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2015年6月22日 (月)

そういえばこんな手紙を書いた事が・・・

 そういえば、孫が動物園に遠足に行った後、こんな手紙を書いたのだった。
後に機会があってその幼稚園に行ったとき、多くの先生から手紙の事についての感想をいただいた。多くが知らなかった事を伝えた事への感謝だった。

ここから:


動物園への遠足について
            倉澤七生(○○組 ○○祖母)
○○先生、
○○幼稚園のみなさま、

 いつも子どもたちによい保育環境をくださってありがとうございます。
 日頃のご検討に敬意を抱くものとして、今回の動物園への遠足について一言意見を申し上げたく、手紙を差し上げることにしました。固い信念のもとに保育を実践されている方々に申し上げるのも僭越かと思いますが、どうか年寄りの繰り言とご勘弁くださいますよう。
 結論を先に申し上げますと、私は現在の多くの動物園における野生動物の飼育に否定的な考えを持っております。以下になぜ私がそう思うか、その理由について説明いたします。

 私は、1987年より10年余、エコロジー雑誌「オイコス」を企画・編集・発行していました。雑誌では、様々な環境問題に取り組む市民活動や世界の環境や自然にまつわる情報を紹介し、また自らの実践にもつなげてきましたが、そのテーマの一つが自然保護、動物の福祉でした。

 「いきものを大切に」という言葉は今では当たり前にいわれ、「いのちの重みはみな同じ」ということばもよく聞かれますが、実際にこれを実践し、実現することはなかなか大変なことです。しかし、このことばは今日、単なる修辞や一部の人たちの倫理観としていわれるのではなく、将来的な人の生存の観点から非常に重要だと認識されるに至っています。
 自然や動物の研究や調査を通じ、私たちは、自分たちも自然の一部であり、それを破壊することは自分たちに跳ね返ってくることだということを理解するようになりました。それと同時に、そうした研究により、動物たちと人間の距離というものは以前に思っていたように遠いものではないということを日々学びつつあります。動物たちの中には、力や攻撃性ではなく、知性と経験でリーダーを選ぶゾウやシャチのような生き物がいます。社会的な動物の多くが仲間の死を悼み、再会を喜ぶ私たちと同じ喜怒哀楽の感情を持っていることが動物の行動研究によりわかるようになってきました。これまで私たち人間はそうした動物たちを「人間ではない」という理由で、意識もしないままに捕獲し、食料とし、駆除し、閉じ込め、人に都合の良いように改変してきました。
 しかし時代を経て、動物たちへの人間のあり方について、国をまたがる条約や各国の政策の中で、強弱こそあれ規制がかけられるようになり、また、動物の福祉の観点から法律が作られるようになりました。
 ボリビアなどのように、自然の権利に関する法律を作った国もありますし、ドイツのように生き物の権利に関して憲法で保証する国もあります。
ボリビア「母なる大地の権利法」
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/12/post-ad79.html
ドイツ「ドイツ憲法の動物の権利」
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/214/21406.pdf
 また、多くの国々が動物の福祉に関連する法律を制定し、展示する動物の飼育基準を作成しています。日本にも動物の愛護と管理に関する法律がありますが、数値目標などの具体性に乏しいため機能を十分果たしていないうらみがあります。
環境省 動物の愛護と管理に関する法律
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/outline.html
(1)基本原則
すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。
展示動物の飼育基準
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_h160430_33.pdf
第1 一般原則 1 基本的な考え方
管理者及び飼養保管者は、動物が命あるものであることにかんが み、展示動物の生態、習性及び生理並びに飼養及び保管の環境に配慮 しつつ、愛情と責任をもって適正に飼養及び保管するとともに、展示 動物にとって豊かな飼養及び保管の環境の構築に努めること。また、 展示動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害の防止及び周辺 の生活環境の保全に努めるとともに、動物に関する正しい知識と動物 愛護の精神の普及啓発に努めること。
 
 ここで重要なのは、「人と動物が共に生きていける社会を目指す」という言葉ですが、「共に生きる」とは一体どういうことなのか、どうすれば人間以外の生き物を尊重できるのか。それを理解するには、動物たちの生態(暮らす環境や暮らし方)を科学的に知リ、彼らの生き方を尊重する、それができない場合は生態に沿った環境作りに務めることが必要ではないでしょうか。中には、あまりに環境が違いすぎて人が飼育できないものもいるかも知れません。
 私は、そうした認識を後天的な知識としてではなく、当たり前の感覚として養っていくことが非常に重要だと考えています。ですから、子どもたちの初期的な自然や動物に関する教育のなかでは、こうした動物たち(特に人間が開発したものではない野生動物)の生態を理解することが不可欠だと思います。
 残念ながら、今の日本の多くの動物園ではそうした最初の教育を与えることができていないと私は感じています。野生動物を仲間と隔離し、その生活環境とは遠く隔たった狭くて人工的な施設に生涯閉じ込めるということを、子どもたちが「見て実感する」という大義の上で当然と見なしているからです。子どもたちは、確かにその動物の大きさとか、肌触りのようなもの、鳴き声などを観察できるかもしれません。しかし、彼らが生来どのような環境で生活をしているのか、どういった行動をとるかは、コンクリートの床や散らばる人間由来の餌、孤立して、限られた空間で知ることは大変むずかしいことです。
 また、その野生動物がどのようにして連れてこられたのか、ということも重要です。私は、以前に希少動物のシャチの捕獲を目撃したことがあります。前の日までお母さんのおっぱいを飲んでいたと思われる子どものシャチも捕獲され、その4ヶ月後には死んでしまいました。まだそのときの子どもの鳴き声が私の耳に残っています。

 その動物をその動物たらしめているものは、その個体だけでなく、何十億年と適応してきた環境や共存してきた他の生物の存在です。環境から切り取って、生き物を単一の姿形だけで認識することは、時に大きな間違いにつながります。野生の動物をあたかも犬やネコなど、ペットと混同している人たちは少なくありませんが、こうした既に植え付けられた勘違いを正すことは大変難しいことです。しかし、子どものまだ大人よりはまっさらな感覚で見る場合、大人とは異なった反応も期待できると私は考えます。
 実際、いただいたおたよりの中に、子どもの感想の一つとして、マントヒヒがぐるぐると回っているのを見て、「なんでだろう?」という健全な疑問を抱いた子がいたということが書いてあったのを見つけ、うれしく思いましたし、またその言葉が、私が手紙を書こうと言う勇気をくれたのでした。ちなみにこの行動は「常同行動」といって、生来の活動を阻害されてしまった動物が、目的もなく同じ行動(ぐるぐる回るとか、頭を振り続けるなど)をする異常行動で、日本の多くの動物園でしばしば観察されることです。

 私の知り合いにズーチェック(ZooCheck)という動物園オンブズマンのような組織を立ち上げた人がいます。その人は、これまで世界二千カ所以上の動物園を見て、その点数をつけ、動物園や活動している人たちにアドバイスをしてきました。その基準となっているものは、動物の科学的な生態です。その点から彼は、現状での動物園で動物を見ることが、少しも子どもたちの教育になってはいない、と言っています。

ズーチェック カナダ http://www.zoocheck.com/
ロブ・レイドロー氏 インタビュー「動物にとっての動物園」
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/237

