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2011年7月27日 (水)

調査捕鯨についての検討会について(まだ詳細不明だが)

 まだ報告書が掲載されていないので詳細についてはわからないが、最初から継続を前提として行われた調査捕鯨の検討会で、「中止」という文字を入れないわけにはいかなかったということは興味深い。
 
 SSへの非難は丁寧に書かれている割に、調査捕鯨の内容の問題ではなく、経費が大きく取り上げられているのは少し残念。
SSについては、調査捕鯨があったればこそこれだけ勢力を伸ばしたので、なくなれば活躍もできないだろうと思いませんか?


http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110727k0000m040140000c.html
毎日:調査捕鯨:南極海「継続すべきだ」 中止意見も…報告書

 

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011072600702
時事:調査捕鯨、「中止」併記=大勢は「継続」も-水産庁報告書

 
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110726-OYT1T00980.htm
読売:調査捕鯨、報告書に初めて「中止」の選択肢


http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110726/biz11072619500038-n1.htm
産経:調査捕鯨、初の「縮小・中止」併記 検討委報告書
2011.7.26 19:49

ラテンのNGOから日本のみなさんへ(1)

チリのNGO(CCC)のヤヤイス・カブレラから日本の皆さんへ

 数百の沿岸地域社会と数百万人の南半球の人々が、生きたクジラによる責任あるホエールウォッチングのもとで利益を得ています。
 ホエールウォッチング産業は、年間20億ドルの収益を生んでいます。
捕鯨とホエールウォッチングの違いについていえば、ホエールウォッチングは沿岸地域で実施され、収入は直接関係した人々にもたらされますが、それに反して捕鯨産業というものでは、「資源」から得る収益は一握りの人にしかわたらないということでしょう。
 また、ホエールウォッチングは、その実施に伴い、数えきれないほどの関連する事業、例えばサービス業(レストランとかホテル、お土産など)といった家族によって営まれる事業により、社会経済を支える柱となります。

 南半球においては、クジラたちは外国の捕鯨船団によって絶滅の淵に追いやられ、私たちの海は、何十年も空っぽのままおかれました。モラトリアムのおかげで、クジラは戻ってきて、過去にまでさかのぼる繁殖海域や索餌海域が解明され、沿岸地域のたくさんの人々に、ホエールウォッチングというクジラ個体群に悪影響を与えずに海洋に関連した様々な事業を興させるユニークな機会を与えてくれました。
 ここにおいて、クジラのための南大西洋サンクチュアリは、外国の捕鯨事業から海域に生息するクジラを守り、非致死的な利用だけを認めるという私たちの主権を守る意味で、基本的に重要な意味を持っているのです。

 日本政府は、クジラを保護しようとする国に対して、日本の文化への西洋の侵略だと主張していますが、私たち南半球の市民としては、私たちの法的な権利としてのサンクチュアリの設立への日本政府の攻撃的な態度は全く受け入れがたいものなのです。

 私たちは、今回のIWC会議における投票ボイコットという日本代表団の恥ずべき行動が日本の人たちの心持ちを代弁しているとは考えていません。ですから、来年パナマで開催されるIWCにおいて、IWCのガバナンスを損ない、日本の国際的なイメージを傷つけた日本政府が、日本の市民の監視を受け、自国民への説明責任を果たすことを望みます。(IKAN仮訳)

"Hundreds of coastal communities and millions of people of the southern hemisphere benefit from live whales through the development of responsible whale watching, an industry that generates more than 2 billion dollars annually. The main differences between whaling and whale watching is that it is conducted by the coastal communities so the incomes directly benefit the people involved, as opposed to industrial whaling, where a company appropriates the whale "resource" for the benefit of a few. Also, whale watching generates countless of jobs related to the activity, like services (such as restaurants, hotels, souvenirs, etc) that are generally family based and constitute the pillar for their socioeconomic development. In the southern hemisphere, whales were driven almost to extinction by foreign whaling fleets, leaving our oceans depleted for decades. Thanks to the moratorium, the slowly return of whales to historic breeding and feeding grounds has proven to be a unique opportunity for many coastal people to develop an activity connected to the sea that does not negatively impact whale populations: whale watching. In this context, the creation of the South Atlantic Whale Sanctuary is of fundamental importance to protect all the whale species that are found in its range from foreign whaling interests that threaten our sovereign right to use whales exclusively by non lethal means. Although the government of Japan argues that pro conservation countries seek to impose their western culture regarding whales, for the people in the southern hemisphere the aggressive behavior of the government of Japan towards our legal right to create the whale sanctuary is totally unacceptable. We are certain that the shameful conduct of the japanese delegation during the last IWC meeting - to stop the voting process for the creation of the whale sanctuary - does NOT represent the spirit of the japanese people. In this regard, we wish that next year in Panama the japanese delegation will be subject to strong public monitoring and accountability, since now they are seriously damaging the governance of the IWC and the international image of Japan and its people".

2011年7月25日 (月)

ラテン諸国のNGOの意見

 今回の会議で、日本の代表代理の顔つきがいつもと違うなあ、とスクリーンに映る姿を見ながら思っていた。なんだかこれまでと比べて、柔和で、リラックスしているように見えたのだ。今回が最後なのだろうか?と想像したのだが、実際に国際課から移動されたとの情報を得た。
 それでは、ひたすらマイルドな話し振りではあったが、あれが彼の最後っぺだったのだろうか?

 国際機関で、会議を不成立に無理させるような作戦はいかがなものか?という疑問はあったが、これから、どのようにこの始末をするつもりなのか?といぶかしく思っている。

 以下に、今回会議の終了に際してのラテンNGOの怒りの声を掲載する。かなりの違和感を持たれる方もいるだろうが、こういう意見もあるという一応の参考まで。

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          "新クジラ体制"、国際捕鯨委員会を脅かす専制政治

     エルザ・ヤヤイス・カブレラ(CCC-Centro de Conservacion Cetacea)

 今年の国際捕鯨委員会(IWC)年次総会の結果に不満を抱くものもあるかもしれないが、今回の会議は、IWCという国際機関での「ガバナンス」と「民主主義」の維持において、最も重要な歴史を刻むものとなった。

 透明性とガバナンスに関する決議を、コンセンサスによって採択するための交渉に費やされた2日間と、南大西洋クジラ保護区制定のための投票プロセスの妨害を図る捕鯨国による会議の乗っ取り行為は、鯨類保全に関する重要な議題のための時間を無駄にした、と間違って認識されがちである。

 しかし、この2件の出来事は、クジラの未来を左右する主導権を握るためには多くの国がその他の加盟国の基本的権利を無視して「偽善」と「操作行為」を働いているということを明らかにしたのだ。

 大多数のIWC加盟国が望む、鯨類の保全および非致死的利用を「外交的に潰す」ことを目的とした、表面的な友好関係の維持のため、膨大な議題を後回しにし、消極的で何も決まらないと言われていた同委員会だが、今回については、最終的にはこれらの問題に直面しなければならない状況で、会議の幕を閉じた。

<コンセンサスを装った襲撃のための準備>

 捕鯨産業の乱獲が原因で引き起こされた大型鯨類資源の崩壊は、"捕鯨産業の秩序ある発展とクジラの個体群の保全を規制する"機関としてのIWCの「信頼性を破壊」した。1986年から実施されている世界的な商業捕鯨のモラトリアムが、これらの種の多くを「絶滅から食い止め」、委員会が責任持って管理するはずであった"資源"の枯渇と永久的な消失による「組織の崩壊からIWCを救った」。

 モラトリアムが実施され、大型鯨類の個体数回復や、クジラの非致死的な利用のより良く斬新な選択肢の誕生により、IWCの信頼性は徐々に再構築され始めた。しかし、10年以上にわたって保全活動を体系的に妨害し続けたIWCでの「日本の票買いポリシー」は、同委員会の未だ脆弱な信頼性を「侵食」している。

