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2015年6月 9日 (火)

イルカの飼育

環境省 動物愛護室
展示動物の飼養及び保管に関する規準
平成16年環境省告示第33号
最終改正:平成25年環境省告示第83号

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_h25_83.pdf

第1 一般原則
2.動物の選定
  管理者は、施設の立地、整備の状況及びその維持管理等に必要な経費並びに飼養
  保管者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する展示動物の種類及び数を
  選定す るように努めること。また、家畜化されていない野生動物等に係る選定
  については、 希少な野生動物等の保護増殖を行う場合を除き、飼養及び保管が
  困難であること、譲 渡しが難しく飼養及び保管の中止が容易でないこと、人に
  危害を加えるおそれのある 種又は原産地において生息数が少なくなっている種が
  存在すること、逸走した場合は 人への危害及び環境保全上の問題等が発生する
  おそれが大きいこと等から、その飼養 については限定的であるべきことを勘案
  しつつ、慎重に検討すべきであること。

第3 共通規準
(1)飼養及び保管の方法
 エ 群れ等を形成する動物については、その規模、年齢構成、性比等を考慮し、て
  きるだけ複数で飼養及び保管すること。
 オ 異種又は複数の展示動物を同一施設内で飼養及び保管する場合には、展示動物
  の組合せを考慮した収容を行うこと。
 カ 幼齢時に社会化が必要な動物については、一定期間内、親子等を共に飼養する
  こと。
(2)施設の構造等
 ア 個々の動物が、自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、羽ばたき、泳ぐ等日常的
  な動作を容易に行うための十分な広さと空間を備えること。
  また、展示動物の飼 養及び保管の環境の向上を図るため、隠れ場、遊び場等の
  設備を備えた豊かな飼 養及び保管の環境を構築すること。

第4 個別規準
(1)展示方法
 ウ 動物に演芸をさせる場合には、演芸及びその訓練は、動物の生態、習性、生理
  等に配慮することとし、動物をみだりに、殴打し、酷使すること等は、虐待とな
  るおそれがあることを十分認識すること。

 カ 動物園等の役割が多様化している現状を踏まえ、動物の生態、習性及び生理並
  びに生息環境等に関する知見の集積及び情報の提供を行うことにより、観覧者の
  動物に関する知識及び動物愛護の精神についての関心を深めること。

記事から見た飼育施設の意見は:
 ○「登別マリンパークニクス」(北海道登別市)の例
 「繁殖や育児はショーをやっているプールではできない。広さ、深さともに相
  応の面積があり屋根、空調が整備された施設を新たに整備しなければならない。
  費用面の負担は経営上、重くのしかかるだろう」

 「館にいるバンドウイルカ4頭は、すべてメスで、繁殖には、他の水族館から
オスを借りてくる必要がある。」
 「繁殖や育児はショーをやっているプールではできない。広さ、深さともに相
応の面積があり屋根、空調が整備された施設を新たに整備しなければならない。
費用面の負担は経営上、重くのしかかるだろう」
 「館にいるバンドウイルカ4頭は、すべてメスで、繁殖には、他の水族館から
オスを借りてくる必要がある。だが、他の水族館も似たような悩みを抱えてお
り、この状況下で本当に貸し借りが可能なのか。貸し借りの順番を待つうちに繁
殖に適さない年齢を迎えてしまう恐れもある。さらに遠方から融通し合う場合、
移動手段をどうするかといった問題も生じる」産経2015.6.4.

 ○大洗水族館の例
橋本茨城県知事:私は,国全体としての問題だろうと思いますし,個別の水族館で大変多額の
費用を要する繁殖用プールなどを設置していくことについては,費用対効果とい
う面も考えると,もう少し検討する必要があるのではなかろうかと思います。
(産経2015.6.1)

★環境省の飼育規準は常識的に読めば、多くの飼育施設の現在の飼育環境に問題がある事が理解できるだろう。しかし、規準は具体性に欠け、特に数値目標が設定されていない事でどのようにも解釈でき、海水浴場でのイルカのタッチングなど劣悪施設出の飼育や貸し出しに有効なものになっていない。
また、日本国内では、イルカがショーの目玉である事、イルカショーがなければ立ち行かないなど、ショーと一体となったイルカ飼育が目立ち、そこでわずかに「教育的」と言い張れるのは、’ナマイルカ’を見たり触ったりできるという事に過ぎない。報道の多くも、イルカが飛んだりはねたりしているところが教育的かどうかという疑問を示すことをしない。
 イルカショーがある事で成り立つ飼育施設の多くが、求められる海洋教育や自然環境の保全などの啓発には遠い存在だと感じられてならない。そこで、本来の生態をどのように伝えていくのか、海洋環境保全が国連の様々な条約会議や、現在行なわれているG7でさえも最初に上げられているというのに、そうした方面と関連づけての報道や情報は皆無といっていい。

 また、日本では議論が不発な倫理面だが、動物福祉に当てはめた規準により、経済的にも飼育が不可能となったイギリスは、イルカの最小容量を1000㎥/5頭までと数値で規準を表しているし、イタリアやブラジルのように、同じ条件で1600㎥とイギリスより厳格な飼育規準が採用されている。また、もちろん、コスタリカやチリ、インドのように飼育を禁止している国もある。
 実は、IKANは2005年の動愛法改正の前に、ふたつの事柄に関して環境省に意見を提出している。
一つは、動物取扱業者に関してで、イルカ追込みを実施している業者が水族館等にイルカを販売している事から、こうした行為を行なう漁業組合も動物取扱業に含めるべきだという意見で、これは、委員会の場で直接意見を申し上げた。しかし、後に告げられた回答では、イルカ類は水産資源であるので、イルカ漁業者は動物取扱業者には該当しないという何とも理解できない答えだった。
 もう一つは、展示動物の飼育規準に関してで、広く海洋を移動する種としての生態に合わせ、社会性を鑑みた複数での飼育、十分な飼育環境と調教に対しての厳しい規準など海外の規準を参考資料として手渡して対応を求めた。結果は、最初に上げた規準にあるように、極めて抽象的で今のところ何の解決にもなっていない。
 後悔先に立たずということばがあるが、このような機会にもっと議論が深まっていれば、現状は少し違っていたのではないか、と残念なことではある。

 このところ、日本の様々な場面で露呈されてきていることだが、ヒトの幸せ、あるいは倫理的なありようよりも、経済性や産業が重視された結果だと思われるが、こうした方向性で固まって他の意見を聞かないような風潮はなんとかしなければならない(’他人のフリ見て我がフリ直せ’というが、まずは自分たちの内部から閉鎖的なありようを直視した方がいいと思う)。
 暫定的な方向として考えられるのは、動物園水族館の適切な定義を示し(先だっての国会議論では環境省としてもその方向だと消極的ながら答えていたと思う)、動物園や水族館が教育的な施設として成立しうるよう支援し、そうでないところははっきりと「ショービジネス」と切り離されるのが教育的かどうかの議論の出発としてはごまかしがなく、良いのではないだろうか。
(一番いいのは、飼育されたイルカが本来の姿とかけ離れている事を見る側が自覚する事なのだが)

動植物園等の公的機能推進方策のあり方について
(環境省動植物園等公的機能推進方策のあり方検討会報告書)
https://www.env.go.jp/nature/report/h26-01/index.html


ちょっと古いのだが、海生哺乳類の飼育に関するこんな論文もあるので紹介しておこう。
http://www.car-spaw-rac.org/IMG/pdf/OVERVIEW_CAPTIVITY_MARINE_MAMMALS_WCR.pdf

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