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2011年7月21日 (木)

3日目 NGOの参加拡大は合意形成の踏み台に

 3日目も財運の議論が長々と続く。

 「近代化」でも「正常化」でもいいが、対話の継続という建前は対立の解消につながるわけはなく、一つ一つの議論が捕鯨推進と反捕鯨のバトルを内側に隠しながら行われている。
 当然のことながら、透明性とか公平性とかをより多く求めるのは反捕鯨陣営だ。
 
 イギリスから、EUの提案国の列記された修正案の説明がある。IWCの効率化を目指し、最小限の内容で、提案の骨組みを残したものということである。

 前日に意見が割れたNGOの参加拡大については、今後作業委員会で検討するという前提で、現状通りとなり、変更項目が削除されてしまった。今回提案では、分担金支払い方法の改正によるわいろ疑惑の払拭とともにNGOの発言権を確保することは重要なポイントであったはずなので、これは残念なことではある。

 事務局ー締約国間の意思疎通の確実化をめざす代理コミッショナーの選任については、コンタクトポイントの提示でもよいということで合意された。

 議事採択については、スクリーンで提案内容が投影され(オブザーバーも共有するのはいかがなものか、という意見もあったものの)、選択内容が確認できるということに決まった。

 科学的なアドバイスについては科学委員会に提出されたすべてに対応することとし、また、科学委員会報告は、各締約国が検討する時間をえるために、100日以上前にウェブに掲載され、新しい知見が出された場合もその都度それに対応することとなった。

 会議における採択された事項は、早期にウェブに掲載され、透明性を確保することが保証された。
 日本政府が主張していた、各国政府によって機密が要求された場合の対応についても書き加えられた。これまでの資料に関してはできるだけウェブ掲載を心がけ、過去の資料についてもアーカイブという形で閲覧が可能になる。これまで非公開であった、監査報告書もウェブで公開され、誰でも閲覧できるようになる。

 一方、前の日にも議論が集中した分担金支払い方法については、イギリスが提案内容を譲らず、締約国か政府機関による銀行振込が支払いの方法とされ、現金、小切手、クレジットカードなどの支払いは不可という文言は削除してもかまわないという説明(最初から妥協用に加えられていたみたいだが)。
 他の国際条約では、特にこうした指定はないが、銀行振込が暗黙の了解に当然と考えられており、国連のように、チェースマンハッタン銀行のニューヨーク支店に指定しているところさえあるということだ。何十万円〜何百万円以上という現金が会期中に事務局に持ち込まれていたとは、そのこと自体が驚きだ。
 
 フロアに議論が移る。コスタリカを皮切りに、EUやラテンなど反捕鯨の国々からの提案を支持するが、NGOの参加拡大が削除されてしまったことを残念だというコメントが続く。

 セントキッツは、支払いの確認時点について質問し、各締約国によって振込まれた分担金の支払いが委員会の口座に振り込まれて確認されたときと明確化される。

 日本は提案者が柔軟性を示したことに感謝しつつも、途上国支援のため、次回会議の60日前までに手続き規則の変更を提出して、2年先の本会議まで待たなくても、そのときの会議で採択されるよう手続きについて考慮するよう提案。

 アンティグアが前文の修正を要求。環境条約を海洋資源管理と変更してほしいと要求し、単に国際条約に修正することで合意される。

http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC63docs/63-8rev%202-Final.pdf

 ICRWの3条5項の分担金支払いは締約国が各自支払うというところが途上国への差別だとセントキッツが意見。アイスランドは、条約の条項を手続き規則で変更はできないのになぜ書いてあるのかと疑問を呈し、3条5項に関してコーヒーブレークの間に相談することになった。

 コーヒーブレークの後には、日本がコンタクトを複数にしてもいいのではないか、またメールアドレスのウェブ掲載によりサイバーアタックの可能性に言及。

 セント・キッツが分担金支払いと投票権に依然としてこだわっており、柔軟性があってもいいのではないか、という。彼は、元アンティグアの代表をしていた時代から日本政府と昵懇で、捕鯨推進の人たちからは「DJ」という愛称で呼ばれている人物だ。投票権へのこだわりは、支払いが滞っている国の多くが日本支援の途上国であることと関係しているかもしれない。また、これから実施されるかもしれない投票への牽制の意味もあるかもしれない。

