IWC65inPortoros 三日目午後
午後は、イギリス提案のクジラ捕殺と動物の福祉のアクションプラン最終版がウェブに掲載されているので確認するようにという案内。
保全委員会からロシアが日本、アメリカとニシコククジラの保護管理計画に関する覚書を結んだ事を報告。又、鯨肉取引に関して、アイスランドとノルウェーがワシントン条約の留保手段を使って鯨肉を輸出し、規模が拡大している事を懸念。
<海上の安全>
そのあとは、恒例の海上の安全についての日本のプレゼンテーション。日本語で。
2005年から2013年にかけ、繰り返し暴力行為が行われ、意図的に調査船に体当たりし、乗組員が負傷するなど人命に関わる妨害行為が行われている。それについては2012年アメリカの第9巡回裁判所により、シーシェパード及びポール・ワトソンに対して、公海航行船の457m以内に近づいてはいけないという裁定が下されている。しかし、2012/2013には、スクリューにロープを投げる、レーザー光線を照射するなどの悪質な妨害が行われている。2011年、2012年には本会議でこうした妨害抗議に対する決議がコンセンサスで採択されたが旗国などの具体的な行動が不十分。入稿禁止措置や監視措置によりもっと積極的に関係国が関与すべきという主張。
次に太地の漁業組合長が太地における小型鯨類捕獲に際して、海外活動家の活動が活発化して、町民の尊厳を傷つけているという訴えがあった。
議論がフロアに移され、オランダがこれまでと同じく問題解決はIMOの管轄で、国際法として解決すべきであると前置きし、2013年に関係各国と共同声明を出した事に触れて、平和裏に反対運動をする権利をオランダは認めているが、危険な活動には反対すると主張。オーストラリアは危険な活動によって万が一の場合は救助者にも危険が及ぶ事を懸念。シーシェパードの活動は認められないとし、日本の懸念を共有すると発言。
デンマークが最近のフェロー諸島におけるゴンドウ猟へのシーシェパードの抗議活動に言及。自治政府との関係から、対話を通した問題解決を望むと発言。
ニュージーランドは、ICJ判決により、日本が本年度は目視調査のみを実施するという事なので、このような事件が起きないことを祈っていると発言。
日本は抗議活動を支持しないことに感謝しながらも、オランダに対してはシーシェパードが合法的な寄港の権利を持っていないので旗国として文書ではなく、実際的な行動での責任を果たすべきと言及。
そのあとは、日本捕鯨協会の発言。協会に属している関係会社は南極に労働者を送っており、危険な労働に関して懸念をもっている。妨害船の船籍を与えている国はそれをやめてほしい。
<保全委員会/小型鯨類の保全>
海上の安全の後は科学委員会の活動のひとつである小型鯨類について、保全委員会から報告。
小型鯨類の保全に関わる活動は、ボランタリーな基金によって運営されてきた。2009年のオーストラリアによる基金の他、ドイツ、イタリア、スイス、アメリカの他、NGOによる基金が寄せられている。2013年には、15のプロジェクトを実行したが、科学委員会からそれらの活動の優先順位をつけるよう助言されている。
イギリスから、鯨類のブッシュミート利用への懸念が示された。陸上における(ブッシュミートの)事例に学んで対処すべき。
科学委員会の支援により小型鯨類に関するタスクチームを組織して閉会中に提案をまとめる。
・バキータ メキシコ湾に生息する小型鯨類で、エビ漁の刺し網や定置網による違法な混獲がまだなくならず、わずか100頭残るのみとなっている。アメリカとメキシコが共同宣言を出し、その存続に力を注いでいるが、2018年には消滅するのではないかという危機的状況が続いている。漁具の改良や雇用の創出など、違法な混獲がなくなるように努力が重ねられている。
IUCNによると15年前には700頭生息していたのがおよそ100頭に減少している。バイジー(ヨウスコウカワイルカー中国)に次いで絶滅の危機にある。
・イタリアはEUを代表してバキータ、マウイ(ヘクターの亜種)イルカ(NZ)、フランシスカーナ(ブラジル、ウルグアイ)の3種のイルカ保護に15000ユーロを拠出すると発言。
他にも、捕鯨をやめて小型鯨類が絶滅を回避できるようにすべてのコミッショナーが参加して努力すべきなどの意見が多数でる。イギリスも小型イルカの絶滅回避のため2万ポンドに加え、1万ポンドを拠出。タスクグループの設置を支援。
