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2011年10月21日 (金)

補正予算閣議決定

 野田内閣の第3次補正予算が閣議決定されたということだ。
水産庁関連予算の概要(案)は総額で4989億円。当初予算が2002億円なので、倍以上ということになるが、沿岸地域の打撃を考えると当然かもしれない。
しかし、実際にどう使われるのか、疑わしい気持ちを抱かせる項目もある。

 地震、津波災害の復興予算という名目だが、この中に、.鯨類捕獲調査安定化推進対策というものがあり、捕鯨地も被害を受けたとことと、鯨肉が売れなくて継続が難しいことも含めて復興予算にかけて、23億円が計上されている。
 しかし、鯨肉が売れないのは、3.11とは直接関係があるわけではなく、復興対策とはいえない。どさくさにまぎれて、鯨研の赤字補填をしてしまったという感じを持つのはわたしだけではあるまい。

 国際的にはもちろん、国内でも不要だと考える人が増え続ける中で、こうした予算などつけないでほしいし、まじめに沿岸の漁業活動をしてきて苦しんでいる人たちにとっても、わざわざ地球の反対側まで世間の怒りを買うため船を出すのにお金をつけるなら、もっと違うところに欲しいと思う人もいるだろう。

 それにしても、この増えた予算はどこにどのように使われるのか、きちんと公開してほしいものである。

2011年10月14日 (金)

シャチのモーガン

 今、イルカやクジラ保護関係者の中で、「モーガン」という名前の4歳のメスのシャチのことが話題になっている。
 モーガンは、もともとはノルウエー海域にすむシャチの群れに属すると考えられているが、昨年(2010年)発見されたときは、デンマーク、ドイツ、オランダにまたがるワッデン海のオランダの北西海域にいた。
 飢えで脱水状態にあったこのシャチをオランダ政府は保護のための捕獲を許可し、モーガンと名付けられたこのシャチは、ハルデルビックというイルカ飼育施設(Dolfinaruim Harderwijk)に収容され、展示された。
 モーガンの去就については、この捕獲展示に際して、モーガンをもとの群れに返そうという国際的なシャチ保護団体などで構成されるフリーモーガン財団が作られ、ノルウエー海域のシャチの音声などを収集し、ノルウエーでの解放を訴えてきた。一方で、イルカ飼育施設側は、別の飼育施設への移動を進言し、スペインのテネリフェ島にあるロロ・パルケがその候補に挙がっている。ロロ・パルケは、シーワールドと提携して、シーワールド生まれのシャチを4頭飼育しているところで、保護を訴える人たちは、その移送により、モーガンは繁殖などに利用されることになり、その解放のチャンスが永久に奪われることを懸念している。
 この8月に行われた裁判でオランダ司法はモーガンの解放について否決した。
そして、この10月12日のオランダのニュースで、オランダの外務貿易省が、モーガンが野生で生き延びるチャンスがきわめて少ないということを理由に、スペインに移すべきだと表明したことが伝えられた。

 シャチの解放では、群れの特定ができるかできないかによって、その結果に違いができることは確かだ。その例としては、群れに戻ったスプリンガーと、群れを見つけられなかったフリーウィリーのケイコのことが有名だ。この解放についての判断と結果の評価は二つに分かれるものの、元々野生に属するシャチを狭い人口施設に閉じ込めることに対する疑問を人々の間に生んだことは確かだ。

 ケイコは幼い頃から20年近くも囚われの生活を送ってきて、人に養われることしかほとんど知らない状態だったといえる。しかし、一方のモーガンは、1年間のギャップがあるものの、まだ、飼育状態に慣れきっている訳ではなかろうし、研究者も含めたソフトリリース(いっぺんに解放するのではなく、徐々に自然状態に戻す)の提案が解決となるのではないだろうか。

 それにつけても、飼育施設で生まれた野生を知らないシャチたちはどう考えればいいのだろう?鳥などでは「野生復帰」とかが試みられているものの、社会的な暮らしを土台とするシャチたちにとっては同様の解決は解決にならないと思われる。
 
 

2011年10月13日 (木)

混獲クジラについて(その2)

 昨年もブログに書いたものなので、背景等は省略するが、鯨研のウェブに沿岸における海生哺乳類の座礁、混獲の情報が公開されている。
http://icrwhale.org/stranding1106.htm

今回も2011年の上半期分の情報があったので見てみた。

 それによると、スナメリの数が圧倒的に多くて、半年で120頭も死んで見つかっている。スナメリは沿岸性の生き物だから、海の汚染や餌の減少などがストレートの反映されるのかもしれない。

