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2015年6月17日 (水)

水銀汚染について

 6月13日のテレビ番組「激論!コロシアム」において、和歌山県選出の鶴保庸介議員は、太地のイルカ猟告発でアカデミー賞を取った「ザ・コーブ」は「全部ウソ」だと断言した。
そしてその一例として太地の住民がイルカ肉で水銀中毒になった用に言われているが、水銀中毒になったものはいない。水産庁の職員が水銀中毒になったとも言われているが、今でもぴんぴんしている、というような発言をした。

コーブのに英語版と日本語版を見てみよう。
HIDEKI MORINUKI, DEPUTY OF FISHERIES FOR JAPAN, WAS FIRED IN 2008.
水産庁の諸貫秀樹課長補佐は2008年に解雇された(日本語版DVD)

A SAMPLE OF HIS HAIR TESTED POSITIVE FOR MERCURY POISONING.
彼の毛髪からは水銀が検出された(日本語版 DVD)

*日本語版は劇場公開されたバージョン

これが鶴保議員が指摘したところと思われる。
ちなみに、コーブのプロデューサーが同乗した飛行機で日本の役人がいっていたと言う解雇話だが、彼は異動になったものの、やめてはいない。現在もIWCの代表代理を務めるのでこの部分はウソといえるかも知れない。
しかし、映像でいっているのは「毛髪テストで水銀が検出された」程度の事で、何も水銀中毒になったと言っているわけではない。

水銀中毒については太地町が国立水俣病研究センターに依頼して2010年行なわれた調査結果が出ている。
http://www.nimd.go.jp/kenkyu/report/20100427_taiji_report.html

 報告では「太地町住民(人口3,526名、男1,600名、女1,926名、平成21年7月31日現在)のうち、夏季調査(平成21年6月~8月)では1,017名、冬季調査(平成22年2月)では372名の毛髪水銀濃度を測定した(重複252名、延べ1,137名)。」
「男11.0 ppm(0.74 ppm-139 ppm)、女6.63 ppm(0.61 ppm-79.9 ppm)」で、「毛髪水銀濃度とクジラ類を食することの関連性が示唆された」とある。
そして「夏季または冬季調査のいずれかで50 ppm以上の住民は3.8%、43名であった」

 ちなみに、同センターが2007年に出した冊子には、胎児に影響のでない母親の毛髪の最大値は11ppm、成人で神経症状の出ない最大値(WHO,1990)は50ppmとある。明らかに水銀中毒と認められる症状のものはいないにしても、継続的な調査が必要と考えられる。

<クジラ類と水銀中毒>

 国内で鯨肉食による水銀汚染が問題とされたのは1999年のことだ。第一薬科大学など日英米の研究者が国内6県で販売されている鯨肉130点を購入し、116点について種別を判明させた。分析された商品のうち4分の1が不正確な表示をされ、そのうちの61点について有機塩素系化合物及び重金属を分析したところ、半数以上が国内規準を超える濃度の汚染物質が含まれていることも判明した。研究者はこれを同年の薬学会で発表し、同時に連名で厚労省、水産庁、環境省を含む関係機関に、現状調査を実施して販売停止を含む法的措置をとるよう意見書を提出した。
 声明に応じて調査に携わった人たちが中心となり「食品汚染を考える市民の会」ができ、市場調査や政府や小売店、漁業などへの働きかけを開始した。また、日本消費者連盟などとの連携で、政府に疫学調査の要求や不当表示を取り締まるなどの要望を出し、調査に携わった研究者を招いてシンポジウムを開くなどして訴えた。

 実はこの背景には、番組が問題解決の鍵として紹介したデンマーク領フェロ–諸島での水銀汚染研究がある。
 鯨類への有機水銀汚染は国内でもすでに知られていたが、1998年に発表されたフィリップ・グランジャン教授によるフェロー諸島での継続的な調査により、それまで明らかになってきた水銀の蓄積量よりももっと少ない量でも子どもたちの脳に影響を与えるという研究結果が世界に広まったことによる。彼が1986~2009 年生まれの子どもを 追跡調査した結果によると、運動や言語、記憶の能力に関する発達の遅れなど、ごく微 量の水銀でも胎児や幼児に影響を与えることを確認した。
デンマーク政府は、グランジャン博士の研究を受け、1998年に
1)おとなは鯨肉を月1〜2度程度
2)将来子どもを産む可能性のある女性はクジラの脂身を食べない
3)妊娠前3ヶ月及び妊娠中、授乳中の女性は鯨肉を食べない
4)クジラの肝臓や人造は避ける
という勧告をだした。

 これに反し、日本政府は意見書を受けた段階では何もしなかったが、読売、毎日を含む全国の新聞が大きく扱ったこともあり、小売店の中にはクジラ肉を扱わないところも出始めた。日鯨研はミンククジラは汚染されていない南極で捕獲された安全なものだというプレスリリースをだす。
 しかし、2001年、「太地産ミンククジラ」と表示された鯨肉がスジイルカで、水銀値も67ppmあることが判明、公正取引委員会も動き、また2002年には、太地産の内臓のゆでものからおよそ2000ppmもの水銀が検出されるなど、この問題についてのメディア報道が繰り返されたことから、厚労省は2002年に市場調査を行い、翌年に結果を公表。水銀だけでなく、ツチクジラに5.0〜11ppmのPCBの汚染が認められ、また調査対象となった977件のうち284件しか正確な表示がなく、90件の不当表示があったことが明らかにされた。
同年厚労省は魚介類に含まれる水銀についてのお知らせを公表した。しかし内容はフェロー諸島に比べると非常に緩いもので、妊婦に対しての注意事項程度にとどまった。

 コーブが水銀汚染問題を取り上げたのは、こうした日本国内での動きを知ったことによると思われる。IWCにおいても、鯨肉汚染による健康被害については繰り返し議論され、2011年には決議も出ている。現在、2000年段階のような不当表示は少なくなっているものの(取扱量も減少している)、全くないわけではない。また、高濃度汚染がメディアで報道された2000年当時、和歌山県の水産課は太地漁協に対して内臓は廃棄するようにという指導をしたとしたが、太地内には内臓を好む人たちもいて、その後はどうなったかわからない。
 政府は1999年には、クジラ肉消費は極めて少なく(ほんの30g程度ー水産庁、数字にでてこないー厚労省)、また対象者が絞れないので疫学調査は不可能だとした。しかし、イルカ肉の流通範囲はかなり限定的であり、多分に肉を好む層は限られていると考えられる。太地町の調査は町長の指示で行われたと聞いているが、対象地域を絞るなどして疫学調査を国が実施し、安全面での管理も行い、信頼を得ることの方が、「誰も発症していない」など暴言を吐くよりも前向きではないかと思うのだが。

 
 
 

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