・モナコは小型鯨類の危機について報告書150pに記載があるとし、生息地の後退や気候変動による移動パターンが変化し、孤立する個体群が出来ると懸念。
フランシスカーナについては、ブラジルとウルグアイが混獲回避のための行動計画を策定。
・カンボジアが同国のメコン川に生息するイラワジカワイルカについて、日本との協力による管理措置をとっている事を報告。WWFと緊密の例軽視、コーストガードを配置、毎月それぞれのサイトを巡回する。クメールルージュの時代に、多くの人が殺されたが、またイルカも2000頭近く殺されたと報告。
・ブラジル環境省はナマズ漁の餌となっているピンクドルフィンの保護に、イルカを餌としないナマズの認証を始めたと報告。ナマズの餌にした場合は罰則が適用される。
NGOによる発言(EIA)バキータ保護のためNGO48団体が署名。不法な刺し網などによるエビがアメリカと中国に輸出されている事を指摘し、刺し網禁止海域設置を求める。
続いてAWIはニュージーランドのマウイイルカについて、1975年から95%の減少を報告。既に55頭残っているのみ。IUCNがトロール漁業の自粛を求めており、2013年実施されたが、科学委員会の勧告レベルよりも狭く、20%程度しか保護できていない。20海里の狭い範囲の生息なので、科学委員会の勧告に従うべき。
ニュージーランドがマウイイルカ支援に感謝。保護の拡大を約束。沿岸6万ヘクタールで定置網とトロールを禁止措置をとる。
<SORP報告>
科学委員会報告書26P。
提唱者のオーストラリアが報告。SORPは2008年にオーストラリアが6年間で3200万ドルの資金を拠出し、11カ国がメンバーとなリ、事務局はオーストラリアの南極部局が担って開始された。非致死的な調査活動でシロナガスやシャチの分布状態やヒゲクジラの南極での摂餌行動など幅広い調査が行われた。オーストラリアとアメリカの資金提供で継続しているが、今後の長期的な調査には基金が必要とされる。
<科学委員会の作業の手順・それ以外の仕事、DNAと個体群の定義など>
データのアクセス、保全関連の支援、科学委員会の予算のレビュープロセスの改善などの報告。
<環境と健康>
NZ:小型鯨類への重金属の蓄積について国際協力が必要。
モナコ:データの受け渡しだけではなく、鯨類への影響を考える必要がある。例えばマイクロプラスティック砕片の生物蓄積など、自然消滅しない物質がどのように影響するのか、他の物質との相互作用も評価しなければならない。
ウルグアイ:水銀汚染に取り組んできた。適切な場で再び問題を指摘したい。
(いわゆる海洋ゴミー「マリン・デブリス」の中でも最近の大きな懸念材料となっているのはプラスチックの破砕物。海洋生物の体内に蓄積し、蓄積された魚を消費することでいずれ人間のもとに戻ることも大きな問題である。
そういえば、カリフォルニア州でプラスチックバッグの使用を禁止するというニュースが。
http://ecowatch.com/2014/09/30/plastic-bag-ban-california/
鯨類の保全・管理にはこうした包括的な視点が非常に重要だし、クジラ問題対立の根っこに存在するものである。一方’保存と利用’の両立を主張する日本。クジラ資源をどれくらい利用したら絶滅しないか、というコンピュータシミュレーションを唯一IWCの正しい科学として認識しているみたいに思えるのはわたしだけか)
<北極圏ワークショップ>
気候変動による解氷などがガスや石油開発、航路開発を推進する可能性によって直接的、間接的に鯨類に与える影響調査の一環として、アメリカ政府及びWWFの基金により北極圏ワークショップが行われた。
https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=3485
今後、常設議題として扱うべきとデマスターズ作業部会議長。アメリカが北極圏評議会(ARCTIC COUNCIL)など他機関との協力のもと、作業を進めるべきと助言。
<違反委員会>
ノルウェーのワロー博士が議長を務め、通常申告される年齢やほ乳中、違法に捕獲されるクジラに関しての他に2点、今回は議論された。
一つ目は、2012年に捕獲枠のつかなかったグリーンランドが自主的な枠で捕獲した事が違反に当たるかどうかという議論で、もう一つは、ICJにより「科学調査ではない」とされたJARPAIIに置ける捕獲が違反かどうかということである。
