官僚(ぢゃなかった!代表)が言うことにゃ「捕鯨を巡る真実」は
IWC65における決議(ニュージーランドの出したIWC正常化プロセス)に背いて、日本政府は南極海での鯨類捕獲調査新計画を、科学委員会提出期限の11月20日に向けて今日(18日)発表した。
計画発表に先立ち、日本政府代表の森下丈二氏が業界紙に日本政府の見解とおぼしきものを、3回にわたって(これを書いた段階では認知していなかったが実際は5回だった)展開している。題して「捕鯨をめぐる真実」という。その柱となるものは、IWC会議でも主張していた「モラトリアムは商業捕鯨の禁止ではない」ということだ。それについての間違った解釈がまかり通っている、それを正さなければならないというのが彼の使命だ。
(同じように、ICJ判決に土絵も、日本が完敗したというのは誤解だと言っている)
しかし、モラトリアムを解除するための要件である附表修正(つまり4分の3の支持)は獲得出来そうにない。彼の言うようにモラトリアムが商業捕鯨開始のためのものであり、解除の要件と手続き規則が書かれているとしても、本会議はその要件が満たされているとは考えていないという事だ。4分の3が獲得できないのが分かっているので、今回も本会議ではモラトリアムは解除しないとする沿岸小型枠を要求した。一方で、こうしたモラトリアムの解釈談義を国内向けに発信し続けている。
彼が主張するところのIWCが1990年にモラトリアムを見直すと言っておきながら忘れている、という非難は、1990年当時、見直せるだけの情報があつまらなかったに過ぎない。いうまでもないが、南極におけるミンククジラの推定個体数が合意されたのはつい3年前の事であり、2006年に行われた日本の調査捕鯨(JARPA)の科学委員会評価では、調査目的であった推定個体数も自然死亡率も分からなかったという結果に終わった。
国際捕鯨条約の目的は持続的な利用で保護ではないということについても同じだ。確かに世界の趨勢はクジラの保護の方向を向いているが、本会議の議論では日本の強引な主張が科学的、持続的な利用とイコールとは言えないから支持されないのだ。今回の本会議で、ICJ判決と調査捕鯨について、いつもなら日本支持のコーラスがわき起こるところ、何も起こらなかった。
国際捕鯨条約の目的だと彼の言う「捕鯨産業の秩序ある発展」については、すでに南極海で操業する企業がない現状を見れば、軌道修正してもおかしくはない話だ。モラトリアムの解除によって、捕鯨産業に参入して来る企業がそうそうあるとも思われない。
国際議論では勝つことができないので、元々は沿岸捕鯨でいいのでは、と言っていた森下代表がこうした新解釈を出し続けている。しかも、今回の3部に別れた彼の主張で毎回強調されているのはメディアに対するもので、間違った発信に対しては正してほしいとか、彼の新解釈をスクープとして出してもいいなどと書いている。ここから読み取れる事は、これまで好き勝手やってきた情報の操作があんまりうまくいっていないということだろう。
残念ながら、またしても新たな調査捕鯨計画が出されてしまったが、国際的に評判を落とすのが精々で、それで国内の需要が増す話ではない。議員さんたちが鯨肉のセールスにいそしんだとしても、今後ますます「笛拭けど踊らず」の傾向は強まると期待している。
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