 IWCに加盟しているカリブやアフリカ諸国への日本政府からの変則的な支払いについて、2010年のサンデータイムズ紙が報じ、スキャンダルが明らかになった。それを受けて、ジャージー島で英国が提示した透明性とガバナンスに関する決議は、IWCの信頼性や、市民社会の参加の欠如など、その他の重要な問題に対処する最善の手段であった。

 しかし、日本政府による「ハプーン(銛)外交」によって、会議では不確かな捕鯨の利益が優先され、基本的な透明性とガバナンスの施策を弱めるため行われた果てしない議論に貴重な2日間が費やされてしまった。最終的に委員会は骨抜きとされた英国の決議案を採択し、時代遅れにも制限されたNGO参加に関する現状の規則は改善されず、IWC内での不正行為を軽減はできても排除できない結果となった。

 多数の捕鯨国と日本の捕鯨政策の支持者は、熱狂的にその導入を祝い、あたかもIWCの唯一の意思決定メカニズムはコンセンサスであるかのように振る舞った。

<CBIにおける民主的プロセスの外交的絞首>

 2001年以来、ブラジルとアルゼンチンは、すべてのラテンアメリカ諸国(ブエノスアイレス・グループ)の支持のもと、南大西洋でのクジラ保護区を制定する議案を主導してきた。しかし、採択されるためにはIWC加盟国75%の支持が必要なのだが、投票の際にこの割合に到達しないよう日本政府が票買いを継続して行ってきたため、未だ議案が通らない。

 2007年のアラスカにおけるIWC年次会合では、保護区の制定に賛成が加盟国の60%という歴史的水準に達し、ラテンアメリカ諸国は、翌年のサンティアゴ(チリ)での会議で再度同議案を採決に持込むため、準備を進めた。しかし、"IWCの将来"を定義する交渉プロセスを開始した委員会は、「調和した形で」課題の解決を図るため、論議を呼ぶような議案の提出を自粛するよう各国に強制する形となったため、「交渉プロセスを進展させるため」 南大西洋における鯨類保護区の制定に関する提案は採決にかけられない状況で今にいたっている。

 一方、日本政府は、"調査捕鯨"の名のもと南極海のクジラ保護区でクジラを殺し続け、国際貿易が禁止されているにもかかわらず、絶滅危惧種であるナガスクジラの肉を何十トンもアイスランドから輸入し、 (不正贈賄告発のため鯨肉を持ち出した結果)説明もなく告訴人を刑務所に入れる結果となった贈収賄と汚職スキャンダルに関与し、さらには南極海のクジラ保護区で捕獲されたミンククジラ(JARPNのイワシクジラの間違い?ーIKAN)の肉が米国の高級レストランへ不正輸出していた証拠が明らかにされている。

 新しい捕鯨のための戦略は、日本政府とその主要同盟国にとっては完璧のようだ。捕鯨再開への道は、2010年に米国とニュージーランドが提出した「IWCの将来への提案(proposal for the Future of the IWC)」の中でまとめられている。モラトリアムの廃止を呼びかけるだけでなく、クジラ保護区内における"調査捕鯨"を正当化するものであったからだ。幸い、この提案は完敗し、コンセンサスに関するポリシーを含むこの議案の交渉プロセスは、モロッコでの会議が閉幕した後にさらに続き最終的にまとめ上げられた。

 2011年IWC会議での交渉では、クジラ保護推進側がラテンアメリカ地域にとって重要な鍵となる南大西洋クジラ保護区の制定などの、保全と開発に関する提案を再度提出する良い環境が作られた。ブラジルは、保護区制定のための生物学的、生態学的、また社会的な堅実な利点を委員会に提出し、提案のコンセンサスによる採択を求めた。ブラジルはまた、自国の正当な権利を行使し、合意に達することが不可能であった場合、投票へ移すと述べた。

 IWCでは、コンセンサスによって合意に達することができない場合、投票が意思決定プロセスの基本となっているため、保護区の制定案に対する捕鯨国による頑固で不当な異議申立を受けたブラジルは、ブエノスアイレス・グループの支持のもと、IWC主権加盟国に与えられた当たり前の権利を行使し、制定案を投票にかけた。

<民主主義vs.捕鯨専制>

 日本をはじめとする捕鯨国の対応は、国際環境法の歴史において最も極悪で危険な行為の一つであったといえる。投票が始まると、十数の捕鯨国や日本政府によって票を買われている代表団は、会議から退場した。投票を行うのに必要な人数に満たないようにするためである。 それでも、代表団が退場する前に投票は開始されていたのであり、委員会は投票プロセスを継続するべきであった。しかし、会場の混乱状態も手伝って今回の暫定議長(南アフリカ)はIWCの通常手続きを無視し、適用することを避け、クジラ保護区の投票は、2012年にパナマで開催される次回の年次会合まで延期となった。

 皮肉なことに、クジラ保護区に関する採決の一年間延期は、一般NGO、すなわち市民社会が完全に除外された、9時間にわたる密室の審議において決定された。このような状況は、前日にコンセンサスで可決された透明性およびガバナンスに関する議案がIWCをクジラの商業的な虐殺を目的とする機関にしようと図る少数の国の意図の、単なる隠れ蓑であったことを物語っている。

 今回のクジラ保護区の制定に関しては、日本政府をはじめとする捕鯨国の行った衝撃的で憂慮すべき「捕鯨クーデター未遂」のみに責任があるようだが、米国およびニュージーランドが率先して支持する交渉プロセスの再活性化は、IWCのハイジャックされた民主主義に対するさらなる脅威となっている。

 次回のIWC会合の展開を想像するには時間がまだかなりあるが、2011年は、この国際組織の民主主義とガバナンスを早急に取り戻すことに集中しなければならないのは明らかだ。このような状況下、ラテンアメリカ諸国とカリブ海諸国、およびブエノスアイレス・グループのメンバーとその戦略的パートナーの積極的な参加および連携が、一握りの国の独裁的で恥ずべく行動によって作り上げられた現在の捕鯨の専制外交からIWCを解放するために必要不可欠である。(IKAN仮訳)


The “New Whale Order”, Despotism Threatens International Whaling Commission

Although some seem to consider the results of the last annual meeting of the International Whaling Commission (IWC) as insufficient, this meeting made history as the most important in the defense of governance and democracy within this international body. 

After two days of negotiations to adopt by consensus a resolution about transparency and governance, and the subsequent hijacking of the IWC by whaling nations - to obstruct the voting process for the creation of the South Atlantic whale sanctuary – the annual assembly of the IWC could be misguidedly perceived as a waste of time that left important conservation issues out of the meeting. 

However both situations unveiled the hypocrisy and manipulation to which several nations act in order to control and impose – through the denial of basic rights of sovereign Commission Member States – an obscure destiny to whale populations worldwide.

A meeting that was anticipated to be passive and inactive ended with the Commission finally forced to face substantive issues that where dropped in the drawer of memories in order to maintain an artificially friendly environment aimed to diplomatically sink the conservation and non lethal use interests of the majority of IWC countries. 

Preparations for an Assault Disguised as Consensus

The collapse of all great cetacean species due to the overexploitation of the whaling industry destroyed the credibility of the IWC as the body in charge of “regulating the orderly development of the whaling industry and the conservation of whale populations”. Only the enforcement of the global moratorium on commercial whaling from 1986 prevented the extinction of many of these species and saved the Commission from collapsing from exhaustion and permanent disappearance of the "resources" it was supposed to manage responsibly.

Following the implementation of the moratorium, IWC's credibility slowly began to rebuild, hand in hand with the increase of some populations of large whales and the generation of new and better alternatives related to the non lethal use of whales. However the vote buying policy of Japan for over a decade within the IWC – that has systematically blocked conservation initiatives - has eroded the still vulnerable credibility of the Commission.

After the scandal revealed by The Sunday Times in 2010 about irregular payments of Japanese officials to Caribbean and African representatives of the IWC, the resolution on transparency and governance that was presented by the United Kingdom in Jersey became the best alternative to address this and other important matters, such as the lack of civil society participation in IWC meetings. 

