コビレゴンドウの捕獲
5月3日の朝、メディアの人から取材を受けた.太地でクジラを今年は捕らないといっているがどう思うか?というもので、え?それはイルカ猟のことですか?と聞くと、クジラだ、という。
確か、小型捕鯨船は2隻ともミンククジラを捕りに釧路にいっているはずだし、とそのときには状況を理解できず、自分から捕らないというなら悪いことではないと思うが、それが継続するかどうかはわからないから、もしそういう事態であればそれをきっかけに、中身の議論ができればよい、となんだか間抜けな答えをした。
その後、情報を得て、要するに小型捕鯨船が釧路にいってしまったため、5月からの沿岸小型捕鯨ができなくなったということがわかった。なあんだ。
ところが、翌日、海外からゴンドウを捕獲したというニュースが入った。?確か、追込み猟は4月で終了したはず•••
実は、小型捕鯨で捕獲しないのであれば、と追込みをしているいさなが漁期延長を願い出て、「めでたく」県の許可をえたということらしかった。
太地では、この「クジラ」の特に内臓を食し、肉は九州地方に主に販売するということで、町長はこの許可について「追い込み漁が特別に認められたことはたいへんありがたい。これで町全体が潤うと期待している」とコメントしたそうである。(町全体が潤うためにどれほど捕獲するつもりなのかは知らないが)
「伝統文化」の勝利。
ここで少しこの「クジラ」のことを書き記しておきたい。
マゴンドウと呼ばれるのは、マイルカ科のコビレゴンドウのこと。日本沿岸には、2つのタイプのこの(あえていうが)イルカが存在し、三陸あたりにいるやや大きいタッパナガと呼ばれるものと、南の海域のマゴンドウと呼ばれるものとにわかれる。
日本での生態調査は十分行われていないものの、母系社会を構成し、妊娠期間は15(1説に17)ヶ月、1産1仔で成熟する年齢は人間と変わらず、メスの寿命は60歳程度。シャチの推定個体数はこのコビレゴンドウが生活史が似ているからと類推されているので、シャチに似た社会構造をもっているかもしれない。
一度、畠尻湾に捕獲されたコビレゴンドウの鳴き声を聞いた時に、シャチのようなコールだな、と思った覚えがある。
決して繁殖力の旺盛な種ではない。そして、問題は、この種が(特にこの黒潮周辺の個体群が)毎年追込みという方法で群れごと消滅させられているということである。
また、いわゆる海外活動家が騒いでいるため信憑性が薄れてしまったが、このコビレゴンドウの内臓からは、水銀の暫定基準値の数千倍もの水銀が検出され、県は内臓を食べないようにという注意をかつてしたことがある曰く付きのものである。食べる、食べないは個人の自由かもしれないが、こうした激しい化学物質汚染が、当のイルカたちに何の影響も及ぼしていないとは考えにくい。
原発の汚染水放流という新たな危機もある。
人がほかの生物に対して行う害について、もう少し謙虚になれないものか、とつくづく考える。
「個体群の消滅は種の絶滅への一里塚」ということばがあるが、少なくとも、許可を出す県の役人や町の責任者はこうした事実をしっかりと認識し、将来に禍根を残さないよう考えてもらいたい。
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