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2012年11月27日 (火)

日本のイルカ猟

 やっと、2012/2013年のイルカ猟の捕獲枠を入手することができた。いつもは6月にもらうのだから、半年遅れということになる。

 毎年の捕獲数を押し上げている岩手県のイシイルカ猟は、今回もイシ型、リクゼン型それぞれに150頭減で、5726頭/6611頭だ。しかし、実際は、昨年3月の大災害からの回復の遅れがあると思われ、今年度実績は1月から今までで13927.10kgの報告。水産庁資源管理の部屋によると平均1頭の体重は90kgなので、それからすれば150頭前後まで落ち込んでいると思われる。

 今回は新たに注釈がついて、それによると捕獲実績のない県に関しては、捕獲がない限りは10年後に枠ゼロにする予定とある。青森のイシイルカ(8←前年10頭)、千葉のスジイルカ(32←40)、静岡のスジイルカ(28←35)、アラリイルカ(マダライルカ 181←227)がそれにあたる。
その一方で、実績のある和歌山県は、スジイルカとアラリイルカに関しては枠を維持する。オキゴンドウとカマイルカは2007年から10年間固定枠である。

 捕獲実績についての公表は2年くらいは遅れるので単純には言えないが、枠のほとんどを消化している(消化したい)と思われる種は、水産庁も要注意と考えているバンドウイルカとコビレゴンドウだ。実績のある太地の捕獲枠はそれぞれ、604(652)頭と161(184)頭でおよそ9%の漸減。
バンドウイルカは、水族館需要がなくならない限り、衰退する産業を支えていくもとになるだろう。
一般市民の賢い選択が求められている。

 一方、アメリカでは、ハワイ諸島周辺のオキゴンドウを絶滅を危惧される地域個体群として指定し、周辺海域での漁業活動など、関係者の危機回避措置を要請している。
http://www.hawaii247.com/2012/11/23/noaa-rules-protect-false-killer-whales-off-hawaii/

 
 

2012年11月15日 (木)

水族館で生まれた子どもは・・・

 11月13日に、名古屋港水族館でシャチの赤ちゃんが誕生したという。

http://www.nagoyaaqua.jp/aqua/part/saka/pdf/4-34.pdf

 既にご存知のように、母親シャチはアイスランドで1987年に捕獲されたステラ、父親は同じくアイスランドで1984年に捕獲されたビンゴで、2頭を所有する鴨川シーワールドで既に出産経験済みなので、新しい子シャチも大過なく生育するだろうと思われる。無事の出産を喜びたいところだが、もともとの生息地も暮らしも知らないシャチがまた増えたことには複雑な思いである。

 70年代にすでに飼育下での繁殖が試みられ、80年代からは、水族館生まれ&育ちのシャチやイルカが少なからずいる。

 一方で、野生捕獲個体を解放しようと言う活動は続いており、最近では、群れなどの特定ができないために帰るべきところのない個体に、特定海域を用意してサンクチュアリにしようという動きも始まっているようである。それも、アメリカで悪名高いシーワールドと同じ企業グループのシーライフが、捕獲に反対して、これまで利用してきた鯨類を平和にリタイアさせる場所をつくろうと提案しているところがみそで、できっこない、という批判もあるものの、行方を注目したい。

http://www.takepart.com/article/2012/11/12/seaworlds-sister-company-fights-whale-and-dolphin-captivity

 陸では、既にゾウのサンクチュアリなど作られており、望みがないわけではないが、まずは捕まえて展示する、客の増加を見越して繁殖させるなどなどという人間の側の勝手さをなんとかしないといけないだろう。
 


 

2012年11月 9日 (金)

「もうかる漁業」でもうけるの???

情報公開請求してから1ヶ月余。
11月5日付けでやっとNPO法人水産・漁業活性化推進機構のWebSiteに
鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書(略称 KKP:くじら改善プロ
ジェクト)が掲載された。
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/20121002_kujira.pdf

 資料やPRも含めて76頁に及ぶこの計画。「重たいので紙の資料で渡したので、水漁寄稿が誤字脱字を直すのに時間がかかっています」という説明はあながち嘘ではなかった?かも知れないが、復興予算問題とのごちゃごちゃを回避して掲載されたような気がしないでもない。
それにしても、「復興予算がけしからん」といっている議員たちの認識の程度がこれでわかろうというものだ。

 11月6日の農水大臣会見を受けて、朝日新聞が記事化したように、この計画は調査捕鯨船を今期も南極に行かせるため、2期に分かれて実施されるようだ。
 大きなところでは、船全体のリフレッシュ、また船底にあった(タラなど魚の)すり身製造機の撤去、つり下げ式の重量計の櫓を取り外し、船の安定化と作業量の軽減、居住空間の快適化など。

元々はトロール船だった日新丸を何とか生き返らそうという努力が悲壮だ。

 一方で、計画期間中は鯨研と共同船舶を経営統合する(特別勘定でお金の流れが不透明に?)。
鯨肉供給は(北と南あわせて)2400tでこれは直近の販売状況を反映させたもののようである。これでわかるように、鯨肉供給はこれが上限で「SSの妨害で捕獲数が減少して赤字になった」ということは口実だったことが明らかになってしまった。

 ついでながら、この計画を作った人たちリストが冒頭に出てくるが、欄外に「*名簿掲載に支障があるとした参加者は除いている。」という断り書きがあり、当然のことながらどう支障があるの?誰がそもそもこれを提唱した人なの?ということが気になってくる。

