための里地里山の保全、違法に輸入された希少種の生息地への変還、ワシントン条約掲載種の国際情勢を踏まえての見直し(これには少し期待)などがあったが、海に関しては六番目に希少性の透明性を高めること、水産庁との令閨では「同法の趣旨に沿って」適切に行うというもの一つ。これで前に進めるのか?という疑問も残る。

感想としては、前進したところもあったが、やはり種の保存法のターゲットは陸域なのだなあということだ。
「穴」。


2017年4月24日 (月)

種の保存法改正審議始まる

 11日本会議場での種の保存法の山本大臣による改正の趣旨説明と民進党による代表質問、18日の環境委員会での改正法案の説明を経て、21日から実質的な審議が始まった。

 (環境委員会の内容は、インターネット中継は次のサイトで。
    http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php)

まず、議長が水曜日(19日)に視察した多摩動物園についての報告をした後、与党、公明党の斉藤鉄夫議員が、環境省に種の保存法の成り立ちと対象とされている種の構成、今後の取り組みなどを質問。
環境省亀澤玲治自然環境局長が、これまでの経緯、改正、そして今回改正によってもたらされる種の保存にとっての進展(特定第2種希少野生生物の指定による掲載種の増加の見通し、動物園、水族館の認定制度による生息域外保全、国際希少野生生物の届出制から登録制への変更)を説明した。亀澤局長は、2008年の生物多様性国家戦略の策定過程で何回も意見交換をした相手で、私が知っている限りでは、生物多様性保全に熱心でNGOに対する接し方も公平な人だと思ってきた。実際、彼が計画課長であったときの第3次戦略では、パンフレットの真ん中の見開きいっぱいに、小笠原のザトウクジラの写真が使われていたこともあって、海の生物多様性保全の前進にはいい機会だと感じていた。残念ながら、そう簡単にことが運ぶ訳ではないことも分かった今回改正議論ではある。

最初の質問者は、共産党の塩川鉄也議員で、のっけから委員会の出席数の低さを問題とし、定足数に達しているのか?と質問した。それへの直接的な返事は議長からなかったが(定足数を満たすたったの15名が欠ける時間があったみたいだ)。
彼は、まず種の保存法掲載のための提案制度について質問。亀澤局長の説明の後、この提案制度の中に、生息地の指定も入っているのかと確認。また、希少種の生息域外保全については、次善の策だと突き放した。
次に、私たちが前回改正で求めてきた専門家による科学委員会の法定化について、かなり突っ込んだ質問をしてくれた。これまで、中央環境委員会がそれに当たるという環境省の答弁であったが、中環審のメンバーの中にはタレントさんなど、誰の目にも専門性に欠ける方もいたことから、検討小委員会を一部手直ししてやるのか、分類群ごとの専門家で構成された常設の委員会を作り、種指定だけではなく、回復を目指す保全対策等、保護管理全体を検討する組織を構成すると、これまでより前向きな答弁があった。あ〜〜〜。
ただし。
今のままでは、海生哺乳類などの海生生物の専門家の検討会は相変わらず水産庁管轄なのだろうか?今回の水産庁の検討会のメンバーを見ても、どうもそれらしい人(つまり現場で生態等を調査、研究している人)がほとんどいないのだが。

民進党松田直久議員の質問は、まず環境教育の必要性について。希少種の生息する土地所有者の財産権について個人の権利と公益との関係をかなりしつこく迫ってはいたが今一歩進まず。「公益」という言葉は最近の傾向からいうと結構危険ではあるが、生物多様性保全に関して一般の土地所有者の理解を促進し、インセンティブをつけていくことは重要だ。最初に書かれた種の保存法(案)に、財産権はなかったそうだで、他省庁との協議の際に付け加えられたものらしい。その次は、掲載種の指定の解除について。オオタカが絶滅危惧種から回復していることから、指定を解除する要件と解除した後の保護措置について質問。
最後は、動物園、水族館の認定制度について、その前に動物園、水族館に特化した法整備が必要ではないか。

次は、国際希少種取引の違反防止の不十分性に関して、今回新たに創設された登録制度でクリアできるというところまでしか行かなかった。個体登録票に所有者の住所と名前をつけるのは、所有者が変わる度に行わなければならず「煩雑」だという本会議での答弁を覆せなかった。

