海洋保護区
生物多様性国家戦略に「海洋保護区の設立」が書き込まれてすでに1年。
最初ははやる気持ちでその進行具合を見守っていたが、なんだかその時点から
少しも前進していないように思える。
先ごろ、水産庁の担当者と話して、「まだ定義もないし・・」といわれて、それもそうだ
と思ってしまった。
それでもうれしいことに、「保護」という言葉からいやだという風にいわれていた
水産庁も「もうそんなこと言っている場合じゃないでしょ」と少なくとも「仕方ない、
はじめるか」というようなコンセンサスはできてきているらしい。
それは私には大いなる前進に思える。
大体、日本の水産行政は、周囲が海であるというのに、沿岸はつぶし、遠い公海
に出かけていくことを主眼にしてきた。沿岸での漁獲が減少すればいわゆる
「栽培漁業」というきわめて農耕民族的な解決法で何とかしようとしているけど、
識者によると稚魚や卵の放流なんて餌にしかならない、というし、管理不十分
の養殖やまき網などによる沿岸の小規模漁業との競合に関して、なんら効果的
な解決法は見出せていないようだ。
その挙句に海洋基本法ができて、海底エネルギーや金属採掘などの開発に力を
注ぐことになれば、ますます沿岸漁業は危うい状態になっている。
そのひとつの解決法として、海洋保護区があると私は感じている。
「保護区」というと、ただただ、手付かずの場を想像し、水産業にマイナスな
イメージしか抱かない向きが大きいが、産卵場所や稚魚の育つ場の確保は
乱獲で疲弊した漁業にこそ利益になるはずだ。海外事例でも、乱獲でにっちも
さっちも行かなくなったようなところでやっと海洋保護区を導入し、結果的に
成功しているというはなしだ。
これまで、水産の側でしか出来なかった海洋研究のお仕事も保全を含む多様な研究
が出来るというメリットもある。
たぶん、行政官の調整とか誰がどのように管理するのか、などの面倒な
仕事がなかなか進んでいかないのだろうとは思うが、そこはなんとか
関係者ががんばってもらいたいところだ。
私たちも、海洋法にコミットしてきたNGOのネットワークでもう一度きちんと
行政の背中を押していこうと、来月にやっと海洋保護区勉強会を開催する。
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□海洋ネット・第1回会合
「海洋・海岸環境の保全のための取組みを進めるため、海洋・海岸環境の
保全に取組むNGOや研究者等によるネットワークを形成し、各種活動を行
う。」ことを目的とした海洋ネットの第1回会合として、「海洋保護区」につい
て学びます。
どなたでも参加可能ですので、ぜひ多くの方々にご参加いただければと思
います。
なお、準備の関係から、参加希望の方はkobayashi@c-poli.orgまでご返信を
お願いいたします。
○テーマ:海洋保護区の定義と特徴、国内法制度について
○おはなし:加々美 康彦(鳥取環境大学 環境政策学科 准教授)
○日 時:11月17日(月)17:30~19:30
○会 場:WWF-ジャパン 7F会議室
(MAP http://www.wwf.or.jp/aboutwwf/japan/map.htm )
○参加費:1,000円(資料代含む)
○定 員:30名(先着順)
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○市民がつくる政策調査会
○事務局長 小林幸治
TEL○ 03-5226-8843
E-mail○ kobayashi@c-poli.org
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転送ここまで
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海洋保護区の設立は、第一義的に海洋の生物多様性の保護、
そしてその結果としての持続的な漁業の確立、さらには
国境を越えたグローバルなネットワークによって、国境間の
緊張をほどき、平和的な方向を作り上げることが出来るという
余禄もある。
北方4島と知床との保護区連携に関しては、島がどこに
帰属するかというところですでにもめてしまうらしいが、
保護区を設定する前提で平和的な解決法を見出すという
ことを考えてみてはどうなのだろう。
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