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2011年7月20日 (水)

IWC63会議報告(7月11日〜)

<1日目 ミンククジラは通勤族>

 少し旬をすぎてしまいましたが壊れたIWC報告です:

 搭乗予定のブリティッスエアウェイズが整備不良のため5時間遅れ。
代わりに予定の便は15時過ぎにならないと出発しないため、ヒースローーガトウィック間の乗り継ぎには間に合わない。もしかしたらロンドン泊か?と冷や汗ものだったけど、幸いなことに、全日空に乗り換えることができた。さらに心配したヒースローからのバスもスムーズに走ってくれたので、無事にジャージー行きの便に乗り継ぐことができた。8時過ぎにジャージー空港着。まわりは避暑客。タクシーでホテルに移動の途中、イギリススタイルの建物がぎっちり建っていて、1車線の道がくねくねと続くことにびっくり。

 猛暑の最中にでてきたので、肌寒いくらいの気温と湿度の低さがありがたい。ただ、時差にはなれず、なかなか寝付けないまま、朝3時ごろから騒がしく鳴き始めるカモメの声やら、イソヒヨドリの声を聞きながら、ああ、ちゃんと着いたんだなと実感。

 11日、朝一番で登録をすませ、1年ぶりの顔見知りと挨拶をして会場に入る。のっけから議長代理が南アのHerman Oosthuizen(ハーマン・ウェストヘーゼン氏)に変更されているのを知る(前の議長のマキエラ氏は、昨年会議を病欠した後チリの代表を辞任し、昨年から議長代理は副議長のリバプール氏が務めていた。そのリバプール氏がなぜか参加していないようだ)。どのみち、今年で任期が切れ、次期議長、副議長選出が行われる予定ではあったが、とりあえず今回の代理が新議長に選ばれる可能性が高いような雰囲気で、実質的に早々の交代となったみたいだ。

 今回の参加国は現時点で61カ国(最終日に62カ国)、人数も少なめ。日本代表団が一番多くて26人(これまでと比べると半分以下か?そのうち議員は3人)、次がアメリカで24人。

 日本は今回、香川謙二審議官がコミッショナーに就任し、久々の行政担当者の起用となっている(経費削減という噂がある)。

 今回はどこも会議主催国に名乗りを上げなかったため、事務局のあるケンブリッジで開催予定だったが、それでは面白みがなかろうというイギリス政府の配慮で(多分)、チャネル諸島のジャージー島での開催となった。恒例の主催国の挨拶とパフォーマンスの代わりに、ジャージー州を代表してアラン・マクリーンジャージー州経済開発相が短く挨拶、そのままコーヒーブレークとなった。飲み物のみでコーヒーはまずい。

 IWCの将来が議題となってから、会議そのものも精彩を欠いているが、事務局が配布してくれる資料の入れられるピジョンボックスの中身も極端に少ない。
 今回、少し驚いたのは、いろいろな団体が配布している資料もなんだかぱらぱらの感じだったこと。少ない原因のひとつは、いつもどっさり資料を並べていた鯨研が今回何も配布資料をだしていないこと。
 そういえば、いつものライブ中継が今年はないらしい。記者の数も少なく、カメラ用のお立ち台に人がいない。日本からは共同通信と時事通信のみ。

 コーヒーブレークの後は、89番目の参加国コロンビアがブエノスアイレスグループの一員として非致死的なクジラの利用を支持するとプレゼンテーション。

 新事務局長のサイモン・ブロッキントン氏の会議の運営について説明ののち(参加のあり方と分担金未払いの国について-ほぼ20に達する国が未払い状態)、議題の採択に入ったが、ここでセント・キッツ&ネビスがビザがとれないため参加できない国があり、議事に参加ができないのは不公平なので、先に問題を解決せよと発言。イギリスが適切に対応していると防衛。実際に何が起きているか事務局が調査し、報告することに。当初事務局が提案した木曜日では会議が終了してしまうので、早急に解決してほしいとセント・キッツは再度要求。

 日本としては、特に問題性の高い海上の安全を優先的に議論してほしいので、3日目に予定されていたこの議題を前倒ししてほしいという発言をして了承された。

 63回本会議の議題は採択され、早速、科学委員会議長によるクジラ資源についての説明に入る。

 肝心の南極ミンクは、またしても2つの推定個体数の出し方の差がありすぎるため、来年に持ち越し。
 ミンククジラの個体数が少ないことについて、森下さんが’うがった’解釈。東京の人口は、夜になれば少なくなるが、だからといって、死体がゴロゴロしている訳ではない。減ったから殺されたとは誰も考えないでしょう。同じように、ミンククジラの数が減ったからといって、殺されたというわけではない・・・要するにミンククジラは’通勤族’だったというわけ?