海については、ボン条約についての質問をこれまで何回かされた日本維新の会の河野正美議員がかなり突っ込んだ質問をしてくれた!
まずは、種の保存法ができた当時の環境庁と水産庁の覚書(密約)から。前回改正時の議論では、水野賢一議員(当時)と北川知克議員がそれぞれ、覚書が既に存在しないことを確認したのだが、時期や経緯は不明のままだった。今回の質問に対して、覚書からジュゴンが除外された2002年の翌年に廃棄されたということが明らかになった。それから今までの15年、環境省は、実質管理責任もないような戦略を打ち出したものの、具体策についてはまったく放置したままだったのだ!
実際、今回の海洋生物の水産庁との切り分けは、実質、水産庁支配が続いているのと変わりなく、海のものは環境省的には対象外であると言う認識に変わりはないようだ(もっとも、環境省だけではなく、関係者の大部分にとっても「種の保存法は陸域の議論で手一杯、海まで考える余裕はない」と感じられる節は度々あり、それはそれで問題が深刻だ)。
次に、前回改正の時の附帯決議十に海生生物の選定を積極的に行うということが書かれているのに、今回改正にあたって行われた検討小委員会で海洋生物の専門家が存在せず、海の議論がなかったことはなぜかという質問。
これに対しては、それが法的な措置を必要としていなかったからだということ、また、中環審では議論があった(亀澤さん、これは嘘だよ!臨時委員の白山義久さんが「附帯決議にあるのになんで答申案に海について書かれていないの?」と質問したのに対して、環境省は「レッドリストができていないから」という答えになっていない答えをしただけじゃない。白山さんの一言で最終修正案に、「情報が不足している」などという言い訳が追加されたが、これを議論と呼ぶか?)
それから、海洋生物の対象範囲はどこまで?という質問には排他的経済水域までと認めたものの、生息域の保全についての大臣の答えは、1昨年公表された重要海域の選定を参考に(辺野古も入っていたよね?確か)愛知目標に向け、現在は8.3%にとどまる海域の10%を海洋保護区に設定する予定だ、と説明。確かに、海洋保護区の設置は、その海域で生息する種の保護に役立つから、その意味では、今回取り上げられた陸域の特定第2種の扱いと同じものかもしれない。しかし、現在8.3%と出されている数字の大部分は、地域の漁協によるなんらかの管理の手が入っているというものが多いため、そのまま種の保存法による保護、回復計画にとって適切かどうかと言えばかなり疑わしいものがある。

マグロについては、水産庁の保科正樹増殖推進部長が高度回遊性物については、国連海洋法条約の定めで関係国が共同で管理することになっており、評価することはできないという返事。捕獲数を2014年から2015年にかけて半減させており、管理はできている。(21日の新聞によるとそうでもないようだが。「クロマグロ 漁獲枠突破へ、日本、規制守れず」 https://mainichi.jp/articles/20170422/k00/00m/020/089000c)

山本大臣が、水産庁との共同はすでに行われていると答弁。
また、再改正の必要性については、亀澤局長が、RDBを踏まえて掲載すべきものを掲載していくので改正は必要ないと答弁した。しかし、今後のレッドリスト掲載に関しては、「ジュゴンも含めて」検討をしていくという弱々しくはあるが、獲得もあった。

そのあとは、自由党の玉城デニー議員が質問に立ち、今回の動物園、水族館の認定制度について、本来であれば、動物園、水族館についての規定等きちんと書いた法整備が必要であり、今回のようにごく一部を認定するというのは間違いではないか、と発言。これは至極まっとうな意見だと思った。


明日、25日には参考人によるヒアリングと質疑、そして採決が行われる。
詳細はインターネット中継で見ることができる。

2017年4月15日 (土)