But the harpoon diplomacy consumed two valuable workdays of endless negotiations oriented to weaken basic transparency and governance measures in favor of obscure whaling interests. As a result, the Commission finally adopted a significant but weakened version of the English resolution that, among others, does not improve in any way the current outdated and restrictive system of NGO participation, and will only reduce and not eliminate corrupt practices within the IWC.

However several whaling delegations and supporters of Japanese whaling policies celebrated enthusiastically its adoption as if it meant the consolidation of consensus as the single decision mechanism of the IWC.

Diplomatic Hanging of Democratic Processes in the CBI

Since 2001 Brazil and Argentina – with the support of all the Latin American countries (Grupo Buenos Aires) – have lead a proposal to create a whale sanctuary in the South Atlantic. However the initiative has not been adopted because it requires 75% support of the Commission and the vote buying policy of Japan has always recruited enough countries to assure that it will never reach this percentage of the votes. 

But during the annual IWC meeting in Alaska (2007) the number of votes in favor of the creation of the sanctuary reached the historical level of almost 60% of the countries and the Latin American region prepared to put the proposal for a vote during the next year meeting in Santiago de Chile. However the decision of the Commission to begin a negotiation process to define the “future of the IWC” – that required all countries to abstain from addressing conflicting issues (for the whalers, that is) in order to resolve the challenges of the IWC in an harmonic way – prevented the region from putting the proposal to a vote thereafter on behalf of making positive progress in the process. 

On the other hand the government of Japan continued to kill whales under the so called “scientific whaling” program in the Southern Ocean whale sanctuary; imported dozens on tons of fin whale (Endangered) from Iceland although international trade of whale products is forbidden; it got involved in a bribery and corruption scandal that unexplainably put the complainants in jail; and evidence of illegal exports of minke whale meat caught in the Southern Ocean whale sanctuary to a fancy restaurant in the United Stated were revealed. 

The strategy of this new whaling order seemed to work perfectly for the Japanese government interests and its main allies. Lead by the USA and New Zealand the whaling interests were finally consolidated in 2010 in a proposal for the Future of the IWC that not only seek to eliminate the moratorium but also intended to legitimize “scientific whaling” operations in whale sanctuaries. Fortunately the proposal drastically failed and the negotiation process – along with its consensus policy – finalized after the meeting came to a close in Morocco. 

The closure of the negotiation process and certain favorable conditions for the pro conservation block in the IWC 2011 became a unique opportunity to retake conservation and development proposals that are of key importance to the Latinamerican region, such as the creation of the South Atlantic whale sanctuary. In this context, Brazil presented the proposal to the Commission, giving solid biological, ecological and social arguments for its establishment and required its adoption by consensus. Exercising its legitimate right, Brazil also stated that if it was not possible to reach consensus it would put the proposal to a vote. 

The IWC recognizes the voting procedure as a basic element of the decision making process when it is not possible to reach agreements by consensus. After the stubborn and unjustifiable opposition of the whaling nations to the creation of the whale sanctuary, Brazil – with the support of Grupo Buenos Aires – exercised the undeniable right of every sovereign Member State of the IWC and put the initiative to a vote. 

Democracy Vs. Whaling Tyranny 

The reaction of the whaling nations – lead by the government of Japan – could pass to history as one of the most villainous and dangerous moves in international environmental law. Once the voting process was open, more than a dozen pro whaling delegations or those associated with vote buying practices abandoned the room with the alleged purpose of breaking the necessary quorum to continue the decision making process. Even in the absence of these countries the voting process should have continued because it was opened before the country representatives left the room, so there was a quorum when it began. But the confusion and apparent unwillingness of the interim president of the IWC (South Africa) to respect and apply its procedures led to the suspension of voting the whale sanctuary until the next annual meeting to be held in Panama in 2012. 

Ironically, the determination to postpone yet another year the whale sanctuary proposal was reached after nine hours of secret deliberations in which civil society remained completely excluded. This situation made it clear that the consensus reached the day before on the resolution of transparency and governance was merely a cover for the true interests of a minority that seeks to take control of the IWC to make it an organization dedicated to the commercial slaughter of whales.

While a first reading of what happened to the whale sanctuary proposal blamesthe government of Japan and the whaling nations for the shocking and disturbing whaling coup attempt, the leadership and continuing support of the United States and New Zealand to revitalize the failed negotiation process is a serious additional threat to the hijacked democracy of the IWC.

Although there is still too much time to truly envision the scenarios of the next IWC meeting, it is clear that the urgent rescue of democracy and governance of this international organization will have to be main issues in the 2011 agenda. In this context, the active participation of Latin America and Caribbean countries and coordination of both members of the Grupo Buenos Aires and its strategic partners, will be essential to liberate the IWC of the the current whaling tyranny generated by the despotic and reprehensible behavior of a handful of nations.



By: Elsa Cabrera, executive director,
Centro de Conservación Cetacea.
IWC accredited observer since 2001.

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南大西洋サンクチュアリについてのNGOのプレゼンテーション

 環境に関連する国際会議は、市民社会からの声を重要だと受け止めている。
経済的な利益、特に短期的な利益獲得の争いに対して、地球全体の利益、すべての国々の利益と同時に、将来の世代のため、また、私たちのいのちの土台となっている地球生態系とそれを構成するすべての生きものの側に立って、その代弁をする非常に重要な立場を理解されているからだ。

 たとえば、国際取引を規制するワシントン条約においては、野生生物種の取引がどのように野生動植物に大きな脅威をあたえているかという評価を、IUCNとWWFが行ってその実績を示しており、同条約では、当初から会議における発言権を有している。

 生物多様性条約会議でも、各議論の最後に議長裁量でNGOが発言を行ってきた。

 IWCにおいても当初は発言権があったと聞いてるが、(聞いた話では)モラトリアム前後の会議で、故ジョン・デンバーが歌を歌って、その後取り消されたということだ。
 その後、たびたびNGOが発言する機会を求めてきたが、チリの会議でやっと、別枠を設けて発言する時間を設けられることになった。
 しかし、会議の議論とは無関係にいわばガス抜きのような参加の仕方への疑問もあり、今回のイギリス提案の中では当初もっと積極的な議事への参加が書かれた。最終案からは削除されてしまったが、今後、もっと活発な参加を要望してしかるべきだと思っている。

 今回は、報告にあるように、議事進行がかなり遅滞し、多くの議事が議論なしに終わったこともあって、当初予定されていたサンクチュアリ、環境と健康、ホェールウォッチングの3つの議題に関してそれぞれはつげを予定されていたが、実際に行われたのはサンクチュアリのみであったのは、報告のとおりである。

 今回、その意訳(仮訳)をお伝えすることにする(原文はスペイン語)。間違いがあればそれはIKANの責任である。
発言者は、アルゼンチンのクジラ保全研究所(Instituto de Conservacion de Ballenas)のロクサーナ・シュタインバーグ(Roxana Aida Schteinbarg)さんである。

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Declaración sobre Santuarios
「サンクチュアリの宣言」

私どもは、ラテンアメリカにおける市民社会組織を代表し、南大西洋サンクチュアリの提案に関し、この議題項目の意思決定に積極的に貢献することを望んで、意見を述べさせていただきます。

南大西洋海域におけるクジラの種や個体群は、20世紀初頭の"捕鯨オリンピック"はもとより、18,19世紀においても、大規模で最も組織的な商業捕鯨の圧力により乱獲されてきました。


80年代以降は、商業捕鯨モラトリアムの採択により、もっとも大きな捕鯨圧の影響を受けたクジラの回復プロセスを開始することができました。現在の捕獲圧および他の脅威を考慮すると、捕鯨対象となったクジラが捕鯨以前のおおよその初期個体群レベルまで回復するためには数十年の年月を要すると思われます。

