海のレッドリスト
2010年、名古屋で開催された生物多様性条約会議の最中に環境省が公表した海生生物のレッドリスト作りに向け、海洋生物の希少性評価検討会についての環境省記者発表があった。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16534
それによると、検討会は昨年10月から4回行われ、その中で環境省がこれまで管轄してきた陸生のレッドリストとの関係や、評価基準、対象、方法等が議論された。
ここでは、その評価対象について、少し報告しようと思う。
まず、二国間、多国間協定の対象種は、「我が国に限定した評価を別途行うことは適切ではない」という事務局案に対して「最初から評価せず対象から除外するのは、対外的にもマイナス。小型鯨類はIWCの管轄外」とする委員からの意見が出た。
それに対して事務局が「小型鯨類は対象から除外するのではなく、多くの知見を有する水産庁が評価を行うこととしたい」とした。
さらに、「資源評価が行われている種については、評価を実施する主体が管理・保全措置を含め対応しているため、対象から除外すべき」「水産庁が資源評価と管理をしっかり行っている種は、さらにここで、重複して評価を行うべきではない」と言う意見が「資源評価と絶滅のおそれの評価は異なる。また、資源管理を実施する主体とは別の主体が評価をすることに異議がある」という意見を制して、これまでの水産庁の資源管理を踏襲することになった。
「なんで、水産庁ではいけないのか?」という意見もあるかもしれない。
これについては、少なくとも小型鯨類に関しては、これまでの水産庁の管理のあり方が、産業の側についていたこと、それがレッドリスト掲載で変わるとは思えないことをあげたい。小型鯨類に関する捕獲についての1993年当時の捕獲枠の設定、その後やっと枠の更新が行われたものの、「一気に枠を縮小して産業を圧迫することはしない」という方針で、5年間の暫定枠が作られ、期間後もそのやり方が踏襲されているのが現在だ。
評価については、日本哺乳類学会の評価と一致するものの方が少なく、しかもその調査についても、1980〜90年代のものも少なくないし、また、2007年に予算がついて1〜2ヶ月の限定的な調査を行った以外、海域的にも同一ではないニタリクジラの目視調査に付随して行われたことなどである。捕獲したい気持ちが強まってか、とんでもない資源評価をされてしまったシャチのような生き物もいる。
水産庁の管理の問題点としては、もうひとつ、行われるのは資源として有用種で、それ以外についての調査を今後行うとも考えにくいことだ。
ここでは、未だに1971年当時の水産庁と環境庁(当時)との覚え書きが生きており、環境省は計画を立て、予算をとるなど面倒なことを避けて、それを変えない方が楽なのだ。
せっかくここまで来たというのに、またしても鯨類は野生生物として評価されるのではなく、「資源」として定着させられてしまいそうな残念な結果なのだった。
最近のコメント