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2014年10月 2日 (木)

IWC65inPortoros 二日目

 二日目も9時から会議が始まった。今回は、「コミッショナーさん、会議場に入ってくださーい」という合図のベルが(2回ないし3回)鳴って会議が始まる。

<先住民生存捕鯨小委員会の報告書>
 最初の議題は先住民生存捕鯨に関するレポート。
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3554
 前回、本会議臨時議長を務めて評判の高かったスイスのマイニニ氏が小委員会の議長に選出され、先住民生存捕鯨の管理方式と制度の検証を行った事が報告された。
 パナマで議論の的になったザトウクジラについて、いくつかの課題を残して捕獲枠の評価が終了した。完成するためには、委員会によるボランタリーな資金提供と中間的な作業部会による検討が必要とされる。ホッキョククジラクジラについては、おおむねは終了したものの、移動する先のカナダでの評価を含めないうちは不十分であるとされた。
 今回、グリーンランド自治政府はニード・ステートメントの更新を行ったが、ニード・ステートメントの内容の規準作りも必要とされた。
 本会議の開始前、アメリカのティルマン博士を議長とした作業部会と先住民ハンターによる会議が行われ、その報告も出された。
 先住民生存捕鯨の小委員会による報告書は採択された。

<サンクチュアリ>
 1994年に設立された南大洋サンクチュアリの継続について、オーストラリアが提案。
詳細は保全委員会の7ページに。
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3589
保全委員会がサンクチュアリについての共同運営委員会の設置を決定。
 
 NGO2団体からの意見。
 まずは国際自然資源管理協会(IWMC)によるサンクチュアリに反対する意見。サンクチュアリには科学的な根拠がない。資源量が増大している中、(利用のための)科学、統計に立脚したものが必要。

 サンクチュアリ支持意見はチリの鯨類保全センター(Centro de Conservacion Cetacea=CCC)
モラトリアムによって回復しているとはいえ、初期資源の状態に戻るのにまだ何十年もかかる。最近は、それに加えて様々な海洋にかかる懸念要因がある。国連海洋法条約の94条に基づき、鯨類の60%もが生息する南大西洋の繁殖地の保全を国際的な協力で行う事はまた、沿岸地域のWW産業を振興させ、沿岸国の発展にもつながる。

 採決は最終日に。

<小型鯨類の保全>
 モナコは、前回の会議において提案した小型鯨類の国際的な協力体制での保全推進について、関係者との合意形成に務め、議論が沸騰する文言を削除して新たな提案を行った。IWCが管理するのはすべての鯨類の僅か5分の一(17種)に過ぎず、他の国際機関によってもカバーされていない。各国に管理にしても省庁縦割りの弊害で十分の保全が行き届かない。
 そして海洋生物多様性の保全がいかに重要かということを(なんと森下さんと張り合って)、フェラーリを例えにした!すなわち、フェラーリのパーツを適当に抜いてしまったら、走ることはできないでしょう、と。
(過去に森下さんは2度、自動車を例にとったことがある。一度目は、アラスカでの会議。JARPAの貢献はRMPの管理ではなく、改善に役立っている、例えれば、燃料のインプットではなく、自動車の機能を良くしていくようなもの、と。もう一度は、アガジールだったかな?何で自動車は商業流通できるのにクジラは駄目か?と)
 IWCの科学委員会は最高の専門家集団であり、その知識とデータを活用して国際的な協力の下に保全を進めるべきだとした。

 しかし、保全派と利用派でまたしても対立。日本は、海洋法条約の64項(漁業の利用と管理)を引き合いに出して沿岸国の権利と、利用についての地域漁業機関に言及。モナコはそこは主に魚種について書かれているのでは?と反論。合意形成のためwhalingもはずしたのに、残念。
そして投票。

結果は37対15でモナコ決議案採択。

*ボン条約による小型鯨類保全・管理に関する決議案についての声明が出されている。
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3574
*科学委員会の小型鯨類の分科会では、毎年のように、日本沿岸の資源対象とされているイルカ類などについて最新の調査が必要という意見がある。また、今回も科学委員会では太地のイルカ追込み猟についての懸念が示されている。
*今、環境省がレッドリスト作成中である海生生物に関して、2016年にその評価が公表される。小型鯨類に関しては、水産庁任せ弟子かもレッドリスト作りに当たっての新たな調査は予定されていない。残念ながら、今回の決議によっても何らかの変化は期待できないだろう。

<食料安保>
ガーナ、コートジボワール、マリ、ギニア共和国、ベニンの共同提案。
(調整中で昼過ぎに議論する事に)

<市民参加と透明性に関する決議>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3582

日本政府やメディアにとっては余り関心がない分野で、チリによる提案。
 国際会議によっていくらかの違いがあるにしても、時代とともに市民参加の必要性が強く認識され始めている事は確かである。又、会議の透明性も十分保証されなくてはならない。
IWCにおいては、以前に許可されていた市民の発言権がいったん失われ、2007年に復活したものの、必要な議論が終了した後にガス抜き程度に行われてきた。今回提案は、条約の手続き規則も改正もふくめた市民参加と会議の透明性に関しての抜本的な決議案である。
本会議以外に科学委員会や財運委員会へもオブザーバー参加を求めている。しかし、いくつかについては各国代表からの反発もあり、すべての意見を取り入れて合意形成を計っている。

*今回は、本会議開始前8時に議長とNGOの合議で、その日の議事に関しての意見表明が決められる事に。

<科学委員会の役割と予算について>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3583

同じくチリからの提案。同じく日本政府がいやがるところ。
科学委員会は過去10年来、保全関連の任務が増えてきた。しかし、科学委員会への予算計上はなく、各国政府やNGOによるボランタリーな基金によって多くが運営されてきた。保全措置への予算配分を検討する事が求められている。
これも各国政府の合意にもと、コンセンサスでの採決が望ましく、最終日まで議論を進めていく。