サンクチュアリとして提案された海域に生息するクジラ類は、少なくとも54種で、世界に分布するクジラ種の60%以上であり、また高度回遊性のクジラ7種が南極および亜南極で索餌し、熱帯、亜熱帯および温帯地域に再現しています。これらクジラ種の保全のためには、南極海のサンクチュアリを北に延長し、繁殖海域としての南大西洋海域につなげていくことが重要です。

 南大西洋サンクチュアリは、国際協力の枠組みのもとに、非致死的な科学研究やホエールウォッチングによる観光産業の責任ある発展を提供することで、捕鯨よりも多大な利益を地域にもたらすでしょう。

 いくつかの種が回復していくことは、南大西洋の周辺国の沿岸地域の経済と社会発展のための重要なツールにもなりうるのです。

 ラテンアメリカと南西アフリカは、非致死的クジラ調査を非常に活発に行っている地域であることをご存知と思います。しかし、まだクジラの移動ルートや生息密度など、重要な情報の欠落があります。

 今回提案のサンクチュアリにより、地域の協力を通じてこれらの問題についての進展を促がし、統合的な計画のもと、沿岸国の自主的な行動を強化して、国際社会全体に資することになるでしょう。

 さらに注目していただきたいことは、サンクチュアリ設立によってホエールウォッチング産業の秩序ある発展が実現する重要性です。


 クジラ類資源の回復は、これまでの詳細かつ信頼できる報告によると、持続的な観光開発を活発にし、沿岸地域社会を成長させ、利益を生み出し、その継続により、国家経済に貢献するだけでなく、沿岸地域住民の収入増加につながります。

 沿岸だけでなく、公海を含むクジラ保護区の設定は、脆弱な生態系と固有種の保護の予防的な措置という点から、国連海洋法条約の第194条と完全に合致し、生息地における脅威や数の減少をおさえ、海洋生物の構成に貢献します。

 生命が地球に依存していることから、海洋生態系の機能に必要不可欠な健全なクジラの個体数の維持は、社会性、経済性のうえでも、すべてにおいて重要です。

 サンクチュアリにより、クジラが存在することによって生み出される利益は、特に地域と人々の権利を尊重することにつながります。

南大西洋サンクチュアリともう一つのサンクチュアリをつなげることは重要です。そのことにより海域全体として注意が払われ、サンクチュアリなしで捕鯨を続けることより保護と管理の機能が従前に果たせます。

 最後に、今回私たち市民社会の参加の機会を拡大を実現で実現できなかったのは残念です。他の国際条約でも認められている参加のメカニズムをぜひとも取り入れることを願います。

 

2011年7月22日 (金)

おまけ(ジェラルド・ダレルのことなど)

 木曜日、会議の後でベストウェスタンホテルでNGOのレセプションが開催された。
冒頭に司会進行をしていたWDCSのマーク・シモンズ氏がジェラルド・ダレルの話をし、文章を引用したのは少しうれしかった。

「まず最初に、保全というのは何を意味しているだろう?これら希少な生き物を絶滅から防ぐことだけではない(中略)あなたはいかなる動物も、その生活する生息域を保存しなくては守ることはできない。生息域を脅かしたり破壊すればそれを射殺したことと同じことになるのだ。だから、保全するというのは、森を守り、草地を守り川や湖、海でさえも守らなくてはいけないということなのだ。これは動物の命を守るということに必須なだけでなく、人々の将来の生存のためなのだ。みんなが避けて通りがちなところだが」そして、「私たちは言葉にできないほど美しく、複雑な庭園を授かっている。しかし、
(中略)問題は、我々が実にひどい庭師だということだ・・・私たちは自分は神だと考え、自然から遥か遠く離れてしまっている。これはいつだって危険な思い上がりではある」( Two in the Bush  IKAN仮訳: 国内では「ダレルの動物散歩」1966年月刊ペン社として発刊のはず)

 マークは、この会議がダレルの自然動物園のあるジャージー島で開催されたこと、翌日に予定されている南大西洋サンクチュアリの提案の重要性について触れている。

 ダレルはイギリスのナチュラリストであり、冒険家、動物の捕獲人として、50年代前後に活躍した人だ。まあ、彼のような人が存在したのは、まだ植民地主義の名残があったことも関係するだろうが、とにかく生き物好きな彼は、何冊もの自然と動物に関連した非常によい本を書いている。
 そして、希少な動物の絶滅を防ぐため、1958年に動物の絶滅を回避するため、ジャージー島に私設の動物園を作るのだ。動物園は、今でもこうした動物の保護を目的に、運営されている。

http://www.durrell.org/


 今回、IWCがジャージー島で開催されたことは私にとっても感慨深いことではあったが、残念ながら、時間がなくて動物園を訪問できなかった。

 私がジャージー島の名前をはじめて目にしたのは彼の著作による。今から40年も前のことで、(当時、まだ勢いのあった暮しの手帖社がいくつか本を出版していて、そのうちの1冊がダレルの「積みすぎた箱舟:The Overloaded Ark 1953 」という本だったのを覚えておいでも方がいるかもしれない)独特のウィットに満ちた語り口に引かれ、ずいぶんたくさん読んだ(そのあと、少し批判的な気分になり、IWCが開催されるということでジャージー島の名前が出るまで忘れていた)。

 批判することは簡単だが、考えてみれば生息域の破壊は個人で食い止められるものではなく、当時の彼にとって、それが最上の手段だったことだろう。今のように、保護区の議論やサンクチュアリが国際環境関連法で議題に上るような時代とは異なり、彼がそうした手段しかとれなかったことは容易に想像がつくことだ。
(環境省が「生息域外保全」などとダレルがすでに50年以上前にやむなくとった手法を、種の保存の切り札として今更言い出していることを考えれば、日本がどれほど生息域の保全に無理解かということは明らかかもしれない)

 サンクチュアリの設定について「科学的ではない」という文言をよく捕鯨したい人たちは使う。その中心になっているのは、私の知っている限り、クジラの推定個体数で、多いか少ないかという話だ。でも、最近の保護区の話はそうではないし、生物多様性条約ではかなり積極的に公海のネットワークの保全を奨励しているし、GEFを通じて資金提供を行ったり、地域住民の貢献を応援している。
クジラのような高度回遊種を指標とした広域の海域保護のネットワークは、地域の漁業活動にも貢献しうるものだし、沿岸国がどのような選択を行って自国沿岸を管理し、また広域のネットワークを成功させていくかは、試行錯誤によって実るものと思われる。

 捕鯨の否定だとばかりにいきり立たずに、もっと地域への貢献も含めてたような充実した内容での議論が行われることを望んでいる。

 

会議4日目 会議の強制終了

 宿泊しているホテルから会場のオテル・ド・フランスまでは歩いて10分くらい。最初にも書いたように、イギリス風の煙突のついた建物が並ぶくねくねと細い道をたどって歩いていくと、少し小高い丘に建っているオテル・ド・フランスが(どこからでも)見えてくる。

 BBCのブラック氏が言ったことを思い出す。自分はイギリスで暮らしているのでこうした建物は日頃からおなじみのはずなのだが、このジャージー島の町並みをみていると、なんだか不思議な気になってしまう。とても非現実的なような気がする、と。
 私は2001年のIWC会議でしかイギリスを知らないのだが、それでも彼のいうことが少しわかる気がする。確かに町並みはイギリスのようだ。だけど、光が違う。空の青さが、そして特に影の濃さが違うからだと気がつく。
 リゾート地というのは、どこも少し書き割りのような感じがするものだけど、それとも違う存在感の希薄さがこの島にはある。

 ところでとうとう帰国してから1週間経ってしまったのだが、この最終日の議論についてはなんとも書き進む気が起きない。
 ほとんどが「待ち」の時間であり、そして途中退席したということもあるが、その結果というのがどうにも納得できない。

 最初に、議題が終了していなかった海上の安全について、日本の決議案がコンセンサスで採択される。
http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC63docs/63-17.pdf