 私も一度彼につきあったことがありますが、例えばカメの水槽の前で、カメが人前ではじっとしているから不活発だとたいていの人は考えるが、実際は夜間にかなりの距離の移動を行う動物なので、狭い水槽に入れておくことはカメに苦痛を与えることだ、と言われたのに少し驚きました。しかも、隠れ場所もなく、人が水槽を叩いたりすることでよけい大きなストレスがかかっている。こうしたひどい展示が行われる問題は、飼育する人たちや経営者が十分な生態への知識を持っていないことだ、と。
 彼は最近も、カナダの動物園で飼育されていたゾウを、ゾウたちのサンクチュアリに移す計画が進行中です。こうした地道な活動を、彼は何冊かの本にしていますが、残念ながらまだ日本語に訳されてはいません。

 子どもたちの教育は次の世代につながっていきます。私自身は動物園での野生動物飼育は、野生動物のことや自然のことを知るのではなく「弱いものには何をやってもかまわない」というメッセージになるのではないかと危惧しています。また、野生動物と家畜動物やペットとの違いを知ることも阻害し、結局は自然や動物の保全に逆行するのではないかと思います。

 私は動物園に行ってはいけない、と主張したくてこれを書いたわけではありません。ただ、子どもたちには動物たちが、元は自分の生活を持っていたこと、好き好んで狭い檻に入っているのではないことを機会があれば伝えてくださることを望みます。また、これをきっかけに、人間が自然とつながっていること、自分たちの都合で好き勝手に振る舞っていいわけではないことを子どもたちに伝えていただきたいと思います。
 地球上の有限な自然資源は、既に持続的な消費の上限を超えているという報告もあります。自然とのつながりを理解することは、将来世代が生き残る道でもあるはずです。

 子どもたちが心も体も健かに成長していくことの、なかなか難しい時代にあると常に感じています。しかし、日々の子どもたちの成長の中に、希望が残っていることを信じています。
 
 長い手紙をお読みくださってありがとうございました。
                          (2012年 11月2日)

2015年6月20日 (土)

日本だけではない・・・

 イルカ飼育に関しては、たびたび「何で日本だけ?」とか「叩きやすいからいじめられる」というような事が立場の正当化に使われる。しかし、こうした抗議活動は日本だけのことではない。世界中でこうした産業への抗議活動は数多く行なわれてきた。その中でも現在野生シャチを捕獲している唯一の国ロシアへの抗議はたびたび繰り返されている。ちなみに、この海域のシャチには2つのエコタイプがあり、捕獲許可はそれを無視していると研究者は述べているが、このうちのトランジエント(移動型)のシャチは、日本の海域を移動するシャチとつながっている可能性が高い。

 ロシアにおけるシャチ捕獲と言えば、日本にもその責任の一端がある事も忘れられない。
 2001年、名古屋港水族館が新館を建設した。最初の計画では、当時の内田至館長の肝入りで、目玉としてシャチを導入し、繁殖を成功させようと考えていた。しかし、日本では入手できず、シャチの入手のためにでかけたノルウェーでは捕獲が許されず、最後の望みをロシアに託した。シャチ1頭につき、1億2千万円の支払いが約束されていたという。ロシアは同年、極東海域でのシャチ捕獲に許可を出していたが、その年は荒天が幸いして、シャチの捕獲は出来なかった(しかし、名古屋港水族館/管理組合はロシアの捕獲業者に7千万円という巨額の支払いをした事を名古屋の市民オンブズマンに訴えられている)。結局名古屋港水族館は、シャチなしでオープンし、その後、太地からのシャチ、そして鴨シーからのシャチを導入したことはみなさんのご記憶にもあるところだろう。

 一方で、ロシアでは、シャチ捕獲事業がもうかるという事に気づき、それ以降、たびたびカムチャツカ海域でのシャチ捕獲を試みる。そして昨年、ソチオリンピックで展示するとして許可違反の2頭のシャチを捕獲し(結局展示出来ず、代わりにハンドウイルカが展示された)た。シャチ捕獲は2002年から15頭になるとイギリスの鯨類保護団体のWDCは伝えている。
http://us.whales.org/blog/2014/08/two-orcas-taken-in-illegal-capture-in-russia

 ロシアの団体による賛同署名要請のビデオを紹介する。ロシアはこの他に、希少個体群のハンドウイルカやベルーガの捕獲や展示も行っていることがわかる。

https://www.causes.com/posts/954650

2015年6月19日 (金)

野生動物を展示すること

 小学校に上がる前、(たぶん4歳か5歳の頃)祖父が場末の映画館に映画を見に連れて行ってくれた。上映されていたのはエノケンの孫悟空だったように思うが、肝心の映画そのものは全く記憶にない。その代わりに今でもはっきり覚えているのは、映画の前に上映された2つのニュースだ。(といっても、全体に雨が降ってたような印象があるのでニュース自体もそう新しいとは限らないのだが)
 そのうちの一つは原爆の後遺症に苦しむ人々の映像の一コマで、女の人が髪の毛を梳かそうと櫛を入れると、そのまま髪の毛がごそっと抜けて櫛についてきてしまうさまだ。しばらくの間、夢でうなされた。

 もう一つは、ゾウが上野動物園に到着して、鼻を持ち上げて観客に挨拶しているところだ。
ゾウについて当時のことを調べてみると、1949年にインドの故ネール首相から、台東区の子供たちの願いに対して送られたインディラというメスのゾウのことと、新聞社がそれを聞いてタイから輸入した花子というゾウのことが出てくる。私の記憶ではゾウは2頭いた。最初に上野動物園に連れてこられたのは花子で、その後にインディラが到着したとあるので、そのときに撮影されたものではないだろうか。私が衝撃を受けたたのは、ゾウの姿ではなく、この2頭のゾウの足に巻き付けられていた重たそうな鎖と、草1本生えていないむき出しのコンクリートだ。見た当時に何事か意識したわけではないが、ずっと後で何が違和感となって心に残ったかに思い至るのだ。

 ゾウに関しては、もう一つ忘れられない体験がある。1995年か96年、ある人の写真集のための選別作業の中で、アフリカに一度も行った事がないことに引け目を感じ、思い切って行くことにした時の事だ。目的地はタンザニアのセレンゲティなどいくつかの国立公園で、最後に行ったタランギレという公園での印象的な出来事だ。
http://www.tanzaniaparks.com/jp/tarangire.html
 すでに夕闇が訪れようという時間、帰路にゾウの群れに出会った。少し離れたところで車を止めて見守っていると7〜8頭のゾウが右方向からゆっくりと行進してきた。最初、気づいたときにはその中に1頭の子ゾウがいた。ゾウの群れは、車に気がついた様子もなく、そのままのペースでたんたんと車の前を行き過ぎる。そのとき(驚いた事に)、彼らのペースそのものは全然変わらないというのに、こちらが気づく間もない短い間に群れの中に子どもがすっぽりと隠されて見えなくなっていたのだ!そのスマートなやり方と来たら!彼らが自分たちの暮らしを持っていて、自分たちの意志と考え方で生きているという事が初めて実感できた瞬間だった。


