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2015年4月 8日 (水)

「調査捕鯨と国際司法裁判所(ICJ)判決」水産学会シンポ

 3月31日、品川の東京海洋大学で日本水産学会による上記題目のシンポジウムがあった。発言者は、諸貫秀樹、加藤秀弘、ルイス・パスティネ、北門利英、森下丈二各氏の政府側の関係者に、国際法の分野から同志社大学の坂元茂樹氏。趣旨説明(と総合討論司会)は八木信行氏、1部は水研センターの中田薫氏、2部の座長は松田裕之氏だった。
 昨年のICJ(国際司法裁判所)判決が出た日と同じ日に企画したものだが、当事者同士の内輪の意見表明のように感じられた(ある関係者は「慰めあい」と形容していた)。水産学会的には、漁業としての捕鯨の現状や海外との保全・管理の考え方の大きな隔たりなどについて、内部的な意見の相違はないのだろうか。以前、漁業の管理方法を巡ってつかみ合いになるのではないかというような熾烈な論争(怒鳴りあい)があったのを見ているだけに、この静けさは少し異様にも思えるのだった。最も、参加者というのが会場を半分ほど埋める程度であり、しかも大半が元政府代表を始め、鯨研、共同船舶、GGTなどいわゆる関係者であったことを考えると、来ない事も批判のうちかもしれないのだが。

<シンポ内容>
 トップの水産庁・諸貫秀樹氏はこれまでの捕鯨側の見解のおさらい。国際司法裁判所の仕組みと判決について、国連の常設の司法機関で、国際的な紛争の解決や助言などをその役割としているという一般的な説明の後、今回の裁判では2007年に選ばれたラット元首相がその公約として、捕鯨問題の司法的な解決を掲げていて、公約のために提訴したと紹介。判決では日本の調査捕鯨について、「JARPAIIは国際捕鯨取締条約(ICRW)8条1項の範疇ではないとされ、現存許可取り消しと新たな発給の差し止めを命じると言う政治的な結果が出た」と述べた。しかし当初はメディアなどで「完敗」などと報じられたが、精査していくと違反とされたのはJARPAIIのみで、条約の目的は変えることはできないとされており、致死的調査も否定されず、新たな発給に際しては、判決を考慮すべし、とあるので、実際は引き分けだと考えるとし、新たな計画の作成の正当性を訴えた。

 次の加藤秀弘氏のテーマは「IWC科学委員会における第2期南氷洋鯨類捕獲調査プログラムを巡る議論」だったが、実際は、科学委員会の中で何が議論されているかという話までたどり着けないまま、捕鯨の歴史の話と水産庁の捕鯨の部屋にでている捕鯨の現状(どこが捕獲しているか)やIWC内部の勢力図と過去行なわれた調査捕鯨の例などで時間切れとなった。査読論文の少なさについて、学術雑誌で調査捕鯨のものだからと入り口で拒否されるのは不当、ということくらいしか科学的な話題は思い出せない。せっかくの機会であったのだから、もっと科学委員会における議論、また、本会議での議論(’反捕鯨側の感情的な意見’というイメージの植え付けではなく、実際の議論)が語られたら良かったのに。

 次に座長が中田薫氏から横国大の松田裕之氏に(座長の役割がいまいち不明)。「商業捕鯨再開に向けて実施される調査捕鯨の成果紹介」。
 鯨研のルイス・パスティネ氏が一生懸命日本語で調査捕鯨の科学的な側面における正当性を解説。調査捕鯨は、資源評価と目視調査/捕獲調査/餌生物調査と言った総合的な調査で構成され、日本だけが持つデータセットがあるとした(これは’日本だけが長年クジラを殺して調査をやっている’ということの別の言い方でしょう)。まず分布と系群構造の解明で、南極のコモンミンクにインド洋系群と太平洋系群の二つがある事が判明したと紹介し、JARPA/JARPAIIによる自然死亡率の成果は科学委員会で認められている、と強調。(科学委員会でのJARPA評価では、ミンクの死亡率はゼロから無限大の間だった聞いたが?)。次に、例の70年代のオキアミ余剰仮説と昨今のザトウ回復によるミンクの栄養状態の悪化、性成熟年齢の上昇が判明したところでもRMPに貢献とした。

