ナガスクジラが学校給食に?
今日、知り合いから、関東圏のある小学校と幼稚園の給食に、アイスランド産のクジラ肉が使われたと言うことをきいた。
児童の給食に使う食材というのは、将来的な需要につながるというのは戦後の学校給食での鯨肉やある冷凍食品会社の冷凍食材で実証済みである。業者がそうした選択をしがちであることはわかるが、いくつか問題を感じる。
鯨肉を学校給食に使用することについて、現在の理屈付けは「伝統文化の継承」であろう。戦後すぐの場合はもっと切羽詰まっていたのでそんな理由付けはいらなかったはずである。しかし、輸入のナガスクジラを食べることが「伝統文化」と言えるのだろうか。
何を食べるかは個人の選択である。だから、クジラを食べるなということは私たちは言っていない。しかし、個人の倫理の問題は残る。
そして、児童への給食の場合、子どもが認識している、していないに関わらず、食べる、食べないという選択肢は与えられていない。
また、日本において、かなりいい加減なファミリーレストラン風の献立を、かなり問題あるような食材を使っての学校給食が「学校教育」とされている。ちなみに、学校教育の一環である給食に米飯が導入されたのは、1970年代後半である。
今回のナガス肉ついては、さらに「教育」としての問題が2つある。国際ルールを勝手に曲げて輸入している食材を使うという問題(ナガスクジラの国際取引はワシントン条約で禁止されているが、日本とアイスランドが「留保」という本来は条約を遵守するための移行期間にとるべき措置をとり続けているため行われている)。
もう一つは、ナガスクジラは未だにIUCNのレッドリストで絶滅危惧1Aに記載されている種だということだ。利用したい側の「増えているから絶滅なんかしない」という言葉が聞こえてきそうだが、国際社会に生きていくルールをきちんと子どもに伝えたいのなら、学校教育現場でそのような肉を使用すべきではない。
また、もし食べたい人たちが輸入してでも食べ続けたいというのならば、まずそうしたルールをきちんと守るところから始まった方が、反対する人たちを説得する上でも賢いと思う。
自分の主張が「正当」だとして国際ルールを無視するばかりか、そうした悪しき行為を教育の場まで持ち込むのは子どもたちの将来を考える上でもやめた方がいい。
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