 それ以外に多いのは、やはり今回もミンククジラの混獲で、昨年の上半期の104頭におよばないものの、83頭が混獲されている。ミンククジラ混獲の特徴は、生きた状態で定置網などに入っていて、その後死んだというものが多く(今回は54頭、不明が2頭)、他の種のように研究機関や大学で調査研究に付されることはなく(DNAは鯨研に送られるが)、販売されるということだ。鯨類の座礁・混獲マニュアルでは、生きたものは解放し、仕方ない場合のみ販売してもいいことになっているが、ミンククジラは運悪く、溺れたりして死ぬものらしい。

 今年の混獲の「水揚げ」の多かったところは長崎県で19頭、昨年多かった石川県は11頭、他は北海道から鹿児島まで、結構まんべんなく混獲されているようだ。
 他に、今年はザトウクジラとセミクジラ、ナガスクジラがそれぞれ1頭ずつかかっている。

 混獲されるミンククジラの大部分は希少なJ-stockだと考えられるので、今後、本気で沿岸の捕鯨を再開するつもりガあるのならば、混獲についてももっとまじめに監視や取締を行っていただきたい。

2011年10月12日 (水)

鴨シーのシャチが名古屋に!?

中日新聞は、鴨川シーワールドのメスのシャチ2頭の妊娠が確認されたため、出産のための緊急措置としてそのうちの1頭ステラを名古屋港水族館にオスのビンゴとメスの子どもランとともに移送すると報じた。

<中日記事>
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011101290085754.html

【社会】
「千葉・鴨川のシャチ親子3頭 名港へ 雌が妊娠中、水槽を提供」

 ご存知のように、名古屋港水族館では、2008年に太地くじらの博物館から借り受けたメスのシャチ、クーに死なれ、また昨年、同じ太地から5億円で購入したメスのシャチ、ナミをこの1月になくし、その飼育管理体制に問題ありという専門課委員会の報告を受け、昨年11月に4億8千万円で契約したステラとビンゴの借受を凍結していた。
 この結果を受けた改善措置がまだうやむやのまま、借りる予定だったステラとビンゴを受け入れるのはいくら何でもまずいだろうという判断からか、凍結はそのまま、あくまでも緊急措置で、その費用は鴨シーもちということだ。
 管理組合の議会の結論に至る前、反対する人たち、巨額の経費投入に懸念する市民を牽制する賢いやり方とは言えるだろうが、一方で、無事に出産を終え、ほとぼりも冷めた頃にその実績を持って・・・という勘ぐりもできないこともない。

 野生シャチ捕獲がこれで遠のいてくれることを期待しつつ、また、無事な移送作業と無事な出産を願いつつも、人の勝手のために弄ばれる彼らに、同情の念を禁じ得ない。

 

2011年10月 2日 (日)

補正予算20億円−調査捕鯨に

 読売新聞が9月30日に報道したところによると、政府は第3次補正予算に、調査捕鯨の継続のための予算、20億円を計上していると言う。シーシェパードの捕鯨活動の妨害に対して乗員の安全を確保し、実施主体の日本鯨類研究所の支援も併せて行うということだ。(妨害により財政的に困難になったということになっているようだが、実際の赤字経営は鯨肉が売れないからで、今更始まったことではない)

 補正予算総額の12兆円から見れば、20億円なんかたかが知れていると思う人もいるかもしれない。しかし、この2月に調査捕鯨中止を余儀なくされた後に、政府の音頭取りで(しかも捕鯨勢力の圧力で継続を前提として)開催した鯨類捕獲調査検討会議でさえ、検討委員の合意ができず、縮小または中止も選択肢に入れざるを得なかった。つまり国として合意できているとはいえない事業なのである。
 このどさくさにまぎれて、これまでの4倍を一挙にしかも補正予算に入れられるのは納得できないことだ。

 30日の記者会見で鹿野大臣はこれからつめると発言したようだが、読売のこのリーク、お定まりのように既成事実を作るための下工作ではないか、と疑われる。
 
 これまで、調査捕鯨の補助金は5億円(最近7億円に増額)だった。他の経費は、鯨肉を販売してまかなうはずで、自前で実施が出来ない事業であれば補助金も出ないはずのものだ。そこを一気に20億円。そんな余分なお金があるなら、原発被災者や沿岸地域につかってほしいと多くの日本人が思うことだろう。
 
 もう一つ。この税金投入により、調査捕鯨は次の段階に入るということも見ておく必要があるだろう。つまり、これまでは鯨類研究所と共同船舶という外部の事業体による「調査に名を借りた商業捕鯨」が、これで国営産業になるということである。別の言い方をすれば、国営の事業でない限り、南極海での商業捕鯨は採算の取れない、つまり民間の行えないものだということを政府自らが宣言したということだ。
 
 
 

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