<特別許可による捕鯨についてーNZ決議案>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3452

 3月31日に国際司法裁判所から出された日本の第二期南極海調査捕鯨についての停止判決を受けて、条約会議をまともに機能させるために提案されたものだ。特別許可の是非を科学委員会のアドバイスのもと本会議で議論し、決めるのがそれほど異常だと思えるのか、日本国内で「引き延ばし案」と呼ばれている。
 日本としては、今年の科学委員会に計画の提出が間に合わず、来年こそと思っていたのかもしれないが、どのみちこれまで何十回と調査捕鯨を自粛するようにという本会議での決議があったのにやってきたことだ。また、何らかのいいわけのもとにやるだけなのに、あたかも日本が決議案に従うような書きぶりはどういうこと?
 なにより日本が条約会議の場での議論など無視して勝手にやってきた事が正当であるかのように、(捕鯨推進勢力はともかく)国内メディアまでが考えていることに、驚かされる。
 概要にも書いたが、この提案は一方で、判決に則り、特別許可および致死的調査を認めることにつながる。鯨類の非致死的利用を推進する国々からは妥協案と見なされている。

 この決議案に関しては、日本などがいうように判決はJARPAIIに限った事だし、オーストラリアとニュージーランド対日本に対してのものだから、IWCの枠組みを拡大解釈すべきでない。判決を遥かに越えた決議案はむしろ判決にそむくもので(?)、大幅変更が必要であれば附表修正をすべきだという意見である。
 一方で、オーストラリア、EU諸国、アメリカなどは決議案を歓迎。しかし、ラテン諸国は判決を精査してもっと厳しい内容にすべきだという意見である。
 NZは反対するところとの合意形成のための円卓会議を呼びかけた。

<将来のIWC>
 ガーナがEU との更なる対話をすると報告。他に意見なし。

<クジラの資源量>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3436

科学委員会からの報告。
科学委員会報告書27Pから。委員会からは特にコメントなし。

<保全委員会Conservation Committee>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3589

・ ロシアチュクト海域の臭いクジラについて
 1970年代から、化学臭のするクジラの発見があり、2000年にはその割合が全体の10%まで上っているが、原因が究明されていない。ロシアによると、セイウチやアザラシにも見られるようだ。先住民生存捕鯨の枠の中のS&Lとカウントされるべき、あるいはキャリーオーバーとして考慮すべきという主張。原因究明は簡単ではないので科学委員会の調査を必要としている。
・船との衝突
 2011年の勧告を継続し、衝突を減少させるため、タイミングに合わせてスピード制限、航路変更など時空間的な対応を考える。IMOなどにも協力を要請している。
UK:スリランカのシロナガスクジラに関して船舶との衝突に科学委員会が積極的に協力する必要がある。報告書の記載がないが、記録してほしい。
ドイツ:回避のため世界的なデータベースを準備してあらゆるグループがアクセスできる事が望ましい。
・保全管理計画
ニシコククジラ 関係国による覚書が取り交わされた。
オーストラリアが保全管理計画の推進のため常設委員会を提案し、15万7千ポンドを拠出。

<決議案続き>
 チリの市民参加と透明性(決議65.12)と科学委員会(65.13)についての議論。各国との調整を続けている。
 日本が、市民のビューロー参加について作業は電話やEメールなので、オブザーバーとして参加するのは難しいのでは、と意見。又、科学委員会の意見は聞いたのかと注文。
チリは引き続き調整を継続し、コンセンサスをめざす。

<動物福祉と捕殺法>
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3474

 捕鯨国によるクジラの致死時間とともに、ら網などで救助できないクジラの安楽死など、作業部会では福祉の観点から包括的な議論が行われてきた。
(動物福祉に関して、日本では家畜など一部改善されているものの、福祉の概念そのものを理解していないように思われる)
 イタリーの発言、福祉が検討される事により、一貫した管理が行われるという意見に大使、ノルウェーが反発。福祉を政治的に利用すべきではないと主張。ノルウェーはハンターの訓練など必要なことを行って、データはNAMCOに提出している。
(注:北大西洋海産哺乳動物委員会North Atlantic Marine Mammal Commission、NAMMCO)は、1992年にノルウェー、アイスランドとグリーンランド自治政府、フェロー諸島自治政府により設立された)
 日本は、これまでクジラ捕殺に真剣に取り組んできたが、感情的な対立が起こっていて提出したデータのうちの最悪のケースを取り上げられて批判を受けた。課題に取り組んでいることを示すデータはNAMMCOに提出している、という意見。それに対してオーストラリアがNAMMCOは北大西洋の委員会ではないのか、と質問(つまり南極ミンクに関しては範囲外)。
 NAMMCOがこれに対して国連海洋法条約のもとで作られた(つまり地域協定)国際的な機関であると回答。自然資源の持続的利用を認めており、捕殺方法の向上、狩猟者の安全などを検討する合理的な機関だと返答。

*日本はたびたびIWCからの脱退を言うが、もし脱退する場合、このような地域協議会を組織する必要がある。南極でやりたいなら、オーストラリアやニュージーランド、アルゼンチンなどが協議会に参加するといって来るかもしれないし、来たならば、アメリカ、ロシア、韓国、中国、北朝鮮とも仲良くする必要があるかも)

 最後にNGOとしてベルーガハンターズインターナショナルが発言。ホッキョククジラの捕殺に関して、トレーニングを向上させてその効率を80%まで高めたという発言。気候変動による解氷や石油掘削で苦しめられている。


 
 

 

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