 WAZAの決定をこれまでの反・反捕鯨の人たちは「日本いじめ」「伝統文化への無理解」とくっつけようとするが、一方で国内でも動物園・水族館の将来を真剣に考えるきっかけと捉える人たちもいる。
 私自身は、生き物を飼う事や見せる事に全く反対するわけではない。しかし、時に、生き物を見せる事がその生き物の生態を歪んで伝えてしまう可能性があるという事を忘れるわけにはいかない。特に、いわゆる珍獣と言われる希少動物たちは、姿を見せる事が目的となりがちで(また、集客の目玉となることから展示施設の経営に直接関係してくるということからも)いくら自然の素晴らしさを伝えるなどと理由を付けても、受け取る側は結局はぬいぐるみとそう変わらない認識に陥る可能性があるのだ。
 特にこの間のイルカ関連の議論では、生理、生態に沿った飼育環境を整備するという解決ではなく(生理・生態の重要な一つである繁殖については、施設にお金がかかりすぎるだの、授乳中はショーに使えないなどが壁となっているとされ)、生け捕りで手に入らなくなった際に見せ続けるための繁殖が目的という逆立ちした考え方になっている。

 また、見る側にしても、珍しいものを見る事が目的になればそれは一種の消費行動とも言えるものになってしまい、(往々にして地味な)身近な生き物や自然への関心、想像力を培う妨げになるかもしれない。飼育する側のあり方の再確認とともに見せる工夫が求められるが、一方で想像力を育て、生物多様性への理解を培う教育や飼育の規準を厳しくし、代わりにそうした飼育施設への多面的な支援などの制度の設計が求められている。
 

2015年6月17日 (水)

水銀汚染について

 6月13日のテレビ番組「激論!コロシアム」において、和歌山県選出の鶴保庸介議員は、太地のイルカ猟告発でアカデミー賞を取った「ザ・コーブ」は「全部ウソ」だと断言した。
そしてその一例として太地の住民がイルカ肉で水銀中毒になった用に言われているが、水銀中毒になったものはいない。水産庁の職員が水銀中毒になったとも言われているが、今でもぴんぴんしている、というような発言をした。

コーブのに英語版と日本語版を見てみよう。
HIDEKI MORINUKI, DEPUTY OF FISHERIES FOR JAPAN, WAS FIRED IN 2008.
水産庁の諸貫秀樹課長補佐は2008年に解雇された(日本語版DVD)

A SAMPLE OF HIS HAIR TESTED POSITIVE FOR MERCURY POISONING.
彼の毛髪からは水銀が検出された(日本語版 DVD)

*日本語版は劇場公開されたバージョン

これが鶴保議員が指摘したところと思われる。
ちなみに、コーブのプロデューサーが同乗した飛行機で日本の役人がいっていたと言う解雇話だが、彼は異動になったものの、やめてはいない。現在もIWCの代表代理を務めるのでこの部分はウソといえるかも知れない。
しかし、映像でいっているのは「毛髪テストで水銀が検出された」程度の事で、何も水銀中毒になったと言っているわけではない。

水銀中毒については太地町が国立水俣病研究センターに依頼して2010年行なわれた調査結果が出ている。
http://www.nimd.go.jp/kenkyu/report/20100427_taiji_report.html

 報告では「太地町住民(人口3,526名、男1,600名、女1,926名、平成21年7月31日現在)のうち、夏季調査(平成21年6月~8月)では1,017名、冬季調査(平成22年2月)では372名の毛髪水銀濃度を測定した(重複252名、延べ1,137名)。」
「男11.0 ppm(0.74 ppm-139 ppm)、女6.63 ppm(0.61 ppm-79.9 ppm)」で、「毛髪水銀濃度とクジラ類を食することの関連性が示唆された」とある。
そして「夏季または冬季調査のいずれかで50 ppm以上の住民は3.8%、43名であった」

 ちなみに、同センターが2007年に出した冊子には、胎児に影響のでない母親の毛髪の最大値は11ppm、成人で神経症状の出ない最大値(WHO,1990)は50ppmとある。明らかに水銀中毒と認められる症状のものはいないにしても、継続的な調査が必要と考えられる。

<クジラ類と水銀中毒>

 国内で鯨肉食による水銀汚染が問題とされたのは1999年のことだ。第一薬科大学など日英米の研究者が国内6県で販売されている鯨肉130点を購入し、116点について種別を判明させた。分析された商品のうち4分の1が不正確な表示をされ、そのうちの61点について有機塩素系化合物及び重金属を分析したところ、半数以上が国内規準を超える濃度の汚染物質が含まれていることも判明した。研究者はこれを同年の薬学会で発表し、同時に連名で厚労省、水産庁、環境省を含む関係機関に、現状調査を実施して販売停止を含む法的措置をとるよう意見書を提出した。
 声明に応じて調査に携わった人たちが中心となり「食品汚染を考える市民の会」ができ、市場調査や政府や小売店、漁業などへの働きかけを開始した。また、日本消費者連盟などとの連携で、政府に疫学調査の要求や不当表示を取り締まるなどの要望を出し、調査に携わった研究者を招いてシンポジウムを開くなどして訴えた。

 実はこの背景には、番組が問題解決の鍵として紹介したデンマーク領フェロ–諸島での水銀汚染研究がある。
 鯨類への有機水銀汚染は国内でもすでに知られていたが、1998年に発表されたフィリップ・グランジャン教授によるフェロー諸島での継続的な調査により、それまで明らかになってきた水銀の蓄積量よりももっと少ない量でも子どもたちの脳に影響を与えるという研究結果が世界に広まったことによる。彼が1986~2009 年生まれの子どもを 追跡調査した結果によると、運動や言語、記憶の能力に関する発達の遅れなど、ごく微 量の水銀でも胎児や幼児に影響を与えることを確認した。
デンマーク政府は、グランジャン博士の研究を受け、1998年に
1)おとなは鯨肉を月1〜2度程度
2)将来子どもを産む可能性のある女性はクジラの脂身を食べない
3)妊娠前3ヶ月及び妊娠中、授乳中の女性は鯨肉を食べない
4)クジラの肝臓や人造は避ける
という勧告をだした。

 これに反し、日本政府は意見書を受けた段階では何もしなかったが、読売、毎日を含む全国の新聞が大きく扱ったこともあり、小売店の中にはクジラ肉を扱わないところも出始めた。日鯨研はミンククジラは汚染されていない南極で捕獲された安全なものだというプレスリリースをだす。
 しかし、2001年、「太地産ミンククジラ」と表示された鯨肉がスジイルカで、水銀値も67ppmあることが判明、公正取引委員会も動き、また2002年には、太地産の内臓のゆでものからおよそ2000ppmもの水銀が検出されるなど、この問題についてのメディア報道が繰り返されたことから、厚労省は2002年に市場調査を行い、翌年に結果を公表。水銀だけでなく、ツチクジラに5.0〜11ppmのPCBの汚染が認められ、また調査対象となった977件のうち284件しか正確な表示がなく、90件の不当表示があったことが明らかにされた。
同年厚労省は魚介類に含まれる水銀についてのお知らせを公表した。しかし内容はフェロー諸島に比べると非常に緩いもので、妊婦に対しての注意事項程度にとどまった。

