IWC 64 in パナマ4日目
前日に続き、環境への懸念についての科学委員会のレポートが続く。
気候変動に関する2回目のワークショップで北極圏に生息する鯨類について3つの勧告が出された。一つは単一種に対しての地域的な悪影響について、もう一つは栄養的な比較、最後は分布の調査。この他に、アメリカが実施するSOAR(Synthesis Of Arctic Research)とよばれる活動がある。北極圏に関連した統合的な環境調査で、科学者と地域コミュニティが協力して行っており、鯨類に特化したものではないが、ベルーガやホッキョククジラもその調査の中に入っているということである。
次は生態系モデルに関する報告(科学委員会報告67p〜)。今年度のワークショップでは、IWC外で行われている生態系モデルに関する研究の検証やRMPへの貢献、委員会の他の分野における生態系モデルについての検証などが検討された。
対象となる種だけでなく、関係する生物種、海洋の環境から人為的な影響までを入れこんでつくる複雑な生態系モデルが資源管理にどの程度反映できるものなのか。RMPへの貢献において、拙速なやり方は避け、まずはシンプルなモデルではじめるということだ。これまで、結論先にありきでつくられた’科学’を垂れ流されてきただけに、かなり懐疑的な思いが捨てきれない。
次は人間由来の鯨類への影響についてのワークショップの報告と海洋環境悪化にともなう鯨類の健康問題についてのEU共同提案。(まだ、ウェブに修正最終版が掲載されていないみたいです)
ドイツが提案内容の説明をする。これまでの様々な決議でも表明されてきたように、海洋環境の悪化が鯨類に与える悪影響、とりわけ有害化学物質に関して、科学委員会に今後の科学的な調査の継続を求め、さらに、これらの鯨肉を食している人たちへの健康懸念からWHOとの協力のもと、これら製品による人体への影響に関して各国政府がしかるべき措置を検討することを求めるもの。
総論としての反対はなかったが、鯨類全般に汚染が及んでいるものではないから、しかるべき地域のしかるべき種というように修正してほしいという意見が捕鯨国から、また、調査は非致死的なものに限るという言葉の挿入をオーストラリアが求めたことに捕鯨国が反発。合意形成の時間をおくため、議題はそのままオープンに。
グリーンランドの捕獲枠の修正案についての議事に入った。デンマークの代表がイライラした様子で、議長のいい間違い(デンマークの代弁をグリーンランドが発言)を皮肉る。「今後はスイスを代弁してスイスの州が発言」といってもらおう(誰も笑わない)。
続けて、修正案へのコンセンサスが得られなかったため、デンマークとしては票決をもとめるとした。これには誰も少し唖然としたとおもう。
議長は、それぞれの立場から2カ国程度の発言をして投票に移ろうと提案。
EUを代表してキプロスが先住民のニーズを満たすための捕鯨は支持するが、今回の修正提案は先住民生存捕鯨に関するIWCの要件を満たすものではないので支持できないと発言。アメリカが修正案支持を発言。
投票の結果、支持25、反対34、棄権3で提案は否決された。
IWC本会議において、先住民生存捕鯨の枠に関しては、通常認められる。
例外的に、2002年第54回下関会議で、日本が沿岸捕鯨を認めないなら反対するとしてアラスカの捕鯨枠提案を否決に持ち込んだことがある(その後中間会合でこの枠は復活したが)。
前回のグリーンランドザトウについては、提案した会議では認められなかったものの、次の会議で認められている。今回にしても、じっくりと合意形成をするのだろうと思っていたが、結果が見えているに関わらず、かなり強引なやり方がとられた。
捕鯨支持国が次々と生存の権利が奪われた、IWCにとって実に悲しい日である、おてんとさまに顔を向けられるか、等々の非難発言がなされる。
それらの同じ口が2002年のアラスカ先住民の「権利」を奪ったことをもう忘れちゃったんだろうか?
いずれにしても後味の悪い結末だった。
次は財運委員会報告。隔年に向けてこれまでの事務を変更していかなければならない。
財運から今後の運用を円滑化するためのビューローが提案される。議長、副議長と財運議長、副議長と事務局で、参加国の地域的な公平さを勘案して組織される。本会議への助言を行うが決定機関ではない。
フロアからは票決に至るプロセスでの定足数についての議論がおきる。これまで明確でなかったルールをこの際明確化すべきという池なg次々と出る。日本は、分担金を支払っていなくてもメンバーには違いがないので投票権を付与すべきという意見。
本会議の隔年開催については反対意見は出ない。ビューロー設置についての賛成意見とともに、参加要望意見も出る(アルゼンチン、セントキッツなど)。
次にオブザーバーの役割について意見が出された。今回は暫定的に総体で30分という時間配分を行ったが、短すぎるようだという議長意見。捕鯨に反対する国々はオブザーバーの貢献と参加の異議を強く支持し、更なる参加を求める。一方で、捕鯨国は、一定の理解を示しながらも「加盟国に優先権がある(日本)」、「同じ意見が重複され時間がもったいない(セントビンセント)」「NGOとして認められないような人(?)が勝手なことを言う。加盟国の会議である(アンティグア)」などと微妙に分かれるところが興味深い。
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