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2011年8月 1日 (月)

鯨類捕獲調査の検討会について

 本棚の隅から、ほこりをかぶったダレルの本が何冊か出てきた。「ダレルの動物散歩(Two in the Bush)」もそのうちの1冊だったので、早速(多分40年ぶりに)読み返して見た。

 すっかり忘れていたが、これは動物採集ものではなく、BBCの自然シリーズのひとつとして、動物探索と撮影にオセアニアに行ったときの旅行記だった。
日本で出版されたのは、1970年になってからだが、実際にBBCが放映したのは1962年だ。

  前回、NGOレセプションでのマーク・シモンズの引用を紹介したが、ニュージーランドやオーストラリアの移入種問題、人間の生活息拡大による生息地破壊のことが次々に出てくる。
 その中でおや?と思ったのは、当時(1960年初頭)のオーストラリアですでにカンガルーの間引きの努力が科学的な手法で検討されていたことだ。牧場の拡大による生息適地の増加によるカンガルー個体群の増加が早くも問題となっており、自然保護局の担当者たちは、個体数を削減するに先立ち、問題となっている地域の個体群の年齢構成や行動範囲など、実際の生態を確認しつつ、駆除を検討するという手法をとっている。

 半世紀も前に、’汝の敵を知れ’(殺す前にきちんと生態や行動範囲などを把握するための努力をおしまない)という目標を見定めてカンガルー研究所がたてられ、研究チーム主任は、オーストラリアでも第一級の生物学者の一人だと紹介されている。日本が「非科学的」といっている国の話である。

 さて、本題の「鯨類捕獲調査の検討会」だ。昨日遅くに、26日に行われた最後の検討会の報告書が掲載された(このタイトルが「中間とりまとめ」であることに注意)。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/index.html

 この検討会が行われたそもそもは、シーシェパードの妨害行為による調査捕鯨中断である。だから、そのことが柱になるのは自然なのだろう。

 しかし、それにしても、その妨害の内容が他に比べやけに詳細に説明されているのが気になる。
IIの鯨類捕獲調査の現状等にタイトルとクジラ捕獲数を除いて本文67行。そのうち、妨害に28行を割いており、これは、この章の本文67行のうちおよそ4分の一にあたる。
 IIIの方向性の検討でも調査の継続についての検討について37行ですましておきながら、妨害内容の詳細説明を行っており、これが47行。肝心の調査捕鯨そのものの検討に関しては、大本営発表から逸脱しようという気はない書きぶりだ。

 しかし、こうした書き方に関わらず、大本営発表とは異なる意見がみられる。これらを拾ってみれば、検討会の収穫も見えてくるだろう。

 最終回の議事録が出ていない段階で、誰がどのような意見を出されたかがわからない状態ではあるが、以下、いくつかみてみよう。

・調査捕鯨の商業性に言及して、国際合意を得られない場合は中止とする意見
・毎年多くのクジラを捕獲することの科学的証明が不十分なので、目視など非致死的な
調査に少しずつ切り替えていくべきでは、とする意見
・クジラ獣害についての仮説には、生態学者も疑問を呈しているので調査の目的を訴える
のに資さないという意見

これらは、委員からの意見ではあるが、とりまとめで説明されている内容とは異なる。

 また、これまで、鯨肉を販売することで維持してきた調査のあり方が鯨肉の売り上げの低下によって
難しくなっており、
1.公的な支援で継続する
2.鯨肉は余っているのだから、沿岸だけで十分まかなえる.わざわざ南極までいく必要はない

という二つの意見が併記されている。

 また、共同船舶が鯨肉販売まで請け負う形を変えて、販売組織を別途作るという意見、沿岸小型捕鯨業者の支援のため、沿岸捕鯨の再開をまず目指すべしという意見も書かれている。

 新聞等で、「縮小あるいは停止という選択肢もある」ということが報道され、またぞろ捕鯨推進の一部からは、南極から撤退するのは沽券にかかわるなどという意見もあるようだが、現実的な解決策を早く見いだすためにもこうした異なる意見がでたことは評価したいと思う。


 ジャージー島では、複数メディアから、こんな災難の後でもまだ南極に行くって本気か?というような質問を受けた。まあ、とりあえずは予算がついているので行くつもりでしょう、とは答えたが、まだまだ確定的ではないのかもしれない。
 まだ11月までは少し時間があるが、どのような「最終案」がでるのか気になることではある。


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