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2012年10月 5日 (金)

今度は会計検査院あてに要望書

 毎日新聞も昨日復興予算の不適切な使われ方について、一面トップで報じた。
農水大臣は、被災地である石巻市の復興に資するといっているようだが、もし本当にそうであれば具体的に
どの程度の利益となったのか、公開してほしいものだ。
 また、これまで無理な調査捕鯨の実施を継続して債務超過に陥っている鯨研に対して、その場しのぎの
補助金投入をするのではなく、どこに問題があるのか、根本を見直してほしいものだ。


                                        2012年10月5日

        「調査捕鯨に使われた震災復興予算の緊急調査と返還を求める 」           
           
                            イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
                            国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

会計検査院長 重松 博之様 
CC:復興庁、衆議院決算行政監視委員会、水産庁

 昨年3月の地震と津波は多くの沿岸地域住民を直撃し、深い傷あとを今に残しています。国内はもちろん世界の多くの国から被災地の復興に向けた様々な支援が行われてきたものの、まだ地域の回復は十分とは言えません。こうした中、私たちは、被災地域の回復のためにあてられるはずの復興予算のうち22.8億円が、被災地から遠く離れた南極海で実施される調査捕鯨に投入される(資料①)ことを指摘し、復興予算は被災地支援にまわすよう水産庁へ意見書を提出しました(資料②)。しかし22.8億円の税金の詳細使途について水産庁から具体的な返答はいただいておりません。
 補助金を受けた日本鯨類研究所(以下、鯨研)の財務諸表は、2011年9月末時点で8.7億円の債務超過に陥ったことを示し(資料③)、報道は「負債が資産を上回る状況で、企業でいえば取引金融機関が融資を見合わせるなど危機的な状況」と指摘しました(資料④)。さらに、財務諸表では、前年度に54.7億円あった鯨肉の販売収入が17.7億円と激減し、流動資産として計上された鯨肉在庫が前年度946万円から9.6億円と急増するなど鯨肉の販売不振による在庫急増が経営を圧迫したことを顕著に示しています。つまり、石巻市のための復興予算が「復興」や「反捕鯨団体対策」という謳い文句のもと、鯨肉の販売不振による経営圧迫に苦しむ鯨研の財務状況を改善するために使用されたと私たちは考えています。これは、復興予算の使途として適当ではありません。
最近の報道(資料⑤)によって、復興予算の不適切な使われ方が調査捕鯨への流用にとどまらないことが明らかになりました。その中でも、調査捕鯨への流用は、顕著な例として広く取り上げられています(資料⑥)。こうした税金の使われ方は、国民にとって到底納得のできるものではなく、本来支援が必要な被災者へ返還すべきだと考えます。 
 さらに、今年から水産庁が合理化で収益性を上げようとする漁業に補助金を出す「もうかる漁業創設支援事業漁業」を、すでに毎年投入されている約7億円の補助金(資料⑦)に追加して調査捕鯨支援へ使用することを決定したとの報道(資料⑧)がありました。この「もうかる漁業」補助金は復興が進まない東日本の漁業者の自立のために利用されるべきで、調査捕鯨という将来性のない事業に使用されるべきものではないと考えます。
日本政府はこれまで「日本の調査捕鯨は商業捕鯨ではない」と国内外に説明してきました。「もうかる漁業」として補助金を与えることになれば、昨年の復興予算の流用とともに、主旨と矛盾した税金の投入で国内外から大きな批判を受けることになります。また、すでに水産庁の行政事業レビューシートで指摘されているようにこれらの補助金すべてが長年にわたり随意契約で投入されていることも問題(資料⑨)です。
 よって以下4点を要請します。

1:調査捕鯨に投入された平成23年度の震災復興予算22億8400万円の用途・内訳を詳細に調査すること。
2:復興予算が、当初の目的とされた被災地石巻の復興にどのように役立ったかの調査を行うこと。またその効果が、投入額に見合うものであったか、見合わなければ補助金の返還を要請すること。
3:商業捕鯨であるべきではない調査捕鯨への「もうかる漁業」補助金の適用は、筋違いの補助金流用であるため、取り消しを要請すること。
4:長年にわたり補助金を投入し続けてきたにもかかわらず、日本鯨類研究所が鯨肉需要の低迷から債務超過に陥ったことを考慮し、調査捕鯨事業そのものへの補助金投入の見直しを行うこと。
以上

添付・参考資料

「鯨類捕獲調査安定化推進対策」平成23年度補正予算 水産庁HPより

「補正予算 22.8 億円は、ムダな南極海での捕鯨ではなく地域再生と被災者の支援に」NGO共同声明 (2011年10月27日)

「平成22年度 事業報告書」 日本鯨類研究所 (2012年10月1日公表)

「鯨類研が債務超過 2010年度決算 設立以来初」朝日新聞 (2012年10月2日)

「シリーズ東日本大震災 復興予算19兆円」 NHK (2012年9月9日)

「復興予算使途調査へ」毎日新聞 (2012年10月4日)

「鯨類捕獲調査円滑化事業費補助金(継続)」水産庁HPより

「南極海調査捕鯨、今季見送り検討 母船老朽化で 水産庁」朝日新聞(2012年9月26日)

「平成24年度行政レビューシート 捕鯨対策」 水産庁HPより 
                                      

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