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2014年7月18日 (金)

「科学者がいうことには」

 5月28日に水産経済新聞が掲載した「科学者からみたICJ判決」は、元鯨研所長である畑中寛氏が水産ジャーナリストの会で講演した紹介記事で、囲みで「子細に見ると、科学的というより、意図的に調査に悪意をもって、日本政府に実施を認めないように勧告したようにすら思える」と強い懸念を表明したと書かれている。

 氏は、「調査捕鯨が科学的でないとされた主張の根拠は1)必要な標本数の科学的根拠が薄い2)設定した標本数にギャップがあり、第1期調査と同じことをやっているにも関わらず、標本数を過大なまま据え置いたーである」とし、「科学者から見ると、この指摘はまず、海洋資源調査の必須項目である調査目的と必要標本数および計画年数の重要性を全く理解していない」(水産経済紙5月28日)
 その根拠として氏は、2月に開催されたIWC科学委員会のJARPAII評価会議に言及する。「さらに、JARPAIIについては、今月2月にIWC科学委員会の第1回特別レビューが行われることとなって科学的検証が予定されていたにもかかわらず、科学検証を参照する事なく、表面的な数値だけで計画を科学的でないと結論・・」(同)

 氏はまた、「判決に科学性なし」の根拠として、2月に行われたIWC科学委員会による評価会議では「全く異なる判断を下している」としている。

 問題は2つあると思う。
 一つ。判決の内容と根拠。
 ICJの判決は、書類(メモリアルといわれる膨大な資料)と口頭弁論を精査した結果、「JARPAIIは、科学目的の調査ではない」とされた。
判決に至る経緯に関しては、IKAーNet NEWS 57号を参照していただきたいが、
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/298-temporary-bibliographical-essay-on-the-antarctic-whaling

 まず判決では、日本の提出した調査計画案と実際に行われた調査結果が、計画の目的に合っているかどうかという合理性を見ている。(ちなみに、知り合いの科学者の人たちは、JARPAIIに掲げられる目的のように漠然として無期限の調査は第三者が評価できないので、そうした調査に対して通常予算はつかない、といっていた)
 次に、IWCで合意された決議に沿って、殺す前に非致死的調査の可能性が十分検討されたかどうか、JARPAにおける鯨種間の競合の調査で、ミンククジラとザトウクジラ、ナガスクジラの評価期間と年変化率の違いを検討。また一方で、生態系モデル構築のための鯨種間競合をいいながら、ミンククジラの捕獲数を増やし、一方のナガスクジラとザトウクジラでは非致死的調査で間に合うとしている矛盾等に関して、口頭弁論での日本側証人のこたえが説得力を持たなかったことがあげられる。
IKA-net Newsから、念のため判決文要旨を書き出してみよう。

 <判決要旨>
  ・当裁判所は、JARPA IIは広い意味で科学的研究と特徴づけることができる活動を含むと考える。
  ・しかしながら、提示された証拠は、計画のデザイン及び実行が所期の目的を達成することに関し   て合理的であることを証明し得なかった。
  ・本裁判所は、JARPA IIに関し日本により発給されたクジラを殺し、捕獲し、及び処理する特別許可   書は、条約第8条1項に規定する「科学的研究を目的とする」ものではないと結論する。


 畑中氏の主張のもう一つの問題点は、氏がいう2月の科学委員会の評価会議の中身が本当に判決とは異なるものか、ということだ。

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