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2008年7月23日 (水)

IWC-2日目

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 マポチョ河は、サンチアゴを東西に走る。アンデスからはるばる旅してきたと思われる流れは激しく、黄土色ににごり、まるで大雨の降った直後の川のようである。流れの両端には、たくさんの太ったハトとカモメが餌をあさっている。ハトは、ここサンチャゴでは水鳥に属するらしく、街中では見かけない。ほかにもシギなど水鳥もちらほら。
 両岸は切り立ったコンクリートの護岸で、ホテル周辺では緑地帯になっている。ホテルから25分くらい歩いてこの川にかかる橋にたどり着き、それからさらに5分歩くと会場になっているシェラトンにつく。

 2日目の朝は、クローズトのコミッショナー会議があり、IWCの将来についての議論がなされた。
お昼近くになって、本会議がようやく始まり、タンザニアが参加したと事務局からの報告がある。これで81カ国(今回参加国は72カ国)。
 新たな参加国のウルグアイが挨拶する。ウルグアイでは98年に政令を発布し、海生哺乳類はすべて保護の対象となった。現在は混獲の削減と密漁をなくすことに務め、ウォッチングの推進を図っているという。

 IWCの将来についての議長のサマリーが配布された。それによると、
・会議の実質と手続き上の改善
・IWC60における独立した論点についての議論と合意形成をどのように実現していくのか、
の2点についての勧告に合意があったということである。そのことにより、今後その目的を達成するために3つのアネックスにまとめられている。

 Annex AはIWCの手続きの改正である。これには以下の3点が含まれる。
 ひとつは、これまでの互いの立場の表明を表すような会議の場ではなく、事前に合意形成をおこない、できるだけ投票は避ける。もし対立する見解があって動議が出るようなケースでは議長の裁量が優先される。また決議はこれまでのような前日ではなく、特別の例外を除いて60日前に提出し、そのことについて十分な議論と合意形成が出来る状態が望ましい。
 二つめは参加した際の手続きで、新参加国に関しては、これまでのように即日ではなく、参加了承の後30日たって始めて投票権が与えられる。
 もうひとつは作業言語に関するもので、公用語の英語はそのまま、作業言語としてフランス語、スペイン語が英語とともに使われる。それ以外の言語に関しては、会議の席で自前の通訳を通してであれば利用してかまわない。

Annex Bは実質的名議題の進展を期待するため、小作業グループを設置することである。これまで意見が対立して進展しなかった内容のなかで33項目が検討対象として上がっており、小作業グループに参加する24カ国が項目を検討し、その議論をテーマごとに単一ではなく、ひっくるめたパッケージとして議論し、合意形成に持っていくというものである。項目の中には、この会議の目的は何かというようなものから、日本の沿岸捕鯨、モラトリアム、海洋のガバナンス、科学委員会の機能性、小型鯨類、倫理、動物の福祉、海洋保護区、気候変動と保護委員会の管理計画など、対立する(と思われる)議題がぎっしり詰め込まれている。

参加国は:
アンティグア・バービューダ
アルゼンチン
オーストラリア
ブラジル
カメルーン
チリ
コスタリカ
デンマーク
フランス
アイスランド
イタリア
日本
韓国
オランダ
ニュージーランド
ノルウェイ
パラオ
パナマ
セントキッツ&ネビス
南アフリカ
スェーデン
イギリス
アメリカ
である。

Annex Cは科学委員会に関連する課題で、本会議と切り離した場合の影響、途上国などからの科学者の新加入、鯨類調査に関して未熟な参加国への支援、科学委員会への招待科学者に関してなど。

 小作業部会は、本会議中に組織会議を開く。これには参加国以外のコミッショナーも参加が可能で、開催日などを議論し、中間会合を経て作業内容を報告する。作業部会そのものは決定権はなく、部会でまとまった案を示し、それが本会議にかけられるという仕掛けである。

 議長の報告に対し、両陣営からの賛意の言葉が送られた。
 そのなかで、なかなか面白かったのはオーストラリアの発言である。環境大臣、ピーター・ギャレット氏は、IWCが過去の経験を生かし、国際的な管理機関に生まれ変わるべきだと主張した。今までの緊張の原因の多くは特別許可捕獲であると総括。建設的に変えていくため、南極海での新しい鯨類の管理計画を提案することで将来のプロセスに貢献したいと発言した。

 「IWCの将来」という問題としには、モラトリアムによって商業捕鯨を一時的に止めている状態をどのような合意形成で解決していくのかという話である。したがって、再開を含めさまざまな選択肢があるということからいえば、商業捕鯨に反対する側にとっては1歩譲った状態ではある。
 そうしたなかで、単に反対するという原則論ではなく、新しい計画を提案するのは、現実には障害が多々あるものの、なかなかにくい問題解決への方法論であると思われた。
 
 彼が属していたという「ミッドナイト・オイル」というバンドの演奏は知らないのだけど、説明するときに動く彼の手が非常に大きいのがとても印象的だった(ギターを弾くのにいいかも)。もちろん、彼の話しぶりは想像していたよりもずっと明晰で、なかなか好感が持てた。

 2日目はそのほかにデンマーク領グリーンランドの捕獲枠拡大の要望があり、その紹介のPPTが上映された。
昨年、5年間の捕獲枠更新が行われており、その際にも要望が出たが、まだ科学委員会の評価の出ていないザトウクジラの捕獲に関して、本会議は否定的だった。また、ホッキョククジラに関しては、カナダの個体群と遺伝子が同じかどうかが評価されていなかったが、今回、ホッキョククジラに関してはカナダの群れとグリーンランドのものが同じ群れに属するという報告があり、またザトウクジラに関しても暫定枠が提示された。
 彼らがこの捕鯨をどのように厳しく管理しているか、また需要がどのくらい増えているかという数字も提示された。しかし一方で、グリーンランドにおける地域消費の内容が拡大されているという指摘もある。「地域社会」というものが何を実際に意味するのか、先住民捕鯨の定義のあいまいさが気にかかる。
 グリーンランドの捕獲枠拡大については、後に議論されるということになった。

 ホエールウォッチングに関しての議論も行われた。南米や南アフリカでは、沿岸の地域社会にとって重要な産業となっているということがこれまで度々紹介されている。特にブラジル、コスタリカ、エクアドル、コロンビア、アルゼンチンなどにおけるホエールウォッチングの経済効果は目覚しい。ブエノスアイレスグループ(南米や南アフリカなど)は、ホエールウォッチングこそ真の持続可能な鯨類の利用だとして鯨類の捕殺に反対している。
 しかし、捕鯨推進側は、最近ではホエールウォッチングの経済効果が否定できなくなったためか「両立できる」という意見である。
 実際には、ウォッチングを楽しむ人たちの目前でクジラが殺されたのを見てショックを受けたという報道やウォッチングのために捕鯨が出来なかったというような事件の報道もあるが。

 夜は、シェラトンのロビーでWSPA等の主催の写真展プラスレセプション、近くの大学でWWFチリによるパネルディスカッション(さすがチリNGOはまじめ?)と二つのイベントがあった(「持続的利用派」のイベントもあった)。

 毎日、チリのNGOがシェラトンのそばで警官に囲まれながら、連日抗議行動を行っていた(逮捕者もでたと聞いた)。その日は静かなキャンドルビジルだった。Ngosaction1_dscf00091_2

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