2日目 EUは国際ボクシング連盟と重さは同じ?
初日に日本政府が議題変更を申し出た通り、最初の議題は海上の安全な航行について。
日本政府は香川代表の日本語の演説の後(冒頭挨拶は、機械不具合で翻訳されなかったようだが、今回は無事に伝わった模様)、森下代表代理がいつもの流暢な英語で、シーシェパードの妨害行為について映像を使って詳しく説明した。
各国の政府はこぞって、こうした暴力は許されないと日本政府に同調。一方、いくつかの国は、こうした行為規制をIWCが行える権限は有していないので、実行できるIMO(国際海事機構)に託すべきと発言した。オーストラリア政府(今回も環境大臣が参加)は、日本政府が自国水域で調査捕鯨を行っていることに言及。日本政府は、IMOにも適切な措置を要求してきたが、妨害が継続しており、打開するためにIWCでも協力が必要なので、関係国とともにメッセージを作成中で、最終日にはこの決議をコンセンサスで採択してほしいと要望。議題は、このまま閉じないでおくことになった(最終日の始めに日本からの決議案が出て、採択された)。
コーヒーブレークの後は、ふつう最終日にさっさと済ます財運(Finance & Administration)が議題にかかった。NGO参加についての説明中に今度はモロッコ代表が、再びビザ問題について事務局はすべての締約国の参加を促進すべきと発言。イギリス政府は、現在調整中で、既にコートジボワールはパリで入国、ギニアビサウはセネガル経由で発給してほしいと指示するなど対策をとっていると説明。しかし、セントキッツ、アンティグアがモロッコに同調し、事務局は緊急性を理解していないと批判。事務局は早急に調査を行い、午後にレポートを出すことになった。
財運委員会の委員長ドナ・ペトラチェンコ氏(オーストラリア)が報告を開始。
1999年から開催されていない技術委員会について検討、将来に果たす役割を考えて議題を残すことを勧告した。
科学委員会に関しては、会議と会議の間に行われる文書による検討グループが行われ、本会議と間隔を空けて開催する件に関する報告があり、63回本会議で検討するという報告。今回のノルウェーでの科学委員会開催は試験的なものであったが、数週間の隔離では時間が不十分で、少なくとも100日間程度の間隔が必要と報告された。しかし、科学委員会報告の公開日が本会議の初日となっているので、その規定や会計年度など若干の修正が必要とされる。
本会議の開催頻度は2年に一度という提案がなされ、これに対しての反対意見はなかったものの、2年ごとの開催に変更することによる財政面他の手続きについての詳細検討のため、専門家による小委員会が作られることになった。隔年開催により、先住民の捕鯨枠の5年ごとの見直しに関しても、偶数年による変更の可能性など方法の検討が必要となる。
来年の開催国はパナマ(パナマシティ)とおおむね決まっているため、来年開催後に2年おきという形になる模様である。
一方で科学委員会、保護委員会、先住民捕鯨、捕殺法や財運、違反委員会などは毎年開催されるもよう。
フロアでの議論では、期間変更に伴ういくつかの検討事項が列挙され、ホームページ上の情報とフランス語、スペイン語への翻訳などとそれにかかる経費、時間等が話された。
委員会議長報告の次は進行ルールで、これに関してはイギリスがNGO参加、途上国支援、意思決定のルール、分担金の支払い方法を作業の効率化のためにパッケージで提案した。
NGOの参加に関して、国際会議では例えばワシントン条約のように、締約国と同レベルで会場発言ができるものや生物多様性条約のように議長裁量で議題の最後に時間があれば発言を許可されるものなど、強弱はあるが議論に参加できる形になっている。それに対して、IWCではモラトリアム以前にあった発言権が取り消されて復活したのは第60回のチリ会議で、それも本会議と切り離した昼時間などに反捕鯨市民団体と捕鯨推進団体とがそれぞれ3団体5分くらいずつ合計30分の時間を得るというもの。
それに対してイギリス案では議題ごとの発言を検討するなど、より積極的参加を促している。それについての議論では、反捕鯨国を中心に、透明性の確保や市民団体の持っている多様な情報の共有などを理由としてNGOの参加の支持表明が行われた。
一方、捕鯨推進国はいずれもNGOの参加に対して否定的なところが面白い。アイスランドなどは、自分たち代表団は国民から選ばれた市民の代表と言い切っており、北欧のイメージとしてとかく信じがちな透明性や公正性に関して必ずしもそうでもないところが興味深かった。両論が出たところで、NGOの参加ルールに関しては、今後の検討にまわされることになった。
途上国支援については、すでにICRW3条によって規定されているがこれに抵触しない形で検討が必要。作業部会を作り、次回に報告を出す。
ロシアが途上国だけでなく、移行国支援も議長案に入れてほしいと発言。日本は中間的に途上国支援をIWC基金で行っていくことを提案。また作業部会の報告を次回会合で行うのでは遅すぎるので、会議60日前までに提案を提出して、次回会議で決定したいと発言。
昼休みをはさみ、午後も財運の続き。
意思決定については、文章をスクリーン上に投影して修正を行い、意思決定の一日前には課題の解決に向かうようにするという委員会の報告(昨年のCOP10でこの方法はおなじみになった)。
モナコが、報告を支持するが一方で投票をできるだけ避ける悪い面として、投票権の必要性が減って分担金未払いの国が増えている可能性を指摘。
分担金の支払い方法について。これまでのような現金や小切手ではなく、銀行振込による支払いを求め、現金小切手などその他の方法を認めないイギリス提案がだされる。
事務局が会期中に大金を預かる危険性も指摘され、また、支払いの出所の透明性を確保するためには政府機関が会議の1日前までに振り込むことと提案。要するに、これまで何度となく指摘されてきた票買い疑惑(主に日本対象)に対し、支払いの透明性を高めてIWCの名誉を回復するという提案。
これに対し、銀行振込が難しいところがあると途上国のいくつかが反論し、韓国、アイスランドが事例によっては特例措置をとるよう提案した。
財運委員長によるレポートの続き。締約国とIWCの連絡に関して、早急に連絡が必要な際に連絡を取るのが難しい場合があるので、コミッショナーの代理を指名し、そのメールアドレスも共有して不自由さを解消するという提案。コミッショナーには資料など情報の回覧を行う。
日本は、どのような情報を回覧するのか明確化する必要があり、自国の裁量で回覧したくない情報については機密事項として指定できることが必要と指摘。
委員会報告は、NGOの参加、支払い方法について再度合意をはかること以外は採択してほしいというポーランドによるEU提案に対して、セントキッツが突然ピジョンボックスに修正案が入っていた。いつからイギリス提案がEU提案に変わったのか?と動議をだす。
EUとしては、結束して強固な立場を示すことが多いが、それに対する反発もある。EUは締約国ではない、という意見がいくつかの捕鯨国から出され、ロシアなど、EUなんか認めていない、仮にIBAが決議案を出すような場合を考えてみろ、という。後でみんながIBAが何たるか知らないだろうと、それは国際ボクシング連盟のことだ、と付け加える。ロシアのいびつなジョークに対して笑うものはいくらなんでもいない。
結局、問題は共同提案者としてすべての国の名前を列記し、翌日に再度の修正案を出すことになった。
この時点で2日目の議題のうち、先住民生存捕鯨、サンクチュアリ、小型沿岸捕鯨の社会経済的関わりについてが積み残された。明日も議題は満載だが、まだまだ財運が続きそうな様子で一体大丈夫なのか?と少々心配になる。今年は、格安便の都合上、最終日の夜にロンドンに向かうことになっている。
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