 コーブが水銀汚染問題を取り上げたのは、こうした日本国内での動きを知ったことによると思われる。IWCにおいても、鯨肉汚染による健康被害については繰り返し議論され、2011年には決議も出ている。現在、2000年段階のような不当表示は少なくなっているものの(取扱量も減少している)、全くないわけではない。また、高濃度汚染がメディアで報道された2000年当時、和歌山県の水産課は太地漁協に対して内臓は廃棄するようにという指導をしたとしたが、太地内には内臓を好む人たちもいて、その後はどうなったかわからない。
 政府は1999年には、クジラ肉消費は極めて少なく(ほんの30g程度ー水産庁、数字にでてこないー厚労省)、また対象者が絞れないので疫学調査は不可能だとした。しかし、イルカ肉の流通範囲はかなり限定的であり、多分に肉を好む層は限られていると考えられる。太地町の調査は町長の指示で行われたと聞いているが、対象地域を絞るなどして疫学調査を国が実施し、安全面での管理も行い、信頼を得ることの方が、「誰も発症していない」など暴言を吐くよりも前向きではないかと思うのだが。

 
 
 

バトル番組の「賢い」戦い方

 番組がユーチューブで流れ、ツイートでその文字起こししてくれた方がいたので(本当にありがとうございます!)、二度と見たくないテレビ画面を見ないでチェックすることができた。
今後、このようなところに出るかもしれない人に少し今回反省した事などを述べておきたい。

<先手必勝!>
 制作する側に出来るだけ情報を提供して有利にことをすすめる。今回については、和歌山新聞の鶴保議員の意見を下敷きに、イルカ追い込み漁の映像や太地町長、町民のコメント、果ては中国の巨大水族館、キツネ狩りの映像やフォアグラ、コーブの映像、フェロー諸島のゴンドウ猟などが使われている。キーワードとしての「伝統」、「何で日本だけが(いじめられる)?」でつなげた映像が流された。しかもそれが異常に多かった。(そういえばイギリスもフランスも国の代表が「伝統だもん」と言っていたような・・・どこもご都合的に「産業を守りたい」とき伝統を使っている。どこでも市民の側がそれに反対しているところは出てこない)
 映像に対する反論というのはなかなか難しく、特に最後の段階では流されるママという感じだったのが悔しい。
 もし出演するならシナリオの段階で客観的に出来上がるような情報提供を早めにできると番組の質も上がるだろう(もちろん、制作者はバトルを盛り上げられる事が一番の目的なので、そこに留意)

<言葉は短く、そしてウソでもいいから断定的に!?>
 最初に言っておくが、驚いた事に(特に前半では)かなり私の発言が採用されていた。自分でも言葉足らずで分かりにくかったと反省する部分が多い。こちらの意見の根拠となる資料をいくつか用意し、そのうちいくつかはコンピュータ画面で見られるようにしたが、このような番組はむしろ私の苦手なツイートのように、はっきりとした一言が決め手だと分かった時は後の祭り。面倒くさい説明など誰も求めていなくて、自分がこう思っているから正しい、といえばいい。
(SSが「困ります」という所だけテロップで流されたようだが、なんでという所までもっていかないと今回のように相手側に有利に使われてしまう)

 (しかし、私がダメな分、司会の堀潤さんが私の意見を聞いてくださったので、言った事の信頼性がいくらかは付与されたのではないだろうか。これは私の功績ではなく、ひとえに堀さんのおかげと感謝)。

<反論できにくい意見には、「その話題はもう終わってる」とか「論点がずれている」などといって話を変える>
 議論中もたびたび(議論のすり替えのときなど)、イルカ猟と飼育問題(と殺と生け捕り)がごっちゃになっているというクレームが出た。しかし、誰も実際にWAZAが何を言ったか知らないようだ。しかも、そのことは議論の中で問題にもされないというはじめのびっくり。
 事の発端は太地のイルカ追い込み猟にあり、それが残酷だから追込みによるイルカは飼育しないというのがWAZAの方針だ。2010年に妥協案として出された「9月中は肉用の捕獲はしないで生け捕りのみ」というのは、それまで子どもを水族館用に捕獲して、親を殺すというような事が普通だったからで、WAZAとしてはそれだけはどうしても避けたかったという事は容易に理解できる。しかし、こうした説明はなかなかその場ではしにくいのだ。

<嘘を言うときは「立て板に水」と言った話し方をして途中で異議をさしはさませない>
 コーブに全面的に賛成しているわけではないが、「全部ウソ」と言い切ってしまう鶴保議員には仰天した。「70年代の伊豆の映像」??だって、地形が違うし、当時はどこも見物人の前で堂々と殺していた。富戸では、生きたままイルカを何頭かまとめてクレーンでつり上げ、軽トラックに積み込んで崖の上のと殺場に運び、そこで包丁を使って頭の辺りをぶった切る。時に、町内の幼稚園製や小学生が地元産業の見学に来ていたりするのだ!隠すようになったのは、1999年にIWCでイルカ猟についての批判があった後。
 (水銀中毒の話は長くなるので別にするが、発端は実はフェロー諸島での調査なのだ)
 

 ここは余分なところだが、三軒町長は1昨年にお目にかかったとき「やりたい人たちがいるのだから町は支援するしかない」というような事をおっしゃっていた。伝統とか何とかではなく、やりたい人がいる。水産庁が枠を与え、県が許可する限り、猟は続くし、また海外への輸出もなくならないためそれほど打撃とはならない。しかもその産業はすでにかなり崖っぷちで、生け捕りを販売するという新事業で何とか継続している。これを「伝統だから」というのは苦しいと思うのだが、実情をあまり知らないで同情するのが沿岸漁業全般に対しての日本人の義侠心(!?)だ。

 太地町の生きのびる手だての一つは、「伝統文化」を掲げる事による補助金等の獲得(国費の獲得)だ。地方の長の腕はそれをどれだけ引っ張ってこられるか、というあたりではないだろうか。それをすべてダメというつもりもないが、結果的に自立を妨げ、問題解決を引き延ばしている原発立地地域と似た構図になりがちだという事は一応注意しておきたい。

 

2015年6月14日 (日)

あ〜〜疲れた

 月曜日に突然、名古屋のテレビ局から出演依頼が来た。「激論コロシアム」という番組で、イルカ猟問題をやるという。
 JAZA/WAZAの事からなので、ここは福祉団体ではないので、この問題について本当はもっと適役の方がいるとおもうのだが、ぐずぐずと質問して返事をずらしていたら、電話なども来てしまい、出る人がいないらしいのだ。イルカ猟やショーに反対する人が日本国内にいないかたちにされるのも悔しいので、嫌々ながら前々日の夜(コロセウムに放り込まれる奴隷になるのは嫌だ〜と担当者に言ったが、他にも反対の人はいる、といわれた)承諾した。アンケートで構成すると早速送ってきたのでそれを見たら、何と、和歌山新報に掲載された鶴保庸介議員の意見に沿って作られていて、そうか、そっちの方々がそのシナリオでやりたいと企画を持ちかけたのか、と遅まきながら気づいた。
<見てください!>
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2015/06/20150602_50509.html
和歌山新報:文化無視の要求と戦う 太地のイルカ漁・捕鯨を守る
15年06月02日 11時42分