パブコメやっと提出

 締め切りは今日です。

以下:
意見:
指定省令第82条第1項ただし書きに、新たに「しわはいるか」及び「かずはごんどう」を追加することに反対します。
理由:
反対する理由は、二つあります。
1。持続的な資源管理と産業に資さない
イルカの捕獲枠は1993年に設定されましたが、2000年には既に捕獲実績が捕獲枠を下回り、近年は捕獲枠の4分の1にも至りません。
主な理由として考えられるものは、1)対象としているイルカ種の減少 2)需要の減少 ですが、
1)であれば、早急にその原因調査や回復計画を進めるべきですし、2)であれば、そもそも新たな種を付け加える必要はありません。
商業捕鯨の最盛期に、乱獲によって減少した種に変わって別の種の捕獲を開始し、多くの鯨類を絶滅の危機に追いやったことは歴史に明らかなことであり、今回の案は、将来的な産業の持続的な推進に資するとも思われず、水産資源管理の怠慢とさえ言えるものではないかと思います。

2。生物多様性の保全と逆行する
国連海洋法条約の前分にあるように、国を超えて移動する可能性のある海洋哺乳類は、世界の共有財産です。今回指定しようとしている二つの種は、生息環境、生態等不明なことが多く、国を超えて移動している可能性があります。一つの国、さらには捕獲しようとする漁業者の占有物ではありません。従って、特定の漁業者の都合によって捕獲を開始するのは間違いです。
「国連海洋法条約第65条第六十五条」 に従い、よりより保全と調査・研究を国際機関など多様な主体との連携で行い、国際的にも貢献することが望ましいと思います。  「この部のいかなる規定も、沿岸国又は適当な場合にほ国際機関が海産哺乳動物の開発についてこの部に定めるよりも厳しく禁止し、制限し又は規制する権利又は権限を制限するものではない。いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する。」(国連海洋法条約)

2017年4月10日 (月)

新たな捕獲対象の追加 パブコメ中

2013年に検討を始め、2014年には試験操業が認められていたシワハイルカとカズハゴンドウの捕獲枠を付けるための形ばかりの手順が始まっている。
聞いたところでは、和歌山県と沖縄県からの要望を受けてのことで、コビレゴンドウとハンドウイルカの捕獲が「低位で推移しており、安定的な経営が困難」という理由だそうである。
国連海洋法条約のもと、海生生物はすでに先に取ったものが勝ちではなくなっている。これまでのように、他の種を取りすぎたために、新しい種を取りたいというのは全く勝手な言い分であり、それをそのまま受け入れる管理当局の水産庁は、管理を放棄しているわけで、これはイルカに限ったことではないから驚くには当たらないかもしれない。

一般意見聴取に関しては、「パブコメにかけているではないか」、と居直るのでしょうが、「国民の意見を聞く」というのは、前回−2007年のカマイルカの枠導入で実証済みだ。出された意見がすべて反対であったにかかわらず、食文化を縦に押し切られたが、実際は食べることではなく、水族館用の捕獲が目的であったのは記憶に新しいところ。
今回の2つの種だって、わずかな目視調査で推定個体数を出し(シワハイルカは前回調査から半減しているようだ)、生態的なところはまだ未解明なまま。今回発表された水産庁レッドリストでは、いずれも系群に関する情報は不明で、個体数現象の要因が見当たらない(探さないの間違い?)からランク外だというのだ。

もう一つ、経営的な安定に関して言えば、和歌山県太地町では、ハンドウイルカはもう食用には捕獲しない。なぜなら、食用にするイルカ1頭6万円程度に対して、水族館用に捕獲すれば、1頭90万円になるので。2016/2017年度では、ハンドウイルカだけでも179頭捕獲されており、生態販売用の捕獲総数は232頭、前年度比で+179頭である。この事実からも、新たな種が入ればそれだけ生け捕りでより多く販売できるという目論見が見え見えなのだ。

結果的には意見はスルーされるかもしれないが、それでもやらないよりはやった方がマシだし、声が大きくなれば、きっと全く無視するわけにもいかないだろう。ぜひ、意見を出して欲しい。

