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2011年1月15日 (土)

シャチのナミの死・水族館事業と価格の吊り上げ懸念

 昨夜、名古屋港水族館で飼育されていたメスのシャチ、ナミが死んだということを知らされた。ある意味、予想されたいたことではあったけれども、やりきれない気持ちには変わりない。

 シャチのナミは、和歌山県太地で、25年前、2歳か3歳のときに捕獲された。地元の関係者の話では、追い込みではなく、突きん棒で捕獲されたということだから、相当荒っぽいやり方だったにかかわらず、生き延びたということだ。そして、その後、昨年5月に名古屋に移送されるまで、太地くじらの博物館脇の、海囲いで飼育されてきた。飼育シャチとしては、かなり長く飼育されてきたことになる。

 一方で、メスの寿命が平均60歳という野生下では、この年齢はまだまだ命の盛りであろう。
 太地の中では、ナミが名古屋に売られることに反対する人たちも少なくなかったと聞く。ナミの健康状態が芳しくなかったことに心をいため、わざわざ訪問した人もいたという。

 囲われているとはいえ、少なくとも海の一部で暮らしてきたナミを、人工的な水槽に入れることへの懸念は、研究者を含め、多くの人たちが共有してきたことだ。飼育下での繁殖に躍起になっていたとしても、こうしたリスクを水族館関係者が知らないわけがない。また、太地の博物館の水面から出たところで名古屋港水族館の所有であるとした、太地の関係者は、このリスクをよくよく知っていた上で、5億円という驚くべき値段でナミを手放した。

 ふつう、民営の施設ではかんがえられない購入とこの多額の価格は、言ってみればどこも直接的に『腹が痛まなかった』からつりあがった値段だと思える。名古屋港水族館は、名古屋港管理組合の管理下にある半官の施設であり、名古屋港管理組合は、愛知県、名古屋市、(そして弥富町)の共同管理・運営するところで、港の利用や土地所有などで利益を得ている。管理組合の議会に所属する議員は、そのポジションをなかなか手放さないようなところだとも聞く。
 そういうところだから、水族館内部の意見よりも、議員としての思い込みの「公共」サービスでとんでもないことがおき、かつて、ロシアにシャチ捕獲を依頼した際、失敗したにかかわらず、購入価格のおよそ半分の1億円ほどを支払い、オンブズマンに訴えられてこともある。内部的な改革なしには、このような非常識が、シャチ購入以外でもまかり通る素地がある。

 懸念されることは2つある。
まず値段。前回、ロシアの捕獲では、ロシアの捕獲業者を活気付け、翌年も捕獲を実施し、シャチが死んでいる。今回の件ではまたしても、価格がつりあがったことで、捕獲実施の可能性が高まるだろうということ。カムチャツカ海域では、IWCの科学委員会が、調査の不十分な海域での捕獲に対して反対しているにかかわらず、ロシア当局が許可を出している。昨年、実施し、失敗した捕獲業者が再度試みる可能性があること。

もうひとつは、太地の中に、ナミと引き換えに、新たなシャチの捕獲をすればいいと考えているものがいるということだ。ご存知のように、日本沿岸のシャチの生態の解明はまだ明らかではない(ロシアを含む合同調査がある)カムチャツカ海域よりもひどい)。どこの海域からどこまで移動するか、どこで繁殖しているのかなど、今後の生態調査なしにはわからないことばかりだ。

 水族館関係者が少しでもナミの死から学び、わからないまま捕まえて飼育しようと考える前に、生態調査に力を入れるというような本来の学術的、教育的な施設に生まれ変わってほしいと心から願っている。


 

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