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2009年12月25日 (金)

調査捕鯨に関する記事

 知人から、JBプレスに掲載された米本昌平氏の記事が送られてきた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=2
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=3

題して「調査捕鯨は即刻中止すべし」
ー日本の評判を落とし、農林水産省と反捕鯨団体の懐を潤すだけ

 として、日本政府が国際捕鯨取締条約8条を根拠に、これまで南極海だけですでに9千頭のミンククジラを捕獲してきたが、国内における議論が主に日本鯨類研究所が提供する情報だけで行われており、科学的な調査として果たして妥当なものか、と疑問を投げかける。

 もし、IWC科学委員会で全員一致で決められた改定管理方式に従えば調査捕鯨は必要ないのに、税金の投入や農水省の外郭団体からの無償融資を受けて調査を継続しているが、事業仕分けの対象にもならなかった。
(もちろん、その影には超党派の議員連盟が存在して、機会あるごとに『国策としての捕鯨』を訴えていることはご存知のとおり)。かくして民主党の施策でも調査捕鯨継続と商業捕鯨再開が書き込まれているわけ)

 一方で、反捕鯨諸国にとっても、反捕鯨のスタンスを強く打ち出すことが票につながるということから、いずれの側も捕鯨問題を真剣に解決しようとしていない現状についてふれ、捕鯨に関する国際交渉の異様さを指摘している。

 そして、IKANが2006年に指摘していたように、日本国内では『伝統食』と信じられているクジラの肉が実はだぶついていることも指摘、調査捕鯨を中止して沿岸捕鯨再開を訴えることに切り替えれば諸外国の理解も得られるのではないか、と言っている。
こうした意見が陽の目を見るようになったことはたいへん喜ばしいことだと思う。

 調査捕鯨をなぜ止めないのか、ということについていえば、何よりもその方法が関係者にとって得だからだろう。
捕獲数にしても、捕獲種にしても「自主申告」で国際的な縛りを事実上免れている。公海の利用の仕方としては
ルール違反といわざるを得ないが。
 実際問題、もし商業捕鯨を再開するためにはいくつかのステップが必要となる。モラトリアムの解除のためにはIWC加盟国の4分の3の支持が必要となる。
また、調査捕鯨のように、好きな種を取るわけにはいかず、ミンククジラ以外のクジラを母船式で捕獲するためには条約の付表10dの解除が必要となる。

 IKANとしては、調査捕鯨の即刻中止はもちろんだが、沿岸捕鯨そのものについてもどうするのかという国内議論を同時にしていくべきではないのか、と思っている。

 その一つは、沿岸での捕鯨の管理システムを国際的な規準で実施すること、また、希少なミンククジラ日本海個体群の混獲防止措置、そして、定置網による混獲への対処。

 これまでの日本政府の主張は、沿岸地域における捕鯨は先住民の捕鯨の必要性と同等というようなものだった。また、メディアの報道も、どうかするとそれらの地域が古来からの伝統に基づいて捕鯨を必要としているというような書き方である。しかし、現状を見れば、ミンククジラの捕獲地は三陸から北で、太地や和田など沿岸の捕鯨地域では実施できない。

 これまで日本の一部地域で鯨類を食べてきたことは事実だが、実際に沿岸捕鯨を再開するうえでは、沿岸捕鯨業者の活動が先住民捕鯨とは異なる『産業』であることを明らかにし、国内で一体どれほどの肉が必要とされているのかということを調査して明らかにし、供給の都合ではなく、最小限の需要量を算出すること。
 また、持続的な利用を考える上で必須の『消費者教育(=野生動物利用の問題点を明らかにする)の実施などは欠かせない。
 そしてなによりも重要なことは、これまでのような不透明で一方的な産業の側の情報提供ではなく、沿岸の鯨類の保全情報を公正で透明性を持って情報提供していくことだ。

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