*******************************************************

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002463&Mode=0
○ 指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部改正(概要)
1 現行制度の概要
歯鯨(まっこう鯨、とっくり鯨及びみなみとっくり鯨を除く。以下同じ。)をと
ることを目的とする漁業については、国際捕鯨委員会(IWC)の規制の対象外
であるが、資源の適切な管理を図るため、指定漁業の許可及び取締り等に関する
省令(昭和38年農林省令第5号。以下「指定省令」という。)第82条第1項の規定
により、小型捕鯨業及び母船式捕鯨業を営む場合のほか、指定省令第82条第1項
ただし書きで定める歯鯨をとることを目的とする漁業について、都道府県規則に
基づく知事の許可を受けて営む場合(以下「いるか漁業」という。)に限り、認め
られている。
なお、いるか漁業の対象種については、漁業実態を反映して定められており、
鯨種別捕獲枠については、資源量調査を基に政府が設定して関係道県に配分し、
それを超えない範囲内で捕獲が行われるよう通知している。
2 改正の必要性
我が国周辺の歯鯨のうち「しわはいるか」及び「かずはごんどう」については、
水産研究・教育機構の資源量調査結果では持続的な利用を行うのに十分な資源量
があることが確認されており、また近年、漁業者等からもこれらの鯨種の漁獲枠
の設定について要望が相次いでいる。
3 改正の内容
指定省令第82条第1項ただし書きに、新たに「しわはいるか」及び「かずはご
んどう」を追加する。また、「いしいるか」の系群として規定していた「りくぜん
型いしいるか」について、正式な和名にあわせ「りくぜんいるか型いしいるか」
とする改正を行う。
4 施行期日
公布の日から30日を経過した日とする。
(参考)
○日本周辺海域における推定資源量(2014年)
しわはいるか:5,483頭
かずはごんどう:58,889頭
○推定資源量を基に算出された許容捕獲頭数
(関係道県に配分される頭数の合計はこの内数となる。)
しわはいるか:46頭
かずはごんどう:704頭

2017年4月 4日 (火)

イルカ飼育と福祉について

  神奈川県の新江ノ島水族館と山口県下関の海響館が国内の動物園と水族館の横の連携を形作る組織である日本動物園水族館協会(JAZA)を先月末で脱退したというニュースが複数メディアで報じられた。

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017040302000055.html

http://www.yomiuri.co.jp/national/20170401-OYT1T50109.html

  これは、2015年にWAZAからの勧告を受けて、JAZAが和歌山県太地町でのイルカの追い込み猟によって捕獲されたイルカを購入/飼育することがその倫理規定に反するので、所属する園館は太地町からイルカを購入しないという宣言をしたことを不服とするものである。
 すでに、その時に地元太地町くじらの博物館がJAZAから脱退しているのだが、他にもJAZAに所属していない施設が幾つかあり、昨年末にも追い込み猟で捕獲したイルカを購入している。
  これらの飼育施設の言い分は、施設内では設備や技術などの問題からイルカの繁殖を実現できないので、追込み猟で捕獲されたイルカを購入し続けたいということである。
しかし、今回の新江ノ島水族館は、繁殖技術を持っているとされて他の水族館や関係者の期待を担ってきたところ。将来を見越して、イルカ猟を実施する「いさな組合」などとの関係を維持していきたいですと。
限られた血統間での繁殖には限界があるのは確かで、野生からの導入が必要だということをもっとも理解しているのかもしれないが、こうした方向性が他のJAZA所属飼育館の離脱の引き金になる可能性がある。
一方、海響館はさすが下関、「イルカ猟は合法であり、禁止するJAZAの方針を容認できない」そうである。いやしくも、「教育的な」側面を持つ水族館が、命の大切さや自然の不思議さの前に、産業擁護を自分たちの都合のための言い訳にするって、どうよ?

 離脱に対するメディアの反応は、2015年から同じで、水族館にはイルカが必需品だという前提にのかっかっており、’繁殖できないならイルカが見られなくなってしまう!’という、あれ。ウナギやマグロが絶滅に貧すれば、’食べられなくなる!’と脅すのとちょうど同じようなものだと思う。
 イルカが飛んだり跳ねたりすることによる経済効果がどれほどのものかは知らないが、なまじ「教育」などという言葉なんか出てこないだけ、嘘がないのかもしれないが。
 よく、実際に見たり触れたりしなければ、その生き物を「理解」できないというような意見があるが、日本の子どもがちゃんとイルカを理解していれば、狭い人工的な飼育施設に閉じ込めて、冷凍の餌を演技のご褒美に与えるような行為に対して批判するものも出てくるはずだ。イギリスでは1990年代にイルカの飼育施設がなくなったが、イルカに対する愛情が増しこそすれ、失せたとは思えない。
それに反して、日本の子どもたちにとってイルカがペットのような存在であるからこそ、どこから来ているか?という疑問は生まれず、その場限りのふれあいで納得し、あるいは、将来的にペット飼育をする感覚で、トレーナーになりたいなどというのだ。
こうした違いが、欧米との比較で出されるが、実際はアジア圏でも例えばインドがイルカの人格を認める法律を作ったように、広まってきている。こうした変化が昨年のアメリカにおけるシーワールドの失墜をもたらし(あざとくも中国とかに進出するなどという噂もあるが)たし、野生捕獲、そして飼育に留まらずに繁殖の禁止までに至っているのだ。
 
