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2014年6月25日 (水)

環境犯罪による損失についてのパンフレット

 最近、象牙のためのゾウの密猟が再び大きな問題となっている。
いわゆる環境犯罪、違法な自然資源の略奪は、自然環境の破壊のみならず、経済的に、また途上国の福祉などの阻害を始め、国家間紛争のための武器調達のための自然資源の略奪と、安全保障の観点からも憂慮される事態が起こっており、国際社会を脅かしている事が広く認識されてきた。

 3月には、アジア地域における環境犯罪撲滅のためのネットワークづくりのため、インターポールの環境犯罪部門の専門家も来日し、NGOとの意見交換も行われた。
 
 以下は、今日届いた環境犯罪に関してのレポートである。報告では、自然資源の略奪や環境犯罪は、年間700億から213億ドルにものぼるということだ。
 日本は、島国である事から、そうした事とは一見無縁に見える.しかし、過去には野生動植物の国際取引規制のためのワシントン条約の批准を渋り、自然資源の利用の熱心な国として知られており、エコノミックアニマルというありがたくないあだ名を付けられ、なかなかそうした汚名を払拭するに至っていない。
 実際、いまでも口では自然との共生をうたいながら、実際は日常生活における自分たちの消費生活が、様々なところでそうした環境犯罪と関わりをもってしまう可能性があるという認識が薄いように思われる。今一度、周囲を見回してみたい。

http://www.unep.org/unea/docs/RRAcrimecrisis.pdf

2014年6月13日 (金)

本島にイルカ村・・・

 「丸亀市沖の本島の屋釜海岸に今夏、イルカと触れ合える施設「本島イルカ村」が誕生する。同海岸には既にイルカ13頭を飼育する小割いけすが整備され、7月20日のオープンに向けて調教が本格化。地元では人々に癒やしと夢を与える「新たな観光の目玉に」と期待が高まっている。オープンに先立ち、6月15日には地元の子どもや関係者ら約100人を招いて開設式を行う。」

http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/locality/20140613000145

 夏が近づくと、毎年このようなとんでも企画が始まる。「癒しと夢を与える」、「子どもたちに・・を学ばせる」とか、「子どもからお年寄りまで世代を超えた・・・」「地域活性化」など、反論しにくいようなうたい文句で、メディアなどにとって口当たりの良い情報として受けているのだろう。

 太地で捕獲されたイルカをいけすで飼育して、子どもたちに「イルカの生態」について学べるプログラムなどを行う、というが、12m四方の子割りいけす4基に13頭のバンドウイルカとかマイルカを入れるという。イルカの生態を知っていればいけすで飼育したり、餌やりやふれあいをするなどという事がどれほど野生動物としてのイルカの姿を間違って伝えるのか分かりそうなものだ。これは断じて東西の文化の違いではなく、想像力の欠如の問題だ。

 イルカの捕獲の問題については今更言うまでもないが、母系の群れを一網打尽に追い込み、その中から、まだ乳離れするかしないかという子どもを捕獲し、餌付けを行って国内外の水族館に販売している事が国際的に問題となっている。この5月にスロベニアで開催されたIWC科学委員会でも、再び太地におけるイルカ捕獲が問題とされ、古いデータを使って捕獲枠を算出するのではなく、きちんと調査すべきだという勧告が出ている。
 
 こうした不都合な事は業者はもちろん言わないし、国も何回勧告が出ても知らんふりだ。イルカに餌をやったり、触れるというペット感覚の教育が、現在の日本の野生動物についての無理解を生む元だが、環境省も意味の動物については水産庁に遠慮して何も言わない有様だ。