本来なら、JAZAや、2010年にWAZAとの合意形成に協力した名古屋港水族館がきちんと対応すべきところだったのに、と思ったが(どうして?と担当者に聞いたら、名古屋港水族館の館長の名前も知らなかった!)。アンケートでチェックすべきところをそれから情報獲得し、とにかく、意見の相違を際立たせるより、事実関係が間違っている事を指摘しようと考えた。
でも甘かった。こういう番組は久しく見ていないが、出演者同士のある種の呼吸みたいなところもあって、なかなか思うようには運ばない。僅かに司会者が私にふってくれたことで少しは救われた思いがした。
とにかく、資料映像というのは大変多く、それがまた、鶴保議員の意見に実にぴったりあったもので、そこのところを指摘できなかったのは残念だった。

(この段階では、きちんと編集後の映像は見ていないので、間違いもある)

・太地漁業のHPにある資料を使って、動物福祉に関しての「改善]というのが実は違う事は指摘できたと思う(たぶん)。他の事にも、もっと別資料を見せれば良かったと思ったのは後の祭り
・クジラ類を特殊視しているのはむしろ日本ということは言ったが(反論されなかった)、どれだけそれが理解されたかは疑問
・イルカを人工的な施設に閉じ込める事とショーは良くないということについては、イルカ猟賛成のフィフィ(初めてお目にかかったエジプト出身の方)と北野さん(同じく初めて)が同意してくれたが、このあたり反映が不十分だったと思う。「ショーは教育的か?]という私のコメントはかろうじて残された。イギリスの例も出して司会の石原氏が「国民が選んだのか」というコメントを獲得。(この二つがきちんと前に出れば、少なくともイルカ飼育問題に対する今回の答えになったと思うが、きっとそこまでは流さないだろうな)
・国内にも反対の声があるというところを強調したため、国内活動イエス、シーシェパードはノーという形に向けられた事は残念。(困りますとコメントすべきではなかったとここは反省)
・鶴保議員のコーブについてのウソ(あれは全部作り物、太地ではなく伊豆で70年代にやってた事、水産庁の職員が水銀中毒にかかったというが、現在でもぴんぴんしているなど)について、割って入るべきだったとこれは後悔。
・鶴保議員に、データの多くは80年代90年代と古く、調査が必要、コビレゴンドウが猟期内に捕獲できなかった時に、なんでかという原因を調査するのではなく、猟期を伸ばすという解決をした事を指摘し、イルカについての調査をするよう要望したのでこれは今後続けてプッシュするのが今後の責任だろうと自覚する。
・フォラグラは17カ国と1つの州(カリフォルニア)が強制給餌禁止だという事も指摘したが反映されたかどうか。クイーンのギタリスト、ブライアン・メイが「save me」というキツネ狩り反対のキャンペーンを長らくやっている事も言ったのですが、これは遅すぎたかも。
むしろ、イルカを救いたい人たち(市民)と利用を進める人たち(産業)は別だといえれば良かったなあ、と反省。
きっと双方から文句が出るだろうと覚悟しよう。

(いくつか修正:6月16日)


2015年6月 9日 (火)

イルカの飼育

環境省 動物愛護室
展示動物の飼養及び保管に関する規準
平成16年環境省告示第33号
最終改正:平成25年環境省告示第83号

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_h25_83.pdf

第1 一般原則
2.動物の選定
  管理者は、施設の立地、整備の状況及びその維持管理等に必要な経費並びに飼養
  保管者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する展示動物の種類及び数を
  選定す るように努めること。また、家畜化されていない野生動物等に係る選定
  については、 希少な野生動物等の保護増殖を行う場合を除き、飼養及び保管が
  困難であること、譲 渡しが難しく飼養及び保管の中止が容易でないこと、人に
  危害を加えるおそれのある 種又は原産地において生息数が少なくなっている種が
  存在すること、逸走した場合は 人への危害及び環境保全上の問題等が発生する
  おそれが大きいこと等から、その飼養 については限定的であるべきことを勘案
  しつつ、慎重に検討すべきであること。

第3 共通規準
(1)飼養及び保管の方法
 エ 群れ等を形成する動物については、その規模、年齢構成、性比等を考慮し、て
  きるだけ複数で飼養及び保管すること。
 オ 異種又は複数の展示動物を同一施設内で飼養及び保管する場合には、展示動物
  の組合せを考慮した収容を行うこと。
 カ 幼齢時に社会化が必要な動物については、一定期間内、親子等を共に飼養する
  こと。
(2)施設の構造等
 ア 個々の動物が、自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、羽ばたき、泳ぐ等日常的
  な動作を容易に行うための十分な広さと空間を備えること。
  また、展示動物の飼 養及び保管の環境の向上を図るため、隠れ場、遊び場等の
  設備を備えた豊かな飼 養及び保管の環境を構築すること。

第4 個別規準
(1)展示方法
 ウ 動物に演芸をさせる場合には、演芸及びその訓練は、動物の生態、習性、生理
  等に配慮することとし、動物をみだりに、殴打し、酷使すること等は、虐待とな
  るおそれがあることを十分認識すること。

 カ 動物園等の役割が多様化している現状を踏まえ、動物の生態、習性及び生理並
  びに生息環境等に関する知見の集積及び情報の提供を行うことにより、観覧者の
  動物に関する知識及び動物愛護の精神についての関心を深めること。

記事から見た飼育施設の意見は:
 ○「登別マリンパークニクス」(北海道登別市)の例
 「繁殖や育児はショーをやっているプールではできない。広さ、深さともに相
  応の面積があり屋根、空調が整備された施設を新たに整備しなければならない。
  費用面の負担は経営上、重くのしかかるだろう」

 「館にいるバンドウイルカ4頭は、すべてメスで、繁殖には、他の水族館から
オスを借りてくる必要がある。」
 「繁殖や育児はショーをやっているプールではできない。広さ、深さともに相
応の面積があり屋根、空調が整備された施設を新たに整備しなければならない。
費用面の負担は経営上、重くのしかかるだろう」
 「館にいるバンドウイルカ4頭は、すべてメスで、繁殖には、他の水族館から
オスを借りてくる必要がある。だが、他の水族館も似たような悩みを抱えてお
り、この状況下で本当に貸し借りが可能なのか。貸し借りの順番を待つうちに繁
殖に適さない年齢を迎えてしまう恐れもある。さらに遠方から融通し合う場合、
移動手段をどうするかといった問題も生じる」産経2015.6.4.