  今回の一連の報道には、イルカ猟のどこが倫理規定に外れているのか、こうした海外での話はもちろん出てこない。その代わり、映画「The Cove」の影響でWAZAがイルカ猟は残酷だと言っているというたいへんお手軽な説明とも言えない説明で済ませている。

 それで思い出したのが、この2月26日に環境省が主催したシンポジウムである。動物福祉と科学と銘打っているので、やっと環境省も科学的な福祉の考え方を身につけたのか、と思いきや、(元々の狙いは、8週齢以前の子犬の飼育がどのようにその後の成長に悪影響を与えるかというアメリカの専門家の講演ではあり、その部分では科学的な論拠が示され、タイトルに沿ったものだったが)問題は環境省の愛護室長のプレゼンテーションだ。
 日本の愛護と海外の福祉との違いを日本の伝統、文化(要するに自然との共生云々という幻想)で説明し、日本の場合、愛し、慈しんで終生飼養を目的にしている。それと異なり、欧米の福祉という考え方はその場において動物たちに苦痛を与えないことが目的なので、終生飼育する代わりに何かあれば安楽死を選ぶ、という。その違いを、日本人は自然と一体となるのに対し、欧米文化では自然を対立するものとみなすからだ、と批判する。
おなじみのイルカやクジラ問題で都合が悪くなると持ち出されるような、(せっかくの基調講演とは矛盾する)論理を得意げに紹介して日本文化を持ち上げ、問題は棚上げ。最後のディスカッションまでいなかったため、結果はわからなかったが、これでは目的まで下手すると損なってしまうのではないかと感じた。
福祉と多少でも関係する唯一の管理当局がこうした方向なのだから、今後もこうした頓珍漢な日本賛美が大手を振って歩くのだろうか。

<追記>
不思議でもないが、4施設に増えたようだ。
http://www.sankei.com/west/news/170403/wst1704030007-n1.html
しかも、海響館の言い分だと、「捕鯨の文化」をJAZAが否定したことになってる。
野生動物の子供を群れから引き離してサーカスやらすのが文化だったのか!

北西太平洋捕獲調査についての専門家パネルの評価

 1月末から東京で行われた北の調査捕鯨新計画についての専門家パネル報告が出た。
11月にも書いたが、どうしてこんな計画をたてたのか、 素人目にも問題がありすぎではないのか?と思うような、恐ろしい計画だったが、やはり評価は厳しかったようだ。29もの多岐にわたる勧告が出ており、殺す前にこれまでのサンプルを活用すべきではないのか、とか、(イワシクジラに関して)捕獲頭数の正当性を説明できていない、というような意見も見える。

https://this.kiji.is/221581060774577660
↓共同通信の記事 ここから
    水産庁は3日、北西太平洋でミンククジラとイワシクジラを年間計314頭捕獲する新たな調査捕鯨計画案に関  
    し、国際捕鯨委員会(IWC)の専門家会合が「捕獲調査の必要性や捕獲頭数の妥当性が十分に説明できてい
    ない」として、日本に追加作業を行うよう勧告したと明らかにした。〔・・・〕

パネル報告は5月に開催されるIWCの科学委員会に報告され、日本の修正提案とともに議論される。
しかし、日本政府としては、「日本の調査は管理上重要」とかいうリップサービスのみ取り上げて正当化を図り、7月には(少しばかりの修正の上)船を出すのではないだろうか。それに、そうだ!そろそろ沿岸調査も始まる。←みなと新聞によると、春季調査はすぐにはやらないらしい。確か、一昨日、小型捕鯨船が胎児を出港するとか出ていたみたいだが。

« 2017年3月 | トップページ | 2017年5月 »