 この計画が認定された「もうかる漁業」の仕組みのうまみは以前も書いたように、採算を合わせなくても(合わせない方が)手当てされるところだ。

 こんな施策で漁業の活性化を目指すというのはそもそもどういうものか?という気がするが、それに横入りしたKKPこそ、この仕組みがうってつけだったのかもしれない。使われるのが私たちの税金だと言うことが何とも口惜しいが。
 

2012年11月 7日 (水)

今年も行きます、だそうですが

 いくつかの新聞報道で、郡司農水大臣が今年も日新丸は南に向けて出航すると断言した
ことを知った。
さらに今朝の朝日はそのあたりの事情を詳しく書いている。復興予算については追求した
自民党議員が、SSに対抗したくて出航を強く主張したとある。調査そのものはだれの
口の端にも上らず、彼らの関心はもっぱら鯨肉売り上げとSSである。

鯨研の債務超過についても触れて、船の改修費(これはどこが?共同船舶?)のめども
完全についてはいないようである。(「もうかる漁業」で手当てするのではないの?)

今回、急いで改修して出航とあるが、SSより老朽化した船の保安措置のほうが乗組員
さんたちの安全から言って重要なのでは?と思う。

鯨研債務超過問題については、おなじみの佐久間淳子さんが鋭く追求した記事を近々掲載予定
である、乞うご期待。

<ここから>
http://www.asahi.com/politics/update/1106/TKY201211060614.html
朝日:南極調査捕鯨、一転実施へ 農水相方針、与野党反対で

(一部省略)

 調査捕鯨は農水省所管の日本鯨類研究所(東京)が運営するが、実際に働いて
いるのは船団を持つ共同船舶(同)だ。その共同船舶が、進水から25年たつ母
船改修のために今冬の見送りを提案した。

 使わなくなった「すり身製造機械」が船底にあり、これを取り除くために船体
を真っ二つにわる改修工事をしたかった。半年かかるが、船を軽くでき、空間を
有効活用できる。水産庁もこの案で根回しを始めた。

 しかし、捕鯨推進を訴える自民党の捕鯨議連が猛反発した。民主党も9月28日
の捕鯨対策議員協議会幹部会で、工事を2回に分けてできるだけ航海に出るよう
水産庁長官に求めた。

 (中略)

 しかし、調査捕鯨の資金繰りは厳しい。十数億円かかる改修費のめどはまだ完
全にはついていない。鯨肉販売収入が運営の柱だが、収入は2004年度の71億円か
ら10年度には17億円に減った。鯨研は借金が資産を上回る債務超過に陥り、農水
省は11年度に復興予算23億円を運営費やSS対策にあてた。最近はアイスランドの
安い輸入鯨肉で値崩れを起こしている。
 鯨研は農水省所管の海外漁業協力財団からの借金(無利子)でしのいできた
が、借金は01年度の12億円から10年度には46億円にふくらんだ。財団の資金は政
府の補助金がもとになっている。(小山田研慈) 

水産庁、鯨肉販売!?

今朝の毎日新聞には少し驚かされた。

1民間団体である鯨研の赤字解消のため、’水産庁が’直接鯨肉を販売するという風に
読めるからだ。(多分鯨研がという意味だろう、とこちらは推測するが、2006年の鯨食ラボ
の失敗の教訓から共同船舶を完全に鯨肉販売からはずす?)

いまや多くが食べたがっていないことが明らかなものを、政府自ら音頭をとって
無理にでも販路を拡大して売るだけのメリットがどこにあるのか知りたいものだ。
それにしても、どうしようもなくなると使われる学校給食というものの自立性はいずこに?
かつて、戦後の鯨肉導入に際しても断固としていれなかった調理師さんもいる。
一方で、学校給食会を使って、まんまと企業拡大に成功した冷凍食品会社のことは
周知の事実。
「教育」の名の下に実施されている学校給食に、もっと多くの親が真っ当な反応を
してほしいと心から望んでいる。

<記事引用ここから>

http://mainichi.jp/select/news/20121107k0000m040153000c.html
毎日:調査捕鯨:解体した鯨肉を直接販売へ 事業の収益改善で

毎日新聞 2012年11月07日 04時30分

 水産庁は6日、調査捕鯨で解体した鯨肉を13年以降、個人に通信販売した
り、居酒屋など外食産業に直接販売する方針を決めた。学校給食への活用も拡大
する。調査捕鯨した鯨の肉の販売はこれまで一部の取引業者に限られてきた。し
かし、調査捕鯨事業の赤字が続いているため、鯨肉の販路を広げ、事業の収益改
善を図る。

(中略)

 調査捕鯨には年間45億~50億円のコストがかかり、赤字が膨らんでいるた
め、鯨肉の販売を拡大することにした。具体的には、居酒屋など外食向けに直販
するほか、高級商品はカタログ通販し、鯨肉になじみが深い中高年層らの需要掘
り起こしを狙う。

 また、現在、年間100トン程度にとどまる学校給食への活用は供給価格を下
げて倍増させたい考えだ。

 調査捕鯨した鯨肉の供給拡大で価格が下がれば、消費者には鯨料理が今より身
近になる利点がある。ただ、環境保護団体は食用を「擬似商業捕鯨」と批判して
おり、波紋も呼びそうだ。【川口雅浩】


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