また、この運営母体も気になる。

「イルカ村を運営するのは、水族館へのイルカの貸し出し・販売などを手掛ける南北貿易(神戸市)。同村では、イルカを飼育・調教するとともに、同社としては初めてとなる触れ合い事業を実施。地元の本島漁協と連携し、昨年7月から準備を進めてきた。」
とある。この会社、ネットで見たところでは、動物園等で飼育される希少動物の輸入、移動などを手がけているところのようだが、太地公社と提携してイルカの貸し出しとか販売もしているようだ。
水族館での一定の飼育条件を満たさないようなこうした「企画」をあちこちで売りまくらないと良いのだが。

 
 

2014年6月 9日 (月)

移動性野生動物の種の保存に関する条約

 先週の金曜日(6月6日)開催された衆議院環境委員会で、移動性野生動物の種の保存に関する条約(通称ボン条約、またはCMS)の批准についての質問をしてくれた議員がいた。


 衆議院TVインターネット審議記録
 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=44002&media_type

 「河野正美、(日本維新の会)10時 03分~40分」

 ボン条約については、中継をご覧になればお分かりのように、1983年に発効したものの、未だに批准されていない国際条約である.移動する海鳥やウミガメ、クジラ類を国を超えて保全を考える上で、また貴重なデータを共有できる非常に重要な条約である。ちなみに、同様の環境保全の条約に関しては、ラムサール条約は1975年、生物多様性条約は1993年と発効と同じ時期に批准、加盟している。
 これまで、ボン条約の加盟を渋ってきたのは水産庁で、その理由は同条約にクジラが入っているというのが大きな理由だと関係する官庁の役人から聞いてきた。
 生物多様性国家戦略の議論においても、繰り返し扱っている種に「我が国と異なる考え方がある」ので批准しないと書かれてきたが、一方で環境省としては、条約そのものの批准に至らなくても、「継続的な情報の収集に努め、必要な場合には、本条約又は関連する協定・覚書への対応も検討します。(環境省、外務省)」と言う立場だ。

 今回議論でも、主に支障があると答えたのは水産庁で、具体的な問題として、これまで取り上げられなかったアオウミガメの小笠原での漁獲とウミガメ全種、及びアホウドリやミズナギドリの漁網混獲がある、また商業捕鯨再開の可能性ため、批准は出来ないという答弁だった。

 また、混獲はFAOでやっているからという事だが、種の保全と食料問題では切り口は違うし、答えになっているとは思われない。実際、もし混獲が問題であれば、ボン条約を批准し、回避策を考えるというのが普通の筋道ではないだろうか。

 「えっ?」と思ったのは、商業捕鯨再開の可能性についての具体的な対象としてあげられたのがイワシクジラとマッコウクジラだったからだ。
 確かにイワシクジラは附属書1にあげられているが、すでにIWCで捕獲が禁じられており、ボン条約の批准に選って支障が出るものではない.また、マッコウクジラについては、附属書に入っていないし、また、商業捕鯨が再開されたとして、捕鯨業者的にも厄介なのがマッコウではないかと思われる。大きいから捕鯨船の規模も大型でないと難しいし、PCBや水銀で汚染されているのでこれまでも北の調査ではいやがられて余り捕獲されていない(今回、枠を0とした)し、肉の需要は少ないし、主たる利用目的だった油脂についても新規に市場を開拓するのは相当な無理があるだろう。同じくIWCで捕獲が禁止されているので、あえてボン条約批准で問題が出てくるわけではない。

 むしろ、ボン条約で引っかかってくるのは、IWCの管轄害の沿岸小型鯨類で、これも附属書1に掲載されているのは(私の見間違い出なければ)バンドウイルカだけだ。もちろん、ワシントン条約でやっているように留保措置もとれる。むしろ面倒なのは、イルカ類についてやいのやいの言われる事だろうとは思うが、今回小型鯨類については全く触れられていない。

 これは回答したもとIWCコミッショナーの香川水産庁次長の見識のなさか、それとも意図的なものか(どうしてかは不明だが)。いずれにしても、ボン条約問題に関しては、相当いい加減にあしらわれて30年というのが明らかになった今回の議論だった。

 

 

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