 次の南大西洋サンクチュアリ提案は、ブラジルとアルゼンチンが過去10年以上の悲願としてきたもので、10年前に比べ、国連での海洋保護区設置促進の奨励といった状況の変化があること、また、社会、経済的にも周辺沿岸国の貧困層にウォッチング活動などによる利益があること、さらには以前と比べ、沿岸関係国が2007年アルゼンチンで開催されたラテン諸国によるクジラの非致死的利用という方針による結束と条件は整っており、今回こそは通したいという強い意志が感じられる。

 この提案に関して、今回はじめてのNGOの意見発表が認められる。
サンクチュアリの支持発言として、アルゼンチンのNGO ICBのロクサーナが自分たちの住む南大西洋海域での設定について、クジラのうち54種が生息していること、広域移動種も7種類おり、未だ未解明の生態解明につながること、種の保全、観光による地域文化と貧困層への経済的な貢献など、当該地域におけるサンクチュアリ設定の必要性を訴えた(概要は別に掲載予定)。
 反対するNGOとしてIMWCのラポアント氏(かつてワシントン条約事務局長のときに、没収した象牙の違法販売疑惑で事務局を去り、そのあとで野生生物資源の利用を訴えている)がサンクチュアリは、絶滅に瀕していないクジラまで捕獲できなくなる。貧しい人たちへの蛋白の供給源でもあるクジラを保護することは問題である。また、クジラの保護によりあらゆる環境問題が解決したと勘違いされることもあるし、科学的な根拠もない、と発言した。

 昨日の英国提案がコンセンサスで受け入れられたのに続き、ブラジル、アルゼンチンはコンセンサスを求めたが、該当する沿岸国ではない捕鯨賛成派が、せっかくの正常化プロセスを破壊するとコンセンサスを拒否。それに対し、提案国であるブラジルとアルゼンチンが投票を選んだ。議長は、反対意見が5カ国から出ていること、そして、コンセンサスが無理で、提案国が投票を望んでいるので投票を行うので用意できるまで待ってほしいといった。

 ここで、少し予想外のことが起きた(捕鯨国はコーヒーブレークの間何やら相談していたので予想外ではない人たちがいた訳だが)。
 「われらが」森下氏が、捕鯨国(63回参加の21カ国らしい)の代弁だと断って、自分たちは自分たちにとって重要な小型沿岸捕鯨提案を今回あきらめたのに、提案国があくまで投票に固執することでこれまで醸成されてきた合意形成プロセスを壊すなら、捕鯨推進国は会議場の外に退出してすると言い出したのだ。そうすれば、会議成立のため必要な締約国の半数を割ることになり、会議が不成立になる、結果として投票を阻止するというのだ。森下さんは2度もこれは敵対的な行動ではないと言い訳をしたが、実際に退場し、投票は実施されなかった。
 
 そして、議長は非公開コミッショナー会議を宣言して会議は休会となった。その後、2度ほど、定足数について、あるいは会期中の中途不成立について法的な検討をしているなど、説明があったものの、会議そのものはいつもなっても始まらない。
 とうとう、私が会場を離れなければならない5時過ぎまで再会されず、IWCに参加して以来始めて、途中で退出することになった。

 その後の話を聞いてみると、結局会議が再開されたのは20時過ぎ。その前に議長レポートが配られたようだ。
http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC63docs/63-20.pdf

 そこには会議が休会に至る経緯と、退場した国、そして議長の解決案について書かれているので読んでください。
 一応、多くの国がサンクチュアリ提案を支持しているものの、多様な意見があるので来年の会議で最初に議論を行う、コンセンサスに至らなかったら、委員会の規則に則って処理するという曖昧なものだ。聞くところによるとその報告の書かれた紙で飛行機を折って飛ばした代表団もあるらしい。
 
 そのあとは、残された多くの議題を議論なして採択できないものか?という議長発言に対し、保護委員会は、たくさん議論したいことがあったのに残念だというコメント。
 また、小型鯨類調査について、ボランタリーにいくつかの国が資金提供を行ったので、今後小型鯨類についても調査が進むことは少しだけ明るい話題だ。

 NGO発言の予定されていた、環境と健康、ホェールウォッチングについては、議論もないため見送られることになってしまった。来年の会議がパナマで開催されることが決まったが、このことも重要な議題となって戻ってきてほしいものだ。

 会議の残念な成り行きに呆然として入るものの、現実をみれば海洋保護区や海洋資源の国際的な管理の進行など、世界規模での合意形成と予防原則のもとでの生物多様性の保全に向けた動きが活発化していることは否めないし、また、捕鯨が経済的にも引き合わないことは議論を待たなくても余剰鯨肉、そして、輸出をもくろんだアイスランドやノルウェーの思惑はずれにも明らかだ。

 角突き合わせるのではなく、もう少しゆとりを持って解決できないものだろうかと考えている。

<光と陰が違う>
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2011年7月21日 (木)

3日目 NGOの参加拡大は合意形成の踏み台に

 3日目も財運の議論が長々と続く。

 「近代化」でも「正常化」でもいいが、対話の継続という建前は対立の解消につながるわけはなく、一つ一つの議論が捕鯨推進と反捕鯨のバトルを内側に隠しながら行われている。
 当然のことながら、透明性とか公平性とかをより多く求めるのは反捕鯨陣営だ。
 
 イギリスから、EUの提案国の列記された修正案の説明がある。IWCの効率化を目指し、最小限の内容で、提案の骨組みを残したものということである。

 前日に意見が割れたNGOの参加拡大については、今後作業委員会で検討するという前提で、現状通りとなり、変更項目が削除されてしまった。今回提案では、分担金支払い方法の改正によるわいろ疑惑の払拭とともにNGOの発言権を確保することは重要なポイントであったはずなので、これは残念なことではある。

 事務局ー締約国間の意思疎通の確実化をめざす代理コミッショナーの選任については、コンタクトポイントの提示でもよいということで合意された。

 議事採択については、スクリーンで提案内容が投影され(オブザーバーも共有するのはいかがなものか、という意見もあったものの)、選択内容が確認できるということに決まった。

 科学的なアドバイスについては科学委員会に提出されたすべてに対応することとし、また、科学委員会報告は、各締約国が検討する時間をえるために、100日以上前にウェブに掲載され、新しい知見が出された場合もその都度それに対応することとなった。

 会議における採択された事項は、早期にウェブに掲載され、透明性を確保することが保証された。
 日本政府が主張していた、各国政府によって機密が要求された場合の対応についても書き加えられた。これまでの資料に関してはできるだけウェブ掲載を心がけ、過去の資料についてもアーカイブという形で閲覧が可能になる。これまで非公開であった、監査報告書もウェブで公開され、誰でも閲覧できるようになる。

 一方、前の日にも議論が集中した分担金支払い方法については、イギリスが提案内容を譲らず、締約国か政府機関による銀行振込が支払いの方法とされ、現金、小切手、クレジットカードなどの支払いは不可という文言は削除してもかまわないという説明(最初から妥協用に加えられていたみたいだが)。
 他の国際条約では、特にこうした指定はないが、銀行振込が暗黙の了解に当然と考えられており、国連のように、チェースマンハッタン銀行のニューヨーク支店に指定しているところさえあるということだ。何十万円〜何百万円以上という現金が会期中に事務局に持ち込まれていたとは、そのこと自体が驚きだ。
 
 フロアに議論が移る。コスタリカを皮切りに、EUやラテンなど反捕鯨の国々からの提案を支持するが、NGOの参加拡大が削除されてしまったことを残念だというコメントが続く。

 セントキッツは、支払いの確認時点について質問し、各締約国によって振込まれた分担金の支払いが委員会の口座に振り込まれて確認されたときと明確化される。

 日本は提案者が柔軟性を示したことに感謝しつつも、途上国支援のため、次回会議の60日前までに手続き規則の変更を提出して、2年先の本会議まで待たなくても、そのときの会議で採択されるよう手続きについて考慮するよう提案。

