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2014年12月22日 (月)

「政治的ニーズ」に翻弄されるヒトとクジラ

 
http://www.sankei.com/premium/news/141220/prm1412200010-n1.html

【経済インサイド】
「霞が関で次々「鯨料理」がメニュー化される理由
[・・・]首相も恐れる“こわもて”のクジラ伝道師の行動力に、全省がひれ伏すのも間近か!?。」

 今年9月18日、65回IWCの最終日、日本代表の森下丈二国際水研所長は、小型沿岸捕鯨再開提案否決に対して、捕鯨推進には’政治的なニーズがある’とし(国内需要という旗を降ろした)、今後、国内での政治的な関与が強まる事を予告した。言葉通り、10月17日、自民党内に捕鯨特別委員会の設置が決定、南極海における(商業捕鯨再開を目指す)調査捕鯨の再開を目指して活動を始めている。

 しかし、そのニーズに伴わないのは国内における鯨肉需要である。そのことを何よりもご存知の議員は、まず霞ヶ関で手っ取り早く鯨肉食普及を画策する。自民党食堂でのメニュー化のため、「業者を変えるぞ」と脅した事は以前ブログで書いた。外務省への導入が成功し、今回記事によると次は経産省、そして、財務省と文科省への導入が進められているようである。

 (金持ちの)霞ヶ関官僚が’グルメ’に走る事が需要喚起につながるかどうか怪しいものだが、文科省から学校給食への導入は恐ろしい。官庁の食堂では食べるものを少なくとも選ぶという権利は残されている。しかし、ご存知のように、「教育の一環」と歌われる学校給食には選ばないという選択肢はない。それも、議員さんたちの勝手な「正義」遂行のためのニーズによって。
 すでに7千校で実施されているそうだが、中には、割安のアイスランド産ナガスクジラ肉を使ったところもあると聞いている(ナガスクジラはIUCN の絶滅危惧種に該当する)。いずれにしても、学校教育として南極海や大西洋における哺乳類を食べる事を伝統文化として奨励し、国内需要を演出ようというのだ。
 こうした屁理屈がどのように国際的な理解を生むのかー本気で国際理解を求めているのか大変疑わしいが、政権の他の頭の痛くなる諸課題とともに、国民のニーズではなく、永田町のニーズで事が運ばれることの怖さをもっと知っているべきだと思う。

2014年12月 5日 (金)

アメリカ、サザンレジデントのシャチが

 サザンレジデントに所属する若いメスシャチが死んだという情報があった。今年、4頭目だ。

/Young adult Southern Resident female orca found dead in Georgia Strait
according to the Center for Whale Research/

今朝早く、カナダのジョージアストレイトで、J32と識別されてきた18歳のメスのシャチ
(ラプソディ)の死亡が確認された。彼女は妊娠後期と見られていたそうだ。

これでサザンレジデント個体群のシャチは77頭になってしまった。

これまで言われてきたところでは、この群れの減少は、主に餌生物(サケ)の減少と海洋の汚染それに騒音による。アメリカの絶滅危惧種法が適用されているが、回復計画はなかなかうまくいかないようだ。
サザンレジデントシャチのこうした状況は、海洋生物の将来を象徴しているかもしれない。

翻って、日本のシャチたちはどうなのだろう?北海道で有志の人たちが調査しているようだが、まだ途上だと思われる。
 水研センターでは、数年前に突然、根拠の分からない推定個体数の激増があったが、こうした楽天的な見方で良いのだろうか、と大変気になる。

なぜだかよくわからない

 11月28日の調査捕鯨新計画に関しての記者会見で、新計画についての政府の主張にいくつか理解できないことがあることがわかった。

 一つは、海外メディアが取り上げた森下発言の「環境帝国主義(eco-imperialism)」ということばである。これは、海外が日本人の鯨食についてとやかく言う事を指しているようだ。しかし、この間の一連の動きで問題になってきたのは、食べる、食べないという問題ではない。もちろん、食べるより、守っていたいと感じている人たちはたくさんいると思うが、だからこそどんなやり方で得ているか、やり方に問題があるが故に突っ込まれるので、それを食べる、食べないの話にしてしまうのは、ごまかし以外の何者でもない。
 彼の言い方では(これまで私たちが言っていた事に似ているようだが)「自分はクジラは食べないが、牛肉食べたり、豚肉食べたりしている人たちに(クジラを食べるなとは)言われたくない」と言うのが一般の考えだそうだが、食べていないのであれば、なんで捕りたいか?がますますわからないではないだろうか。「海外に対して丁寧に説明していく」という言葉がこのところあちこちにでて来るが、彼の会見での発言を見る限り、丁寧に説明するどころか、喧嘩を売っているようにしか見えない。
 「食べない」もののために世界に喧嘩を売って何が得られるんだろうか?