 ○大洗水族館の例
橋本茨城県知事:私は,国全体としての問題だろうと思いますし,個別の水族館で大変多額の
費用を要する繁殖用プールなどを設置していくことについては,費用対効果とい
う面も考えると,もう少し検討する必要があるのではなかろうかと思います。
(産経2015.6.1)

★環境省の飼育規準は常識的に読めば、多くの飼育施設の現在の飼育環境に問題がある事が理解できるだろう。しかし、規準は具体性に欠け、特に数値目標が設定されていない事でどのようにも解釈でき、海水浴場でのイルカのタッチングなど劣悪施設出の飼育や貸し出しに有効なものになっていない。
また、日本国内では、イルカがショーの目玉である事、イルカショーがなければ立ち行かないなど、ショーと一体となったイルカ飼育が目立ち、そこでわずかに「教育的」と言い張れるのは、’ナマイルカ’を見たり触ったりできるという事に過ぎない。報道の多くも、イルカが飛んだりはねたりしているところが教育的かどうかという疑問を示すことをしない。
 イルカショーがある事で成り立つ飼育施設の多くが、求められる海洋教育や自然環境の保全などの啓発には遠い存在だと感じられてならない。そこで、本来の生態をどのように伝えていくのか、海洋環境保全が国連の様々な条約会議や、現在行なわれているG7でさえも最初に上げられているというのに、そうした方面と関連づけての報道や情報は皆無といっていい。

 また、日本では議論が不発な倫理面だが、動物福祉に当てはめた規準により、経済的にも飼育が不可能となったイギリスは、イルカの最小容量を1000㎥/5頭までと数値で規準を表しているし、イタリアやブラジルのように、同じ条件で1600㎥とイギリスより厳格な飼育規準が採用されている。また、もちろん、コスタリカやチリ、インドのように飼育を禁止している国もある。
 実は、IKANは2005年の動愛法改正の前に、ふたつの事柄に関して環境省に意見を提出している。
一つは、動物取扱業者に関してで、イルカ追込みを実施している業者が水族館等にイルカを販売している事から、こうした行為を行なう漁業組合も動物取扱業に含めるべきだという意見で、これは、委員会の場で直接意見を申し上げた。しかし、後に告げられた回答では、イルカ類は水産資源であるので、イルカ漁業者は動物取扱業者には該当しないという何とも理解できない答えだった。
 もう一つは、展示動物の飼育規準に関してで、広く海洋を移動する種としての生態に合わせ、社会性を鑑みた複数での飼育、十分な飼育環境と調教に対しての厳しい規準など海外の規準を参考資料として手渡して対応を求めた。結果は、最初に上げた規準にあるように、極めて抽象的で今のところ何の解決にもなっていない。
 後悔先に立たずということばがあるが、このような機会にもっと議論が深まっていれば、現状は少し違っていたのではないか、と残念なことではある。

 このところ、日本の様々な場面で露呈されてきていることだが、ヒトの幸せ、あるいは倫理的なありようよりも、経済性や産業が重視された結果だと思われるが、こうした方向性で固まって他の意見を聞かないような風潮はなんとかしなければならない(’他人のフリ見て我がフリ直せ’というが、まずは自分たちの内部から閉鎖的なありようを直視した方がいいと思う)。
 暫定的な方向として考えられるのは、動物園水族館の適切な定義を示し(先だっての国会議論では環境省としてもその方向だと消極的ながら答えていたと思う)、動物園や水族館が教育的な施設として成立しうるよう支援し、そうでないところははっきりと「ショービジネス」と切り離されるのが教育的かどうかの議論の出発としてはごまかしがなく、良いのではないだろうか。
(一番いいのは、飼育されたイルカが本来の姿とかけ離れている事を見る側が自覚する事なのだが)

動植物園等の公的機能推進方策のあり方について
(環境省動植物園等公的機能推進方策のあり方検討会報告書)
https://www.env.go.jp/nature/report/h26-01/index.html


ちょっと古いのだが、海生哺乳類の飼育に関するこんな論文もあるので紹介しておこう。
http://www.car-spaw-rac.org/IMG/pdf/OVERVIEW_CAPTIVITY_MARINE_MAMMALS_WCR.pdf

2015年6月 5日 (金)

絶滅危惧の米西海岸のシャチ,96日間の軌跡

アメリカでは、NOAAが絶滅危惧種のサザンレジデントのシャチに、
サテライトタグをつけて1月から5末まで96日間の追跡を行ない、
まだ解明されていない冬場の移動などについて調査している。

日本のシャチについても、とんでも推定生息数など出す代わりに、
(調査捕鯨の費用でも使って)こんな調査をやってほしいですね。

http://www.nwfsc.noaa.gov/research/divisions/cb/ecosystem/marinemammal/satelli
te_tagging/blog2015.cfm


ついでに、同じアメリカでウォッチング船が見つけたコククジラの親子。
大きさの違う子どもが2頭。片方は、親とはぐれたか、なくしたため
ひとりぼっちになったとところをこの母クジラが里親になったと思われる。
バハカリフォルニアからベーリング海への2万キロの旅。


http://www.grindtv.com/wildlife/gray-whale-with-two-calves-the-most-amazing-th
ing-ive-seen-on-the-ocean/#gbsbrFCWbr803xeo.97

There’s a powerful bond between a gray whale mother and her calf. She'll  
nurse and do her best to protect the baby from the time it’s born in or near
Mexican waters until it reaches Arctic home waters.

It’s an arduous task, with the little one facing constant threats that range
from hungry killer whales to abandoned fishing gear. One calf, to be sure, is
about all that mom can handle. So it was a remarkable event Monday when a gray
whale mother was spotted and videotaped with two calves on either side.[...]


2015年6月 4日 (木)

ツチクジラ

 http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/agriculture/1-0140740.html
 北海道新聞:ツチクジラ初水揚げ 日本海側商業捕鯨、函館港に体重7・5トン

 【函館】道南の日本海側で今年のツチクジラの商業捕鯨が始まり、最初の一頭
 が1日夜、函館市の函館港豊川埠頭(ふとう)に水揚げされた。

  漁の解禁は5月25日。網走市の下道(しもみち)水産の捕鯨船「正和丸」
 (15・2トン)が同日初出漁したが、その後は船の故障などで休漁が続いた。
 1日は乙部港を出港し、午前10時35分に松前沖約73キロで、体長9メート
 ル、体重7・5トンのオスを捕獲した。

 ツチクジラは、房総地方で16世紀頃から捕獲されてきた。現在も、小型捕鯨で年間66頭の捕獲が許可されており、その水揚げ風景も良く報道される。しかし、その生態はタレほど知られているとは言えない。
 ツチクジラはアカボウクジラ科で最大のもので、IWCの管理外の「小型鯨類」に分類されているが、最大12m近くになり、10m以下のミンククジラよりも大きい。長く深い潜水を行ない、深海の魚やイカを食べる。多くのハクジラと異なり、オスがメスよりも30年くらい長生きする。子育てに資するという想像されるが、この年齢差がなぜかという事(オスの方がメスより数が多いらしいこととともに)はまだそれほど詳しくは分かっていない。
 日本沿岸には少なくとも3つの個体群の存在が確認されている。推定個体数は太平洋個体群が5029頭、日本海個体群が1,468、そしてオホーツク海が663頭。

水産庁の国際水産資源の現況に掲載されたツチクジラのリンクは以下である。

http://kokushi.job.affrc.go.jp/H26/H26_47.pdf
(以下の文言にご注目)
  「本種は IWC の管轄外であるため、資源状態についての国際合意はないが、近年の年間捕獲頭数は  推定資源量の 1% 前 後であり、捕獲物の性比、体長組成の経年変化から見た限り 現在の捕獲レベ   ルが資源状態に悪い影響を与えているという 兆候はみられていない(図 6)。ただし、本種の推定資  源量は1980 ~ 1990 年代初頭にかけて得られたものであり、近年の系群ごとの資源量推定値は   得られていない。資源動向を正 しく把握するために、目視調査を継続し推定値を更新してい くとと  もに、その動向をモニタリングしていくことが必要不 可欠である。

 IWCの小型鯨類の分科会では、現在の捕獲レベル(推定個体数の1%)は、総繁殖率の推定が存在しないことから、個体群が捕獲に絶えられるかどうか判断できない、としている。そして「捕獲を継続するのならば沿岸個体群の構造と地理的な境界を明らかにする」、「各個体群についてのより正確で最新の推定が必要]と勧告している。

追記:6月5日

BBCに以下のような記事がありました。
ご参考まで。
http://www.bbc.com/news/science-environment-30993208?print=true

<Ageing whales: Scars reveal social secrets>
Scientists studying one of the ocean's most mysterious whale species have found they form long-term alliances.