 アンティグアが前文の修正を要求。環境条約を海洋資源管理と変更してほしいと要求し、単に国際条約に修正することで合意される。

http://iwcoffice.org/_documents/commission/IWC63docs/63-8rev%202-Final.pdf

 ICRWの3条5項の分担金支払いは締約国が各自支払うというところが途上国への差別だとセントキッツが意見。アイスランドは、条約の条項を手続き規則で変更はできないのになぜ書いてあるのかと疑問を呈し、3条5項に関してコーヒーブレークの間に相談することになった。

 コーヒーブレークの後には、日本がコンタクトを複数にしてもいいのではないか、またメールアドレスのウェブ掲載によりサイバーアタックの可能性に言及。

 セント・キッツが分担金支払いと投票権に依然としてこだわっており、柔軟性があってもいいのではないか、という。彼は、元アンティグアの代表をしていた時代から日本政府と昵懇で、捕鯨推進の人たちからは「DJ」という愛称で呼ばれている人物だ。投票権へのこだわりは、支払いが滞っている国の多くが日本支援の途上国であることと関係しているかもしれない。また、これから実施されるかもしれない投票への牽制の意味もあるかもしれない。

 また、セントキッツとアンティグアは、再び銀行振込に抵抗し、手形でも同じ効果があるのでいいのではないか、と主張する。アイスランドやパラオなども同調する。
 銀行振込に変わったらわいろ防止になるの?という疑問もあったが、これほど激しい抵抗がある以上、もしかしたら効果があるかも、と皮肉にも思ったりする。
 銀行振込に関してはイギリスも譲らず、ランチタイムの間修正案を作るグループを形成して議論することとなった。セントキッツは、イギリスが妥協の余地なしとしたことに対して、それでは話し合う必要がないと抵抗。
 日本は、合意形成が難しいポイントと、容易いものとで二つの作業グループに分けて討論しようと提案し、合意される。

 ランチタイムのセッションは結局3時間以上かかり、5時過ぎにやっとみんなが会場に戻る。
合意形成に至り、お互い柔軟性を示すことができてよかった、よかったと自画自賛。
 日本政府は、これはどちらが勝ったとか負けたとかいうのではなく・・・といい始める。おや?どうしてそんなことにいちいちこだわるのか?

 そのあと、コミッショナーのあつまりで、積み残し議題がいっぱい残っているので、発言は一人2分とし、自動的にマイクが切られることに。
 財運委員会議長から残りの報告の後、報告書は採択された。

 そのあとは、先住民生存捕鯨(ASW)で、この委員会の議長は日本。森下代表代理から、管理方法や捕獲限界など議事の内容が紹介される。
 ASWに関しては、伝統的な手法により捕獲し、文化的・伝統的に重要であること、当該地域にとって必須の栄養源であること、地域消費のみ認める、また対象種が絶滅に瀕した場合は即時停止することなどが決められ、商業捕鯨とは異なる管理方式がとられて、5年ごとに科学委員会が捕獲枠を示している。国際的に認められている先住民の権利を前提としているので、なかなか深く踏み込んだ議論は難しいが、時たま地元消費のはずがスーパーで流通していたなど灰色の話が出てくる。昨年は、人口増加を理由に、鯨肉のニーズが増しているため、ザトウクジラについての新たな枠の設定を求めるグリーンランド提案について、かなり意見が割れた。
 今回も消費量と頭数の変換方法などいくつか質問が出され、積み残し課題に関して小グループによる会議間の議論が行われる模様だ。ASWの基本点の見直しも行われることが望まれる。

 インドが、将来的には捕鯨への依存度を減らして、地域でのウォッチング事業などに転換してほしいという意見を述べたが、これに対してロシアが噛み付いた。ロシアはインドは科学委員会よりも、先住民捕鯨について詳しいらしい。それほど科学知識を披露したことに驚愕した、これがインド政府公式見解かどうか知りたいものだと発言。デンマークがびっくりしたことにロシアに同調。インドが当惑すると、枠を下げる必要があるといったが、ロシアは帰国したらモスクワからインド政府にこのことを確認する。これがインド政府の立場でないことを望む、と再度いった。インドは、枠を下げろといったのではなく依存度を減らすべきといったのでこれはインドの立場だと切り返した。

 こうした小競り合いに、不自然な対話協調路線のほころびが見え隠れする。

 この後は、日本の小型沿岸捕鯨問題で、日本は、せっかくできた協調の雰囲気を壊したくないからと将来に検討の必要性を残して提案を撤回。
 次のアメリカとニュージーランドの提案したIWCの将来についての決議案も、合意形成の重要さを指摘し、決議採択ではなく議長の報告書に入れるということで決着。

 最後は、問題のビザについて、事務局長が報告書をもとに説明し(いくつかの国が既に参加)、長かった一日の会議が終了した。
 
 NGOのレセプションが近くのベストウェスタンホテルで開催された。


 


 


 

 

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2011年7月20日 (水)

2日目 EUは国際ボクシング連盟と重さは同じ?

 初日に日本政府が議題変更を申し出た通り、最初の議題は海上の安全な航行について。
 日本政府は香川代表の日本語の演説の後(冒頭挨拶は、機械不具合で翻訳されなかったようだが、今回は無事に伝わった模様)、森下代表代理がいつもの流暢な英語で、シーシェパードの妨害行為について映像を使って詳しく説明した。

 各国の政府はこぞって、こうした暴力は許されないと日本政府に同調。一方、いくつかの国は、こうした行為規制をIWCが行える権限は有していないので、実行できるIMO(国際海事機構)に託すべきと発言した。オーストラリア政府(今回も環境大臣が参加)は、日本政府が自国水域で調査捕鯨を行っていることに言及。日本政府は、IMOにも適切な措置を要求してきたが、妨害が継続しており、打開するためにIWCでも協力が必要なので、関係国とともにメッセージを作成中で、最終日にはこの決議をコンセンサスで採択してほしいと要望。議題は、このまま閉じないでおくことになった(最終日の始めに日本からの決議案が出て、採択された)。

 コーヒーブレークの後は、ふつう最終日にさっさと済ます財運(Finance & Administration)が議題にかかった。NGO参加についての説明中に今度はモロッコ代表が、再びビザ問題について事務局はすべての締約国の参加を促進すべきと発言。イギリス政府は、現在調整中で、既にコートジボワールはパリで入国、ギニアビサウはセネガル経由で発給してほしいと指示するなど対策をとっていると説明。しかし、セントキッツ、アンティグアがモロッコに同調し、事務局は緊急性を理解していないと批判。事務局は早急に調査を行い、午後にレポートを出すことになった。

 財運委員会の委員長ドナ・ペトラチェンコ氏(オーストラリア)が報告を開始。

 1999年から開催されていない技術委員会について検討、将来に果たす役割を考えて議題を残すことを勧告した。

 科学委員会に関しては、会議と会議の間に行われる文書による検討グループが行われ、本会議と間隔を空けて開催する件に関する報告があり、63回本会議で検討するという報告。今回のノルウェーでの科学委員会開催は試験的なものであったが、数週間の隔離では時間が不十分で、少なくとも100日間程度の間隔が必要と報告された。しかし、科学委員会報告の公開日が本会議の初日となっているので、その規定や会計年度など若干の修正が必要とされる。

 本会議の開催頻度は2年に一度という提案がなされ、これに対しての反対意見はなかったものの、2年ごとの開催に変更することによる財政面他の手続きについての詳細検討のため、専門家による小委員会が作られることになった。隔年開催により、先住民の捕鯨枠の5年ごとの見直しに関しても、偶数年による変更の可能性など方法の検討が必要となる。

 来年の開催国はパナマ(パナマシティ)とおおむね決まっているため、来年開催後に2年おきという形になる模様である。
 一方で科学委員会、保護委員会、先住民捕鯨、捕殺法や財運、違反委員会などは毎年開催されるもよう。