 今回の新計画での目的は、管理方式の精度を高める(捕獲できる枠が保守的すぎるので)そうだが、すでに商業捕鯨をするところがないのに、何でこれまで合意された管理方式の精度を高めなければならないかも分からない。政府は種が絶滅しなければ捕っていいと考えているみたいだが、JARPAIIで捕獲したクジラが余りまくっていわゆる「生産調整」をしなければならなくなり、結局200〜300頭で間に合う状態だったのに、何千頭も捕獲したとして、誰が食べるのだろうか?飢餓にあえぐ何億という人にばらまくため?そのやり方は持続的とは言えないし、問題解決にはならないでしょう。

 今回計画はとりあえず、12年(長いなあ)ということだ。それからはどうする?調査捕鯨を継続していけば、沿岸での捕鯨再開は難しいのはこれまでの経緯でも明らかだが(まあ、今の管理方式での沿岸捕鯨枠ではちょっと産業的にさびしい事も手伝って)、やっぱり(補助金を好き勝手に使えて、日本の‘原理・原則’を曲げない方法は)ずっと続けるにはこれしかないでしょう、と考えている?

 丁寧な説明ってこんなところにこそしてもらいたい。

 

2014年12月 1日 (月)

代表が言う事にゃ その2

先週の金曜日、11月28日に外国人特派員協会で森下丈二コミッショナーが新計画を発表。
実に精力的な今日この頃。

FPCJ Briefing on Proposed Plan for New Scientific Whale Research Program
in the Antarctic Ocean
http://www.youtube.com/watch?v=KlkOzJyzOaQ

 海外メディアはこの会見をおもしろがったのか、開いた口が塞がらなかったのか分からないが、「捕鯨反対は環境帝国主義」とか「鯨肉禁止は着物禁止と同じ」と言ったタイトルで会見を掲載している。

http://www.japantimes.co.jp/news/2014/11/27/national/opposing-japans-whaling-program-eco-imperialism-official-says/#.VHvMfW-zf8F
(英語版。これにはなかなか真っ当なコメントがついている)

http://newsphere.jp/national/20141128-4/
(日本語で海外紙の紹介)


 彼は最初に(これまでも展開してきた事だが)、捕鯨についての誤解をいくつかあげ、例えば、捕鯨は全面的に禁止されているとか、クジラを殺すのは悪いことだとか言うのは間違いだとし。その例としてICJ判決と商業捕鯨モラトリアムについての項目10eを上げた。

 彼の言うのには、ICJは国際捕鯨取締条約の捕鯨産業の発展と言う目的を変えていない、また、致死的調査の必要性を認め、オーストラリアとニュージーランドの言うところの時代にとともに捕鯨条約の内容も保全に変わっているので、非致死的調査にすべきというのは言い過ぎだとしたというのを強調。
(これについては、ICJが決める事ではない。本来であれば、国際捕鯨取締条約の改正を行なうところだが、残念ながらそこまで議論が至っていないのが現状)

 また、IWCでも展開した10e。つまり商業捕鯨モラトリアムの文章では、捕獲枠がゼロだというだけで、最善の科学的な結果をもってゼロから然るべき捕獲枠の設定が出来るのだということ、1990年に見直しを検討するはずだった(というのをやっていないというニュアンス)。持続的なクジラの利用は文中どこでも禁止されていない。
(だけど、IWCでは今のところモラトリアムの解除は採択されていないのが現実。もちろん1990年にはまだ最善の科学的な勧告が出せる状態にいたっていない。ミンククジラの推定個体数だって、3年ほど前にやっと合意されたのだ)

 という事から、南極海での新たな調査は必要なんですよ、という背景説明を終わり、NEWREP-Aの説明に。今回調査の目的ではミンククジラの捕獲枠の算出(RMPに従って)と南極海の生態系の動態のための調査をICJの判決に沿って計画した、という。そして、致死的調査については、捕獲枠の算出に不可欠な年齢査定のために耳こう栓を採取する事が不可欠と。DNAによる調査でも可能になってきているというが、若いのか年寄りかは判定できても、若いといっても32歳なのか33歳なのかは分からないのです、と。致死的調査と非致死的調査の結果の比較もするということだ。

 船舶は今のところこれまでのものを使うつもりだが、予算次第である(しかし、会場質問に対して、まだ計画案だから、予算は分からない、と逃げた。これまでの調査でいくらかかったの概算できているはずだし、今回これはすべて税金の可能性が大。議員の大盤振る舞いで造船もあり?)

 彼の発言で問題なのは、反捕鯨=感情的で科学的な議論をしていないような見せかけをする事で(科学議論の部分はいつでも省略)、日本の主張(クジラを特別視しないで水産資源の持続的な利用の一環に捉える科学的な考え方)が正論だと思わせるような言い方だ。
 こうしたやり方をした末に出されたのがICJ判決だという事をすっかり忘れているようだ。

 また、Q&Aで出た鯨肉あまりについて、嬉しそうに’もう在庫はなくなった、これからは品薄になって値段も上がるかも’、と言っていたようですが、実際になくなったのは「在庫調整」がうまくいった結果であって、消費量は増えていない。保冷倉庫にはアイスランド産鯨肉がたっぷり残っているはずだし、ロフトソンさんは今年もがんばってかなりのナガスクジラの捕獲をしたようなので、それもそのうちやってくるはず。
 
 突っ込みどころ満載であったのに、質問に対して長々とあまり的を得ていない答えがあって、的確な質問がでなかったのは残念だった。

 IWCで森下氏が予言したように、’政治的なニーズ’が森下氏をあちこち馬車馬のように走らせ、恥の上塗りを更新しているみたいに思える。どうせ国民の声など聞く気のない政府の元で、あらがうだけ無駄なのか。

そういえば、どうなる選挙結果?

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