アルゼンチンは、グリーンランドがナガス、ザトウ、ミンククジラを捕獲した事に関しては違反と記録すべきと主張している。これに関しては、アイスランドが科学委員会で認められているからいいんだ、と発言。オーストラリアなどは委員会の承認を得ていないので違反だという意見。
IWC 事務局からデンマークが示した2012/2013捕獲枠に関して詳細が記録されているという報告。
議長がIWC 64において、枠は設定されなかったがそれはゼロを意味しているわけではないという発言。日本は64回会議がそうした状況を生み出す元となったので違反とするのは理にかなっていないと発言。又、JARPAIIに関しては当事者同士に対する判決であり、判決参照と付記すればいい事だと反論。
ロシアは状況説明があれば十分という意見。プロセスを記録すればいいじゃないか。下関だって枠が決められなかったのでケンブリッジで特別会議をして枠を設定した。
(何で下関の場合は特別会合を行って枠を設定したのに−そして多くの国もそう考えていたはずだと思うがー今回はそれがなかったのか謎である)
議長が再び発言。パナマでは対案がでなかった。投票するなら対案が必要である。ゼロという意味ではない。アメリカが議長の意見に賛同。
メキシコ、エクアドルなどのラテン諸国が議長意見に反対。条約に抜け道を用意する行為ではないのか。規則があるのに勝手に解釈していいのか。
モナコが議長の解釈は個人的見解ではないのかと発言。なぜ時間をかけて枠の設定を検討しなかったのか、ともっともな発言。(枠を増やさなければ可決されたのに〜とエクアドル)
議長はさらに枠を与えることができなかった委員会が間違っていたと発言。過去にこだわらず生産的な発言を求める。日本が間違ったテーマを議論している。不幸な状況を繰り返さないためになにができるかでグリーンランドに罰則を科すべきではない。
デンマークはIWCの枠内で行動している、パナマ会議の後にも議論を継続し、データは提供してきた。今回の枠の採択に感謝している。
議長が、とうとうこの件についてはASW作業部会の中でさらに検討しようという提案を行った。
オーストラリアが作業部会は実施国の限られた人数しか参加できないのでより広い参加が必要と意見。
JARPAII違反についてはオーストラリアが日本の提案を受け入れ、ウェブ脚注に入れるという事で合意。
<決議>
・市民参加と透明性/科学委員会について
チリが65/12(市民参加)に関してコンセンサスに達したと報告。しかし手続き規則について日本などから質問があり、修正を行い最終日に持ち越す。科学委員会についても質問に答えるためは継続。
ガーナ提案の食料安保とニュージーランドの決議案については最終日の予定。
・社会経済的救済措置/沿岸小型捕鯨
日本がオーストラリアに対して前回出した2つの質問を繰り返す。
1)RMPプロセスを完了すれば支持を得られるのか。
得られないならそれはなぜか、何をすればいいのか。
2)10e(モラトリアム)は商業捕鯨の禁止ではない。再開を禁じている文章があるのか?
ICJの判決もICRWの目的に適わないからとされている(目的は持続的利用だ)。
オーストラリア:出された質問の答えは既に環境大臣が冒頭で発言している通り。オーストラリアの立場は商業捕鯨反対である。先のオーストラリアの意見は、出された提案内要についての指摘だ。8つのステップの3つ目までしか完了していないので、完了してから提案すべきではないか、というもの。
アメリカが10eの捕獲枠ゼロを維持すべきと発言。
NZはICJに関連して答えたつもりである。JARPAIIが8条の科学調査ではなく、先住民生存捕鯨でもないのであれば禁止されている。日本の質問は約束を求めるものなのか、脅しなのか。
イタリアもEUを代表し、商業捕鯨に反対の立場。
日本は、どんな場合も反対なのに科学的なステップにこだわる事が理解できない。主張しているのは10eに基づくもので一定の条件があれば認められると考えている、どんな条件でも反対なのであれば10eに背くものではないのか。脅すつもりはない。今晩よく考える。
・南大西洋サンクチュアリ
ブラジル:沿岸国との競技が続いている。提案の中の懸念を説明している。明日提案。
<鯨類の捕殺と福祉>
ノルウエーがいくつかの懸念が残されているが、協調の精神で支持すると発言。南アは小作業部会参加表明。報告書は採択。
チリが市民参加に関して疑問のあったアイスランドと合意したと報告。
最終日にたくさんの決議採択がまわされ、明日は8時半から開始予定。
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