 フロアでの議論では、期間変更に伴ういくつかの検討事項が列挙され、ホームページ上の情報とフランス語、スペイン語への翻訳などとそれにかかる経費、時間等が話された。

 委員会議長報告の次は進行ルールで、これに関してはイギリスがNGO参加、途上国支援、意思決定のルール、分担金の支払い方法を作業の効率化のためにパッケージで提案した。

 NGOの参加に関して、国際会議では例えばワシントン条約のように、締約国と同レベルで会場発言ができるものや生物多様性条約のように議長裁量で議題の最後に時間があれば発言を許可されるものなど、強弱はあるが議論に参加できる形になっている。それに対して、IWCではモラトリアム以前にあった発言権が取り消されて復活したのは第60回のチリ会議で、それも本会議と切り離した昼時間などに反捕鯨市民団体と捕鯨推進団体とがそれぞれ3団体5分くらいずつ合計30分の時間を得るというもの。

 それに対してイギリス案では議題ごとの発言を検討するなど、より積極的参加を促している。それについての議論では、反捕鯨国を中心に、透明性の確保や市民団体の持っている多様な情報の共有などを理由としてNGOの参加の支持表明が行われた。
 一方、捕鯨推進国はいずれもNGOの参加に対して否定的なところが面白い。アイスランドなどは、自分たち代表団は国民から選ばれた市民の代表と言い切っており、北欧のイメージとしてとかく信じがちな透明性や公正性に関して必ずしもそうでもないところが興味深かった。両論が出たところで、NGOの参加ルールに関しては、今後の検討にまわされることになった。

 途上国支援については、すでにICRW3条によって規定されているがこれに抵触しない形で検討が必要。作業部会を作り、次回に報告を出す。

 ロシアが途上国だけでなく、移行国支援も議長案に入れてほしいと発言。日本は中間的に途上国支援をIWC基金で行っていくことを提案。また作業部会の報告を次回会合で行うのでは遅すぎるので、会議60日前までに提案を提出して、次回会議で決定したいと発言。

 昼休みをはさみ、午後も財運の続き。

 意思決定については、文章をスクリーン上に投影して修正を行い、意思決定の一日前には課題の解決に向かうようにするという委員会の報告(昨年のCOP10でこの方法はおなじみになった)。
 モナコが、報告を支持するが一方で投票をできるだけ避ける悪い面として、投票権の必要性が減って分担金未払いの国が増えている可能性を指摘。

 分担金の支払い方法について。これまでのような現金や小切手ではなく、銀行振込による支払いを求め、現金小切手などその他の方法を認めないイギリス提案がだされる。
 事務局が会期中に大金を預かる危険性も指摘され、また、支払いの出所の透明性を確保するためには政府機関が会議の1日前までに振り込むことと提案。要するに、これまで何度となく指摘されてきた票買い疑惑(主に日本対象)に対し、支払いの透明性を高めてIWCの名誉を回復するという提案。

 これに対し、銀行振込が難しいところがあると途上国のいくつかが反論し、韓国、アイスランドが事例によっては特例措置をとるよう提案した。

 財運委員長によるレポートの続き。締約国とIWCの連絡に関して、早急に連絡が必要な際に連絡を取るのが難しい場合があるので、コミッショナーの代理を指名し、そのメールアドレスも共有して不自由さを解消するという提案。コミッショナーには資料など情報の回覧を行う。

 日本は、どのような情報を回覧するのか明確化する必要があり、自国の裁量で回覧したくない情報については機密事項として指定できることが必要と指摘。

 委員会報告は、NGOの参加、支払い方法について再度合意をはかること以外は採択してほしいというポーランドによるEU提案に対して、セントキッツが突然ピジョンボックスに修正案が入っていた。いつからイギリス提案がEU提案に変わったのか?と動議をだす。

 EUとしては、結束して強固な立場を示すことが多いが、それに対する反発もある。EUは締約国ではない、という意見がいくつかの捕鯨国から出され、ロシアなど、EUなんか認めていない、仮にIBAが決議案を出すような場合を考えてみろ、という。後でみんながIBAが何たるか知らないだろうと、それは国際ボクシング連盟のことだ、と付け加える。ロシアのいびつなジョークに対して笑うものはいくらなんでもいない。

 結局、問題は共同提案者としてすべての国の名前を列記し、翌日に再度の修正案を出すことになった。

 この時点で2日目の議題のうち、先住民生存捕鯨、サンクチュアリ、小型沿岸捕鯨の社会経済的関わりについてが積み残された。明日も議題は満載だが、まだまだ財運が続きそうな様子で一体大丈夫なのか?と少々心配になる。今年は、格安便の都合上、最終日の夜にロンドンに向かうことになっている。

 
<写真は香川審議官のプレゼンテーション>
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IWC63会議報告(7月11日〜)

<1日目 ミンククジラは通勤族>

 少し旬をすぎてしまいましたが壊れたIWC報告です:

 搭乗予定のブリティッスエアウェイズが整備不良のため5時間遅れ。
代わりに予定の便は15時過ぎにならないと出発しないため、ヒースローーガトウィック間の乗り継ぎには間に合わない。もしかしたらロンドン泊か?と冷や汗ものだったけど、幸いなことに、全日空に乗り換えることができた。さらに心配したヒースローからのバスもスムーズに走ってくれたので、無事にジャージー行きの便に乗り継ぐことができた。8時過ぎにジャージー空港着。まわりは避暑客。タクシーでホテルに移動の途中、イギリススタイルの建物がぎっちり建っていて、1車線の道がくねくねと続くことにびっくり。

 猛暑の最中にでてきたので、肌寒いくらいの気温と湿度の低さがありがたい。ただ、時差にはなれず、なかなか寝付けないまま、朝3時ごろから騒がしく鳴き始めるカモメの声やら、イソヒヨドリの声を聞きながら、ああ、ちゃんと着いたんだなと実感。

 11日、朝一番で登録をすませ、1年ぶりの顔見知りと挨拶をして会場に入る。のっけから議長代理が南アのHerman Oosthuizen(ハーマン・ウェストヘーゼン氏)に変更されているのを知る(前の議長のマキエラ氏は、昨年会議を病欠した後チリの代表を辞任し、昨年から議長代理は副議長のリバプール氏が務めていた。そのリバプール氏がなぜか参加していないようだ)。どのみち、今年で任期が切れ、次期議長、副議長選出が行われる予定ではあったが、とりあえず今回の代理が新議長に選ばれる可能性が高いような雰囲気で、実質的に早々の交代となったみたいだ。

 今回の参加国は現時点で61カ国(最終日に62カ国)、人数も少なめ。日本代表団が一番多くて26人(これまでと比べると半分以下か?そのうち議員は3人)、次がアメリカで24人。

 日本は今回、香川謙二審議官がコミッショナーに就任し、久々の行政担当者の起用となっている(経費削減という噂がある)。

 今回はどこも会議主催国に名乗りを上げなかったため、事務局のあるケンブリッジで開催予定だったが、それでは面白みがなかろうというイギリス政府の配慮で(多分)、チャネル諸島のジャージー島での開催となった。恒例の主催国の挨拶とパフォーマンスの代わりに、ジャージー州を代表してアラン・マクリーンジャージー州経済開発相が短く挨拶、そのままコーヒーブレークとなった。飲み物のみでコーヒーはまずい。

 IWCの将来が議題となってから、会議そのものも精彩を欠いているが、事務局が配布してくれる資料の入れられるピジョンボックスの中身も極端に少ない。
 今回、少し驚いたのは、いろいろな団体が配布している資料もなんだかぱらぱらの感じだったこと。少ない原因のひとつは、いつもどっさり資料を並べていた鯨研が今回何も配布資料をだしていないこと。
 そういえば、いつものライブ中継が今年はないらしい。記者の数も少なく、カメラ用のお立ち台に人がいない。日本からは共同通信と時事通信のみ。

