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2016年9月29日 (木)

スロベニアに向けて (1)

  ヨハネスブルグでCITESが開催されている。
 今回の大きなトピックは何たってゾウだろう。IUCNによると、アフリカゾウは、この10年間で11万頭も減少したという。ハワイで開催された世界自然保護大会では、象牙の国内流通を規制する決議が採択された。日本はこれに反対したことは周知のことだが、CITESでもおなじ展開になりそうだ。世界最大の消費国の中国が国内流通禁止を決めて、国際的な流れに乗っかっているのに対して、日本はヒール街道まっしぐらではないか。
 象牙の取引に関しては、1989年の禁止決議が、日本の’活躍’で早々に破られてしまったことが悔やまれる。1992年京都で開催された条約会議では、いわゆる日本+南部アフリカの持続可能派と、東アフリカの諸国での攻防が行われたのを実際に見聞きした。その時はケニアと共に強力な保護の側だったタンザニアは、この5年間で生息するゾウの60%が殺されたというのに、その事実さえ否定し、持続派になっているようだ。
日本は、「きちんと管理されている国からしか買っていないから大丈夫」と主張してきたが、NGOの報告でそうでないことが明るみに出ている。聞いた話では、きちんと管理、運営するところに必要な予算など行っていないから、もともと管理など出来ない相談だとも聞く。できるといったんだから、それなりの予算を確保して徹底的な管理をしなさいよ、できないなら悪うございました、と謝って、禁止に同意しなさいと言いたくなる。
環境省の弱腰は情けないし、業者保護を優先する省庁に主導権を持たせることでいいことは一つもない。

ゾウの絶滅危機に関しては、すでに海外ではガーディアンなどで知っていたが、今回、朝日新聞現地特派員の三浦英之さんという方の現地取材に基づくツイートが秀逸だと思った。
http://togetter.com/li/1029454

 海の生物で言えば、クジラ類や最近ではサメといった日本の’水産物’留保に関して、なかなか国内の関心を呼び起こせないままでおり、いくら国際的に縛りがあるとはいえ、日本の市民として責任を感じざるをえない。なんたって、クジラ類の留保は、国内議論なしに30年以上もそのままで認知度も低い。国際的には絶滅危惧種と認識されているナガスクジラの輸入も、国内ではあまり問題とされていないくらいだ。クジラのダウンリスティング提案は却下されたようだが、今後やはり留保問題の透明性を高めて、議論していく必要がある。

 国際取引に関連して、この十月に始まる国際捕鯨委員会(IWC)での気になる議論がある。
一つは、先だってブログにも書いた「食料安保」の件である。「在庫あまり」が国際的にも有名になってしまうと、日本国内で捌ききれない鯨肉を、飢えている国にやればいいという話もでている(沿岸捕鯨と食料安保としての南極捕鯨)。前回、ガーナなどのアフリカの何カ国が、クジラも食料の一部として認識すべしという提案を行っており、今回も修正した決議案を提出しているようだ。内容的には曖昧なものだし、本気度はイマイチなので、それほど問題にすべきではないのだろうが、鯨害獣説の予想外の広がりという前例もあることだし・・・

 本ブログにも書いたことだが、1昨年の第65回本会議において、日本はまた沿岸小型捕鯨に関する提案を行った。これまでの「緊急救済枠」のお願いと異なり、日本政府の言い分は、ミンククジラの評価も済んだことだし、モラトリアム決議(10e)は捕鯨の禁止ではなく、科学的に正しい評価が出るまで捕獲枠がゼロだということだから、利用してどこが悪い?という居直りともいうべきものだ。
 議論が進んでいくと、実は、この枠の案にいくつも選択肢があって、最終的な結論まで至っていないのに、その中でも取れる数の大きなものを選んだということが、オーストラリアによって暴露されている。それでも、これまでとは違って取れる枠は17頭なので、これまで提案してきた100頭とか150頭の救済枠と比べ少ないし、沿岸捕鯨基地4カ所でどのように分けるつもりか、採算があうのかという話となるとあまり本気ではないような気がするものだ。
 
 日本の提案は否決されてしまったが、日本はこの10eの解釈について次回までの宿題にしようと提案し、会議後に質問状が参加国に送られ、その回答に対して、日本がコメントを出している。その議論がかなりのすれ違い、要するに、’持続性について科学的に評価がなされ、数も示されたのだから、やってどこが悪い?’ という科学委員会の助言根拠一直線の日本と、商業捕鯨全体の再開にもつながる沿岸捕鯨をそのまま認めることはできないという反対国との決して交わらない意見のやり取り。
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=6200&search=%21collection24471&order_by=relevance&sort=DESC&offset=0&archive=0&k=&curpos=13&restypes=
 
 日本としては、(内容はともかく)勇ましく戦ったという実績が示されれば必要な予算が取れるわけだから、「原理・原則」を貫くことが何より大事なのだろう。これが十月にまた行われるのかとちょっと気が重い。
 

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