« IWC 64 二日目後半(グリーンランドのASWなど) | トップページ | IWC in パナマ3日目後半 »

2012年7月20日 (金)

IWC 64 in パナマ (3日目前半)

 3日目は、クジラの人道的な捕殺と動物福祉について。これも、捕鯨推進の側からは評価されていない議題で、日本政府は「反捕鯨の嫌がらせ」と解釈している風に見える。しかし、イギリスなど古くから動物の福祉が当たり前に語られる所からは、殺すならできるだけ人道的に、苦しまないような処置というものが重要と考えられてきた。捕鯨推進の国からは時折、何でクジラだけ?他の動物のこともちゃんとやれ、というようなヤジまがいの意見が出ることあがるが、もちろんEUでは家畜動物の福祉が真剣に考えられていて、捕殺だけでなく、飼育状態から輸送まで、細かく検討され、最低基準も設けられ、改良が加えられている。

http://ec.europa.eu/food/animal/index_en.htm

 日本でも、昨年、畜産動物の福祉について(遠く欧州には及ばないまでも)基準がもうけられたところであり、クジラのように殺さない選択が強く求められている種に関しては、「嫌がらせ」などと反発せずに、捕殺法を真剣に検討する必要があると思う。

 クジラの捕殺時間の他に、現在かなり深刻になっているクジラのら網(漁網のからまり)問題の作業部会が開催され、予防、対処法や安楽死の方法が検討されたようだ。

http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC64docs/64-WKM&AWI%20Rep%201.pdf

 作業部会の議長報告に続いてフロアに議論が移され、捕鯨をしている3カ国がIWCではなく、捕鯨を容認しているNAMMCO(北大西洋海産哺乳動物委員会)だけに報告を出していることが問題となった。

 日本は捕殺問題はIWCの管轄外としながらも、技術向上と人の安全を尊重して、クジラの致死時間短縮に貢献していること、提出したデータに関しては、捕鯨への批判に使われるだけなので、データ、情報提出はNAMMCOに行っていると発言(南極での捕殺のデータを北大西洋に特定する委員会に)。

 一方、ら網に関しては、ハワイの専門家がセミナーやトレーニングに派遣され、人材育成にも役立ったことが報告された。
 NGOからは、WSPAが発言し、動物福祉の作業部会へ3万ポンド寄付することが報告された。

 日本では、列島に隙間なく張り巡らされた定置網での混獲が相当数ある。しかし、ご存知のように、売れ筋のクジラに関しては、DNA登録さえすれば販売できるということで、毎年100頭以上が「水揚げ」されており、回避措置については問題にもならない。


 次はいよいよ日本の社会経済に関わる小型捕鯨の特別枠要求である。
http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC64docs/64-9.pdf

 ミンククジラのオホーツク西太平洋系群(O-stock)の捕獲を東日本の北緯35度、西経150東(オホーツク海を除く)の沿岸で2013年、2014年、2015年、2016年、2017年(2018年←隔年開催の場合)付表修正に従い行う。肉は地域消費のみに限定する。という提案。

香川コミッショナーの説明では、要件として
*モラトリアムの解除を求めない。
*対象地は鮎川、和田、太地の他に網走。
*捕獲、加工、流通は地域社会により実施される。
(地域消費というのは政府関係者への確認によると国内流通の意味)


 具体的な捕獲頭数は、IWCの未来のプロセスを尊重し、提案のコンセンサスのため出さない。
また、国際的な監視受け入れやモニタリング装置の装着、遺伝子解析など、その管理についてはRMSベースで透明性、信頼性や説明責任を担保するとしている。また、IWC参加国による監視委員会を組織する。
 こうしたことで系群への影響は無視できる。沿岸10km以内は操業しないということで、J-stock混獲が回避できる。ちなみに、J-stockは回復しており、もはや保護資源ではない。
 
 これまでも、モラトリアムにより大きな打撃を受けてきた沿岸地域社会への共感は本会議において繰り返されてきました。コンセンサスでの合意を求めます、と日本政府。

 そのあと、小型捕鯨協会の下道会長がミンク資源は豊富であり、クジラ肉は数千年前から利用されてきたとし、沿岸における文化としての必要性と捕鯨のおかげで生きている地域の持続的な利用の必要生を訴えた。(網走のミンク猟が盛んになったのは戦後。また、「オホーツク海を除く」とあるので、網走での操業はむずかしい。もし、本気で提案を通すつもりなら、まず、まだ回復しきれていない鮎川漁港の修復が必要だと思われる)

 しかし、現実は厳しい。捕鯨支持国が提案を支持するが、いくつかの国がこれまでと同じく商業捕鯨の再開ではないか?と疑問を投げかける。
 セントキッズがいつものようにすべての国民性の否定だとか、独立の権利を侵害していると吠え、ロシアは、9千年前、人類の中でも初めて鯨肉を使った日本ほど捕鯨について語れる国はない(?)、と持ち上げる。

 日本政府は、農業や林業など商業的な利用が基本なのになんで捕鯨だけだめなのか?とずれた疑問を投げる。もともと商業捕鯨再開の話をしているのではなかったはずでは???

 合意形成は難しいとされ、議題はオープンのまま持ち越された。


 

« IWC 64 二日目後半(グリーンランドのASWなど) | トップページ | IWC in パナマ3日目後半 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。