Baird's beaked whales, sometimes called giant bottlenose whales, seem to prefer the company of specific individuals.
Researchers who identified the whales by scars on their bodies, are calling for hunting of the species to be halted while more information is gathered about their complex social structure.
Currently, they are hunted by whalers off northern Japan.
The new findings have been published in the journal Marine Mammal Science.

Erich Hoyt, from Whale and Dolphin Conservation and co-director of the Russian Cetacean Habitat Project, who led the research, said his team had followed the animals from spring to early autumn over four years.
"We were trying to piece together the social behaviour," he told BBC News.
The whales spend relatively little time at the surface and make regular dives of up to 30 minutes, reaching depths of 1km (3,300ft).
Disturbing them or removing individuals might have significant consequences
Prof Ari Friedlaender, Oregon State University
This makes them difficult to study. But by following them over four years and cataloguing them based on each individual's numerous scars, the scientists were able to reveal new social insights.
Most striking were the long-term relationships the whales appeared to form.
The team, mostly made up of Russian research students, discovered one alliance of two whales that were together four times - the animals were apparently repeatedly meeting up with one another over a period of more than three years.
Of the scars on the whales' bodies, the team concluded these had been caused by drift nets, killer whale attacks and cookie cutter sharks.
As their name suggests, these sharks attack larger animals by biting a circular chunk out of their flesh. That indicated that the whales migrated from cold waters in eastern Russia to much warmer, subtropical waters, where the sharks feed.

Neglected species?

Mr Hoyt told BBC News: "They're getting caught in nets, they're getting harpooned, so there's an international responsibility [for this species] that is getting overlooked at the moment.
"And the fact that we're seeing these animals ranging [so far] means the hunting of Baird's beaked whales is something that should be managed internationally."
The International Whaling Commission - the global body charged with the conservation of whales and management of whaling - said that despite their great size of up to 13m (40ft), Baird's beaked whales fell into "the category of small cetaceans (or toothed whales) rather than the so-called 'great whales'".
This means that, currently, they do not come under the commission's obligations - Japan's hunting of the species is subject to the country's own national regulations.
An IWC spokesperson told BBC News that member governments had been "debating for several years whether the organisation's regulatory mandate should be extended to small cetaceans".
New research shedding light on their social structure is likely to contribute to the ongoing discussion of whether and how this species is conserved.
Prof Ari Friedlaender, a marine ecologist from Oregon State University, said that the animals' long-term associations and complex social structures could mean that the impacts of "disturbing them or removing individuals might have significant consequences".
Dr Patrick Miller, from the University of St Andrews, added that more research was needed to clarify how the animals' associations might affect their breeding and feeding.
"But the study provides important data, which will improve our ability to understand how whaling and other [man-made] stressors like underwater noise might affect this species."

2015年6月 3日 (水)

デントーなのだ!

 最近、海外と比較して、やってることの正当性を訴える根拠として(あるいはこちらの方が正確かもしれないが、「問答無用!」と切り捨てる際に便利なことばとして)、「伝統」あるいは「文化」という言葉が用いられる事が目立つ。
 「伝統」ではいわば先輩格の捕鯨については、産業としての存在にかげりが見えた80年代から「働く人の権利」のかわりにその言葉が(PR会社の上手なキャンペーン活動が当たって)使われるようになってきたのだが、今回の飼育イルカの捕獲方法についても同様に、だんだん「日本の伝統だから守らなきゃ」と言う方向に向いて、議論が迷子になってしまった。
 捕鯨とか、イルカ猟が伝統かどうかという議論だけでなく、「伝統だから残すべきなのか、そうではないのか」、という議論もまた欠かせないと思うが、この際はとにかく誰かさんの印籠のようなものでそうした議論はもってのほからしい。かつてはパンダもゴリラも食べられてきたわけだし、伝統として存在したものでも、倫理や道徳、社会通念に照らして問題があれば、やめるという選択をすることもできる。まずはそこから始める必要がある。

 先週金曜日の国会の環境委員会では、ある議員がボン条約批准を進めるよう意見を出し、バランスを取るためだったのだろう、「太地のイルカ追込み猟が一説によると縄文時代に始まった」というような内容の発言をした。
 国際的に鯨類学者として傑出した研究者と認められている粕谷俊雄博士の「イルカ 小型鯨類の保全生物学」(東大出版)は、日本における小型鯨類の生態、人との関わり、そしてその保全の方向を記した博士の集大成というべき本だ。そこでは確かに、第3章のイルカの追い込み漁業3.1(86頁)で、能登半島の石川県真脇の遺跡から、大量のイルカの遺骸が出土し、群集性のイルカ種であった事から、「追い込み漁が行なわれた事を示唆しており、しかも複数種の存在は、それが反復して行なわれた事を示している」と記されている。
 だから議員の発言は一部では正しいのだろう。しかし、注目すべきは、著者がそれに続けて「それが偶然発生した集団座礁に便乗したものか、それともなんらかの原因でイルカが湾内にきたのを好機としてそれを追い上げたのか、さらに進んで湾外から追込みを始めたのかは動物遺骸だけでは判断できない」と慎重に述べていることだ。
 繰り返し食べていた事は事実だが、イルカをどうやって捕まえていたかは不明ということだ。ここにある、沿岸部での昔の食性を「だから(守るべき)日本古来の伝統文化だ」と一直線に主張するのは短絡ではないか、と思う。
 1月に海洋大学で開催された鯨類学入門講座でも、加藤秀弘氏が「イルカ追い込み漁は紀元前5千年前からという説もある」という発言をされたので、本人に根拠を聞いてみたが、いまだに返事をいただいていない。