 コーヒーブレークの後は、89番目の参加国コロンビアがブエノスアイレスグループの一員として非致死的なクジラの利用を支持するとプレゼンテーション。

 新事務局長のサイモン・ブロッキントン氏の会議の運営について説明ののち(参加のあり方と分担金未払いの国について-ほぼ20に達する国が未払い状態)、議題の採択に入ったが、ここでセント・キッツ&ネビスがビザがとれないため参加できない国があり、議事に参加ができないのは不公平なので、先に問題を解決せよと発言。イギリスが適切に対応していると防衛。実際に何が起きているか事務局が調査し、報告することに。当初事務局が提案した木曜日では会議が終了してしまうので、早急に解決してほしいとセント・キッツは再度要求。

 日本としては、特に問題性の高い海上の安全を優先的に議論してほしいので、3日目に予定されていたこの議題を前倒ししてほしいという発言をして了承された。

 63回本会議の議題は採択され、早速、科学委員会議長によるクジラ資源についての説明に入る。

 肝心の南極ミンクは、またしても2つの推定個体数の出し方の差がありすぎるため、来年に持ち越し。
 ミンククジラの個体数が少ないことについて、森下さんが’うがった’解釈。東京の人口は、夜になれば少なくなるが、だからといって、死体がゴロゴロしている訳ではない。減ったから殺されたとは誰も考えないでしょう。同じように、ミンククジラの数が減ったからといって、殺されたというわけではない・・・要するにミンククジラは’通勤族’だったというわけ?

 南極ザトウクジラについては、7つの繁殖個体群を識別し、その生態の解析を順次行っており、今回はB個体群の検討が行われている。この個体群は2つの亜個体群があると思われるが、その境界は必ずしもはっきりしてはいない。そのうちのB2はまだ回復が遅いものの、全体としては初期資源の半分まで回復したということだ。
 順番に、シロナガス、コククジラと説明が続く。
 
 コククジラの西の個体群は、最も絶滅が危惧される大型鯨類の一つだが、今回はテレメトリー調査の報告があった。メスや子供では負担があるのでフレックスと名付けられたオスにタグがつけられたが、サハリンから南に下るという予想を裏切り、彼はなんとベーリング海を通過、アメリカ西海岸に現れたのだ。今後も、タグをつけた調査は継続されるということなので、コククジラたちがどんな行動をとっているか、少しずつわかってくることだろう。殺していては、こうしたなどの行動の存在すらわからないだろう。
 ご存知のように、ニシコククジラの索餌海域では、石油ガス開発が盛んで、企業は緩和措置をとるといいながら、かなり問題な開発を進めている。周辺諸国が連携して保護策を講じることが奨励されている。日本政府も国内法による保護や漁業者に対しての注意、監視を強化しているというコメント。以前のようなつれない言い方ではなく、一応は積極的な保護をいっているので、それを国内でも反映してくれないものか。

 次の北太平洋調査クルーズでは、SOWER(南極海目視調査)にちなみ、 POWERと名付けられた共同調査では、日本が船を提供し、中長期的な目視調査の計画への貢献を感謝され、また日本政府もその積極的な協力を約束しているという(船だけではなく、乗組員も貸しているよ〜と日本政府)。これまで長い間きちんとした評価ができていなかった、イワシクジラやニタリクジラに関するデータを集める。こうした調査に関しては日本政府も存在感を増して気分がいいのだろう。

 その次のクジラの捕殺問題に関してはなかなか議論がうまく進まない。特にイギリス政府がかなり根源的なクジラ捕殺法の改善提案を出してきており、捕鯨派の国々はそれに反発。データを出してきたノルウェーが、捕鯨国の努力を評価しないことをこぼし、陸上の大型哺乳類については厳格なルールを求める訳ではないのに、なんでクジラばかり・・・(確かに大型哺乳類の捕殺方法すべてに改善があればいいに違いないが、少なくともIWCはクジラの管理のための委員会だから、他の動物の捕殺法まで検討できるのか、と思わないでもない)
 一方で、先住民の捕鯨に関しては、元々が伝統的な捕鯨の方法で行うことになっており、その方法が致死時間短縮などには貢献しないのではという矛盾がある。アメリカがアラスカ先住民の捕鯨についてパワーポイントプレセンテーション。厳しい自然の中でのクジラ捕獲について説明。

 日本政府は、捕殺に関するデータを出し渋っている。一つには、考え方がかけ離れていることもあるだろう。日本で動物の福祉というと、ペットをかわいがると同じような感覚の解釈で、科学的な福祉(それぞれの生態に応じた最善の扱い方を考える)という方向にはなかなか行かない。国によってそれぞれのあり方も異なる問題では、合意形成も一段と難しいものになってしまう。

 その後は科学委員会からのあまり変化のない改訂管理制度(RMS)の進展のなさ
ついて、ノルウェーが文句。そのあとの改訂管理方式(RMP)については、モナコがアイスランドのナガスクジラ捕鯨の枠の設定がIWCの科学委員会ではなく、NAMMCOによるもので、不適切ではないか、と発言し、アイスランドがナガスクジラにはいくつもの個体群があり、アイスランド海域のナガスクジラは絶滅に瀕していないと反論。科学委員会から、今後の評価を必要とする捕獲限界が60%で、46頭の枠というのは今後の評価を必要としない安全な数という説明があった。
 周知のごとく、アイスランドはナガスクジラをもっぱら輸出用と考えている。業者(ロフトソン)は、日本が地震と津波で貧乏になり、人々がレストランに行くことができなくなったという理由で(あるいは言い訳かもしれないが)、当分肉を販売できないと夏まで捕獲はしない模様ではある。

 会議はほぼ予定通りに終わり、ジャージー州経済開発層と会場のオテル・ド・フランスの共催のレセプションになった。これもまた、飲み物のみ。

 ホテルに戻って夕食。なんかベジものを、というと、ウェリントンパイね、というウエイターの返事。何が出てくるかとドキドキしていたら、四角い1センチ角のパイ包みの中に、ラタトゥイユ様のものが入っていて、さくさくしたパイ皮がことのほかおいしかった。
 

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2011年7月 1日 (金)

イルカ捕獲枠変更

 イルカ捕獲枠5年間の見直し最後の枠が出た。捕獲頭数は昨年度比723頭という小幅減少.しかし、そのほとんどは、捕獲実績のない千葉のスジイルカとか、富戸のイルカで、太地町はほとんど変化なしである。
 その中で、突出しているのが宮城県のリクゼンイルカで、昨年度15頭が214頭になっている。
枠総体では240頭ほど減少しているが、この捕獲増は岩手県との調整(わけてもらった)結果だということだ。

 水産庁の担当者によると、これまでずっと、宮城県の漁業者は、イシイルカと間違えて、リクゼンイルカを捕獲してきたそうだ.それが、岩手県の漁業者の指摘でわかったそうなのである。
(注:後で聞いたところ、単に取り違えているというものではなく、区別なく捕獲していたらしいということがわかった)
 リクゼンイルカの分布状況を見ると、確かに三陸周辺に生息するのはリクゼンイルカなので、もしかしたら、ここにイシイルカの枠をつけること自体に無理があるかもしれない。

 ちなみに、イシイルカは北太平洋とその周辺のみに生息し、8つの異なる個体群があるが、そのうち7つはイシイルカ型で、リクゼンイルカは三陸沖からオホーツク中央部にのみ生息する個体群である。イシイルカ捕獲については、IWCでも何回も議論されてきており、きちんとした管理が求められる。

 1993年枠では、リクゼンイルカの捕獲枠は岩手県で、宮城県にはないので、これがいつ頃からなぜそうなったのかはわからないが、資源管理のやり方として見直しが必要かもしれない。

 もっとも、今回の不幸な大震災によって、沿岸漁業者はたいへん厳しい被害を受けており、実質この春の漁は難しかったようだ。漁業者の方たちの一日も早い回復を祈りながらも、今度はきちんとした管理が全うされることも願わざるを得ない。


 
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