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2013年8月22日 (木)

シンポ雑感

 昨日、東大弥生講堂で行われたトラフィック イースト アジア ジャパン主催の「ワシントン条約の動向と日本への期待」というシンポジウムに参加した。ワシントン条約が発効してから40周年を迎え、その果たして来た役割を検証し、ますます重要性を増す条約の取組について日本国内に紹介する意義は大きいと思う。
 同時に、今回新たな展開を見せた水産資源についての国際取り引きの規制(サメ、マンタ)の是非について、反対勢力であった日本政府との間に前向きな協力関係を築くことは、条約事務局にとって必須事項であっただろうことは、事務局長スキャンロン氏の基調講演にも明らかだった。
 今回、日本政府は従来の水産資源は地域漁業管理機構の管轄であってワシントン条約ではできないという立場で反対し、その後、5種のサメについては留保措置をとった。しかし、これまでと異なり、同時に、決議発効までの18ヶ月の間に種の同定に関する研究協力や地域漁業管理機構でサメ類に関して保全を促進することなど、従来の立場を維持しつつ、国際的な協力を約束している。今後の展開に少しは期待が持てると感じた。

 なんでワシントン条約なのか、という理由は、トラフィックインターナショナルの説明で結構明瞭だと感じた(地域漁業管理機構はマグロ類を管理しており、サメに特化した管理はこれまで行われていない、また、ワシントン条約では個別の種に関しての評価ができ、合理的に判断ができるなど)。しかし残念ながら、水産庁のプレゼンテーションでは(非常にクールに実務的な措置を講じているに関わらず)、こうした水産資源の規制についてはその保全への取組を「感傷的」「感情的」と切り捨て(実際は実情を受け入れているからこその保全措置のはずなのに)、対立構造を作り上げてしまったことだ(クジラの二の舞になる、とはよくぞ言ってくれる!)。
 私は知らなかったのだが、この5月に英紙が気仙沼のサメ漁についてかなりセンセーショナルな記事を書き、地元関係者の怒りを買ってしまった。海外メディアへの怒りはもちろんわかるし、問題の根本的な解決を求めるあり方だとも決して思わないが、一方で、行政の立場としてはもっと客観的な問題提起をしてもいいのではないか、と思った。せっかくの協力がかすんでしまうようなことは誰のためにもならないのではないか。

 そういえば、私の周辺の人たちは、最初の基調講演のとき、軒並みに居眠りをしていて驚いた(最前列に座った水産業会紙記者と思われる女性など、同僚の肩に寄りかかってぐっすりおやすみだった)スキャンロン事務局長の話は興味深く、決して分かりにくくはなかったし、日本へのお世辞がたくさん盛りこまれていたし、逐次通訳の人は日本でも私が知る限りぴか一の人だったので、なぜだろうと思ったのだが、後で興味の対象が異なったのだと何となく合点がいったのだった。


 
 

 

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