 一方で、近代科学の進展がかつてのような牧歌的な野生生物の持続的な利用を不可能にしているという事も考えなければならない。ましてや、生存戦略として一産一子で長時間おなかで子育てをし、授乳期も長い鯨類に関しては、慎重にしても管理する事が難しいのは当ブログのコビレゴンドウについて述べた通りだ。現在行なわれている高速漁船でイルカの探索(及び無線よる近隣漁船からの情報提供)を行なって群れを発見し追い込むという方法は、かつてオイコスに故高木仁三郎さんが書いてくれたように「生物は生きるためにには、みな他を殺して食べている」にしろ、「ライオンがシマウマの大量捕獲用の高性能ライフルを用いるようなことになったら、ライオンとシマウマの共存はありえない」というくだりを思い出させる。もっと切実感があって「科学的に管理している」はずのマグロやウナギでさえ、絶滅が危惧されるところ、産業として規模の小さいイルカ漁業の調査、研究にそれほどの力を入れているというはずもない(データが古い事やモニタリングも不十分なことをたびたびIWCから批判されている)。個人の所有物でない、しかも国の仕切りを超えて移動する可能性のある動物を、一部の人たちが利用するのを’伝統だからいい’とすます国や議員に対して、日本人としてもっと声を上げていかなければならないのではないだろうか。しかも、今回問題となっているのは水族館での飼育に関してである。国際的にも明らかにされているように、食べるためというより、高額で取引できる生け捕りを主目的にして産業が生き延びている実態がある。この前もブログに書いたように、太地でハンドウイルカが常時捕獲されるようになったのは、1980年から動物園用の飼料としての販路が出来たことによるもので、太地で水族館のための生け捕りが盛んになったのは21世紀になってからだ。

参考:
http://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/33027399.html
(生鯨類売上収入       26,690,000
 生イルカ売上原価       4,600,000)

これも:
http://togetter.com/li/824325


2015年6月 1日 (月)

’市民説明会’という名の茶番劇

 5月29日と30日に、ジョンソン基地跡地利用に関する防衛省の計画と市の考えについての説明会が行われた。

 埼玉新聞 米軍基地跡防衛省利用 入間市民「実質的な基地拡張」
 http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/05/31/09.html

資料は、「留保地に関するこれまでの経緯」http://www.city.iruma.saitama.jp/kakusyukeikaku/15673/014999.html、
「防衛省の計画について」
http://www.city.iruma.saitama.jp/kakusyukeikaku/15673/015674.html
そして「防衛省の利用に対する市の考え」
https://www.city.iruma.saitama.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/014/983/11sinokanngae.pdf

 入間市は「基地の町」なのだ。
 米軍から返還された後に自衛隊が駐屯し、すでに「防衛力の役割にシームレスかつ機動的に対応し得るよう、各種態勢の整備に取り組んでいる(防衛省「入間市基地跡地留保地の利用について」1はじめに)。
航空祭直前になるとそれが身にしみる。自衛機がまるで空から落ちてくるのではないか、というくらい轟音を響かせて低空飛行を行なう(基地返還後の墜落事故は1963年、1972年、1978年、1999年で、そのうち78年と99年には、自衛官がそれぞれ二人ずつ死亡している)。あまり近くて孫が泣き出した事があったが、風の谷に墜落したトルメキアの戦闘機が近づいてくる所を連想してしまった。

 一方で、基地及び跡地は予期しない自然の恵みを入間市民に与え続けてきた。確かに二次的自然ではあるが、留保地とされるところ(およそ40ha)と、基地との緩衝帯となっている林地、家政大学の林地、公園になって自然としての質は落ちたものの、彩の森公園(入間市)、稲荷山公園(狭山市)と緑の回廊となって、(肝心の市民の知る、知らずは別として)入間市民の心身に寄与してきた。

 今回の計画は、かつて小河内ダム建設に追われた人々が移り住んだ東町の28haの林地に、来るべき’災害に備えて’「災害対処拠点(注:自衛隊訓練場所)」と「新病院(入間病院(仮称)(注:自衛官の救急搬送用後送病院)」を作るという。留保地自体は国の土地ではあるが、「自衛隊が的確に対処するためには、地方公共団体等との連携を一層強化する事は極めて重要であり(すなわち、地域住民の意見を聞かなければならないので)入間市が平成20年(2008年)に出した利用計画に十分配慮する」
 当該区域の開発は、埼玉県の環境影響評価条例(20ha以上の開発には環境影響評価を実施)に違反するものである。(説明会では防衛省がやらなくてもいいと言った、とか、防衛省が埼玉県に打診したが、いいと言った、という説明をしていたが、市の担当者は、何でアセスを実施しなければならないか、という肝心のところを理解していないようである。むざむざと貴重な市民の財産を放り出すようなもので、これのどこが十分な配慮と言えるのか)

それに対する市の答えはこうだ。
1.総論
市では、東町留保地については公的利用すべきものとして、緩衝緑地ゾーン及び健康・スポーツ・医療ゾーンからなる施設整備構想を内容とする利用計画を平成20年6月に財務省に提出している。
 しかしながら、財政的な事情により利用計画を具体化するには至っておらず、今後も難しい状況と考えている。(開発したいけど、お金がない)
2。災害対策拠点
地元市民が運動場を利用できる事は(注:実際は自衛隊が使っていない夜間や休日のうちで利用できるとき)健康・スポーツ・医療ゾーンとしての総合運動公園、多目的広場等の整備を構想した市の利用計画の趣旨に合致する。(注:客観的にも合致していないのは明らかだが、イケイケの市にとっては何でも合致のようだ)
3.自衛隊病院
健康・スポーツ・医療ゾーンとしての病院医療施設の整備を構想した市の利用計画の趣旨に合致する。(注:二次救急患者を受け入れるという’かっこうつけ’によって保険医療機関に昇格)
4.緑地帯
緩衝ゾーンの設置を構想した市の利用計画の趣旨に合致する。(注:訓練等の目隠し用垣根の設置程度)

 私が参加したのは、埼玉新聞の記事の翌日(30日)だったが、やはり質疑応答ではすべての意見が市の見解に反対し、計画の見直しを求めるものだった。
その理由は、
1.2008年計画とまったく異なるものであるのに関わらず、事前に市民の意見を聞いていない。5月になってやっと広報に掲載されたが、情報を幅広く伝えようと言う意志がない。→意見を聞くべき
2.災害対策とされているが、実際は自衛隊基地の拡張であり、受け入れがたい。→計画に反対
3.環境影響評価の実施なしに開発するのはおかしい。特に2008年計画で目的とされた自然環境の保持が考慮されていない(15メートル幅の緑地帯は、緩衝地帯として機能するものとは言えない)→計画に反対

 質疑時間とされた1時間の制限を超えても挙手する人が減らなかったというのに、少しばかり延長した上で説明会は打ち切られてしまった。今後はこれまでのスケジュールから言うと、6月2日(明日)からの市議会で(多分)質疑が行なわれ、6月5日までパブコメ、12日に審議会が行なわれ、そこで結果が報告され、市の対応について報告されるはずである。現状から言うとそれでは短すぎだろうと思われる。しかし、質疑の中で、田中市長が11月段階ですでに受け入れを表明した事も暴露され、形ばかりの民主的な手続きは地に落ちた形である。

*パブコメというのは間違いだった、単に責任のない「意見を聞く」という形らしい。
リンクの一番下に意見書の書式が添付されているのに注意。
https://www.city.iruma.saitama.jp/kakusyukeikaku/15673/015674.html

パブリックコメントについての入間市の手続き説明。
https://www.city.iruma.saitama.jp/dbps_data/_material_/localhost/100kikaku/200kouhou/iruma_public_comment.pdf
(ここの部分は6月3日追加)


 「災害対策」という言葉は、3.11以降、なかなか反論しにくい響きを持っている。しかし、本気で災害対策をやるのであれば、現在の入間基地をそのように改変すればすむ事である。
「自然の保全が一番の災害対策]とある人が言っていたが、まさにそのとおりと思いませんか。

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