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2011年5月20日 (金)

調査捕鯨のあり方検討会のゆくえ

 水産庁が調査捕鯨について議論する有識者の検討会を開催することを以前(4月21日)に書いた。

そのときにも、非公開であることや、水産庁という推進母体が行うことの問題をあげたが、今回、議事録要旨が公開されることでこうした懸念が的中というか、思ったよりもひどいことがわかった。

 議事録要旨を読むと、委員の一人が「事前に送ってもらった開催要旨(案)では『今後の鯨類捕獲調査のあり方について』幅広い意見を聞くため委員会を開催するとなっていたが、今日の資料では『鯨類捕獲調査を安定的に実施するため』意見を聞くと変わっている」と指摘され、宮原水産庁次長は、鯨類捕獲調査をやめることを議論するのではないか、という誤解あるいは否定的な議論をするのはないかという意見をもらったので、と要するに捕鯨推進派からのクレームを受けて変えたことを明らかにしている。

議事概要 第 1回検討委員会議事概要(PDF:190KB)

 鯨類捕獲調査というものが、真っ当なものであれば、やるやらないをはじめとして、多様な立場からの議論をしても問題ないだろうに、逆にこうした押さえ込みはおかしなこと、と良識ある人は思うのではないだろうか?

 国が推進してきたいわゆる『国策』では、今、原発問題が大きくクローズアップされており、原発施設から放射能がだだ漏れしつづけるような異常事態に至っても、相変わらず国策の旗を降ろすつもりもなく、メディアもはっきりと反原発を打ち出せない状態にある。

 捕鯨問題は原発のように、何かあれば市民が直接的な被害を被るようなものではないのは確かだが、この際、国策として『正しい』ものであるのなら、曲がったキャンペーンによって議論を封じ込めて続けるのではなく、改めてまっさらな議論を始める必要があるのではないだろうか?

 ついでながら、原発の危険性や日々の政府や東電の対応について、良心的な科学者が何人も自らの地位や名誉を捨ててきちんと意見を述べていることを大変心強く思っている。
 捕鯨についても、そうした国内での意見の表明が増えていくことを望んでいる。

 最近、新評論から『解体新書/捕鯨論争』という本が出た。
 決して反捕鯨の立場からの本ではないのだが、最初に出版を予定してきた出版社は上層部の反対で出版できなかったと聞く。
 編者である石井敦氏とは、必ずしもすべての意見を同じくしているわけではないが、こうした客観的な好著が出たことを歓迎する。

 また、せっかくはじめて調査捕鯨についての議論の場ができたことだから、産業界を代表する人たちばかりではなく、こうした第三者からの意見聴取は日本国民にとっての利益となるものだと思うのだが。
 




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