 また、セントキッツとアンティグアは、再び銀行振込に抵抗し、手形でも同じ効果があるのでいいのではないか、と主張する。アイスランドやパラオなども同調する。
 銀行振込に変わったらわいろ防止になるの?という疑問もあったが、これほど激しい抵抗がある以上、もしかしたら効果があるかも、と皮肉にも思ったりする。
 銀行振込に関してはイギリスも譲らず、ランチタイムの間修正案を作るグループを形成して議論することとなった。セントキッツは、イギリスが妥協の余地なしとしたことに対して、それでは話し合う必要がないと抵抗。
 日本は、合意形成が難しいポイントと、容易いものとで二つの作業グループに分けて討論しようと提案し、合意される。

 ランチタイムのセッションは結局3時間以上かかり、5時過ぎにやっとみんなが会場に戻る。
合意形成に至り、お互い柔軟性を示すことができてよかった、よかったと自画自賛。
 日本政府は、これはどちらが勝ったとか負けたとかいうのではなく・・・といい始める。おや?どうしてそんなことにいちいちこだわるのか?

 そのあと、コミッショナーのあつまりで、積み残し議題がいっぱい残っているので、発言は一人2分とし、自動的にマイクが切られることに。
 財運委員会議長から残りの報告の後、報告書は採択された。

 そのあとは、先住民生存捕鯨(ASW)で、この委員会の議長は日本。森下代表代理から、管理方法や捕獲限界など議事の内容が紹介される。
 ASWに関しては、伝統的な手法により捕獲し、文化的・伝統的に重要であること、当該地域にとって必須の栄養源であること、地域消費のみ認める、また対象種が絶滅に瀕した場合は即時停止することなどが決められ、商業捕鯨とは異なる管理方式がとられて、5年ごとに科学委員会が捕獲枠を示している。国際的に認められている先住民の権利を前提としているので、なかなか深く踏み込んだ議論は難しいが、時たま地元消費のはずがスーパーで流通していたなど灰色の話が出てくる。昨年は、人口増加を理由に、鯨肉のニーズが増しているため、ザトウクジラについての新たな枠の設定を求めるグリーンランド提案について、かなり意見が割れた。
 今回も消費量と頭数の変換方法などいくつか質問が出され、積み残し課題に関して小グループによる会議間の議論が行われる模様だ。ASWの基本点の見直しも行われることが望まれる。

 インドが、将来的には捕鯨への依存度を減らして、地域でのウォッチング事業などに転換してほしいという意見を述べたが、これに対してロシアが噛み付いた。ロシアはインドは科学委員会よりも、先住民捕鯨について詳しいらしい。それほど科学知識を披露したことに驚愕した、これがインド政府公式見解かどうか知りたいものだと発言。デンマークがびっくりしたことにロシアに同調。インドが当惑すると、枠を下げる必要があるといったが、ロシアは帰国したらモスクワからインド政府にこのことを確認する。これがインド政府の立場でないことを望む、と再度いった。インドは、枠を下げろといったのではなく依存度を減らすべきといったのでこれはインドの立場だと切り返した。

 こうした小競り合いに、不自然な対話協調路線のほころびが見え隠れする。

 この後は、日本の小型沿岸捕鯨問題で、日本は、せっかくできた協調の雰囲気を壊したくないからと将来に検討の必要性を残して提案を撤回。
 次のアメリカとニュージーランドの提案したIWCの将来についての決議案も、合意形成の重要さを指摘し、決議採択ではなく議長の報告書に入れるということで決着。

 最後は、問題のビザについて、事務局長が報告書をもとに説明し(いくつかの国が既に参加)、長かった一日の会議が終了した。
 
 NGOのレセプションが近くのベストウェスタンホテルで開催された。


 


 


 

 

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