 次にIWC議長の北門利英氏の「IWC科学委員会の運営と科学」。科学委員会の構造と主要な議論についての説明。この流れの中で、JARPAIIが、2006年のJARPAについての科学委員会の評価の前にスタートした事を明らかにした事は評価できる(日本政府は決して言わない)。
 クジラの管理方法としてのRMPと先住民生存捕鯨枠算出のための管理方法AWMPの違いについての解説。RMPにおけるCLA(枠算出のやりかた)。RMPは、マグロなど漁業資源管理で使われているMSE(management strategy evaluation)を先取りした革新的な管理法と紹介する(ふむむ。でも肝心のマグロ等の資源状態についてはいい話は聞かないような。多分、素晴らしい方式が出来ても、管理そのものは制度などの使い方次第でどうにでもなり、問題が起きたとしてもそれは方式のせいではないということなのだろう、とこれも素人の浅はかな勘ぐり?)。
 CLAそのものは、単一系群の管理で、複数の系群がある場合適用テスト(シミュレーションテスト)を行なって保守的な枠を算出する。このテストの際に入れ込む材料として過去の捕獲統計と調査捕鯨のデータが使われている。JARPAIIはこの点で貢献している(とその存在意義をさりげなくアピール)。
 枠を算出するための系群構造については様々な仮説があり、例えば、北西太平洋のニタリクジラのように、系群は2つから5つまで仮説がでている(より保守的になるのか、たくさん捕獲できるかの分かれ目がここということだろう)。現在、そうした議論をどうするかという事で、RMPのガイドラインも検討されているそうである。
 特別許可による捕獲に関しては、その妥当性についての評価の形式化が行なわれており、評価会議のメンバーを選出するための運営グループとして、科学委員会正副議長、IWCの科学主任、過去4代の科学委員会議長が外部科学者、科学委員会の科学者を選び、資料提出の締め切り、オブザーバー参加と役割、データアクセスなどの明文化を行っている。この2月に行なわれた新計画の評価会議は、選ばれた10名の科学者(科学委員会5名、外部4名と事務局)と日本政府代表24名、オブザーバー10名が参加して行なわれ、4月12日以降に公開される。(きっとそのうち昨年のJARPAIIの評価会議の結果のように、鯨研が鯨研流の邦訳をしてくれることを期待しよう)

 次は水研センターの森下丈二氏(コミッショナーとしてでもなく、IWC副議長としてでもなく水研センター所長としての意見だそうです)による「IWC総会における運営と科学」で、ICRW、科学委員会、モラトリアム、RMP、サンクチュアリについて説明した上で、その問題点とIWCの将来について述べた。
 最近の彼はその主張の中心をモラトリアムにおき、これは一般的に言われるような「商業捕鯨禁止」ではなく、(10(e)は捕獲枠がゼロであるという事)再開のためのツールであると主張する。
 昨年のIWCでは沿岸の捕鯨再開を訴えるときに、4分の3の票獲得によってモラトリアムを解除する事なしに、モラトリアムのままで商業捕鯨再開は可能だと説明した。沿岸捕鯨業者の必要性を訴えるよりも、議論の抽象化によって小型沿岸の日本提案の中身は影が薄くなってしまった印象だ。
 また、サンクチュアリについては資源状態に関わらず禁止措置をとることが科学的ではないとして、「これこそIWCの科学を扱うやり方」と難ずる。そして、IWCが「不確実性を乱用(不確実性というなの悪魔)」して商業捕鯨再開を阻止している。反捕鯨による多数決の科学が横行している事で、IWCが気候変動枠組条約や生物多様性条約などの他の条約と異なる政治的なものだと言う。
 (しかし、気候変動枠組条約が各国の政治的な都合でいかに不都合な結果になっているか知らない人はいないのではないだろうか。日本が未だにどれだけCO2を減らせるのかという数値を出せないという恥ずべき事態についても、政治性は全くなく、科学を優先したとでも???それに比べれば、すでに実体のほとんどないと言える捕鯨に関しては、クジラの科学は十分尊重され、政治的には牧歌的とさえいえるのではないかとさえ思う。彼の発言がどんどん永田町向けになっていくのを見るにつけ、IWC の将来ではなく、官僚・元官僚の将来の話ではないのか、とゲスの勘ぐりをまたまたしてしまったのでした!)