 南極ザトウクジラについては、7つの繁殖個体群を識別し、その生態の解析を順次行っており、今回はB個体群の検討が行われている。この個体群は2つの亜個体群があると思われるが、その境界は必ずしもはっきりしてはいない。そのうちのB2はまだ回復が遅いものの、全体としては初期資源の半分まで回復したということだ。
 順番に、シロナガス、コククジラと説明が続く。
 
 コククジラの西の個体群は、最も絶滅が危惧される大型鯨類の一つだが、今回はテレメトリー調査の報告があった。メスや子供では負担があるのでフレックスと名付けられたオスにタグがつけられたが、サハリンから南に下るという予想を裏切り、彼はなんとベーリング海を通過、アメリカ西海岸に現れたのだ。今後も、タグをつけた調査は継続されるということなので、コククジラたちがどんな行動をとっているか、少しずつわかってくることだろう。殺していては、こうしたなどの行動の存在すらわからないだろう。
 ご存知のように、ニシコククジラの索餌海域では、石油ガス開発が盛んで、企業は緩和措置をとるといいながら、かなり問題な開発を進めている。周辺諸国が連携して保護策を講じることが奨励されている。日本政府も国内法による保護や漁業者に対しての注意、監視を強化しているというコメント。以前のようなつれない言い方ではなく、一応は積極的な保護をいっているので、それを国内でも反映してくれないものか。

 次の北太平洋調査クルーズでは、SOWER(南極海目視調査)にちなみ、 POWERと名付けられた共同調査では、日本が船を提供し、中長期的な目視調査の計画への貢献を感謝され、また日本政府もその積極的な協力を約束しているという(船だけではなく、乗組員も貸しているよ〜と日本政府)。これまで長い間きちんとした評価ができていなかった、イワシクジラやニタリクジラに関するデータを集める。こうした調査に関しては日本政府も存在感を増して気分がいいのだろう。

 その次のクジラの捕殺問題に関してはなかなか議論がうまく進まない。特にイギリス政府がかなり根源的なクジラ捕殺法の改善提案を出してきており、捕鯨派の国々はそれに反発。データを出してきたノルウェーが、捕鯨国の努力を評価しないことをこぼし、陸上の大型哺乳類については厳格なルールを求める訳ではないのに、なんでクジラばかり・・・(確かに大型哺乳類の捕殺方法すべてに改善があればいいに違いないが、少なくともIWCはクジラの管理のための委員会だから、他の動物の捕殺法まで検討できるのか、と思わないでもない)
 一方で、先住民の捕鯨に関しては、元々が伝統的な捕鯨の方法で行うことになっており、その方法が致死時間短縮などには貢献しないのではという矛盾がある。アメリカがアラスカ先住民の捕鯨についてパワーポイントプレセンテーション。厳しい自然の中でのクジラ捕獲について説明。

 日本政府は、捕殺に関するデータを出し渋っている。一つには、考え方がかけ離れていることもあるだろう。日本で動物の福祉というと、ペットをかわいがると同じような感覚の解釈で、科学的な福祉(それぞれの生態に応じた最善の扱い方を考える)という方向にはなかなか行かない。国によってそれぞれのあり方も異なる問題では、合意形成も一段と難しいものになってしまう。

 その後は科学委員会からのあまり変化のない改訂管理制度(RMS)の進展のなさ
ついて、ノルウェーが文句。そのあとの改訂管理方式(RMP)については、モナコがアイスランドのナガスクジラ捕鯨の枠の設定がIWCの科学委員会ではなく、NAMMCOによるもので、不適切ではないか、と発言し、アイスランドがナガスクジラにはいくつもの個体群があり、アイスランド海域のナガスクジラは絶滅に瀕していないと反論。科学委員会から、今後の評価を必要とする捕獲限界が60%で、46頭の枠というのは今後の評価を必要としない安全な数という説明があった。
 周知のごとく、アイスランドはナガスクジラをもっぱら輸出用と考えている。業者(ロフトソン)は、日本が地震と津波で貧乏になり、人々がレストランに行くことができなくなったという理由で(あるいは言い訳かもしれないが)、当分肉を販売できないと夏まで捕獲はしない模様ではある。

 会議はほぼ予定通りに終わり、ジャージー州経済開発層と会場のオテル・ド・フランスの共催のレセプションになった。これもまた、飲み物のみ。

 ホテルに戻って夕食。なんかベジものを、というと、ウェリントンパイね、というウエイターの返事。何が出てくるかとドキドキしていたら、四角い1センチ角のパイ包みの中に、ラタトゥイユ様のものが入っていて、さくさくしたパイ皮がことのほかおいしかった。
 

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