 最後の同志社大の坂元茂樹氏の国際法学者としての話は、日本のガラパゴス化を象徴しているようでそれなりに興味深かったかもしれない。国際司法裁判所の判断について、裁判所が科学については判断しないとしたにかかわらず、極めて政治的な理由から科学の領域まで踏み込んだというのが彼の主張だ。
(このあたり、国際問題636号に掲載された北大の児矢野マリ氏の「国際行政法の観点から見た捕鯨判決の意義」と比較すると分かり易い。通常の裁判と異なり「この裁判の請求目的は原告豪の被った損害の救済ではなく、もっぱら多数国間の条約の遵守の確保」であリ、「伝統的に司法機関が担ってきたバイテラルな紛争処理に留まらない(つまり、公益が問題とされる可能性)」事に関して(良きも悪きも)今後の波及の可能性について論じている。「判決の結論に至る法的推論にはいささか不明瞭な点もあり、そこには裁判所の政策的配慮に基づく政策施行的判断も見て取れる」と、この点で政策的という言葉を使っているが、坂元氏の述べるような否定的な見方だけではなく、この間のIWCにおける調査捕鯨についての対立の歴史とともに条約以降の科学技術の進展などを土台とした判決の元となる判断が客観的に述べられている)
 坂元氏の話に戻ると、国際捕鯨取締条約の8条1項について、豪の「for purpose of sciencific research」を「for purpose of 」と「scientific research」の二つの要素にわけて検討するとする主張をそのまま採用し、日本の調査捕鯨が科学目的でなかったという判断を下したが、これは具体的な審査基準を逸れ、科学的な判断をしているとした。
(このあたりは法律の専門家ではない身としても、科学目的であったかどうかは、調査捕鯨のそもそもの発端からして国内でも疑問視されていたことであり、結果として科学的な研究が行われたとしても、その根幹にあるものは科学ではないという日頃のもやもやを形にしてくれたと、むしろこの判決はすんなりと胸に収まったのは事実だ)
 また、判断の一つの根拠になった鑑定人の証言(具体的には日本側証人のワロー博士)については、もともと科学者と法律家の用語の使い方が異なる。実際は、科学の「外交化」といわれる特定の政策的立場が科学的装いをまとって主張されるもの(ワロー博士は正直すぎた!から負けた?)。
 ここまではまあ日本の法律家の見方だから、と聞いてきたが、そのあとは、IWC65におけるニュージーランド提出の特別許可に関する決議を持ち出し、ICJ判決は当事者間において、かつその特定の事件にのみ拘束力を持つというICJ 59条を例に、決議に判決が7カ所も使われた事や、前文でICJが権威ある根拠とされ、特別許可発給の事前審査手続きを求めたのは「自分たちに都合の良い引用を利用した」という非難を行なっている。さらに、法的な拘束力のないIWC決議に関して協力義務を「こっそり」と入れ、許可を付与しない(実施しない)事を日本に求めているとした。さらには、性成熟年齢の算出は致死的調査でしかできない、モラトリアムについての10(e)では第1文のみが反捕鯨国の支持で継続され、科学的助言を無視しているという政府の言い分を繰り返し、今後日本の取るべき道として、調査捕鯨実施について支障が出た場合は日本がICJに解釈判断を求める事ができると勧めた。

 総合討論はさらに面白くなく、書くまでもない。

 
 

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